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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
第二次マゲイア大戦

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インターバル レムリア軍

 誘導機雷に破壊され、突撃部隊は壊滅した。次々とマゲイア無人機は、数を減らしていくのみ。

「……あ……う……」

 ハサンは声を失い、がっかりして指揮シートに座り込む。放心状態におちいり、何一つ命令をしなくなる。

 最初の意気込みは消え失せ、打ちのめされたボクサーのようだった。

 参謀が撤退を具申して、辛うじてうなずいた。ようやく部隊は後退したが、時すでに遅し。

 投入された十二万の無人機が、たった数百機しか残らなかった。


 友軍の損耗率は四割を超して、残りの無人機は約六十万機。戦力差は三対一までに縮まってしまう。

 総数としては、まだアヴァロンを上回っている。ムー王国を包囲した別軍も残っていた。

 とはいえ劣勢には変わりない。レムリア軍に全く損害を与えておらず、打開策をうちだせなかった。

 攻撃だけが空回りし士気は下がる一方で、無人機を操作している奴隷兵達は、不信感を募らせる。

「馬鹿馬鹿しい、やってられるか!」

 やる気も戦意も、失いつつあった。


 レムリア軍は陣形を維持したまま、攻勢にでようとはしなかった。

 敵戦力はかなり減ったが、数の上ではまだまだ不利。イザベルは慎重に機会を待つ。

「作戦は進行中です。全軍、持ち場から離れないように」

 星騎士達に、くどいくらい訓示した。きついのにも理由がある。

 レムリア軍が優勢であれば、星騎士達も勢いづいてくる。

 開戦当初の緊張は過ぎ去り、敵を倒したくてウズウズし始めていた。

「手柄を立てたい!」と皆が思い始める。

 誰か一人でも猪突すれば、陣形がくずれかねない。あくまで守りに徹する作戦なのだ。

 それでイザベルとアンジェラは、逸る星騎士達を押さえにかかる。

 その間に、無人機による機雷の再敷設は行った。


 ここで戦局は、膠着こうちゃく状態になる。

 ムー王国を包囲している別軍は、ハサンが指揮せずに放っておいたおかげで損害は少ない。

 レムリアと同じように攻めていたら、マゲイア全軍の被害は甚大だっただろう。

 こちらは、対峙したままにされる。ムー側も動こうとはしなかった。

 ハサンは座り込んだまま、ブツブツ言い始めていた。

「……こんなわけがない……それがしの計画は完璧だ……何かの間違いだ」

 自閉症モードになり、幕僚達の声も届いていない。


 仕方がないので、参謀が直接指揮をる。上官が動かないのであれば、やるしかない。

 まあ、ハサンは司令官代理なので、元々命令する権利自体ないのだが。

 参謀は無理に攻めたりはしなかった。陣を全周包囲するには、もはや無人機が足りない。

 陣容が薄くなりすぎていた。そこでレムリア軍を警戒しながら、無人機部隊をゆっくりと後退させ、自陣を再編させる。

 半周包囲に切り替え、レムリアの陣から距離を取る。

 部隊を密集させたのは良い判断だった。ハサンよりマシな指示である。

 次に偵察用無人機を飛ばし、敵情を探ることにする。現状を少しでも打開するためだ。

 しかし、この件に関しては、後で賛否が分かれることになる。

 まさか偵察行動が、自軍に悪影響を及ぼすとは、参謀は思っても見なかった。


 大きさがサッカーボールほどの空中偵察機が、レムリア陣地に近づいていく。

 映像は鮮明でハッキリと分かる。盾の壁を一回りし、陣内が見通せる場所を見つけた。

 これも隙間を作って、わざと見せつけている。

 旗艦のモニターに映し出された光景は、ハサンを驚愕きょうがくさせた。

 ハサンは正気に戻り、星騎士達の行動を見て理解に苦しむ。

「こ、此奴こやつらは一体、戦闘中に何をやっておるのだ――!」

「食事は分かりますが……何かの儀式ですかな?」

 それは、奴隷兵は知らないことだった。


 ケンタウルのうしろで、星騎士達はメタル・ディヴァインに乗り、臨戦態勢なのは変わらない。

 ただ十万人の星騎士の内、半数の五万人が休憩していたのだ。

 話し声や笑い声が絶えず、お喋りがやかましい。星騎士達は後方でくつろいでいる。

 日除けパラソル付きのテーブルが、空中に幾つも浮かんでおり、星騎士達が集まっていた。

 自機のメタル・ディヴァインを椅子にして、昼食の真っ最中。

 雑談をしながらハンバーガーやピザなどの、ファーストフードを食べてドリンクを飲む。

 女子高生が買い食いしてるような光景だ。とても戦場とは思えない。

 

 食事を支えるのは炊事兵、王城内の厨房が戦場だった。

「次、アイスクリーム!」

「ポテトも急いでー!」

「ケーキを運んでー!」

 王城にいる全ての人達をまかなっており、一日に三十万食以上作っている。

 たくさんの無人機が助手として働き、料理人が仕上げる。

 兵団士気に直結するので、料理に手は抜けない。大事な大事な仕事だった。

 他にも直接戦闘はしない、兵科は多々ある。

 整備兵・通信兵・衛生兵なども、重要な兵種であるのに変わりはない。技術者達もだ。

 星騎士達を支える裏方部隊は、マゲイアを数・質ともに上回っていた。

 いくさは星騎士だけでは出来ない。

 それゆえに騎士団とは呼ばず、みんなが集まった兵団なのだ。


 作られた料理はサーブ無人機によって、次々と運ばれ星騎士の腹に収まる。

「美味い!」

 星騎士は肉体労働なので、食べる量は半端ではなく、食べるペースも速い。

 運ばれてきた料理を取って、食べ終えた皿を無人機に積む。これはセルフサービスだ。

 そのままにしておくと、テーブルが食器で埋まってしまうからだ。

 戦争だからと言って、食が細くなるような星騎士はいない。

 むしろ、戦死する前に食べておこう、という気になっていた。

 食った星騎士達は代わるわる、長方形の白い箱――スカイ・クローゼット(SC)に入っていく。

 これは何のことはない、空に浮かぶトイレユニットだ。


 トイレ機能の他に、シャワーも浴びることができた。

 中に入ると、マジックアームが左右から伸びて、騎士甲冑と下着を取り外してくれる。

 そして可変便座が、せり上がり臀部でんぶにフィットされる。

 用がすめば洗浄・乾燥が行われ、立ったままでも使用可能な全自動トイレだ。

 再び甲冑を装着すれば、星騎士達の気分もリフレッシュされる。

 SCの近くにはメタル・ディヴァイン専用の洗い場もある。

「あー! すっきりー!」

 

 過去の戦闘記録を見て光太郎が考えたのは、戦場での失禁や嘔吐に対処することだった。

 悪臭が全軍に広がれば士気もおち、敗北につながりかねない。

 前大戦はグロさの他に、糞尿まみれの戦いでもあった。

「……これは臭そう。気持ち悪くなりそうだ」

 そこでFL計画に最初に盛り込み、試験運用段階から評判は良い。

 まあ、細かい要望わがままも多いが。

「すぐにトイレに行ける」と思うだけでも、人は安心できるものだ。

 汚いまま戦死するのだけは、星騎士としては我慢ならない。

 女としても死に際は綺麗で、格好良くありたいと望むものだった。

 そして、食べ終わってからすることは……


「七!」

「ダウト!」

「ふっふふふ、ひっかかったなーそれは本物だ!」

「なんと――!」

 トランプ。


 パチッ!

「私は天宙神の一手を極める!」

「それは、自殺手だ!」

 囲碁。


「リーチ!」

「ふっ、カン!」

「なにっ!」

「さらにカン!」

「ばかな! ドラ十二の三槓子サンカンツだとー!」

「貴様はもしや――流しのおりょう!」

「ふっ、ツモ!」

「それ、四つ目の槓だから勝負は無効。はーい、親流れー」

「がーん!」

 麻雀。


 星騎士達はテーブルを囲み、ゲームで楽しんでいた。

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