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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅱ

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地下迷宮エルドラド

「……寒い。あと寂しいとこだ」

「無理もない。ムー王国は前大戦で、最大の被害を受けてるからな」

 光太郎が見ているのは、雪が残る大地と荒れ果てた街並み。

 爆撃によるクレーターの跡は数知れず、兵器の残骸もおびただしい。

 首都エルドラドの中心に、建物がこぢんまりとまとまっていた。

 それも全部が廃墟で、道路はひび割れて歩くのもままならない。

 他の四都市に比べると大都市とは言い難く、ゴーストタウンのようだった。


「あーでも、地下都市ジオフロントがあるんだよね?」

「うむ、気候の厳しさもあるから大半が地下住まいだな。元々鉱山都市だからトンネル工事や、シェルター作りはお手の物だ」

「ムー王国にはオリハルコンとか、鉱物資源がたくさんあるんだっけ?」

「埋蔵量は世界一だ。マゲイアは資源を奪おうと襲ってきて、総力戦になった。ムー王国が陥落してたら、戦争は負けていただろう。一進一退の攻防だった」

「聞く限り激戦だったみたいだね。だったら有香さんを地球に逃がした、御両親の気持ちも分かる」

「辛うじて守り切ったが、ムー王国の傷跡は深い。未だに再建半ばで、地上は手つかずのままだ」

「仕方ないよね、またマゲイアは攻めてきてるし……ところで僕はどこへ行けばいいんだー!?」

 街の中心部に近づいても、人っ子一人見当たらない。寒風だけが吹きすさぶ。

 あまりにも寂しくて、叫びたくなる。


「通信が入った。指示された場所に向かうとしよう」

「分かった」

 近くにある廃倉庫へと光太郎は移動した。

 中に入ってみたものの、誰もいない。

「うーん――わっ!」

「エレベーターだな」

 突然、床が下がり光太郎は驚く。ただ地下一階に移動して、直ぐに止まった。

 そこには長身の女性が一人いた。

 黒のパンツスーツ姿には、見覚えがある。有香のボティガードの早紀だ。

「……早紀さん。こんにちは」

「ついてらっしゃい」


 無表情のまま早紀は歩き出す。降りた所は石壁に囲まれた場所で、狭い通路が入り組んでいた。

 天井に灯りがあるので視界ははっきりしてるものの、分かれ道が次々と現れる。

「まるで迷宮ラビリンスだ」

「地下都市への侵入を防ぐ迷路だ。エルドラドへ直通してる道はなく、幾つかの関門があると聞いた」

「でもそうすると、メタル・ディヴァインはどこから発進するの?」

「別の場所に地下軍事基地がある。首都からは離れてるはずだ」

「それなら、簡単には攻め込まれないね」


 エクリプスから色々と聞いてる間、早紀は黙ったままで、光太郎を見ようとはしない。

 袋小路まで来ると、早紀は手前の壁に触る。

 生体認証されると大きな音がして、更に下に降りる階段が現れた。

 連れ回された光太郎がうんざりしてきたところで、ようやく直通エレベーターが見えてくる。

 大型でメタル・ディヴァインも、乗せられそうだった。

「あとは、これで降りるだけだ」

 早紀に言われてサイドカーごと乗りこむ。エレベーターかごは透明で下を見下ろせた。

 下までかなりの高さがあるが、ビビる暇もなくすごい速さで、エレベーターは降りていく。

 

「地上と変わりない」

 人工太陽光が都市を照らし、空も青く街並みも美しい。

 さっきまでの地上とは打って変わって、たくさんの人々が練り歩いている。

 活気があり、遊んでいる子供の姿も見えた。とても地下にいるとは思えない。

「ここは、いいとこですね」

「…………」

 光太郎は感想をもらすが、早紀は押し黙ったまま答えない。

(やっぱり、嫌われてるかなー?)


 会話は諦めエレベーターから街を見てると、嫌な物が目に入る。

 光太郎にとって、我慢ならない物があった。

「ああ……勘弁してくれ」

「あきらメロン」

「エクリプス、それを言うか!」

 それは、ドデカい横断幕。

[大歓迎! ようこそエルドラドへ! 神山光太郎様!]

 と書かれて掲げられ、のぼり彼方此方あちこちに立てられていた。

 光太郎を称える文言が、数え切れないほどあった。

 ど派手で目立つことを嫌う、光太郎は頭を抱える。


「国賓待遇なんだから、何もしなかったら国の威信に関わる」

「それは分かるけどねー、庶民の旅行感覚でしかないから気が滅入る。僕一人だけの為に事務方や裏方さんが、苦労したかと思うと……接待費用もバカにならないし、本当に申し訳ない」

「大半の準備は、AI無人機がやってるはずだから、気にするな光太郎」

「う……うん」

(どの国も……いや女王達は誠意だけで歓待してるわけではない。下心がありありなんだが、光太郎は気づかないんだよなー。他のことは鋭いくせに、不思議なものだ)


 エレベーターが止まり、扉が開くとクラッカーが撃ち鳴らされる。

「うわっ!」

 大勢の国民が集まり、光太郎を歓迎する。

 万雷の拍手の中、赤絨毯の上を光太郎はなんとか歩く。

 その先には有香が満面の笑みで待っていた。

 着ているのは水色のボールガウンドレス、胸元には煌びやかな宝石がちりばめられていた。

 ふわふわしたロングスカートを見ると、舞踏会から駆けつけてきたような錯覚にとらわれる。

 あいにく光太郎はダンスは出来ない。


「光太郎さん、ムー王国へようこそ」

「えー、この度はお招きに預かり……」

「もー! そんな言い方はしないでください。店で出会った頃と同じ扱いは嫌です」

「すみません。いまだにお嬢様のイメージが強すぎて、かしこまってしまいます」

「そうですか、では光太郎さんに私をもっと、知ってもらわなくてはいけませんね。ただの女にすぎないことを……」

(清純可憐なのは見た目だけ……本当は傲慢で嫉妬深く浅ましい女。それが私)


「いやいや女王様になったのに、ただの人とは言えませんよ」

「私の中身は変わってないです」

「なんか押し問答になっちゃいましたね? やめましょう」

「そうですね。うふふふ」

 有香は光太郎の顔や仕草を見て微笑む。

(ああ、楽しい。光太郎さんに会えただけでも嬉しい。胸がドキドキしてます)

「どうかしましたか?」

「いえ、やっぱり私は乙女なんだなーと、熟々(つくづく)思いました。立ち話も何ですから、城へ参りましょう」

「はい」

(有香さん……少し変わったかな? あれから色々あったんだろう。僕だって波乱万丈の日々を送ってるし、お互い激動の人生だ)

 有香は何も変わってはおらず、自分の気持ちに正直になっただけだった。

 その秘めた思いに光太郎は気づかず、城で思い知らされることになる。

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