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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅰ

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支払いと申し出

「あわわわ! 遠慮しま――――す!」

 光太郎は目をつむり、顔をそむけた。

 慌てて外へ出ようとするが、ふすまはピクリとも動かず閉じ込められる。

「開かない!」

 ここは外からは中が見えず、中からは外が見える特殊な壁に囲まれた、露天風呂。

 もっとも、真上から見れば丸見えだった。

「お疲れでしょう。お背中を流して差し上げますわ」

「いえいえ、お気持ちだけで十分です!」

「そうおっしゃらずに」

 かぐやは湯船から立ち上がろうとしていた。

「うわぁ――!」

「光様、大丈夫ですよ」

「あれ? 水着」

「はい、失礼いたしました」

 着ていたのは白とピンクの競泳水着……ただ、ハイレグだった。

 しかも大きな胸や尻が強調され、光太郎は目のやり場に困る。

 輝夜はバスタオルを羽織り、光太郎に言った。


「それでは光様、私についてきてください」

「……あ、はい」

 風呂場から出て輝夜は前を進み、光太郎はTバックを見せ付けられる。

(まいったな)

 目をつむって歩くわけにも行かず、なるべく下を見ないようにするしかなかった。

 輝夜は強引に迫ろうとはしない。

 光太郎が手をだしてこないのは百も承知。

 まずは本能に働きかける意識付けを狙う。段階を踏んで落とす作戦だった。

 あまり肢体を見せつけても下品なので、侍女達に歩きながら着替えさせる。

 前方に朱色の番傘が見えてくる頃には、着物の着付けは終わっていた。


野点のだてですね」

「はい、お茶を一服お召し上がり下さい」

 光太郎は縁台に座り、輝夜は抹茶を点てる。一連の動きは様になっていた。

「お点前、頂戴いたします」

 茶碗を持ち上げ、光太郎は薄茶を飲んだ。

「結構なお点前でした……って、作法も知らず適当に飲んじゃいました。すんません」

「ほほほ、私もまだ習い始めたばかりですので、お気になさらず」

「ちなみに誰から教わってるんですか?」

「有香ですわ」

 輝夜は軽く呼び捨てにした。そこに親近感がこもっている。

「日本の話を聞くうちに興味を持ちまして、茶道・華道・踊りに書道など教えてもらっています。有香は謙遜していましたが、お付きの方の話では師範の免状を全てお持ちとか」

「……有香さんならあり得るな。それにしても、かなり仲良くなったんですね?」

「ええ、女同士で話していれば自然と。女王会談も女子会と化しております。ただ、服装がだらしなくなっていくのは、いただけませんね。ルカが特にひどい」

 

「ははは、なるほど。あっそうだ! これ贈り物です」

「ありがとうございます。家宝として大切にいたします」

「そこまでしなくても……」

「私の方でも、光様にお渡しする物があります。というか、出演料と広告収入をお支払いいたします」

「へっ?」

 光太郎は全く意味がわからなかった。

「ルカと光様との対決で商売させていただきました。つきましては興行収入からのギャラと、実況ネット動画からの収入をお支払いいたします。ちなみに興行主プロモーターは私です」

「えー! いつのまに!?」

「御報告が遅れて申し訳ございません。ルカには言ってましたが、光様には伝わってなかったようですね」

「……知りませんでした」

「それともう一つ、お詫びしなくてはいけませんね。アヴァロン星では軍事機密も、できるだけオープンにして情報公開しております。国民に隠しごとはしないようにしてますが、それでもネットでの公開時には修正が入ります」

「まあ、それは分かりますが……それで?」

「戦闘情報としてアンジェラ星騎士と光様の戦いも、勝手ながら公開させていただいてます」

「ちょっと待った――! その動画を見せてください!」

「はい」


『いや~ん』

『駄目ぇ――!』

『許してー! そ、そこは――――!』

 アンジェラの顔が拡大アップされ、あえぎ声しか聞こえない。

 光太郎が映ってるシーンはほとんど無く、体をまさぐる手がやたら強調されていた。

 あの時(、、、)は不可抗力で仕方なかったのだが、見事に偏向されて淫猥動画にしか見えない。

「ひ、酷い……これじゃー僕が、淫獣か色情狂のようだ。ああ、それでパシフィスの人達は僕を敵視してたのか」

「ああー……これ、私にもして欲しいですわ。光様に脇の下を突かれてみたい! 見るだけでは我慢できないんです――!」

「か、勘弁してください。動画も消して――――!」

「アヴァロン全土に拡散しましたので、もう無理です。お詫び代も含めまして、光様の口座に振り込ませていただきました」


 デバイス腕時計(スマートウォッチ)で残高をみれば、高層ビルが建てられるほどの預金がある。もちろん日本では使えず、有名税だけが高かった。

「うう……うれしくない」

 光太郎は諦めるしかなかった。

「本当に申し訳ありません。さらに厚かましいですが、光様にお願いの儀がございます」

「何でしょうか?」

「私が女帝に選ばれた際に、光様に総参謀をお願いしたく思います」

「はあー!?」

 一瞬、輝夜が何を言っているのか、光太郎は分からなかった。

 気づいてから、理由を並べて速攻で断る。

「ちょっと待ってください! 僕はただの学生でよそ者ですよ、軍人でもない。アヴァロン星の方がすべきだと思います。あと参謀なら人工知能のアーサーが務まるんじゃないですか? お引き受けできません」

(星騎士達の命を預かるなんて、重過ぎる。とてもじゃないが受けられない)


「そうですね、まずは理由を説明いたします」

「はい」

「同じ人工知能(AI)兵器同士が戦ったら結果はどうなると思いますか? 完全に同じ性能と仮定します」

「……勝敗は五分でしょうね。多分」

「その通りです。一対一の場合、よくて相打ちか千日手にしかなりません。正面切って戦えば、結局のところ消耗戦になり、数の多い方が勝ちます。マゲイアは相打ち覚悟で攻めてくるので、AIの性能が上でも意味がありません。野蛮人でも不利になれば逃げますが、狂人は屍を平気で踏み越えてきますから……」

「ああ、損害を全く考えない戦闘をされたら、戦術もクソもないということですね。そのまま乱戦になれば、どこから攻撃がくるか予想できないから、AIでも対処できない。マゲイアの戦法は確かにひどい」

「光様のおっしゃる通りです」

「隠れる場所もない空中戦場では、敵に囲まれたらやられるだけですからね」

「はい。アーサーも、あらゆる局面を予想して指示をだすのは不可能です。盤上のゲームとは違い、戦場では想定外のことだらけです。所詮コンピューターは補佐しかできません。あと心情的なものですが、誰しも機械に指図はされたくないと思ってます」


「分かります。それを言うと僕も異星人ですよ? 命令なんかしたら反発されます」

「命令は私が出します。光様には助言していただきたいので、軍師はどうでしょうか?」

「肩書きが変わっただけのようなー……無理です」

「それではせめて、アドバイザーをお願いできないでしょうか? お頼み申します!」

 泣きそうな顔で輝夜は頭を下げた。これには光太郎も慌てる。

 一国の女王の頼みを、無碍むげにするわけにもいかず折れた。

「わ、分かりましたから、頭をあげてください!」

「ありがとうございます。それでは早速ながら御助言を賜りたいです」

「えっ……」

(変わり身、はや! あっ、騙された! これってやること変わりねえー!)

 輝夜の嘘泣きに引っかかり、光太郎は利用される。仕方ないのでことわりをいれた。

「軍事の素人なんですから、参考程度にしてください」

「光様ほど実戦をくぐり、指揮までされた者はアヴァロンには数えるほどしかいませんよ。ですので、私は光様を見込んでいるのです」

(おだてられてもなー、僕を買いかぶりすぎなんだよ。今までは運が良かっただけなのに……)

 光太郎は気づかなかったが、その強運に輝夜はあやかりたいのだ。皆のために。

 矢の雨の中を歩き、銃弾が飛び交う中を通り抜け、地雷原を走っても死なない者がいるとする。

 ならば「この人の側にいれば助かる」と誰もが思い、すがりたくなるだろう。

 誰だって死にたくはないのだ!

 

 輝夜は地球儀ならぬ、アヴァロン星の3D画像を空中投影した。

 球体画像を回しながら聞く。

「光様でしたら、どこの国をどう攻めますか?」

「……いきなりですね。未だに攻めてこないとこを見ると、相当警戒してるんでしょうね。マゲイアの事情は分かりませんが、そうですね……僕ならここを攻めます」

「そこは! ありえない……でも、まさか!」

 ある場所を拡大して指しながら、光太郎は自分の考えた攻撃手段を言った。

 聞いた輝夜は目を開いて驚き、感嘆の声を上げる。

「やはり光様は目の付け所が違いますね。地政学的にはありえませんが、戦略としてはありえます。これは、早めに手を打たないと。その場所は……ルカに任せることにします」

「ただの勘ですよ。まあ、他人が一番嫌がる手だとは思います」

「まさしく、おっしゃる通りです」

(やはりこの方は手元に置いておきたい……どうしたものでしょうか?)

 引き留める手段を考えていると、光太郎が質問をしてきた。


「輝夜さん、マゲイアについて教えてくれませんか? メタル・ディヴァイン製作にかかりきりで、レムリアでは聞きそびれて、詳しくは知らないんです」

「……ひょっとして、光様は和平をお望みですか?」

「はい、お互い恨みはつきないとは思いますが、交渉手段は本当にないんでしょうか?」

「残念ながら……呼びかけたことは何度もあります。が、彼らには意志が無いというか、権利がありません。なぜならマゲイアは……」

 マゲイアの内情を聞いた光太郎は、驚いてがっかりしたもののあきらめなかった。

(……そうだよねー。話し合いですむなら、十五年前にとっくにやってるよね。うーん、何か切っ掛けさえあればなー)

 これは光太郎の性分でもある。

「百パーセント絶対無理!」などと言われると、逆らいたくなるのだ。

「答えが無ければ答えを作ればいい、その方が面白い」とひねくれている。


 輝夜は明日以降の予定を話す。

「光様、明日は観光案内したく存じますが、よろしゅうございますか?」

「お願いします。ただ……対決とかは無しですよね?」

「ほほほ、ルカのような真似はいたしません。御安心を」

「ほっ、よかった」

「ですが、私のメタル・ディヴァインに乗ってみませんか? 光様」

「そう言われたら! うぐぐ……我慢できない。お願いします!」

(見たい! 触りたい! いじりたい! この欲望だけには勝てないなー僕は)

「それでは明後日。それと今宵の夜伽は、いつ頃がよろしいでしょうか?」

「謹んでお断り申し上げます。あしからず御容赦ください……って、マジそれは勘弁してー!」

「おほほほほほ!」

 輝夜は笑い、光太郎は丁寧に本気で断った。

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