表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅱ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/432

ゲーセンデート

「うう……それも勘弁してください」

(ルカとの戦いで、もう懲り懲りだ。女王と戦うなんて二度とやりたくない!)

「すみません、言い方が悪かったですね。私の戦闘訓練に付き合ってほしいのです」

「あのー、他にお相手がいないのですか?」

「ムー王国の星騎士達は、私に対して遠慮がちになって訓練になりません。それと、前大戦でほとんどが落命し、わずかに残ったベテランも引退しました。指導コーチできるのは母だけですが、体の問題があるので口頭のみで、教えてもらっています。身をもって教えてくれる人がいないのです」

(そう言えば伊知香さん、戦闘はできない体だったな、見た目はとても元気そうだけど)


「たまに輝夜とバーチャル通信対戦で、練習相手になってもらってますが、全戦全敗です。私は女王の中で一番弱いでしょう。このままでは戦争で足を引っ張りかねない。戦闘経験が足りないので、少しでも多く特訓したいのです」

「うーん……」

「光太郎さんは実戦をくぐり抜けられて来ました。その経験を生かして、私をしごいて欲しいのです。お願いします」

「分かりました」

 気は乗らない。しかし、頭を下げられ頼まれると、嫌とは言えなくなる。

 エリスが言った通り、女には特に甘い光太郎だった。

 それと、有香がかなり無理をしているのが見てとれたので、オーバーワークで倒れる前に忠告しようと思った。

 「休め」という親の言葉は聞かずとも、光太郎の言うことに有香は従うことになる。


「一日だけだとたいしたことは教えられませんが、僕なりに気づいた点は指摘します。それで、具体的にはどうすればいいですか?」

「光太郎さんにはケイロンを無線操縦してもらい、私を攻撃してください。武器は木製なので、本気で構いません」

「遠隔操作でしたら、やられても怪我をする心配はないですね。初めてですが、やってみます。これは面白くなりそうだ」

 光太郎はやる気を出す。

「当日は、私のメタル・ディヴァインとディヴァイナーを紹介します。ディヴァイナーの訓練も兼ねさせていただきますので、よしなに」

「えっ! 誰ですか?」

「それは秘密です。うふふ」

 有香は悪戯っぽく笑った。


 次の日、有香と二人で市内を練り歩く。

 市内を走る車は少なく、人々は動く歩道(オートウォーク)で移動していた。

 他の移動手段はモノレールだ。

 やはり地下都市の空間は狭く、道路は少ない。そこで、地下の地下(、、)に地下鉄を通して鉄道網を作った。

 地下鉄は最終避難場所でもあり、首都から逃げることも想定している。


 有香はスカートスタイル、やや短めで素足にハイソックスを履いていた。

 派手ではないが、有香にしては大胆な格好だった。もちろん光太郎の目を引くのが目的だ。

 女性は意中の男を振り向かせるのに、あの手この手を使ってせまるものだった。

 女の執念は、諦めることを知らない。

 街中に入っていけば人通りも多くなり、女王に気づかない者はいない。

 変装もせずに素顔をさらしていれば、当然声はかけられる。

「キャ――! 姫様――!」

「有香様――――!」

「こっち見て――!」

「サインして――!」

 追っかけてはこないが、写真はとられまくる。

 有香は愛想笑いをしながら、手を振って応えた。


「ここでも、アイドルなのは変わりないですね。顔は隠さないんですか?」

「陸奥市では車のガラス越しにしか、街を見る事ができませんでした。警護のためと分かっていましたが、一人で歩けないのは少しさびしかったです。なので、エルドラドでは気ままにさせてもらってます」

「お父……十郎さんは心配するのでは?」

「ええ、それで秘密警護が私に常についてまわってます。いらないとは言いましたが、父が安心しないものですから仕方なく。ふだんは早紀さんに付き合ってもらってます」

「そうでしたか。すると今も近くにいるわけですね? さーて、どこにいるのかなー?」

(まあ、探して見つかるもんじゃないよねー。護衛のプロだろうし一般人と見分けがつくわけが――あった……)

「あのー……目立つ黒服にサングラスの格好では、バレバレのようなー……」

「ですよねー、たまに父も混じってますし、ただ黒服は抑止力にはなってます。お陰でエルドラドでの犯罪はゼロです」

「たしかに制服を着た警護を見てたら、悪いことはできないですね。僕も有香さんに不埒なことをしたら、捕まりそうだ。気をつけます」

「光太郎さんでしたら、何をしても構いませんよ。あのー……手を握ってもいいですか?」

 有香は不安げな顔をしながら、光太郎の手を求める。

 弱さを見せる演技にだまされ、光太郎は気の毒になり許した。


「あー、はい……いいですよ」

「嬉しい!」

 二人は手を繋いで歩き、有香は嬉しそうにしていた。

 そこに、遠くから空き缶を潰したような、メキメキという音が聞こえてくる。

(これは! 近くに十郎さんがいるな、音は警告だろう)

「娘にひっつくな!」と声が聞こえてきそうだった。

 辺りを見回していると、前方から何かの集団が近づいて来る。


「あー! 姫様だー!」

「わーい! わーい!」

「ヒュー、ヒュー! 手をつないでる。彼氏と一緒だ!」

「いつ結婚するの?」

 四、五歳の園児達と出くわし、子供らは一斉に有香の側に寄ってきた。

 大声で騒ぎ、はやしたてる。

「有香さん、この子達は?」

「おい、あんちゃん。まずは自分から名乗らんか?」

「ごめん、神山光太郎だよ」

 有香が答える前に、一人の男の子に絡まれた。

「俺の名は仁太じんた。有香は俺の嫁だから、手をだすな! わかったな!」

「こら!」

「なんだ嫁二号。ははん、焼き餅か? しょうがない奴だな、モテる男は辛いぜ」

「誰が二号さんですか! このませガキ!」

「いてててて! 分かった、分かった。特別に零号にしてやるから許せ!」

 保母さんが、仁太の頭をこぶしで挟んで折檻していた。

 謝るまでグリグリと押しつけて、ようやく仁太は開放される。


「ほら、みんな帰りますよ。姫様どうもすみませんでした」

「いえいえ、また保育園にお邪魔しますわ」

「いつでも待ってるぜ、有香!」

「いい加減にしなさい!」

 叩こうとするも走って逃げられ、保母さんは後を追いかける。

 有香は手を振って見送った。

「えーと、結局今の子らは?」

「保育園の見学へ行ったら懐かれてしまって、時々寄っては一緒に遊んでます。無垢な子は可愛いので、ついつい足がむいてしまいます」

(子供は邪念もないし、遠慮もしないから、有香さんも気が休まるんだろうな。女王を前にしたら普通の人じゃー畏まるから、それが嫌なんだろう)

「ところで、どこの王国でも『陛下』とは呼ばず『姫様』なんですよね?」

「陛下や殿下という敬称が元々無いようです。皆、親しみをこめて姫と呼んでいます。ただ、結婚して子供ができると『女王様』になっちゃいますね」

「未婚のうちは、姫という訳ですね」

「はい。あ! ここです」

 話こんでいるうちに、目的地についていた。


「ここって、ゲーセン!?」

 光太郎の前にはガラス張りの店。店内には筐体きょうたいが幾つも並んでいた。

 ゲーム機自体は古く、レトロな雰囲気があった。

 自動ドアが開き中に入ると、様々な音が聞こえてくる。楽しいメロディだ。

 遊んでいるプレイヤーが多いのには、驚かされる。

 ネットゲームが主体になり、閑古鳥が鳴いてる日本のゲームセンターとは大違い。

 ここでは、みんなが本気で楽しんでいた。


「最新ゲームも結構ありますね」

「陸奥市の父に頼んで集めてもらいました。娯楽の試験導入だったのですが、思いのほか評判はいいようです。物珍しさもあるのでしょうが、人が集まる場所として上手くいきました」

「ああ、カードゲームやボードゲームもやってる。楽しそうだ」

 区切られた防音室があり、そこにも人だかりが出来ていた。

「光太郎さんとエリスと一緒に遊んだ、トランプは楽しかったです。そこで学んだのは、顔を合わせることの重要さでした。一緒に興じれば、みんな仲良くなれる。大人がお酒のつきあいをする理由が、少し分かりました」

「ええ、飲み過ぎはよくないですけどね」

「そうですね。ふふふ」

 光太郎は相づちをうって、一緒に笑った。

「さて、何をしようかな?」

「光太郎さん、私とプリクラを撮りませんか?」

「えっ! あ、はい……」


 光太郎はプリ機に生まれて初めて入る。基本、女友達かカップルしか使わない。

 女性に縁がなければ一生入る機会はなく、男一人で撮る者は勇者として称えられる。

 人生最初で最後の経験になるかと思うと、光太郎は緊張してしまう。

(メカオタクでも、これはハードルたけえ――――!)

 そんな光太郎を横目に、有香はテキパキと操作していた。あきらかに手慣れている。

「使ったことがあるんですね?」

「このゲームセンターが開店したとき、父母と一緒に撮りました」

「なるほど、記念写真ですね」

「それでは、撮りましょう。光太郎さんリラックスして下さい」

 有香は光太郎を引き寄せて、カメラに顔を向ける。

 光太郎はガチガチで、顔も引きつっている。肩を抱き寄せたりとか、やれるわけもない。

 その反面、有香は手を握ったり、腕を組んだりしてポーズをとる。

 プリ機の音声案内がラストを告げた。


「最後の撮影いきまーす! 3、2、1」

「わっ!」

 有香は光太郎の首に手をまわし、抱きついたのだ。本気の好意が有香を突き動かす。

「すみません。ちょっと悪のりしすぎました」

「き、気にしません!」

 もちろん狙ってやっているので、女は恐ろしい。

 鼻孔をくすぐる甘い匂いが男を惑わし、放たれたフェロモンが男を惹きつける。

 しもの光太郎も、雄の本能が首をもたげ有香に手を伸ばす――

 が、わめき声が聞こえてきて、動きが止まる。

「コラァ――――――――!」

「はっ!」

 我に返った光太郎は、慌てて手を引っ込めた。

 声を上げたのは十郎、有香は怒り顔に変わる。

(あと少しでしたのに――――!)

 チャンスを邪魔されて完全にぶち切れ、デコもそこそこに切り上げた。

「ちょっと、失礼します」


 ポーチにプリクラを素早く入れ、プリ機から出ると十郎を探して見つけた。

 駆け足で詰め寄り、怒鳴りつける。

「お父さん! さっきから何をやってるの!」

「有香を思ってだなー、間違いが起きないように監視を……」

「まあまあ、お父さんも悪気があったわけじゃないから、許してあげて有香」

「お母さんまで、何で居るのよ!」

 有香の勢いに、二人はタジタジになる。完全に親子喧嘩だ。

(両親で尾行してきたのか……それはやりすぎだよなー)

 有香が腹を立てるのも道理、子煩悩もいきすぎれば過保護。

 しかし、子を心配するのは親の常だ。

 有香は力ずくで二人を追い払い、待っていた光太郎の所に戻る。


「お騒がせしました」

「御両親の気持ちも少し分かりますよ。永らく離れてましたし、一人娘じゃ目に入れても痛くないでしょうから」

「でも、さすがに煩わしく感じるようになりました。私が動くたびにおっかけてきますから、もうストーカーですよ!」

「それだけ、愛されてるんでしょう」

「はい、では気持ちを切り替えて遊びましょう」

「ですね」

 二人は、カップル用のゲームで楽しく遊んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ