反撃開始
「武技――竜巻戦斧なの!」
ヒナは巨大鉞を、目にも止まらぬ速さで動かし始める。
小柄な体で、二メートル近い得物を苦もなく振り回し、風を巻き起こす。
まさに荒れ狂う暴風、人の形をした災害が戦場を駆け抜ける。
のこのこと近づいたマゲイア機は、一瞬で切り裂かれるか、たたき壊される。
数機が同時攻撃するも、返り討ちにあう。ヒナの間合いに入れば死あるのみ。
側近も不用意には近づかない。ヒナの後方に回り込もうとする敵機のみ排除する。
「せい!」
メガラニカの精鋭らも、見事な連携で次々と敵を倒していく。
見渡せばムー王国を包囲していたマゲイア軍は、無くなりつつあった。
掃討されるのも時間の問題。
ヒナはひとまず戦うのを止めて、残敵は友軍に任せることにする。
女王対決できなかった鬱憤を晴らし、ひとまず休憩。
「あー、スッキリした」
「姫様、どうぞ」
「ありがとなの」
後方に下がったヒナに、側近が飲み物を手渡す。
この間に機犀による、推進剤補給が行われる。
ヒナが乗るラモーヌの周りには、親衛隊が集まって護衛についていた。
安心してヒナはジュースを飲む。見た目だけなら幼い子供だ。
「おいしいの!」
「ここのマゲイアはもう終わりね。次はレムリアに……」
ラモーヌが言いかけたところで、ムーから通信が入る。
『久しぶりね、ラモーヌ』
「ええ、伊知香」
二人は前大戦を生き抜いた戦友同士だ。たとえ体は変わっても、友情と信頼に変わりはない。
『うちの星騎士らをよろしくね』
「責任をもって預かるわ。準備が出来次第、全軍を引き連れてレムリアに向かうわ」
『こっちも今から、無人機を敵中に送り込むわ。これで此度の戦はお仕舞いでしょう。落ち着いたら、メガラニカに遊びにいくわ』
「楽しみにしてる。じゃーね」
ラモーヌが通信を切った時には、敵機は全滅していた。
味方全機の補給も終えている。戦いは次の段階へと進む。
「残りの敵も、片付けてしまいましょう。ヒナ」
「うんママ。さっさと終わらせて、お兄ちゃんのとこへ行くの!」
「さあ、号令を」
「みんなー! このままレムリアまで行くの――――!」
「おお――――!」
合流したムーとメガラニカ軍は、全速力で南下を開始する。
「司令官代理、ご指示を!」
「そ、そ、某は悪くない! 知らん!」
ハサンはこの期におよんで現実逃避だ。
せめて残った軍の指揮はすべきだったが、何もしなかったせいで更に軍勢を失うこととなる。
光太郎は冷静に指摘する。
「僕だったら、レムリアに展開した軍を退かせて、残った部隊との合流を急がせる。それでも、撤退する以外の手はないんだけどなー……」
「反転して戻る気配すらなかったな。対処する気がないなら、もはや軍として瓦解してるんだろう。いよいよ、ムー王国の塔が動き出した。もう、これで終わりだ」
「そうだね。呆気ないものだ」
戦は最終段階にきた。
「大砲塔、発射用意!」
星騎士達の待機所だった塔が、傾き始める。ピサの斜塔のように傾斜していく。
塔の中は吹き抜けの空洞で、天辺には穴が空いていた。塔は大砲へと変わる。
打ち出すのは砲弾ではなく、無人機。電磁投射砲で十機同時に、発射された。
火の玉となって音速の八倍で空を飛び、ヒナ達を抜き去っていく。
到着した場所は、レムリアへ向かっていたマゲイア部隊のど真ん中。
敵の只中、ケンタウルと機犀は暴れ始める。
大砲塔は次々と後続部隊を撃ち出し、移動中のマゲイア軍を大混乱に落とし入れる。
ヒナが後方から追いついた時には、ほとんどの敵機が落とされていた。
残敵を片付け、ヒラニプラへと急ぐ。
これでムー王国にいたマゲイア軍は全滅し、残りは約五十万。
戦況を見て、イザベルは打って出る。
状況は圧倒的有利だ。援軍もあと少しで来るだろう。
「こちらも頃合い、そろそろ攻勢にでましょう。星騎士達も我慢の限界にきてます」
「そうですね、姉様。やられたウララのお返しとばかりに、皆いきり立ってますから。それにしても光太郎殿の作戦が、見事に当たりました。良策には舌をまきます」
「才能もありますが、知謀をめぐらすのが好きなのでしょう。物を作り、物を動かしては、楽しんでるように見えます。新戦術や新戦法も、それからの派生ですね」
「どうせだったら、私達にも目をむけて欲しいんてすけどねー」
「最近、近くに寄ると露骨に離れようとしますから、完全に逃げてますね」
「多分、怖くなったんでしょうね。言い寄る女性が増えすぎましたから……」
迫り来る女の恐ろしさが、身に染みる今日この頃。
アンジェラの言うとおり、光太郎は軽い女性恐怖症になっていた。
「戦が終わったら、籠絡策を練りましょう。それで駄目なら……」
「もはや、強攻あるのみですね」
姉妹は同時に笑い、反撃の準備をする。




