開戦演説
そして、マゲイア軍の侵攻を知ったアヴァロン星では……
女帝戦は中断終了し、女王達は自国に戻る。
戦えなかったヒナにとって不満は残るが、それどころではない。
国の防衛準備に、急ぎ取りかからなければならなかった。
まずは各王国で戦旗が掲げられる。国旗とは違うアヴァロン星旗だ。
アヴァロン星と二つの衛星が描かれている。
星に住まうもの全ての象徴であり、星旗のもとに一丸となって集う。
それと並んで、弓矢・三つ又の銛・鉞・鶴嘴・天秤がデザインされた、五王国の旌旗もたなびく。
見れば誰もが勇気づけられ、士気は上がっていた。
戦うにあたり、輝夜による開戦演説がテレビ中継される。
開始時間になり、生放送が始まった。
アヴァロン星旗を背景にして、輝夜の姿が映る。
国中の街頭スクリーンは輝夜一色になり、テレビの前で全国民が固唾を飲んで見守っていた。
誰もが一言一句、聞き漏らすまいと耳を傾ける。
「アヴァロン星の皆さん、女帝の輝夜です」
まずは軽く挨拶をしてから、本題に入った。
「皆様ご存じの通り、マゲイアがまた攻めて参りました。前大戦から十五年、アヴァロンに再び危機が迫っています。マゲイアには慈悲もなく、我らを根こそぎ滅ぼそうとするでしょう。まさに、悪神の先兵です。ですが、善神の子たる我らは決して負けません! 我らには神の御加護があります! 前大戦で勝ったように、正義は必ず勝つのです!」
「そうだ!」
人々は輝夜に賛同し、燃え上がる。
「すでに戦の準備は完了し、あとはマゲイアに鉄槌を下すのみ。五王国の力は結集されアヴァロン大兵団となりました。たとえ敵が何億いようとも、恐るるに足りません。天宙神も御照覧あれ! 一つになった我らの力を、いまこそ発揮せん!」
「うおお――――――――!」
「マゲイアに神の裁きを!」
「侵略者を倒せ――――!」
歓声と怒号にアヴァロン星が震えた。
興奮の渦はしばらく収まらない。口々に女王を称え、マゲイアを罵る。
少し落ち着いた所で、輝夜は最後に一言。
「勝利を!」
放送は終わり、皆が動き出す。誰もが決意を新たにしていた。
輝夜の演説は、人々の心を打った。
しかし戦争は綺麗事ではすまない。輝夜は全国民に、扇動演説をしたことになる。
相手をおとしめ悪者に仕立て上げ、味方を鼓舞しなければならない。
不安を解消し、人々を勇気づけなければならない。
嘘も方便、輝夜は嫌な役目を果たしたと言える。
マゲイアは否応なく攻めてきており、早急に皆を団結させねばならなかった。
それに女王は前線に立つのだから、決して卑怯者ではない。
天辺に立つ苦労を知れば、戦争に駆り立てる行為でも責められる物ではなかった。
「やっぱり女帝は辛いよな。だから気休めでも、僕が輝夜さんを褒めてあげよう」と光太郎は思った。
気づかわれた輝夜は、「お風呂で泡踊りして、差し上げます」と言って喜ぶことになる。
それはさておき、アトランティス軍の一部は宇宙へと上がり、ヴィヴィアン衛星の守りを固める。
宇宙防衛は、輝夜の担当だ。
よってヴィヴィアン要塞の司令官も、アトランティスの星騎士から選ばれている。
地上においては、アヴァロン全土に避難命令が出されていた。
市民達は地下都市および、避難シェルターへと移動する。
僻地や離島に住む者達はAI車を使い、輸送船に乗って向かう。
航空船も空を飛び回り、人々を運ぶ。避難誘導は星騎士達が行い、混乱はない。
戦争慣れしているのもあるが、地下シェルターに絶対の自信があるからだった。
これまで地下まで攻め込まれた事はない。地震に動じない、日本人のようなものだ。
戦争のどさくさに、暴動やら略奪などは起きない。危急存亡の時には皆が手を取り合う。
「ありがとう!」
「頑張って!」
星騎士達にお礼と激励の言葉をかけながら、人々は避難していた。
女王と兵団に対する民の信頼は絶大だ。
「やってやる!」
「ああ!」
その期待に応えるべく、星騎士達は身を引き締める。
各首都においては、無人機と星騎士達の布陣が始まっていた。
マゲイアがどこの国を狙ってくるのか分からないので、決められた防衛作戦に従い、国ごとに防備を固める。
各国共に陣形は、ほぼ同じ。
無人機が首都を守るように、丸く取り囲んで上下に立ち並ぶ。
その内側に星騎士達が控え、メタル・ディヴァインに乗っていた。
俯瞰して見れば、かなりの高さがある二重の円筒陣だった。
光太郎が考え抜き、何度もシミュレーションを繰り返して、構築した防御陣形。
あらゆる攻めに、対抗できるようになっている。ただし、実戦で試すのは初めてだ。
光太郎の参謀としての真価が、問われようとしていた。
ムー王国の陣形は、少し勝手が違う。
地下から塔がせり上がって、そこが防衛拠点となっていた。
塔の周りを無人機が取り囲んでいるのは、変わらない。
星騎士達は塔の中で待機し、寒風から身を守る。
北国であるムー王国はやはり寒い。雪こそ降っていないが、外にいては体力を奪われる。
前陣から離れてる分は、射出装置によって補われる。
いつでもメタル・ディヴァインが緊急発進できて、即時対応が可能だ。
ムーで指揮をとっているのは伊知香。前線には立たず、後方から指示をする。
首都エルドラドに有香の姿はなく、輝夜もアクロポリスにはいなかった。
二人は別な場所へと移動していた。ある作戦に備えて……。
マゲイア艦隊は、アヴァロン軌道上まで接近していた。
ヴィヴィアン衛星から離れた所で、地上降下作戦が始まる。
これに対し、地上迎撃部隊が動く。各国の兵団から集められた統合戦隊であり、各地域に展開していた。
司令官は発破をかける。
「撃って、撃って、撃ちまくれ! 正確な狙いは不要! 弾を惜しむなー!」
「了解! ありったけ、撃ちまくります!」
「連打! 連打! 連打! 十六連射!」
まあ、一秒間のうちに発射ボタンをいくら叩いても、シューティングゲームのように撃てるわけではない。
ミサイル装填には時間がかかるので、あくまで気合いと気持ちの入れようだ。
地表・海上の至る所から、ロケットミサイルが炎光を放ち、噴煙を上げて飛び立っていく。
マゲイア艦隊を破壊せんと、おびただしい数が襲いかかる。
先頭にいる戦艦数隻が、ミサイル攻撃に耐える。迎撃ミサイルを放ち、レーザーで大半を撃ち落とす。
何発かは喰らうものの、装甲に貼り付けた岩盤と斥力場シールドで防いでいた。
ミサイル攻撃は、いまのところ効果がない。
だが、アヴァロン星に近づくほど攻撃は激しさを増し、ついに戦艦のシールドが破れた。
数隻の戦艦が、爆発し炎上する。
「やったか? ――ちっ!」
司令官は舌打ちする。
撃沈はしたものの、無人戦艦は捨て石である事に気づいたからだ。
戦艦の後方には敵の主力がいた。
「くっくくく、某の計算通り」
ハサンは、ほくそ笑む。
バラバラになり落下していく残骸に紛れて、主力の機動空母と降下艦は無傷で、大気圏突入に成功する。
突破後、マゲイア無人機が発進し空母の防備を固める。
ミサイル攻撃の効果が薄くなると、司令官は戦闘停止命令を出す。これ以上の攻撃は、地上にも被害を出す恐れがあった。
「撃ち方、止め! ミサイル発射は別命あるまで中止。作戦に従い、我らは索敵と情報収集任務に移行。諜報工作隊は、いつでも活動できるように待機!」
「了解!」
「あとは、女王様達の出番だな……」




