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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅱ

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女王対決 終盤

 推進剤が切れて、女王達は地上に着地する。天使の羽はパージされた。

 試合残り時間も十五分を切る。

 兵器や装備のテストもここで終了し、あとは力と技の勝負だ。

「さあ行きますよ、ルカ」

 輝夜が走り出す……だけではなかった。ルカの頭上を軽く飛び越し、倒立回転を繰り返す。

 間合いをとって、グルグルと回りだした。その動きで、輝夜が分身して見える。

 さらに動きが速くなり、輝夜の姿が消える。

 実在した忍者を超えた、くノ一超人。身体能力は常人の遙か上。

 王の力だけが女王の強さではなく、全身が凶器なのだ。


 ブオッ、とルカの横顔を暴風がかすめて、数本の髪が飛ぶ。

 鉤爪が頭部を襲ったので、ルカは軽く首をかしげてけたのだ。

 一瞬の出来事で、輝夜が何時いつ間合いを詰めたのか、分からなかった。

武技マテリアルアーツ――縮地ね。でも、あんただけが使えると思ったら大間違いよ!」

 ルカの姿も消える。ドーム内には剣戟の音だけが木霊する。

 常人には見えない戦いだ。時折、得物がぶつかり火花が散る。

「そこそこ速いの」

「そうだな、まだ本気じゃない」

「……え」

(ヒナちゃんは分かるけど、小玉も肉眼で見えてるんだ)

 光太郎はスマートグラスをかけて、何とか勝負を見ている。

 スマートグラスは、超ハイスピードカメラとリンクしていた。


「やっぱり、女王は伊達じゃないなー」

 力をこめた攻撃が、流れるような技になる。

 一撃一撃をお互いが紙一重で躱し、攻防は目まぐるしく変わる。

 一連の動きには美しさがあり、見応えもあった。

「ルカはアホなだけじゃないし、輝夜ちゃんもタダの変態じゃないの」

「……ははは」

 ヒナは痛いところをついて、光太郎は苦笑した。

 しばらく、ヒナは黙って見ていたのだが暴れ始めた。

 得物のまさかりを、地面に叩きつけ始める。


「うー! うー! 早く戦いたいの!」

 じっとしてるのに飽きた子供のようで、待ちきれなくなったのだ。

「ヒナちゃん、もう少し我慢だよ」

「うー、わかったなの」

 鉞は脇に置いたが、腕をグルグルまわしたり指を鳴らしたりして、落ち着きはなかった。

「おや?」

 ルカと輝夜の戦いに変化が生じていた。濛々もうもうと土煙が舞っている。

 土煙は段々と濃くなり、周辺に広がって何も見えなくなる。

 ルカが、足と棍を使い土を巻き上げていたのだ。


「武技――砂塵の舞!」

 ルカがパシフィスの砂浜で編み出した、新しい技だ。

 この技は姿を隠すだけではない。物や人が動けば、風と共に煙も動く。

 その土埃つちぼこりを見極めて肌で感じとり、相手の動きを読むことが出来る。 

 輝夜が足音を立てずに忍び寄ろうとしても、ルカには位置が分かっていた。

 顔も動かさず、真横に棍を突き出す。

「そこよ!」

「くっ! やるわね!」

 輝夜は咄嗟に身を引いたものの、棍が胴体にクリーンヒットした。

 ルカは土埃に身を隠したまま、攻めかかる。


 輝夜は防戦一方になる。ルカの影が見えても、棍の動きが見えないのだ。

 気づいた時には打たれている。攻めかかっても、確実に避けられた。

「でしたら!」

 輝夜は首に巻いていた、マフラーを外す。

 襲ってくる棍に目がけて投げつけ、マフラーを絡ませた。

 もう外れない。輝夜は綱引きに持ち込んで、少しずつ近づいていく。

 お互いの姿が見える位置までくると、

「えい!」

 ルカはいきなり棍を手放して、輝夜のバランスを崩そうと目論む。

 輝夜は後につんのめるかと思いきや、マフラーを同時に手放していた。

「や――――!」

「はあ――――!」

 二人は突進し、交差する!


      ◇


 エリスと有香の戦いも、佳境にさしかかっていた。


 エリスの武器は分離できる短槍ショートスピア

 イザベルと戦ったときよりも習熟しており、多才な攻撃を繰り出す。

 分離合体攻撃は鋭さを増していた。


 有香は双剣ベイリン

 これは有香自身で考えて、鍛冶師に頼んで作ってもらった。

 双剣はエリスの短槍に対抗すべく、作られている。

「一刀では無理。二本じゃないと、エリスには勝てない!」

 一緒に特訓したからこそ、相手の実力も推しはかれる。

 有香は騎士槍以上に、双剣の鍛錬を積んだ。

 その甲斐あって、攻撃には目を見張るものがある。

 エリスと互角以上の打ち合いをしていた。

 突いていたかと思えば逆手に持ち替えて、横に払うように斬りかかる。

 短槍が一本になった時には片方の剣で受けて、もう片方で攻める。

 エリスは友の成長に舌を巻く。


「強いな、有香」

「そうは言っても、まだ余裕なんでしょ? エリス。私の攻撃は一つも当たってませんよ」

「そうだな、防御に徹してたからな。じゃー少し試させてもらうぞ!」

「これからが本番ね!」

 エリスは短槍を二本にして、両手で構える。有香に近づいて、右パンチを繰り出した。

 短槍を突きだしたのではなく、握ったままでグー状態。

 しかもパンチは有香に届いておらず、半歩ほど足りない。

(フェイント? 撹乱かくらん戦法?)

 警戒する有香の耳に、風を切るような音が聞こえた。

 その瞬間、エリスの姿がぶれる。いつの間にか、左の槍が目の前に迫っていた。

「うっ!」

 有香は左剣で辛うじて防ぐ。左槍の動きは全く見えなかった。

 今度は左拳が近づくと、また扇風機が回るような音がする。

 直ぐさま有香は後ろに飛び退き、エリスから離れた。

 距離を取って見て、仕掛けを理解する。


「ああ……マーチングバンド」

 エリスはバトントワラーのように、短槍を回していたのだ。

 クルクルと片手で器用に、高速回転させている。女王だからこそ出来る芸当だ。

 回る短槍で、見えにくくなる壁を作られたのと同じだ。

「陸奥学園でバトントワリングを見たのを思いだして、武技にしてみた。技名は何にしようかな? そうだ……リングスピンにしよう!」

「くっ!」

 この幻惑戦法は、かなり有効と言える。

 目くらましをされては、エリスの動きは見えず、短槍もどこからくるか分からない。

 相手の目を見て、軌道を予測することも無理。

 しかも、エリスは回していた短槍を止めて、そのまま突いてきたりもする。

 有香は双剣を振りっぱなしにして、必死で防いでいた。


「エリス、やるなー!」

「ヒナだったら、力まかせに叩きつけるの!」

「そうだね、短槍の回転そのものを止めてしまえばいい。けど、エリスは上手く間合いを取ってるし、手元に引きつけて回したりして厄介だ」

「有香ちゃんの目は、まだ死んでないの」

「うん、何か手があるんだろう。わくわく」

 光太郎は二人の戦いに引き込まれていた。


(……やっぱりエリスは強いわ。幼い頃から戦闘訓練をしてきて、強い先生にも恵まれてますからね。付け焼き刃の私とは、比較になりません。でも、それを言い訳にはしませんわ!)

 女王達を才能別に見れば、輝夜は天才型、エリス・ルカ・ヒナは本能型だ。

 有香は努力型の秀才だ。

 本能型は余計なことを考えない分、体が勝手に動いて速い。ただし大雑把である。

 有香は考えすぎる所があり、どうしても初動が遅れてしまう。

 その代わり、動きは正確であり無駄な動きはない。

 短期戦では不利でも、長期戦になって隙が出れば有香が有利だ。

 何より訓練時間は誰よりも多く、真面目で負けず嫌い。

 上達速度は異常なほど早かった。いずれは努力で輝夜を上回るだろう。


 目を見開き、有香が仕掛ける。

 思い切って、走り出したのだ。いきなり後ろを向いて逃げた。

(不利ならひとまず逃げる。光太郎さんは正しい)


「あら……ははは」

 エリスは呆気にとられる。まさか逃げるとは思ってもみない。

 ただ、短槍を回しながら走れるわけもなく、武技リングスピンは使えなくなる。

 あくまで接近戦用の技なのだ。

 追いかけようとした矢先に、有香は振り向いてエリスに突進する。反撃だ!


「武技――三刀襲さんとうしゅう!」

 有香は左剣をエリスの真上に放った。そして、右剣を突きだしてくる。

 真上と正面からの同時攻撃だ。片方を避ければ、もう片方が襲ってくる。

「やるわね、有香!」

 エリスは左の短槍を、落ちてくる剣に投げつけた。

 ぶつかり合った剣と槍は、音を立てて地面に落ちる。お互いに武器は一本。

 しかし、有香は背中から投擲武器を取り出し、エリスに投げつけた。

 それをエリスは紙一重でかわし、有香に迫る。勝負が決まる! 

「おおっ!」

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