それぞれの反応
以下、各国の反応。
メガラニカ王国。
「お兄ちゃん、凄い! 凄い!」
「ヒナ、これは是か非でもあの方を、お婿さんにしなければ!」
「はい、ママ!」
ムー王国。
「流石は光太郎さん」
「へーやるわね。あの子がそうなの? 有香」
「ええ、母さん。私がお慕い申し上げている方です」
母娘の側では、早紀が苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
レムリア王国では、アンジェラとイザベルが感想戦。
「光太郎殿、お見事!」
「すばらしい作戦でした。メタル・ディヴァインの操縦だけではなく、指揮官としても有能なのですね」
「まさに!」
アンジェラはかなり興奮していた。
「まずはルカ女王を挑発し、王の力を使わせて体力を消耗させました」
「そして、戦力はセイレーンしかないように見せかけて、最後に海中用アプサラスを使いました。漁網を引っ張って見せたのは、しかけた爆弾から目をそらすためですね?」
「ええ、仮に気づいたとしても、疲労していたルカ女王は防げなかったでしょう。漁網をかぶせられた時点で負けでした。切り札を隠しておくのは、いかにも光太郎さんらしい」
「ルカ女王は一体ずつセイレーンを倒すか、海中に潜ってから光太郎殿を急襲すべきでしたね。しかし、女王としての面子がそれを許さなかった」
「その結果、光太郎さんに手玉に取られたわけですが……エリス、いい加減になさい!」
「ぶすぶす……ぐちぐち……」
イザベルはふてくされてるエリスを怒鳴る。
エリスはボソボソ喋りながら、むくれ顔。
光太郎がいなくなってから、公務や訓練には顔を出すようにはなったが、不機嫌なので場の雰囲気を悪くしていた。
捨て台詞を残して、エリスはモニタールームを出て行く。
「光太郎が勝つのなんて、最初から分かってたことよ! どうせ勝負をせまられて、断れなかったんでしょ! 光太郎は女に甘すぎるのよ!」
と言いつつ光太郎の姿を見て、内心喜んでいた。
(早く帰ってこい、バカ!)
そして、アトランティスの輝夜は……テレビの前で高笑いしていた。
「おほほほほほほほほほほほ!」
すまし顔の主の変わりように、側近二人は驚いていた。
「こ、これだけ笑ったのは生まれて初めてね。ルカのあの無様な格好は、二度と見られないでしょう。勝負するように焚きつけたのは私ですが、ここまでやるとは……ほほほほほ」
ひどい悪友だった。ひとしきり笑った後に輝夜は言った。
「次はアトランティスに来ますね。光様を国賓として遇するのですよ。さて、どんなおもてなしをしようかしら……」
「それではおひい様、失礼します」
出て行く二人に気も止めず、輝夜は嬉しそうな顔でテレビをいつまでも見ていた。
これに楓と霞は嫉妬と怒りをつのらせる。しばらく無言のまま通路を歩く。
やがて、思い立ったように楓が口を開いた。
「霞……話がある」
「……分かったわ」
楓の目は殺気をはらみ、拳は固く握りしめられていた。
(姦物ゆるすまじ!)
そして、とある無人島では――
「此奴は何者?」
スクラップ置き場にいる五人が、修復したテレビを見ていた。
彼らはマゲイアの偵察部隊、情報収集が任務だった。
「ネットの情報では、地球人の神山光太郎。そして我らの隕石ロケットを防いだ男です。准尉」
「他惑星が戦争に介入してきてるの?」
「そこまでは……分かりません」
「情報不足ね……いずれにしろ厄介だわ。要注意人物として覚えておきましょう」
女准士官は光太郎を見て、一抹の不安を感じていた。
場所はパシフィス王城の貴賓室に戻る。
「ちび、ちび、ちび! ちんちくりん!」
(あー不条理だ……)
今の状況は、椅子に座ったルカがピコピコハンマーで、光太郎の頭を叩いていた。
光太郎は安全ヘルメットを被って正座。
ルカはパスローブ姿で、濡れた髪をロボットがドライヤーで乾かしていた。
色粉をシャワーで洗い流したばかりである。
あの勝負の後、パウラとカイラが仕切って後始末をした。
ルカと光太郎を海水浴場から誘導し、用意していた無人機に乗せて、人目につかないよう王城へと帰らせた。
勝負の結果は、引き分け。
判定理由は「両者ともに一撃も与えておらず、爆風は無効」。
傍から見れば光太郎の勝ちだが、パシフィス王国としての体面もあり、引き分けにするのが落としどころだった。
光太郎としては結果などはどうでもよく、この仕打ちから早く逃げたかった。
(まあ確かにね、挑発するために悪口は言ったよ。でも、勝負が終わってからやり返されるのは納得いかねー)
光太郎は叩かれながら、仕方なく謝る。
「はい、はい、悪口言ってすみません」
「そもそも何で勝っちゃうのよ! あたしに負けて、『ルカ様、参りました。下僕として一生お側に、お仕えさせてください!』って、あんたは言うはずだったのにー!」
「いや、絶対言わないって……」
「あー! もうー!」
怒りが収まらず、ルカはピコピコハンマーを投げつける。
「分かった、分かった。本当に悪かった。お詫びと言っちゃ何だけど、これプレゼント」
光太郎が贈り物を差し出すと、ルカは怒り顔から笑顔に大変身。
贈り物を震えながら受け取った。
「ふ、ふん! こ、こんな物貰ったからって許してあげないんだからね! 全然、嬉しくもないんだからね! 大事になんかしないんだからね! 枕元において毎晩、愛でたりしないわ! 金庫に入れてあげるもんですか!」
「だったら、捨ててもいいよ」
「そんなことするわけないでしょ!」
ルカは本気で怒った。
(うーむ、わけがわからん。一体どうしたいんだ? 考えるだけ無駄か)
「じゃーこれでお暇するよ。おもてなしありがとう」
「また、来なさいよ」
光太郎は手を振り部屋から出て行く。
ルカは箱を開け、中身をいつまでも眺めていた。
外は夕暮れ時、暑さも和らいでいた。
光太郎はバイクに乗り、パウラとカイラに見送られる。
「お名残おしいです。明日の朝でもよろしいのでは?」
「ルカに恥をかかせましたからね、袋叩きにされないうちに退散しますよ。パウラさん、カイラさんお世話になりました」
「いえ、こちらこそ。お気をつけて」
「はい、どうもです」
光太郎は去って行った。
「ほんとに良い方ですね。姫様のお相手に相応しい」
「ええ、これで姫様がおとなしくなってくれると、私達も助かるんですけどねー」
「すぐには無理でしょうねー」
「「はあ――――」」
盛大にため息をつく二人の耳に、大声が聞こえてきた。
見れば、プラカードを掲げ国旗を持つ集団が近づいてくる。
「ご覧くださいこの数! ルカ姫を辱めた光太郎を、非難すべく人々が集まっております!」
デモ隊を扇動しているのはトム。
「あいつ、やりすぎね。カイラ」
「ええ、これ以上光太郎様を貶めると、レムリア王国が黙ってないでしょう」
「お仕置きが必要ね!」
「懲らしめましょう! パウラ」
パウラとカイラは、指をポキポキ鳴らして走り出す。
星騎士は伊達ではなく、あっという間にデモ隊を力ずくで解散させた。
そもそも無許可のデモなので、首謀者のトムは引っ立てられる。
その夜、顔を腫らしたトムがテレビで謝罪させられた。




