鉄屑束
ムー王国にいたマゲイア軍の半数が、レムリアに移動を始めてから一時間後。
後方に大軍勢が、何処からともなく出現する。
その数二十万、ヒナが率いるメガラニカ軍だ。
この動きをマゲイア側は察知できず、大慌てする。
「どこから現れたー!? 観測班は何をやっとる!」
「軌道上空カメラから動きは見えず、地上レーダーにも反応はありませんでした」
「一体どういうことだ!? 空間転移でもしたと言うのか?」
メガラニカ軍は、転移での移動はしていない。
通常、開球体が現れるので、それを見逃すことはないのだ。
ハサンは疑問の答えを探すより、今はこの事態に対処すべきだった。
もっとも、挟み撃ちされた時点で遅いのだが。
ヒナの側にはルカがおり、イルカに変形したオルフェウスに乗っている。
近くにパシフィス軍はおらず、別の持ち場についていた。
ヒナをここまで送ってきたルカも、自軍の担当区域へと向かう。
「ヒナ、あとは任せたわよ」
「うん、ありがとなの。ルカの分もマゲイアは叩き潰すの。全軍突撃なの――――!」
「うおおおおお――――――――!」
メガラニカ軍はマゲイアの後方から襲いかかる。
マゲイア無人機が後ろをむき背を向けると、ムー王国軍は陣形を崩して攻めかかる。反撃だ!
数的には五分でも挟撃されて、マゲイアは浮き足立つ。
しかも、新たな兵器が登場する。
「シールド、ドロップ! アンビリカルケーブル、パージ!」
ケンタウルは重い盾を捨て、エネルギーケーブルを外す。
「鉄屑束、用意!」
伊知香の指示で、ケンタウルは鉄クズを固めた束を手に持った。
それは戦国時代にあった竹束に近い。
当時の用途は鉄砲玉を防ぐ盾だが、無人機の戦いにおいては無意味に見える。
弾の撃ち合いではないからだ。
ゴミの寄せ集めで、円形盾より脆く役に立ちそうもない。なにせ錆だらけ。
しかも、それ以外の武器を持とうとはしなかった。
「全軍突撃! メタル・ディヴァイン発進せよ!」
伊知香は構わず号令を下す。
先行するケンタウルの後を追って、塔の中から星騎士が次々と出撃する。
これにベスパとミノタウロスが反応し、迎撃に向かってくる。
ケンタウルは鉄屑束を盾代わりにして、突っ込む。
敵武器の長針と二本角が刺さり、鉄屑束は貫かれて壊れる――かと思いきや、そのまま針と角にくっついて、鉄屑束は取れなくなる!
鉄屑束の中には、強力接着剤が入っていたのだ。
ベスパとミノタウロスが、いくら振り回しても取れない。
攻撃手段を奪われた無人機に、星騎士の槍が容赦なく繰り出される。
「くらえ!」
もう一方的だった。メガラニカ軍も加わって、マゲイア機は破壊されるのみ。
身動きもままならず、反撃も出来ないから当然だ。
「名付けて、リサイクル作戦か? 光太郎」
「うん。前大戦では奴隷兵が犠牲になって、騎士槍を使えなくしたけど、こっちはゴミでお返しさせてもらおう。コストも手間もかかってない」
「なにせ、古戦場跡にあった廃品だからな」
光太郎は鉄屑束を作るのに、イザベルと各国に協力を頼んでいた。
「全国に散らばってる、兵器の残骸を回収しましょう。そのついでに遺品回収もして、慰霊碑を建てませんか? イザベルさん」
「ああ……光太郎さんには感謝の言葉もありません」
イザベルとしても、戦死者の骸を放置していたのには、気が引けていた。
次の戦の準備ばかり考え、心に余裕がなかったのは仕方が無い。
が、忙しいのを言い訳にして、供養から逃げていた面もある。
光太郎は弔う、きっかけを与えてくれたのだ。
やるとなれば、一気に事が運ぶ。
アヴァロン星騎士を総動員して、古戦場跡から片付け始めた。
無人機による不発弾処理から始まり、重力クレーンで残骸を掘り起こす。
あとは人海戦術、遺品と廃品を選別しながら回収する。
鉄屑束も星騎士達が自ら作る。
鉄屑を集めて固め、接着剤入りカプセルを中にしこむだけの、単純作業。
ただ重量が百キロを軽く越すので、やはり力持ちの星騎士達でなければやれない。
「この位の太さでいいわね?」
「それじゃ細すぎよ!」
「うわー接着剤、手にくっついたー!」
「早く専用液で洗え!」
慣れない作業も、ワイワイ騒ぎなら進んだ。
戦の役に立つ物となれば、皆本気で作る。
兵器製作は星騎士には新鮮で、楽しいものだった。
こうして各地の残骸が消えた。慰霊碑建立は戦争終結までおあずけ。
できあがった鉄屑束は効果を発揮し、戦闘を有利に導く。
マゲイア無人機は手も足もでない。鉄屑束から逃げ回る始末で、大混乱になる。
それでも一部の部隊が再集結し反撃を試みようとするが、ヒナとメガラニカ軍の最精鋭が襲いかかる。
「征くの――――!」
「姫様に続け――――――!」




