女王対決 中盤
「こらー! そこー! あんましくっつくなー!」
「戦いに集中しろよエリス。データが取れん!」
「そうなの、勝負の最中に離れるなんて、有香ちゃんに失礼なの!」
二人がかりで文句を言われ、エリスはタジタジとなる。
非はエリスにあり、何も言い返せなかった。
ヒナはわざと光太郎の腕に抱きついて、あざ笑う。
見せつけられ、頭に血は上るがどうしようもない。
「うぐぐぐ……」
すごすごと引き下がり、有香の所へ戻った。
「すまん有香、待たせたな」
「エリスの気持ちは私も同じ。すぐ側でイチャつかれたら、腹も立ちます。おもいっきり、ナイトランスを投げつけようかと思ったわ!」
「そ、そうか」
(意外と恐いな、有香は……)
女王の力でやられたら、非殺傷武器とはいえシールドが保つかは怪しい。
ヒナが防ぐにしても、かなり危険な行為と言える。
「仕切り直しといきましょう。遠慮は無用よ」
「ああ、では本気でいくぞー!」
二人とも気を取り直して、攻防がくり広げられる。
小細工はなく、正正堂堂の突き合いだ。
有香は体の固さがとれ、動きが良くなっていた。
勝負が中断したことにより気持ちが落ち着き、エリスと互角に張り合っていた。
「陸奥市で一緒に特訓した時より、かなり強くなってるな。ディヴァイナーの勘も鋭い」
「私のライバルですからね」
エクリプスによる有香の評価は高かった。エリスは友を誇る。
二人は騎士槍を体を伸ばして突き出す、
それを見切って半身になって避ける、の単調な攻撃を繰り返していた。
ある装置の動作確認をしながらの攻撃だ。
本来であれば、騎乗すると上半身は動かしづらく半身にはなりづらい。
ロボットや、イザベルのように体が柔らかければ話は別だ。
しかし二人は、軽々と半身になっている。
「やれやれ、ようやくデータが取れる」
「装置に問題はない。ただ耐久性が不安だ」
「うん、思った以上に腰の動きが激しい」
「あんまり、見るな!」
小玉は怒鳴り、不機嫌になる。光太郎が見てる所が、気にくわないのだ。
支援装置――捻転鞍
これは、ろくろのように回転する鞍、と言った方がわかりやすい。
騎乗者の腰の捻りに連動し、鞍が動くのだ。
ランスを突き出す際には、回転力も加わって威力が増し、回避時には半身になりやすい。
上半身を激しく動かす星騎士達にとって、有り難い装置になる。
ただ、個人個人の動きに合わせる必要があるので、全機換装には至っていない。
上級騎士達のメタル・ディヴァインを優先に、換装作業が進んでいた。
これも光太郎が発案したものだが、開発は別なことで難航した。
毎日、女達から非難されたからだ。
理由は単純。
参考用に録画された女性星騎士の、腰と尻の動きを一日中見ていようものなら……
「助平!」
「変態!」
「……光太郎さんエッチですねー」
「光太郎殿、どうせなら生で見ませんか? 私の後に乗って下さい!」
と女達から罵られ、からかわれ、研究開発中のジト目は辛かった。
(恩着せがましく言いたくないけど、作ってやってるのに、この扱いは理不尽だー!)
女は理屈より感情が先に立つ、心で泣いて光太郎は捻転鞍を完成させる。
「ふっ、苦労の甲斐があったぜ……」
光太郎は遠い目をした。
◇
メタル・ディヴァインでの騎乗戦闘は、終わりに近づいていた。
見た目は激しい攻防でも、女王達にとってはウォーミングアップでしかない。
機体の特殊機能は使用禁止だったので、少し不満は残る。
頃合いを見計らい、全員が間合いを取った。
「時間だな」
ドーム内にブザーが鳴る。
三十分が経過したので、女王達はメタル・ディヴァインから離れた。
地面に降りるかと思いきや、空中で一対一の白兵戦が始まる。
オリハルコン製の甲冑をつけていれば、通常はゆっくり下に落ちるだけ。
女王達は飛行装置を背につけて、戦っていた。
天使の羽――白い翼を生やし、スラスターで飛び回れる。
前大戦時、メタル・ディヴァインから落下した星騎士は、何も出来ずに殺された。
落下傘で降下中に、襲われたのに等しい。
そこで緊急離脱用に天使の羽は作られた。小型なので推進剤は少なく、稼働時間は短い。
これも、装備テストの一貫だ。
接近戦になり、女王達は近接戦闘用の武器に変える。
ルカは棍。握って持つ場所を選ばない分、扱いやすい武器だ。
突くことも、叩きつけることも出来る。
輝夜は両手に鉤爪をつけていた。三本爪の忍者のようだ。
防御は堅く攻めも速い。体と一体となってる分、動きはスムーズだ。
ルカは棍を振り回して攻め、輝夜は受けてから反撃する。
両手で突きまくり、連続でひっかく。
息をつく暇もない攻防を、二人は繰り広げる。
輝夜の猛突進を、ルカは連続後方宙返りで逃げた。
逃げる際に棍を構えたままにしたので、棍も一緒に縦回転する。
不用意に追いかけてきたら、足か棍が叩きつけられる寸法だ。
これで輝夜は突進を止められ、間合いを離す。
ルカは結構頭を使っており、輝夜は素直に感心する。
「ほんと、昔のルカからは想像もつかない攻撃ね」
「乙女三日会わざれば、というやつよー!」
「いや、諺違うだろ……まあ、いい攻めではあるな」
「まあまあなのー!」
遠くで見ていた光太郎は、突っ込みを入れていた。
ルカは反撃に出た。
今度は横回転を始めて、独楽のように回り始める。
光太郎も有香に使った戦法だ。
「どりゃ――――!」
目が回りそうになりながら、勢いよくルカは攻めかかる。
流石に輝夜は正面から相手にはしない。下手に手は出さず、横に回りこもうとした。
「そこだー!」
ルカは強引にスラスターの向きを変え、縦回転に切り替えて攻める。
輝夜は上からの攻撃に備えて、上段をガードする。
ところが、空中で真横になったルカは体の回転を止めて、下段から棍を跳ね上げた。
これで輝夜の鉤爪が上に大きく弾かれてしまう。胴体がガラ空きになった。
「喰らえ――――!」
ルカは素早く態勢を整え、胴を狙って回し蹴りを繰り出す!
完全に決まったはず――しかし、手応えはなく蹴りは空振りした。
「うそっ!」
目の前に輝夜の顔と頭はある。しかし、胴体と下半身が見えなくなっていた。
輝夜は咄嗟に逆海老反りをして、蹴りを躱したのだ。
なんと、踵が肩につくほど体が曲がっている。
人間離れした体の柔らかさで、空中だと不気味に見える。
輝夜の身体能力は、女王達の中でも頭一つ抜きん出ていた。
「おほほほほほほ! おしかったわね、ルカ」
「おのれー、変態妖怪めー!」
攻撃が当たらず、ルカは悔しがった。




