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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅱ

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ヒナとラモーヌ

「開けゴマー!」

「何だそれは?」

「千一夜物語に出てくる呪文だよ。雰囲気で言ってみたかっただけ、なぜ胡麻ごまなのかは知らないけどね」

「そうか」

 光太郎の目の前にある、岩扉が開いていく。

 足止めをされていたが、腕時計(スマートウォッチ)で本人確認がされ、通行許可がおりた。

 トンネルが現れ、奥には道路が続いている。目的地のメガラニカはもう少し先。

 明るい照明の下、サイドカーは曲がりくねった道を走る。

 数キロほど進むと、ようやく出口が見えてくる。太陽光が差し込み、徐々に辺りは明るくなっていく。


 トンネルを抜けた先にあったのは――

「おおっ!」

 四方を絶壁岩に囲まれた窪地くぼちに、深緑に彩られた都市があった。

 少し離れた場所には、巨大な湖も見える。

 

 メガラニカの首都、シャングリラ。

 王城は石窟である。「始まりの戦争」では最初の拠点と伝えられていた。

 自然の城壁は敵を寄せ付けず、攻めあぐねた敵を何度も敗走させた。

 時代は進みテクノロジーが進歩すると、超難攻不落の城塞都市になった。

 前マゲイア戦争での、都市と市民への被害はゼロ。

 もっとも王族兵団の被害は甚大、それはどの国も同じだった。


 サイドカーは今いる中腹から、坂を下っていく。光太郎は情景に感動していた。

 自然に惜しみない賞賛を送る。

「まさに雄大で美しい自然。牧歌的とはこのことか」

「うむ、メガラニカの産業は林業と……」

 エクリプスの説明が、途中で聞こえなくなる。

 前方から轟音が聞こえたせいで、前から何かの集団が走ってくる

 土煙でよく見えない。

「よけて!」

 しかし間に合わない。


 ぶつかるかに思えたが、サイドカーは動物達に取り囲まれただけだった。

「モー!」「メエー!」「ウエェ――!」

 山羊と羊と牛の大群に囲まれ、鳴き声による大合唱を聞く羽目になる。

 うるさい上に、光太郎は家畜達から舐め回される。

「畜産業……って、今さら説明しても遅いか」

「ぐわ――! やめてくれ――!」

 光太郎は悲鳴を上げた。

「こら――――! みんな離れなさい!」

「ワン! ワン!」

 後から来た牧羊犬が、羊たちを追い立て誘導する。

 馬に乗った牧場娘カウガールの二人が会釈して、その後を追う。

 カウボーイハットをかぶり、ジーンズを穿いて様になっている。

 二人はヒナの側近アントラージュだった。


 そのヒナは、光太郎に近づいてハンカチを手渡し、ニッコリと微笑む。

 麦わら帽子に、白いワンピース姿は風景によく似合う。

「ありが――と、おっ!」

 ヒナに癒やされるのも束の間、乗っているメタル・ディヴァインに気づき、目を奪われる。

 緑色の巨大な熊だったのだ。

 見た目のインパクトが強すぎて、光太郎は顔を拭くの止めて固まる。


 ヒナは熊から降りて挨拶をする。慌てて光太郎もバイクから降りた。

「いらっしゃい、お兄ちゃん。」

「お手紙ありがとうね、ヒナちゃん」

「うん。それでこっちが、ヒナのママだよ」

「!」

 ヒナはメタル・ディヴァインを紹介したのだ。

(そっか……エクリプスと同じクリスタル・ブレインデバイス(頭脳回路)か……)

 光太郎は同情の念がわき起こる。と、同時に不幸だと決めつけるのは失礼だと思った。

 形はどうあれ、生きているのには変わりない。話せるだけでもましなのだ。

 ルカのように両親を亡くした者もいるのだから。

「ようこそ、おいでくださいました。ヒナの母、ラモーヌです」

「神山光太郎です。お招きにあずかりまして、ありがとうございます」

「……なるほど、頼りがいがある方ですね。これならヒナをお任せしても、大丈夫ですね」

「えっ!」

「すみません、こちらの話です。それでは城に御案内いたします」

「お兄ちゃん、ヒナの後についてきて」

「あ、うん……」

(何だろう? 気になるなー)

 

 農道を進み城門が見えてくると、一人で立っている女性が見えた。

 身動き一つせず、目は見開いたまま。

 ヒナはメタル・ディヴァインの中から水晶球を取り出し、その女性の背後に回った。

 顔はヒナに似て、銀髪。

 青のサロペットに白シャツを着て、乗馬靴を履いていた。

(あれ? 人じゃないのか?)

 ヒナが腰にあるカバーを開き、水晶球を入れると女性は動きだした。

 口が動き、ラモーヌの声で喋る。


「お待たせしました。光太郎さん」

「ああ、ヒューマノイドボディ(人型身体)だったんですね。初めて見ましたが、人間にしか見えません」

「見た目だけですわ。所詮はメタル・ディヴァインと同じ機械です。血の通ったぬくもりまでは与えてあげられません」

 それでもヒナは片手を繋いでいた。

「お兄ちゃんも」

「うん」

 残った手で光太郎の手を握り、真ん中のヒナは嬉しがる。

 

 食堂に案内され、遅めの朝食をとる。

 メニューはパン・牛乳・サラダと目玉焼きで、何の変哲も無いように見えた。

「いただきます」

 母娘おやこは光太郎をじっと見る。

「美味い! 滅茶苦茶美味い! 何ですかこれ?」

「搾りたてのミルクと取りたての野菜です。それに特殊殺菌と酸化防止処理をしてます」

「新鮮な上に、その処理を加えたら旨さは究極ですね」

「毎日、食べてる民に言わせれば、飽き飽きしてます。変化がないので」

 私は食べられませんが、とラモーヌは笑った。

「慣れというのも贅沢になるんですね。美食も過ぎれば粗食か」

「それで最近は、我が国でも日本食を食べるようになりました。種類が豊富で素晴らしい。今までになかった味覚は大人気ですわ」

「うわー、ここでも文化侵略だー! 士気とかに悪影響はないんですか?」

「むしろ兵団士気は高まってます。『本場の日本で食べないうちは死ねない』と星騎士達は口々に言ってます」

 意欲が士気を高めていた。故郷を守るという自己満足では足りない。

 自分への御褒美というのは甘えではなく、モチベーションを維持するのに必要なのだ。

「ヒナも日本に行きたい!」

「来られるようになったら、僕が案内するよ」

「うん、よろしくねお兄ちゃん。ママおかわり!」

「はい、どうぞ」


「えっ……」

 ラモーヌがテーブルの上に置いたのは、サラダボール。

 光太郎が驚いたのはその大きさで、直径が三十センチをゆうに超えている。

 一般のビュッフェ用よりでかい。

 たっぷり盛られた野菜を、ヒナは可愛らしく食べるのだが、瞬く間になくなっていく。

 よく見れば、皿やバスケットも積み重ねられていた。

 小っちゃな体に変化はなく、どこに食べ物がいったのか不明だ。

「ぷはー! お兄ちゃんはもういらない?」

「あ、うん」

(見てるだけでお腹いっぱいです。ヒナちゃんて大食漢なんだ)

 残った牛乳を飲み干し、口をヒナは拭いてもらっていた。

 微笑ましい母子のひとコマ。

 食事を終えて、光太郎はプレゼントをヒナに渡す。

「ヒナちゃん、これは贈り物だよ」

「うわー! ありがとうお兄ちゃん!」

「よかったわね、ヒナ」

「いえいえ」

「それでは光太郎さん。早速シャングリラを御案内いたしますが、よろしいですか?」

「はい、お世話になります」


 三人は車で、巨大湖へと向かった。

「山と空が二つある。ただ、ただ感動ものです。なんか夢で見たような気もするなー」

 天空の鏡――妖精の湖(フェアリーレイク)

 その名の通り妖精が住むと伝えられている。

 森林に囲まれた巨大な湖は透き通っており、その幻想的な光景を見れば、妖精がいても不思議ではない。とはいえ、実際に見た者はいなかった。

 湖畔にはログハウスがあり、デッキからカヌーに乗った。

 カナディアンカヌーで湖への中心へと漕ぎ出す。

 光太郎はヒナからパドル()の使い方を教えてもらう。

「お兄ちゃん、櫂の握り方はこうで、手を動かすより腰をひねるようにするの」

「分かった」

 二人でカヌーを漕いで楽しんだ。


 湖の中心付近までくると水深が深く、光も届かない。

 のぞき込むと飲み込まれそうで、少し恐かった。

 突然、水面みなもが波立ち、カヌーも揺れる。

「地震!」

「いえ、すぐに収まります」

「お兄ちゃん、大丈夫だよ」

 屈託のない笑顔を見せるヒナのうしろから、何かが出てくる。

 水面から飛び出したそれは、巨木のようにそり立つ。

 上を見上げれば、爬虫類の頭があった。

「恐竜!」

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