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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅱ

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アララト山のお友達

 清々しい朝を迎え、光太郎は起きた。窓を開ければ、新鮮な空気が入ってくる。

 吸い込んでさわやかな気分になった。耳をすませば小鳥たちがさえずっている。

 市街のように騒がしくなく、静けさは心を安らかにしてくれる。

 そんな中、光太郎は揺れを感じる。

「おっとと! 地震かな?」

 耐震設計されてる城内では少し揺れた程度、ほとんどの人は気にもしないだろう。

 光太郎は着替えて食堂へと向かい、ヒナと一緒に朝食を食べた。


 今日はアララト山へと向かう。

 外に出ると、大型のコンテナが用意されていた。

「これは何? ヒナちゃん」

「お友達に渡す食べ物だよ、お兄ちゃん」

「?」

 光太郎は首をかしげる。

(食料? お友達って山の静養所とか、別荘にいる人達なのかな? でも多すぎるような……)

 よく分からないまま、熊のラモーヌに乗りこんだ。

 ヒナは緑の光星甲冑を着ていた。軽々と飛び上がって鞍に跨がる。

 ラモーヌは少し上昇して、コンテナを結んでいるワイヤーロープを、熊足に引っかける。

 ロープをしっかり掴んで固定し、重いコンテナを持ち上げて飛び立つ。

 そのパワーに光太郎は唸る。

 

「うおっ! 推力がルドルフ以上だ。メタル・ディヴァインの中ではパワーは一番ですね」

「山川を駆け巡るのに、出力を強化してます。その代わり速度はでませんが」

「四輪駆動車のようなものですね。メガラニカの環境には適している。それと、ラモーヌさんには切り札(、、、)もありますし、メタル・ディヴァインは種類が多くて奥が深い」

「うん、お兄ちゃん」


 アララト山。

 鮮やかな緑に彩られた森林が、どこまでも広がっていた。

 そばを流れる川には魚が泳ぎ、森の恵みが動物達を育む。

 山は人里からは離れており、自然保護区になっていた。

 空から近づいていくと、尾根の谷間にひらけた草地が見えてきた。

 ほぼ平らな場所にラモーヌは着陸する。


 ヒナは飛び降りてコンテナの扉を開けると、中には果物や生野菜があって、真空パックされていた。

 それらを外に持ち出し、光太郎も中から出すのを手伝う。

「あれー? 住居は見当たらないし、人気もないし一体誰に配るんだー!?」

 葉っぱを踏む音と、枝を折る音が聞こえた。

 林や茂みから、こちらを見ている光る目に気づく。

 一つ、二つだけではない、うなり声も聞こえ完全に囲まれていた。

「みんなー、おいでー! お兄ちゃんは優しいから、怖がらなくていいよー!」

 ヒナの声に動物達が、一斉に飛び出してくる。

「ひっ!」

 先頭を駆けてくるのは、頬に傷がある熊だ。機械ではなく本物のツキノワグマ。

 ヨダレを垂らしながら、光太郎達に向かってくる。

 逃げる間もない。が、襲われはしなかった。

 

「あぐぐぐ……あのーヒナちゃん。ひょっとしてお友達って……」

「森に住んでるみんなだよ、お兄ちゃん!」

 光太郎は熊になめられて、生きた心地がしなかった。ラモーヌが言った。

「メガラニカの動物達はおとなしく、けっして襲ったりはしませんので、ご心配なく」

「そ、そうですか」

「さあ、みんな並んでー、配るよー。お兄ちゃんも手伝ってー」

「う、うん」

 兎・狸・狐・リスに鹿と、たくさんの動物達が二列に並ぶ。

 しかも、それぞれ小さな荷車を持ってきていた。巣にいる子供達に持って行くためだ。

 食料を積んで、落ちないようにビニールカバーで縛る。


 光太郎は呆然としながら作業をしていた。

 状況がいまだに信じられなかったので、無理矢理自分を納得させようとする。

「サファリーパークでの餌付けと思えば、納得だな。ここは自然保護区だし、人に慣れた動物達が、条件反射で動いてるだけだろう。ようは動物園と同じだ、うんうん――じゃねー!」

「太郎さん、いつもありがとうねー」

 熊がヒナに、大きなビニール袋を手渡していた。

 中身は大量の蜂の巣、蜜と蜂の子は高級品だ。

 他の動物達も山菜・野苺・キノコを持ってきている。

 日本の松茸以上の価値があるものばかりだった。


「あれは原石か? ……宝石まで持ってきてる! 動物と物々交換? バーター取引? ありえねー!」

 光太郎はカルチャーショックを受けた。

(猿が知性を持って話す小説もあるし、知能が高いのは人間だけとは限らない。その知能も今やAIに負けてるしなー……にしても、動物を雇用してるのと同じか)

 山の地図があったとしても、日々変化する自然の中で、森の幸を探すのは大変である。

 住んでいる動物達に、人は及ばない。

 動物達は採取で生計を立て、持ちつ持たれつの関係を築いていた。


「お兄ちゃん、太郎さんはね、大好きな花子さんのために頑張ってるの」

「……あーそれで、一杯持ってきてるんだ」

 ヒナに言われて、熊は頭をかいた。周りの動物達は冷やかすように鳴く。

(熊が照れるな! それに何で僕と同じ名前の『太郎』なんだ!)

 光太郎は突っ込みたいのを我慢した。配り終えてから、ヒナが通達する。

「みんな来週は健康診断だからねー!」

「……クゥゥ」

 あきらかに全員のテンションが下がる。

「もうー! みんな、注射くらい我慢するの」

(ああ……これは会社だ。企業だ)

 社長はヒナで社員は動物達、健康管理は義務化されてる。

 経営者が一匹一匹に気を配るので、優良ホワイト企業に価するだろう。


 動物達は手を振り、巣に戻り始める。

「そのうち街でも作るんじゃないのか? 言葉も喋りそうで、将来が恐い」

「そうなっても、仲良くできるよ」

「コミュニケーションが取れれば、友達になれるか……」

(でも、マゲイアは話せても……)

 

「あれ? どうしたんだろ?」

 狸と狐が大慌てで戻ってきた。

「ポン太さん、コンさんどうしたの?」

 二匹は大声で鳴き、山の一部を手で指す。

 直後に大きな音がした。

「土砂くずれだ!」

 前兆はあった。地震が発端でわき水が出て、根が切れるような音はしていたのだ。

 誰も気づかなかったのが、災いした。山の形が変わり、崩れ出す。

 このまま土砂が押し寄せてくるかと思われたが、途中で止まった。

 森林に設置されてる防御塔シールドタワーが、斥力場で土砂を防いでいた。


「あれ、あんまし持たないんじゃないですか!?」

 防御塔は小さく、いつ決壊してもおかしくはなかった。

 ラモーヌは避難指示をする。

「ええ、いまのうちに逃げましょう! ヒナ!」

「駄目! この子達の巣が近くにあるの! 子供達がいるの!」

 狸と狐は哀しそうな声で鳴いた。見捨てることはできない。 

 光太郎の目つきが変わり、頭脳がフル回転する。

 いつもならノンビリと策を練るが、今は必死で本気だ。

(絶対、助けるんだ!)


 光太郎の王の力(クラウンパワー)が発動する!

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