表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
第二次マゲイア大戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/432

最下位騎士

「エリス! 動いては駄目よ!」

「けど姉上! 助けないと!」

 アンジェラは、駆けつけようとしたエリスを制止する。

「推進剤と強化パーツは使い切ったでしょ。補給と機体点検が必要です。それとエリス、あなたも動きすぎです。少し、休みなさい」

「でも!」

「イザベル姉様が、手をうつでしょう。エリスだけがいくさをしてるわけじゃないのよ。信じて任せなさい」

「そうだぞエリス、我はすぐには動けん。焦ってもどうしようもない」

「……分かりました」

 エリスは暗い顔したまま、陣内へ向かう。

 自分の無力さが恨めしく、歯がゆかった。

「残敵なし! 遊撃部隊撤収!」

 アンジェラも、撤退命令をだして陣へと戻る。本当は、救援に向かいたくて仕方ない。

 その気持ちを我慢して、怒鳴り声を張り上げる。

「あの馬鹿! 動くなって言ったのに!」

 

   ◇


 飛び出した星騎士の名は、ウララ。

 星騎士の序列は最近まで最下位。今は十騎長だ。

 ウララの生い立ちは戦災孤児。とは言え悲壮感はなく、何事にも無頓着な性格だった。

 風来坊な生活の果てに、彼女は王族兵団の入団審査を受ける。一年ほど前の話だ。

 審査に経歴は問われず、だれでも受けることができる。回数制限もない。

 問題は三か月間、新兵訓練施設ブートキャンプでの、地獄の訓練を耐え抜くことだった。

 入団が許される合格者は一割にもみたず、大半が脱落していく。


「本気でやらなくてもいいや」

 もともと国に奉公するつもりはなく、高い俸給につられて受けてみただけであり、落ちたとしても気にもかけない。

 仮病・居眠り・誤魔化しと、要領よく訓練をウララはサボる。

 他の志願者が脱落していく中、ウララは訓練期間を乗り切った。

 お気楽さと生まれつきのタフさも幸いして、ウララは星騎士となる。


 こうして末席につらなり活躍……はせず、酒は飲むわ、門限は破るわ、定期訓練に遅刻するわ、で生活態度は散々だった。

 入団して間もなく、ウララは懲戒処分される。

 犯罪でも起こさない限り、星騎士は罷免されない。その代わり予備役に落とされる。

 その間、俸給が出ないのだがウララは生活には困らない。

 破天荒な生き様に興味を持たれ、友人や仲間ができ、みんなに助けられた。

 不真面目な奴がいてこそ、世の中は面白いのだ。

 品行方正な者ばかりでは話題すらなくて、つまらない。この時分、娯楽は少なかった。

 ただ、序列が高く真面目な星騎士達からは、嫌われていた。

「あの、穀潰ごくつぶし!」


 ウララは欠員が出るたびに星騎士に戻されるが、乱れた生活ぶりは直らない。

 予備役に落とされては這い上がり、エレベーター騎士と揶揄やゆされる。

 毎日をダラダラ過ごして一年が過ぎ、ウララの意識が変わる。

 エリスとイザベルの戦い、そして隕石迎撃で活躍したエリスの姿を見て、感動したのだ。

「何て格好いいんだ! これが姫様!」

 ウララはエリスに見とれた。美しさ、激しさ、強さに興奮する。

 華麗な動きに、魅せられたと言っていい。


「私も、ああなりたい」

 それはウララに限ったことではなく、誰もが憧れ抱いた感情だった。

 それから、必死に訓練に取り組むようになるが、星騎士志望者が殺到して最下位の地位も危うくなる。

 サボってきたつけは大きく新米達に抜かれそうになるが、星騎士の総数が増員されたおかげで、何とか最下位に留まることができた。

 その後も懸命に努力を続け、実力はあがっていく。

 これには馬鹿にしていた星騎士達も刺激され、ウララを見直す。

 ついに努力が認められて、ウララは十騎長に昇進した。

 しかし、女帝戦の武闘大会には選抜されず、悔しい思いをする。

 あの白熱した激戦を見せられて、闘技場に立ちたいと思わない騎士はいない。

「次こそは私が! そしてエリス様の側近アントラージュになるんだ!」

 隣に並んで一緒に戦いたい。名前を呼んで欲しい。

「ウララ……」

「姫様……」

 キラキラと輝くお姫様と手を合わせ、顔を寄せ合い、そして……眼を潤ませながら、ウララは妄想にひたる。

 光太郎とアンジェラが聞いたら、

「えー! 美化しすぎじゃなーい? 実態はがさつで、強引で、暴れん坊なだけだよー」

「光太郎殿のおっしゃる通り、腕はまだまだ未熟です」と言うだろう。


 エリスの側近になるのを夢見ながら、ウララは陣内にいた。

 地上迎撃戦の様子を戦況モニターで眺め、エリスの勇姿に溜息をつく。

「どうして私は、お側にいれないのだ……」

 実力不足なのは分かっていても、望みは捨てられない。

 一緒に迎撃に出た部隊はいい、活躍の場を与えられたのだから。

 残された星騎士達は不満に思う。

「私も手柄を立てたい!」という思いが強くなっていた。

 レムリア軍が優勢なので尚更だ。守っているだけでは、我慢できなくなる。

 ウララの忍耐は、限界に来ていた。

「戦いたい!」


 それは些細ささいなきっかけだった。

 ウララの目の前にあるケンタウルが機体異常を起こして、交換されることになった。

 無人機の何機かは、たまに動作不良を起こす。それでも少ない方だ。

 ほんのわずかな時間、陣に穴があき、遠くの敵影が見える。

 ウララは発作的に飛び出してしまった。つられて部下の星騎士達も追いかけてしまう。

 マゲイアはこれを見逃さず、百機の無人機が迎撃に動いた。

 もはや後の祭り、ウララ小隊は取り囲まれ、絶体絶命の危機におちいる。


 友軍の危機にレムリア陣内では、上申が相次ぎ、千騎長らがイザベルに直談判する。

 たとえ命令違反だとしても、見殺しには出来ない!

「助けにいかせてください!」

「自分だけでも救援に!」

「駄目です。全軍そのまま厳重待機」

 イザベルは、にべもない。

「お願いします!」

 星騎士達は頭を下げて頼み込む。イザベルとて見捨てるつもりはない。

 しかし、この段階で陣形を乱してしまっては、作戦そのものが崩壊する。

 それだけは何としても、避けねばならなかった。

「救援の必要はありません。すでに特殊無人機を向かわせました。総参謀……いや、光太郎さんの作った兵器を信じなさい」

「……分かりました」

「ですが、バックアップ部隊の編成は許可しましょう。いつでも出撃できるように準備しなさい。ただし、陣から出てはいけませんよ」

「はい!」

 これで陣内はひとまず収まる。イザベルも苦しかった。

(やれやれ、星騎士達を押さえておくのも、もう限界ですね)


 ウララ小隊は密集隊形を取り、何とか敵の猛攻撃に耐えていた。

 それも、長くは持ちそうもない。

 ウララは自分のうかつさを呪いながら、部下だけは守ろうと覚悟を決める。

「みんな、後方に血路を開いて逃げなさい! 一点突破です! 殿しんがりは私がやります」

「そんな、隊長!」

「いいから早く! もう持ちません!」

 部下達は命令に従い、後ろに集まった。騎士槍ナイトランスを重ね合わせ、スラスターを全開にした。

 一槍一丸いっそういちがんとなって敵に当たり、敵中突破を図る。

 

「後は追わせませんよ!」

 ウララは孤軍奮闘、獅子奮迅。必死の覚悟で無人機を蹴散らす。

 守護神フラワシが乗り移ったかのごとく、ウララは強かった。努力の成果だ。

 しかし、やはり人の身、疲れが見え始める。

「はぁ……はぁ……」

 そこに敵のミノタウロスが、真正面から突っ込んでくる!

「ふん!」

 気力を振り絞り、騎士槍で牛頭を突き刺すが抜けなくなる。

 マゲイア戦法だ。

 左右からベスパが、長針を突き立てて襲ってくる!

 ウララは騎士槍ナイトランスを手放して、つぶやいた。


「シールド・オン!」

 メタル・ディヴァインの両脇腹にある、小型の盾(スモールシールド)が上に跳ね上がった。

 そのままウララの両腕に装着され、円形の盾がベスパの攻撃を防ぐ。

 マゲイア戦法対策だ。それも一時いっとき助かっただけで、次の攻撃を躱す力はなかった。

「……ここまでね、ハル」

「さようなら、マスター」

 愛機が別れを告げると同時に、正面と真後ろから攻撃を受ける。

 ウララのメタル・ディヴァイン――「ハル」は砕け散った。

「すまない、ハル」

 空中に投げ出されたウララは、天使の羽(エンジェルウィング)を広げて飛ぶ。

 陣まで逃げようとするが、前方にはベスパ二機が先回りしていた。

 後ろからもミノタウロスが迫り、ウララは覚悟を決めて目を閉じる。

「さようなら、エリス様……!」

 衝撃はやってこず、爆音が前から聞こえウララは目を見開く。

 突風を起こして、ウララの脇を駆け抜ける機体がいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ