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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅱ

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乱入!

 そこは元、広い公園だった。

 過去形で言わざるを得ないのは、戦争で荒れ果てて、使えなくなったからだ。

 現在は訓練場と兵器実験場になり、メタル・ディヴァインの動作試験に使われている。

 四方には何もないので、事故が起きたとしても被害はでない。

 光太郎と有香は地上のそこにいた。近くには技術者ら十数人ほどがいる。

 寒風が吹きすさぶも、野外暖房装置のおかげで寒くはない。

 

 光太郎は、有香のメタル・ディヴァインから挨拶される。

「初めまして、ハイペリオンと申します。私の設計者(ファーザー)は文吾様です」

「おお! 忙しいって言ってたの、嘘じゃなかったんだ。失礼、こんにちは」

(あれ? この声、どこかで聞いたような……)


 たかの頭部に翼、ライオンの体。ハイペリオンのモチーフはグリフォンだ。

 大型で力強さを感じさせる。スラスターの数も通常機よりも多い。

 有香は水色を基調とした、光星甲冑シャイニング・アーマーを着ていた。

 意匠が凝らされ、美しさと防御を兼ね備えている。技術職人による心をこめた手作りだ。

 武器は訓練ということもあり、騎士槍ではなく木製槍を使う。

 木槍に合成ナノ樹脂が塗られており、硬くて折れる心配はない。


 そして有香の隣にはディヴァイナーがいた。

 大柄の女性で、レオタードのような黒いスーツを着ている。

 スーツは体に密着し、身体のラインが浮き出ている。いわゆる、ぴっちりスーツだ。

 やや筋肉質だがスタイルはよく、モデルのような見事な体型が露わになっていた。

「お嬢様、本当に私でよろしいのですか? 他の優秀な人がされた方が……」

「今更ですよ早紀さん。文吾さんに設計をお願いした時に、早紀さんの体に合わせて、ハイペリオンは作られました。AIも樹里さんの思考パターンが元になってます。もう早紀さん以外に、ディヴァイナーは務まりませんよ。それとも乗るのは、お嫌ですか?」

「とんでもございません! 私は自信がなく、失敗してお嬢様に御迷惑をおかけするのでは、と心配してしまうのです」

「早紀さんずっと努力してきたじゃないですか? 必死の訓練を、毎日かかさず続けていたのは知ってます。それを無碍むげにはしたくありません。私は早紀さんを信頼してます」

「お嬢様……」

 早紀の目から涙がこぼれる。光太郎は見ていて思った。

(やれやれ、十分必要とされてんじゃん。愚痴は聞くだけ無駄だった。ハイペリオンの声は樹里さんか、納得した)

 

 早紀は涙を手で払い、ハイペリオンに乗りこむ。

 身長が高いので車のようには座れず、操縦席はない。

 乗ると言うよりは、スーツの上に着るような形だ。

「それでは、光太郎さん。ウォーミングアップと駆動テストをしますので、少々お待ち下さい」

「ええ、昨日の打ち合わせ通りに、僕もケイロン改に慣れておきます」

「では、準備が完了しましたらお呼びします。くどいようですが、手加減抜きでお願いします。我が儘ばかり言ってすみせん」

「分かりました。本気で攻撃します」

(……すみません有香さん。本気を出しますが、おちょくることになると思います)

 光太郎は心で謝りながら歩き出す。

 技術者に先導されて、ぽつんと置いてある大型筐体の前に来た。横にある扉を技術者が開ける。

「こちらです」

「うわー!」

 中には操縦席と操作パネル、そして操縦桿があった。筐体は遠隔操縦室だ。

 モニタールームにもなっており、目の前には無人機のケイロン改が見える。

 機械馬に人型ロボットが乗っていた。

 一通りの説明を受けた後、ゴーグル型のHMDを渡される。

「これでケイロン改の視点で見れます。あと攻撃は、手動と自動の切りかえが可能です」

「ありがとうございます。後はやってみます」


 ゴーグルを受け取り、光太郎は操縦を始めた。

 視点の切りかえに多少戸惑ったが、すぐに慣れて槍を振り回しながら走らせる。

「これは面白い! 星騎士になったような気分だ」

 VRゲーム感覚で、ふと上を見上げると、飛んでいる有香がいた。

「へー、部分可変式のメタル・ディヴァインなんだ。やるな、おっさん」

 ハイペリオンは翼をだして鷹になっていた。

 上半身は変えずに、下半身だけを変形させて空戦力を上げる。

 利点として複雑な機構にならずにすみ、装甲も維持できた。

 いいとこ取り設計の、空陸ハイブリッド型と言える。


 光太郎は技術屋として対抗心を燃やす。師を超えようとする弟子だった。

(僕の新エクリプスも負けてないぞ!)

 調整を終えて、二人は離れて向き合った。いよいよ、特訓が始まる。

「お願いします!」

 一礼して有香は槍を構える。

 光太郎は一見して、有香の状態が分かった。

「……有香さんガチガチじゃん。じゃーまずは」

 ケイロンは駆けださずに、ゆっくりと前に歩き出した。

 馬術で言えば常歩しながら、木槍ランスを肩に担いで構えない。

 攻撃する意志が見えないまま、有香の前にきて足踏み(ピアッフェ)を始める。

 有香も早紀も、どう対処すべきか迷ったまま。

「えっ? えっ?」


 光太郎は足踏みを止めて、ランスをゆっくりと振り下ろした。

 槍の穂先を有香のヘルムに、コツンと軽く当てた。

 その後、穂先を引いて素早く横に動かして見せた。喉元を掻き切るような動作だ。

 光太郎はケイロンのスピーカーから言った。

「緊張のしすぎですよ、今のが当たっていたら死んでます。戦いでやることは見敵必墜。あれこれ考える前に、目の前の敵を倒すことです」

「す、すみません!」

「では、仕切り直しといきましょう」

 再度離れて、今度はお互いに攻め始める。

 光太郎は自動操縦にして、有香の動きをしばらく観察していた。

(突きも速いし、狙いも正確だ。これなら遅れを取ることはないな。けど、型どおりだから見切られると、不覚をとるかもしれない)


 光太郎はケイロンを回避に専念させる。

 有香の突きを、ケイロンは腰だけを九〇度に回して、半身になって躱す。

 人型ロボットならではの動きだ。

 それに加えて、機械馬の方は左右にステップするような、動きをとった。

 有香の槍は当たらない。意地になり、槍の速さを上げて連続で繰り出すも、躱される。

 疲れが見え始めたとこで、ケイロンは一歩踏み込む。

 慌てて突きだした槍を左脇腹に抱えておさえこみ、ケイロンの槍は有香の胴の前で寸止めされていた。

「今のは早紀さんの仕事ですよ。有香さんの息が切れる前に、下がらなくちゃ駄目です! 後、有香さんもがむしゃらに攻めすぎです。引くタイミングを掴んでください」

「う! すまん。分かった!」

「はい!」

「どんどん行きますよ!」


 光太郎はケイロンを上昇させる。高さは数メートルほどだ。

 無人機はもっと高く飛べるが、わざと低くして上空からの攻撃を誘う。

「くっ! やられっぱなしじゃないぞー」

 早紀はハイペリオンの性能を生かし、急上昇してからの急降下突撃を行う。

 斜め上からケイロンを襲い、人型に向かってまっしぐら!

 ところが、馬上から人型ロボットが消えている。

「えっ!」

 勢いをつけすぎ、しかも当たらなかったのでケイロンを飛び越してしまう。

 光太郎はロボットを横に倒して、馬の横腹に移動させていたのだ。馬の曲乗りだ。

 直ぐさま反転して後から追いつき、ハイペリオンの尻を槍で突いた。

「ブスッ!」

「あうっ!」

 容赦ないしごきは、まだ続く。


「壊れた人形戦法!」

 今度は槍を前に出したまま、上半身だけをグルグル回す。

 さっきは九〇度、そして今の腰の動きは三六〇度回転だ。しかも速い。

「わっ! わっ! わっ!」

 有香も早紀も逃げ惑う。

「チェンジ!」

 更に槍を両手で逆手に持ち、上段から突き立てるような動きに変えた。

 上半身が前に倒れては、反り返るという動作を繰り返す。

 〇度から一八〇度に腰が動き、玩具おもちゃの水飲み鳥のようだった。

 ロボットは人と違って疲れを知らないので、いつまでも攻撃は止まない。

 対処法を知らなければ、かなりたちが悪い戦法だ。


 有香は逃げるだけで精一杯、ケイロンに追い回されていた。

(この動きは隙がないように見えるけど、単調だからカウンターは狙えるはずだ。それと、回り込んで機械馬の足を潰せば、楽勝なんだけどなー。うーん、意地悪しすぎたかなー?)

 光太郎が罪悪感を抱いていると、操縦室のドアが突然開かれた。

 ゴーグルを外して見ると、怒り顔の十郎が文句を言い始める。

 娘がいじめられてるを見てキレてしまい、たまらずに乱入してきたのだ。

 

「お前なー、少しは空気読めよな! さっきの主従愛を見せられて何とも思わんのか? ああん! 手加減してやるのが普通だろ! この人面獣心野郎!」

「えーと、あのー……」

「出ろ! 叩きのめし――ててて、いてててて!」

「あー……なー……た――」

 暗い冥府の底から響くような声が、後からした。

 伊知香が十郎の顔面を片手で掴んで、締め上げる。アイアン・クローだ。

 どこで手に入れたのか、女子プロレス用のリングコスチュームを着ている。

「せっかく有香に稽古をつけてくださってるのに、邪魔をしてどうするんですか!? お父さん!」

「ふごごごごご! ギブ、ギブ、あ――ぷっ!」

「ダーメ、許しません! 少しは反省なさい!」

 伊知香は大技を決めまくる。

 コブラツイスト、卍固めと続き、インディアン・デスロックからの弓矢固め(ボー・アンド・アロー)、とどめはロメロ・スペシャルだ!


 プロレス技のオンパレード、九分五十九秒――十郎はマットに沈んだ。

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