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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
第二次マゲイア大戦

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99/432

昨日の戦友は、今日の恋敵

 エリス・ヒナ・ルカの三人は、戦の後始末をしてからレムリア城に集まる。

 まだまだすべきことはあったが、日も落ちたので今日の仕事は終了。

 ひとまず、城で祝勝会が開かれる。立食パーティーには、星騎士達の他にも様々な人達が集まってくる。

 誰もが勝利に喜び浮かれ、和気あいあいと時間を過ごした。

 話題の中心になるのは、やはり光太郎である。

「勝ったのは兵団と女王様達のお力ですが、神山様の助力も大きい」

「ええ、まさにアヴァロンの救世主!」

「うんうん」

「欲の無い方とお聞きしました。どうやって報いましょう? 武勲が大きすぎる」


 女王達は会場内をねり歩き、皆にねぎらいの言葉をかけていた。

 ただ、ドレスアップはしておらず甲冑姿のままである。非公式の場なので衣装に気は遣わない。

 時々、お互いの様子をうかがい笑顔を交わす。

 表面上は穏やかでも、水面下では火花を散らしあっていた。

「失礼、少々疲れました。休みます」

 三人とも、早々にパーティーから抜け出して浴場へと向かう。

 お互い無言のまま、自分の体を洗い始める。体の臭いを気にしながら、丁寧に綺麗に磨く。

 時折、「ぐふふ」と笑い不気味である。三人は同じ事を考えており、明日のことを夢見ていた。

 体を拭きパジャマに着替えてから、用意された客室へと入る。上客用のスイートルームだ。

 そして寝る前の挨拶……ここまでは平和だった。

「お疲れー、お休みー」

「良い夢をー」

「お休みなのー」

 直ぐさまベッドで横になった。

 勝利の余韻よいんが残り興奮が冷めやらぬ中、自己暗示をかけて心を落ちかせ、すぐに寝入る。

 睡眠の訓練はしており、女王達にとっては簡単。

 三人は明日に備えて、疲れを取る必要があった。今は嵐の前の静けさ、起きた瞬間に女の戦いは始まる。


 次の日の未明、三人は同時に起きる。慌ただしく化粧と身支度をし、甲冑を着てドアから飛び出すと――

「きゃっ!」

「いたっ!」

 エリスとルカは、いつの間にか張られていたロープにつまずけた。

 犯人のヒナは、廊下を走り去っていた。悪戯したのは、二人を出し抜くためである。

「やってくれたわね!」

「このくらい何でもないわ!」

 二人は直ぐに立ち上がり、ヒナの後を追って外へと出る。

 薄暗い中、自機のメタル・ディヴァインに乗り飛び立つ。

「ママ!」

「ええ、ヒナ!」

「こら、待て――――!」

 三人の行く先はオルワンガル……いや、光太郎の元だ。

 さほどお互いの距離は離れず、女同士で舌戦が始まる。口火を切ったのはエリス。


「ヒナ、援軍ありがとうね。ルカも御苦労様。もう自分の国へ帰ったら?」

「そう言うエリスこそ、レムリアに戻ったら? 仕事はまだ残ってるでしょ?」

「後はアンジェラ姉様とイザベル叔母様がやってくれるわ。私は光太郎を迎えに行かないと、きっと寂しがってるから」

「ふーん。だったら、ヒナがお兄ちゃんをメガラニカに連れて帰るの。エリスは安心して、国にお帰んなさい」

「はあー? 何言ってんの、この腹黒女! 光太郎は私のものなの!」

「ふざけんなー! あたしのもんだー!」

「「「がるるるるる!」」」

 三人はにらみ合い、獣のような唸り声を上げる。

 

 メタル・ディヴァイン達は、それぞれ思いを語る。

 オルフェーヴルはあざ笑う。

「女の争いは見てる分には面白いわねー。おーほっほほほ!」

「ヒナ頑張れ! 負けるなー!」

「はあー……女の戦いはえぐいな。光太郎は一人しかいないから、独占したくもなるか……」

 ラモーヌとエクリプスは娘に肩入れする。やはり、親は子供を応援するものだ。


 三人がエキサイトする中、つられた三機は飛行速度を上げていく。

 すると、空から落ちてくる二つの火の玉が見えてくる。

「あっ! あれは!」

 アヴァロン星の降下ポッドだ。大気圏を抜けて、エリス達の前に落ちてくる。

 ポッドが割れて中から、スカーレットとハイペリオンが姿を現した。

 もちろん、輝夜と有香は乗っており、思いの丈を大声で吐き出す。

「うっふふふ、もう我慢も遠慮もしないわ! 全員蹴散らして、光太郎さんを手に入れます。後はベットに直行よ! 早紀さん全速力です!」

「はい、お嬢様!」

 有香は黒いオーラをまとい、ただいまヤンデレ全開中。思うところはあっても、早紀は黙って従うのみ。

「おーほほほほほ! 今いきますわよ、光様! ねやで、しっぽり、ねっとり、ずっぽりと……ムフフ、ああーもう堪りませんわ!!」

「やらせるかー! このド変態!」

 妄想発情してる輝夜に、ルカが噛みつく。


 輝夜と有香はヴィヴィアン要塞で一晩を過ごし、アヴァロンに降下してきた。

 もちろん身体はガッチリ磨いてきており、肌は滑滑すべすべ艶艶つやつや輝輝ピカピカだ。

 女王達の求めるものは唯一つ、光太郎だけだ。ひとまずマゲイアの脅威は去り、平和がやってくるだろう。

 となれば、後は自由だ。

 光太郎はもはや超英雄スーパーヒーロー、本能のおもむくまま、優れた雄を手に入れようと牝は動く。


 ルカは言う、「光太郎の子供が欲しいのよ! 何か文句ある!?」

 

 猫の発情期は多数の雄猫が、牝一匹を巡り争う。

 この状況はその逆で、女王達が光太郎一人ひとりに群がろうとしていた。

 昨日の友は今日の敵。互いに手強いライバルと分かっていても、気後れするような者はいない。

「絶対に負けない!」


 先頭はスカーレット、二番手はハイペリオン、三番手はオルフェーヴル。

 少し後方にエクリプスとラモーヌが並ぶ。さほど差はない。

「オルワンガルが見えた!」

 海面上を飛ぶ五機は全速力のままで、速度を落とそうとしない。

 このままだと、着陸するのは不可能である。

 それこそ慣性の法則で、逆噴射をかけても止まれない。下手をすれば島に激突だ。

 無論、女王達は百も承知。

「チキンレースってやつね。やってやろうじゃない!」

「後には引けないの――!」

「この程度で、ビビるもんですか!」

「私が勝つわ!」 

「おほほほほほ!」

 ところが、先頭のスカーレットは人工島の手前まで来ると、突然高度を上げる。

 垂直上昇すればぶつかりはしないが、これではオルワンガルを飛び越してしまう……


「そうか! 輝夜め――――!」

 ルカは幼馴染みの意図に気づき、同じく上昇する。

 なんと、輝夜はスカーレットから飛び降りる! 先に光太郎の元へ、たどり着けさえすればいいのだ。

 輝夜も策士だ。行くと見せかけて、チキンレースをするつもりは、最初はなからなかった。

 輝夜は天使の羽(エンジェルウィング)を広げ、降下する。

「今、行きますわよー光様――うっ、ルカ!」

「甘いわよ輝夜――うげっ!」

「アンタもね」

 全員、後を追って乗機から飛び降りていた。

 しかも、斥力場を切って急降下ダイブし、輝夜にぶつかってきたのだ。

 危険極まりない行為だが、それだけ恋に命を懸けている。

 その覚悟を輝夜は見誤った。五人はもつれながら、落下していく。

 その最中、手を上げている人影を見つける。

「いた!」

 女王達は、なんとか着地して走り出す。


「ヒナが一番なの――きゃっ!」

 足首をつかまれ、ヒナは転ぶ。

「悪く思わないでね――いたたたたた!」

 有香は長い髪を引っ張られる。

「どきなさい!」

「やったわね――!」

「邪魔なの――!」

 最初は殴る蹴るの応酬で、足の引っ張りあい。


「えい! えい!」

「痛――――!」

「ガブ――!」

「ギャ――――!」

 前に進むにつれ更に激しく、女達は戦う。

 押し合い、へし合い、ひっかき、噛みつき、取っ組み合って転がる。

 まさに女達の修羅場、マゲイアと戦うより本気で必死だ。

 それでも、武器も王の力も使ってないので、殺し合いではない。

 流石に一線(レッドライン)だけは越えなかった。


 この戦いは私戦しせんであったが、マゲイア戦での同士討ち扱いにされた。

 公的にしてしまうと、国の戦争になりかねず、色々と問題になるからだ。

 女王同士のガチ喧嘩などアヴァロンの歴史上、前代未聞である。


 患者 ルカ・ヒナ・エリス・輝夜・有香

 主訴 男をめぐって大喧嘩、大乱闘。

 所見 咬み傷・擦り傷・ひっかき傷と、殴打によるあざ

 治療「つばでもつけとけ! アホらしい」と言いたいが、消毒による殺菌、ナノマシンによる処置を行う。

 ただ、カルテには情けない記録が残った。


 全員ボロボロになりながら、ようやくたどり着く。

 髪は乱れ、体を洗った甲斐もなくなり、女達は見られたものではなかった。

「ぜー……ぜー……」

「はぁー……はぁー……」

「ふー……ふー……」

「あ――! きっつぅ――――!」

 体力・気力を使い果たして、五人とも倒れ込む。そこに人影が近づく。

 上からのぞき込むように見たのは、小玉だった。

 女王達は起き上がり周りを見渡すが、光太郎が見当たらない。

 目を腫らし、震え声で小玉は言った。


「光太郎が…………さらわれた…………」


 第四話 終わり。

ここまで読んで下さり、ありがとうございます。m(_ _)m

お気に召しましたら、評価などいただければ幸いです。

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