地上迎撃戦
「地上から、敵陣内部へ攻め込め!」
奴隷兵の監視者たるハサンは、地上から進軍を命じる。
上が駄目なら下からと、相も変わらず行き当たりばったりの作戦。
あまりにも短絡的すぎるので、敵味方全軍から溜息と失望を買うことになる。
「はあー、考える頭がないのか……」
「今さら、言うまでもないだろ」
「敵将の真似だけはしないように、気をつけよう」
一応、地上からの進攻はマゲイアにとっては、有利には見える。
建物に被害が及ぶので機雷は使えず、地雷も市街地には設置できなかった。
爆風効果が期待できない、理由もある。
なぜなら、マゲイア地上機は建物を乗り越えながら、進軍していたからだ。
スコーピオン――真っ赤な機械蠍が、地上を這いまわる。
大きさはメタル・ディヴァインの倍ほどもあった。
一万機以上がわさわさと動き回り、気持ちが悪い。
作戦目的は、エネルギーケーブルの切断。
成功すればケンタウルが持っているシールドは無力化され、マゲイア軍は突撃して陣へと攻め込める。
起死回生の大逆転は可能だろう。そう、上手くいけばの話だが……。
スコーピオン部隊は建物を障害物として利用し、上空からの攻撃を警戒しながら進む。
そのせいで、バラバラに動くしかなくなり、連携はとりにくくなる。
つまり、攻められたら各個撃破されるのだ。
「僕だったら、進軍ルートを幾つか確保してから、攻めるけどなー。でないと、やられるよ」
「レムリア軍が動かないものと、決めつけてるからだ。危険な状況を理解してない。いよいよ女王が動くぞ」
「エリス、無茶しないといいけど……」
とは言ったものの、光太郎はあきらめている。言って聞くなら苦労はない。
「まあ、アレがあるから大丈夫だろ」
作戦も隠し球も、まだまだある。
「やっと、出番ね!」
満を持して、ついにエリスが動き出す。イザベルが出陣許可を出した。
エリスが率いるのは、数千騎の星騎士達。
地上汎用型メタル・ディヴァインに乗った、地上打撃部隊だ。
士気はこれ以上ないくらい、高まっていた。
先行するのは無人機ケイロン。全方位から迫る敵を迎撃に出る。
「みんな――! いくわよ――!」
「おお――――――!」
「神機突撃!」
エリスの号令ともに、星騎士達が地上を駆ける。
風塵が舞い上がり、足音がアスファルトを通して、どこまでも響く。
地面を揺らしながら、スコーピオンに立ち向かっていく。
敵と遭遇して相対すると、スコーピオンは尾の針を伸ばして星騎士を襲う!
ガキン、と金属音がした。
針攻撃をケイロンが盾で防いだのだ。小型の円形盾は厚く、頑丈だ。
スコーピオンの鋏も寄せ付けない。
ケイロン三機が、盾役になっていた。敵の動きを封じ込めて、
「ヤ――――!」
星騎士達が騎士槍で、一斉に突いて仕留める。
ケイロン三機・前衛五騎・後衛五騎のフォーメーションで、敵一機にあたる。
十名一個小隊に、無人機が護衛についた形だ。これも光太郎の発案である。
前衛が攻撃してる間、後衛は周囲を警戒し、ピンチになれば助けに入る。
連携は上手くいき、スコーピオンは破壊され数を減らしていく。
「陣にこもっていると思えば、しゃしゃり出てきおってー、引っ込んでおればよいものを! 某に刃向かうな、糞どもめ――!」
敵が出てきても文句を言う。前にほざいた台詞は、都合よく忘れ去っていた。
ハサンは罵ることしかできない。仕方なく、無人機には連携を指示しているが、無線が届く前に破壊されている。十騎長が直接指示をだしてるレムリア軍に比べ、マゲイアの命令伝達は遅すぎた。
星騎士達はもの凄い早さで、スコーピオンを駆逐していく。
モニターから戦況を見ていたイザベルは興奮し、頬を赤らめ紅潮していた。
「素晴らしい! 素晴らしい! ほんとに凄い! 上手く行き過ぎて不安になります」
「ここまで光太郎殿の作戦が、上手くいくとは思いませんでした。『防御』という概念を軽んじてたようですね。武器を鍛え、技に磨きをかける事しか、頭にありませんでしたから」
「光太郎さんの根幹にあるのは、人に対する優しさと思いやり。それが作戦と支援兵器にこめられています。だからこそ成功したのでしょう」
「ええ、『人が傷つくのは見たくない、特に女性』と常に言ってます。私達の感覚では、傷つき倒れて死ぬのが、星騎士なんですけどね」
「戦争のないとこから来たからこそ、命の尊さを知るのかもしれません。恐らく私達は死に慣れすぎて、感覚が麻痺してるのでしょう。それは恐らくマゲイアも同じ……」
人の命を奪うという罪悪感が消えてしまえば、残虐非道なことも平気になる。
地獄絵が見慣れた光景になっては、救いようがない。
過去の武将達がやった無慈悲な行為も、当時の人間達にとっては「当たり前」のことだったのかもしれない。
戦争の時代と平和の時代では、人間の感覚は違っている。価値観も違う。
しかし、「殺して奪う、力こそ正義」が続くのでは、戦いが終わらない。
独裁者が支配しているマゲイアとの、和平の道は遠かった。
「そろそろ、次の作戦が始まりますね」
「本当に光太郎殿は、色々とやらかしてくれます。この計略は奴隷兵にも効くでしょう。心にダメージを与えて、精神を浸食しますから、ある意味恐ろしい。考えただけでゾクゾクしますわ!」
「光太郎さんには、惚れまくりですね。言葉を尽くしても、足りません」




