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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
第二次マゲイア大戦

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最強姉妹

 マゲイアの旗艦アナトリアの艦橋ブリッジは、静まり返っていた。

 たとえるなら、大量点を取られ最終回を迎えた野球のベンチと同じ状態で、重苦しさだけが漂う。

 ツーアウトになり、もはや逆転の芽はなかった。


「あわわわわわわ!」

 ハサンは指揮シートの上で膝を抱え、手を噛みながらガタガタ震えていた。

 遠征軍の大半が失われ、部隊も残りわずか。

 開戦当初は自分の栄達を夢見ていたが、今は処罰におびえている。

 マゲイア上層部は敗者に寛容ではなく、見せしめとして拷問処刑される。

 貴族達にとっては、良い見世物だ。

 ハサン自身も処刑に関わってきたこともあり、自分の身に降りかかるとなると身の毛もよだつ。


「どうしてこうなったのだ?」

 問われれば、「お前がバカだから」と敵味方に言われるだろう。

 敗因調査報告書が何百枚になっても、その一言に帰結する。

 現に退却命令も出せないのだから、無能としか言い様がない。

 自分のことだけを考え、指揮は完全に止まっていた。


「レムリア部隊接近!」

「ひ――――!」

 周章狼狽しゅうしょうろうばい、ハサンは悲鳴を上げる。

 アンジェラ率いる突撃部隊が、真横からマゲイア右翼に突っ込む。

 迂回して接近されたことすら気づいておらず、対応が遅れる。

 レムリア軍の精鋭千騎が神速果敢に、敵中を駆け抜ける。

 止まらない、止められない、万の軍勢を翻弄し敵機を破壊する。

 あっという間に、敵陣中央までアンジェラ部隊はたどり着く。進撃を阻める者はいなかった。


「せや――――!」

 アンジェラが剣を振るうたびに、マゲイア機は切り裂かれる。

 それも、離れた距離からベスパを真っ二つにし、ついでに近くの敵機も両断する。

 長剣の長さでは、本来は届くはずもない。使っている武器が特別なのだ。

 

 星剣ジャムシード――蛇腹剣。

 ワイヤーでつながれた刃が複数になって伸びて、敵を切り裂く。

 鞭ではなく、こっちがアンジェラの主武器メインウェポン

 並の星騎士では扱えない伸縮自在の剣を操り、アンジェラは敵を切り裂き倒していく。

 ちなみに騎士槍は、不得手である。

 あとに続く星騎士達も吶喊とっかんし、敵中突破に成功する。

 後ろを振り返れば、敵陣にトンネルが出来ていた。

 今頃になってアンジェラの後を、敵機が追いかけ始める。


 エルコンドルは感想をもらす。

「上手くいったのー、見事に陣形は崩れおった。あとはトドメを刺すだけや」

「これじゃー肩慣らしにもならない。歯ごたえがなさ過ぎてイライラするわ! こんなのに昔、苦戦していたかと思うと、自分にも腹がたつわ!」

「十五年前はしゃーないやろ。アンが大怪我を負うた時は、ワイも大破したさかい。マゲイアがえげつのうて、敵わんかった。今回、楽勝なのは光太郎がおるからやろ?」

「……そうね、光太郎殿の作戦があってこその結果ね。今回も数的には、圧倒的に不利でしたから……なめてはいけない」

 エルコンドルに言われ、アンジェラは気を引き締める。

 地位が上がれば、忠告してくれる者はいなくなり、自分の間違いには気づかなくなる。

 憎まれても気にしないAIだからこそ、ズケズケと物を言えるのだ。

 上に立つ者にとって有り難い存在であり、メタル・ディヴァインは同格の相棒だった。


「味方に犠牲がないのを喜ぶべきや。見えてきたでー!」

「散開!」

 アンジェラが右手を挙げて合図を出すと、突撃部隊は左右に分かれる。

 後ろには十万の敵機が、追いかけてきていた。

 本来、飛行特化型のメタル・ディヴァインに追いつける訳はないが、アンジェラはわざと遅く飛び、敵機を誘い出したのだ。


 前方に黒い機体が見えてくる。黒竜ルドルフだ。

「姉上――――!」

 アンジェラとイザベルは目配せして、すれ違う。

 

 モニターでイザベルを見たハサンは、顔面蒼白となる。

「ど! ど! ドラグーン・ダンサー!」

 前大戦においてマゲイア軍の二割以上を、ルドルフとイザベルが倒していた。


 奴隷兵には死を、無人機には破壊を、戦艦には消滅を、立ち向かった者は誰一人として帰還できなかった。

 レムリアの魔女、破壊の女神、と数々の異名でイザベルは呼ばれ、マゲイア軍恐怖の的になる。


 当時、イザベルが戦場に現れた途端に、マゲイア軍は大慌てで逃げ出したものだ。

 そのお陰で、各国は攻め込まれても、何とか体制を維持することが出来た。

 今回の遠征軍にも武名は知れ渡っており、化け物扱いされている。

「黒竜を見かけたら、とにかく逃げろ!」とマゲイア全軍に訓示されていた。

 命令を厳守しようにも、すでに遅し。ルドルフの戦闘準備は完了し、敵は射程に入っていた。


「ルドルフ、ホワイトブレス発射!」

「イエス、マイマスター!」

 黒竜ルドルフあぎとが開く、まるで地獄の釜のようだ。

 灼熱の白い塊が奔流となって、口から吐き出される。

 追ってきた無人機が影絵と化す。

 まさに破滅の閃光(ホワイトプレス)、敵機十万は一瞬でこの世から消滅した。

 プラズマビームは敵軍本隊まで届き、損害を与える。

 ついにマゲイア軍の数は四十万を切り、軍としての機能も失う。

 

「この程度なら、私一人でも十分でしたわね」

イクザクトリーまさに。ですが、マスターが最初から出ていたら、マゲイアは逃げ出したかもしれません」

「そうね前大戦のように、蜘蛛の子を散らすように四方八方に逃げられたら、どうしようもなかったわ」

「それでは終わりにしましょう、マスター」

「ええ、神機突撃ディバイン・アサルト!」

「うおお――――――――!」

 イザベルの後方にいたのは、三万騎の星騎士達。

 戦に飢えた野獣の群れとなり、マゲイア機に襲いかかる。

 味方無人機のサポートは無用。ここまで我慢してた思いが、圧倒的力となる。

 星騎士達は先を争い、敵機を壊しまくる。

 戦場は撃墜数スコアと、貢献アシストを稼ぐ狩り場となる。


「叔母上に負けるなー!」

「おお――!」

 もうレムリア陣は解かれ、エリスが七万の本隊を率いて攻め込む。

 マゲイア軍は総崩れ、イザベルの突撃が致命傷となる。


「ルドルフ、ヒートウィング!」

「イエス、マスター」

 両翼の前部が白く輝く。ルドルフの翼がぶつかると、ミノタウロスの体が溶け崩れてしまう。

 翼はプラズマカッターで、ミスリル装甲を高温で溶かし破壊したのだ。

 富士吉がルドルフを修理した時に、追加した武装。

 接近戦はもちろん、体当たりすれば威力は絶大だ。数万度のやいばに、切れぬ物なし。


「もう、イザベルさんとルドルフは無敵じゃない? 一騎軍隊ワンマンアーミーだ」

「そうだな、将軍が負ける姿は想像できん。ただ、無限に戦えるわけじゃない。エネルギーも、体力にも限界がある」

「うん。でもマジえー!」

 光太郎はイザベルの強さに、感動し興奮していた。


 イザベルとルドルフは、無人の野をゆくがごとく敵を蹴散らす。

 エリスとアンジェラも、突進し敵陣をかき乱す。

 そして、ムー・メガラニカ連合軍がレムリアに到着し、勝敗は決した。

 それでもハサンは、最後の悪あがきにでる。

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