インターバル マゲイア軍
光太郎はイザベルに提案していた。
「戦線が膠着状態になったら、神経のすり減らしあいです。星騎士の半分は休むか、遊んでていいんじゃないですか?」
「そうですね。長期戦になれば精神的にまいりますから、休息は必要だと思います。一朝一夕には戦は終わらないでしょう。ただ、すぐに遊びを切り上げられるように、しないといけませんね」
「ええ、ゲームに熱中しすぎるのはまずいですからね」
こうして制限つきではあるが、娯楽自由許可を星騎士達は与えられた。
陣中で酒や博打に興じられるよりは、マシである。風紀というのはタダ取り締まれば、良いわけではない。戦場でのストレスを、軽減する事の方が重要なのだ。
星騎士達は遊んでいても、すぐに戦えるようになっていた。
テーブルには備え付けのモニターがあり、これで戦況を随時確認できる。
それとテーブルは分厚い盾として使えるようになっており、万が一無人機のシールドが破られたとしても、これで塞ぐことができる。
見ている奴隷兵達は、遊びを知らないので意味が分からない。食事だけは見て分かる。
ハサンは娯楽を知っており、苦々しく見ていた。戦闘の最中、これ見よがしに遊ばれたら、舐められてることが完全に分かる。
「マゲイアなんて屁でもない」と態度で示されたのと同じだ。
「うぎぎぎ!」
ハサンは悔しくて歯ぎしりする。
待機している、他の王国軍も食事と遊びにふけっていた。
被害がないので心に余裕もある。
大戦前からアナログゲームは流行になっており、星騎士全員がハマる。
なにしろ対戦相手にはことかかない。訓練の合間を縫って嗜んでいた。
ややルールが難しい、トレーディングカードゲームも流行だす。
「ドロー! 援軍のカードを引いた」
「それは!」
「このカードで、さらにデッキから二枚引ける。ドロー、またもや援軍のカードを引いた!」
「おいおい」
「あははははは! ずっと私のターン!」
「いや、終わりだ」
「なんで?」
「交替の時間だ」
「あ……」
調子こいてた星騎士は、カードを片付けて収容箱にいれる。
名残惜しそうに席を離れた。
「コラー! いつまでも遊んでるなー! さっさと持ち場につけ――!」
「すみませーん!」
「ほんとに、もうー!」
アンジェラは発破をかけ、金切り声を上げる。
前大戦を経験した者に言わせれば、新米騎士達はぬるすぎた。
地獄を味わったからこそ、本気で叱咤する。
「辛気くさい陣中よりはましだけど、みんな弛みすぎよ! あーイライラする……おや? ――えい!」
マゲイア偵察機が陣内まで潜りこんでいたので、アンジェラは腹立ち紛れに蹴飛ばした。
「そーれ!」
ボール偵察機は星騎士達に蹴られまくり、パス回しされて陣内を一周する。
最後は剣で真っ二つにされた。
偵察機の視点で見ていたハサンは、目を回していた。
「お、おのれレムリアンめ! なめくさりおってー、目に物みせてくれるわ!」
と、いきり立つが妙案は浮かばない。
マゲイアの奴隷兵達も食事をとっていた。ただ中身は雲泥の差がある。
戦闘糧食は保存性はいいが、味は悪い。
水筒はすでに空、予備水はあるが給水制限がかけられている。
食料も含め、敵からの強奪補給が基本であり、生活物資の手持ちは元々少ない。
奴隷兵が餓死したところで、上層部が気に病むことはないのだ。
空母の外で警戒任務にあたっている奴隷兵は、暑い日差しの中で汗をかいていた。
交替時間までトイレにもいけず、おむつで対応する。
艦内も快適ではない。
空調設備はあるものの、人が密集してては役に立たなかった。
待機所に大勢がひしめき合えば、汗と体臭は混じりあって異臭を放つ。
夏コミケ帰りの人達で混み合う、満員電車のように臭い。
悪臭は充満して、奴隷兵達の気力を奪っていった。
「何を食べているんだ? あれは美味いのか?」
そして偵察機からの映像は、奴隷兵達に衝撃を与えていた。
カルチャーショックだ。
食い物が違うことは、星騎士達の笑顔を見ればわかる。
「ゴクリ」
ご馳走を知らない奴隷兵達は、食べて見たいと思うようになる。
これはマゲイア軍としては、危険な兆候だった。
前大戦であれば、敵性情報は即遮断されたであろう。
戦争だけを教え、愚民化教育して反抗しないように服従させる。
しかし時代が変わると、肝心な教育が徹底されなくなってしまう。管理者の怠慢だ。
教本を丸投げし、奴隷兵が奴隷兵に教えるようになっては、まともな洗脳教育などできるはずもない。
こうして奴隷兵達は、現状に対する疑問と不満を持ち始める。
それに加えて、リーダーが監視の目をかいくぐり、少しずつ知識を与えていた。
反乱の芽は、育ちつつあった。




