敗者復活戦
女帝戦、二日目。
場所はオルワンガル内の闘技場。
武舞台の上に、五百人の星騎士達が集まっていた。
武闘大会の団体戦と個人戦が始まる前に、敗者復活戦が行われる。
代表からは漏れた星騎士や予備役から、無作為に選ばれていた。
棄権を申し出る者はいない。勝てば個人戦に出場できるからだ。
「負けない!」
お互い闘志を剥き出しにしてにらみ合う。星騎士達は胸に白い薔薇をつけていた。
薔薇を奪われるか、気絶すれば退場となる。全員武器無しの格闘戦だ。
審判長のアンジェラが、開始の合図を告げようとしていた。
ちなみに、アンジェラとイザベルは別格扱いで、試合出場は止められていた。
イザベルは引き下がったが、食い下がったアンジェラに輝夜は言った。
「新米騎士ばかりで、お二人の相手になる星騎士はどこにもおりません。私くらいですよ」
「うう……」
事実を指摘されては、返す言葉がない。
仮に参加したとしても新人苛めにしかならず、却ってストレスが溜まるだろう。
「私TUEEE――――!」と格下相手に勝ち誇るつもりもなく、アンジェラは諦めるしかなかった。
その代わり、星騎士の指導を含めた審判長を頼まれ引き受けた。
輝夜なりの気遣いである。
武闘大会はアヴァロン全土に生中継されており、全国民がテレビに釘付けになっていた。
「親の死に目でもないかぎり、絶対に動かない!」
こうしたイベント自体がほとんど無かったので、夢中になるのも無理からぬ。
視聴率は九十九パーセント、仕事をしてるのは無人機だけとなる。
熱狂と興奮が渦巻く中、敗者復活戦が始まった。
「始め!」
「ワ――――!」
掛け声と歓声が入り交じり、誰が叫んでいるか分からなくなる。
手始めは、同じ国の者同士が手を組んで、他国の星騎士に襲いかかる。
「キャー!」
「よこせ!」
「薔薇、取ったー!」
殴る、蹴る、体当たりに投げ飛ばしと、何でもありのバトルロイヤル。
レオタード姿の女達がガチ喧嘩をしていた。正に星騎士達の大乱闘。
壁に吹っ飛ばされ、地面を転がり、空中に投げられる。
ノックアウトされた星騎士達は、担架で運ばれていき退場者が続出する。
「おらー! いてこませー!」
「そこだー!」
「ぶっとばせー」
観客達は鳴り物を鳴らして、大声援を送る。拳をにぎりしめて熱が入っていた。
戦っている者も、見ている者も興奮に酔いしれていた。
光太郎は、女王達と貴賓席で観戦中。
「人は度し難いですね、平和を求めつつ争いを好む。僕もかなり興奮してます」
「私も体の高ぶりが押さえられません」
「人には闘争本能がありますから、それで快楽を感じるのは仕方ありません。ただ次は、怪我人を減らす工夫をしないといけませんね」
「ですね」
有香と輝夜は落ち着いて見ていたが、残る三人はかなりエキサイトしていた。
自国の星騎士がやられるたびに、不機嫌ボルテージが上がる
「あーもう! 何やってんのよ! イライラするわね!」
「それは、こっちの台詞なの!」
「何でそこで引くかなー? 死ぬ気で突っ込め――!」
苛立って、机を叩き地団駄を踏む。
軍の指揮よりも、体を動かす方が性に合う。自分自身が参加できないのがもどかしい。
三人とも乱入しかねず、光太郎は気が気ではなかった。
数が減り、闘技場の武舞台に立っている者は六人。
復活できるのは五人。
「あと一人……」
ここまでくると、疲れきって息をきらし、立っているのがやっとの状態。
観客達も声を嗄らして、静まり返っている。固唾を飲んで見守るのみ。
焦ったのか、一人が気力を振り絞って動き出した。
それ以外の全員が潰しにかかる。
「うおおお――――――――!」
「うわぁ――!」
その者は襲ってくる一人を強引に捕まえると、そのまま両足首をつかんで脇に抱え、回転を始める。
プロレス技の、ジャイアントスイングだ。
振り回している人を他の星騎士達にぶつけて、何と全員倒してしまった。
恐るべきスタミナと強さである。
アンジェラが試合終了を告げて、勝者の手をあげた。
「復活戦勝者、アトランティスの楓!」
「うおおおぉ――――――――!」
大歓声と拍手がわき起こる。敗れた星騎士達にも惜しみない拍手が送られた。
楓は手を振り観客に応え、輝夜に一礼する。
ちらりと光太郎を見てから、武舞台を後にした。
「楓さん、凄いなー! あんなに強いとは思わなかった」
「予備役なので必死なのでしょう。側近には復帰させませんが、星騎士に戻してやっても良いかもしれません」
「是非、お願いします。あの力を生かせないのは勿体ない」
「個人戦の内容次第で、考慮いたします」
まだ輝夜は、楓を許すつもりはなかった。
引き続き、武闘大会団体戦と個人戦が始まる。闘技場内を四分割して行われた。
団体戦は五人一組で、各国総当たりの星取り戦形式。
個人戦は各国から三名の代表を出してのトーナメント。
ただし出場する星騎士は、個人戦と団体戦のどちらか一方のみ参加可能で、重複出場は禁止された。
これは選抜メンバーを増やして機会を与えるのと、試合時間を短縮する目的があった。
マゲイアの動きに備えるため、女帝戦の期間は短くわずか五日しかない。
「仕方ないよね。星騎士さん達には次の大会まで、我慢してもらおう」
今回の女帝戦は全てにおいて予行演習なのだ。問題点を洗い出し次回に役立たせる。
ゆえに代表選抜された星騎士達の責任は重かった。
リーダーが中心となり戦力配分を考え、作戦を立案する。女王は一切口出ししない。
この日のために星騎士達は猛特訓を重ねてきた。各試合は激戦となり、夜まで勝負がもつれ込む。
急遽、試合時間を半分にし、判定で勝負を決めるしかなくなる。
判定のほとんどは引き分けだ。
これでようやく、本日分の試合を終わらせた。前半の団体戦の結果は以下の通り。
一位、メガラニカ 二位、レムリア 三位、アトランティス。
四位、パシフィス 五位、ムーだった。
個人戦に力を入れてる国もあるので、順位にさほど意味はない。
試合内容も三勝二敗の結果が多く、わずかな差しかなかった。
とは言え、最下位のムー王国にしてみれば屈辱だ。
個人戦の代表もすでに敗退しており、憤まんやるかたない。
前大戦で兵力が一番衰えたとしても、このままでは終われない。
「有香様に恥をかかせるな! 我らの底力を見せてやれ!」
「オ――――!」
ムー王国の星騎士達は夜遅くまで作戦会議を開き、巻き返しを狙っていた。




