表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅰ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

44/432

ハイウェイの襲撃者

「次はアトランティスだな? 光太郎」

「うん、このまま寝るから、安全運転よろしく」

「野宿はしないのか?」

「国境を越えるまでは不安だよ。まあ、誰も追ってはこないと思うけど、用心するに越したことはない。ここを離れるまでは移動しよう」

「了解した」

 実際、パシフィスをすぐ旅立ったのは正解だった。

 もしデモ隊と鉢合わせしてたら、確実に追いかけ回されていただろう。

 光太郎はシートを倒して、すぐに寝息を立てる。

(揺れは少ないとはいえ、よく眠れるな。いや、疲れてるせいか。光太郎は騒動に巻き込まれやすく、休む間もない)


 エクリプスは気を遣いながら、サイドカーを北へと走らせる。

 日は落ちて、ポツポツと照明が灯り始めた。

 幹線道路ハイウェイに入ると、真っ直ぐな道がどこまでも続く。

 エクリプスがバイクのライトを点けると、暗い夜道は明るく切り裂かれた。

 もっとも、暗視装置があるのでライトなしでも進める。

 他車に対して、自分の存在を教えるため点けた。

 中央分離帯に壁はなく、ときおり他車とすれ違う。大半が無人貨物車だ。

 物流は川の流れのように、休むことはない。


 それから数時間が過ぎ、エクリプスは異変に気づく。

「……無人機だと? こんな時間に妙だな」

 レーダーが後方から接近してくる機影を捕らえていた。しかも識別信号を出していない。

 道路管理用の無人機が走ることはあるが、コールサインがあるのが普通。

 その無人機はじわじわと、距離を詰めてきていた。

「おきろ光太郎!」

「うー! もうー許してくれー! ……あれ? もう着いたの?」

「違う、何やら様子がおかしい。怪しい無人機が近づいてる」

「エクリプス、救難信号(SOS)を出してみてくれ、何もなかったら誤報ですませる」

「分かった――駄目だ、どことも繋がらない! 電波妨害ジャミングされてる!」

「スマートウオッチも圏外だ。これは追っ手なのか?」

「もうアトランティスに入ってるから、それはないだろう」

「そっか、どっちにしろ武器はないからピンチだね」

「ならば空を飛び、全速力で逃げるのは……」

「うん、愚策だね。敵の思うつぼだよ。だから……こうしよう」

「よし、その手でいこう」


 光太郎は慌てもせず、エクリプスに指示する。

 やがてサイドカーは一旦停車し、猛スピードで走りだした。

 無人機も速度を上げて追いかける。馬型の無人機で、名はゼブラ。

 モデルはシマウマである。

 ゼブラに乗っている者は、布を顔に巻いて覆面して、騎士槍を持っていた。

 さらに前方からも、ゼブラがもう一機現れて向かってくる。

 サイドカーは挟み撃ちにされ、スローダウンして止まった。

 二機のゼブラは前後から近づき、襲撃者達は騎士槍ナイトランスを向ける。

 お互いに目視できる距離までくると……。

「いない!」

「どこへ行った!」

 光太郎とエクリプスの姿はなく、そして側車もなくなっていた。


「マゲイアじゃないよね?」

「戦闘用無人機を使用できるのは星騎士のみ、それも上位の者だけだ」

「すると犯人は……このままアトランティスへ行くのは、危ないかな?」

「引き返すか?」

「うーん……やっぱり、街に入った方が安全かも。兵団全部がこの襲撃に、荷担してるとは思えない。少人数での企てだったとしたら、人目につく行為は避けると思う」

「うむ、どちらにしても側車では長くは走れん。早く街へ行かないとな」

 側車は光太郎達を乗せて、裏道を走っていた。

 襲われる前に分離させ、バイク本体を自動運転させて囮に使ったのだ。

「バイク、壊されてないと良いけどなー、荷物は積んだままだし……」

「大丈夫だろう。電波妨害から抜けて、自警団に通報した。もうあの場には居まい」

 エクリプスの言うとおり、二人の襲撃者はそのまま逃げ去っていた。

 残されたバイクは、アトランティス首都のアクロポリスへと自動で走り出す。

 光太郎達も首都へ向かい、到着と同時に朝をむかえる。


 アクロポリスは商業の街。環状運河の街で大河と、港をつなぐ間にある。

 全大陸の中継点であり、あらゆる品物が集まる貿易都市だった。

 ひっきりなしに人と物が行き交い、巨額な金が動く。

 アトランティスは五王国中、最大の富強を誇っていた。

 三つの運河をつなぐのは重力橋。船舶が通るときには宙に浮かび、通常時には道路橋に戻る。

 東西南北の道路が交わる中央に、円城が塔のようにそびえ立つ。

 

 アトランティス王城だ。

 その一角には不釣り合いな大旅館があった。日本でも無くなりつつある遊郭建築物。

 城門から中に入ると石畳の歩行路が続く。

 さらに進んで大門をくぐると、旅館の入り口まで赤絨毯レッドカーペットが敷かれていた。

 赤絨毯の両側には、星騎士達が並び頭を下げている。その数、千人。

 整然と整列し声も出さない。光太郎は圧倒されて、息が詰まりそうになる。

 お出迎えに恐縮し、右手と右足・左手と左足を同時に出す「なんば歩き」になってしまう。

 光太郎は我慢できずに叫ぶ。


「頭を下げるのはやめてくださーい! 僕、偉い人じゃありませーん!」

(見てるだけで疲れるし、心苦しいわ!)

 どこぞの独裁者か皇帝になったかのようで、光太郎は気分が悪かった。

 輝夜は笑いながら最敬礼を止めさせた。入り口の前で、光太郎を出迎える。

「光様、アトランティスにようこそお越しくださいました。おくつろぎいただく前に、まずはお詫び申し上げます」

「あー、昨晩の件でしたらもう良いです」

「いえ、この地を預かる者としては見過ごせません。私が招待した光様を襲うなど言語道断! 見つけ次第、然るべき処罰を与えます」

 輝夜の両隣にいる楓と霞は、光太郎を睨んでいた。一応、側近として挨拶はされる。

(もの凄い殺気を感じるんですけどー……)


「……でしたら、なるべく穏便にお願いします」

「光様は慈悲深いですね」

 顔や言動には出さないが、輝夜は光太郎を冷徹に見定めようとしていた。

 ルカをけしかけたのも、器量をおしはかるのが目的だった。

 モーションをかけてはいるが、光太郎に対して何の感情も抱いてはいない。

 自分の計画に使える駒かどうか、ただそれだけである。

 有能であれば何でもくれてやるつもりでいた……自分自身さえも。

 輝夜には全てをなげうっても、なすべき望みがあった。


(どうやら傲慢な方ではないようですが、今少し試して見ないことには……それでも危機を乗り越える力はあるようですね)

 和服姿の輝夜は目を細めて笑い、旅館の中へといざなう。

「まずは、お休みになられますか?」

「そうですね、少ししか寝てませんので休ませて下さい。お話しするにしても、頭を休めたいとこです」

「分かりました。昼餉ひるげが御用意でき次第、お世話役が起こしに参ります」

「はい」

 案内された和室に荷物は運ばれており、光太郎はしかれていた布団に入り眠った。

 昼過ぎには起こされ、部屋の中で馳走にあずかる。

 お膳が下げられた後、旅館内の中庭へと案内された。


 枯山水のそばを通り、池やししおどしを見ながら歩く。小川も作られていた。

「見事な日本庭園ですね。これって元々アトランティスにあったんですか?」

「いえ、光太郎様をお迎えするにあたり、日本の資料を元に新築されました。ここは光太郎様専用の迎賓館です」

「げっ! ……失礼しました。何でわざわざ和風に?」

「おひい様が『光様を知るには、日本の文化を知らなければなりません』とおっしゃいましたので、家臣一同協力してつくりあげました。皆、最初の頃は乗り気ではありませんでしたが……」

「いきなりでは、無理もないですね」

「ところが造園をすすめるうちに、その芸術にすっかり魅了されてしまいました。そこに佇む自然の美しさにやすらぎを感じ、感動したのです。戦闘しか知らない、我ら星騎士には縁のなかった世界でした。今では全員が侘び・寂びに病みつきになっております」

「……そうですか」

(パシフィスじゃオタク文化、ここでは伝統文化か……何か間違っているような……まあ人の趣味をとやかく言うべきじゃないね。これもカルチャーショックか)


「ですが、見よう見まねで作りましたから、やはり日本の造園技能士様を、招きたいと思っております」

「なるほど、早く戦争を終わらせたいですね」

「はい、切に願っております。それでは、こちらへお入り下さい」

「へっ?」

 光太郎が質問する前に、世話役は去ってしまう。

 目の前にあるのは二枚のふすま

 不自然に立っており、横から見れば庭に苔岩があるだけで、襖の裏側も見える。

「なんか変だな? とりあえず開けてみるか――ぶわっ!」

 光太郎の顔に湯気がぶつかり、片手で仰ぐ。

 湯気が収まっていくと、視界がはっきりして見えるようになる。

「光様、ご一緒に入りませんか?」


 目の前には岩風呂にかっている、裸の輝夜がいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ