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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅰ

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ルカの招待

 緑豊かな木々の通りを、光太郎は歩いていた。

 時々立ち止まって、バナナや椰子やしの木を見上げて、良い気分になる。

 自然観賞に言葉はいらず、ありのままを感じるだけだ。

 木陰のおかげで、暑さが和らいでいた。

 光太郎の後ろを、サイドカーはゆっくりと付いてきている。

 運転しているエクリプスが、話しかける。


「ジロジロ見られてるな、光太郎。流石は有名人だ」

「うー、視線が何か痛いよ。軽蔑と尊敬の眼差しが半々だ」

 レムリア王国では、誰もが光太郎に好意的だったので、特に気にすることもなかった。

 しかし、パシフィスの首都ポセイドニアに入るなり、冷たい視線を浴びることとなる。

 ヒソヒソ話が聞こえてくる。

「あれが噂の……女たらし」

「鬼畜の地球人」

「好色英雄」

 あまり……いや、かなり良く思われてはいない。

 それでも近寄って、危害を加えようとする者はいなかった。

「……ひどい言われようだ。悪いことをした覚えはないんだが……」

「うーむ、何か理由があるんだろうな、聞いてみるか?」

「やめとく、変質者扱いされそうだ――うっ! この音は! またかよ」


 駆け足の音がやかましく、うしろから聞こえてくる。独特のテンポを刻む騒音だ。

 振り返った光太郎のそばを、ルカが通り過ぎて走り去る。

 今度は立ち止まりもせず、猛風を起こしながら見えなくなる。

 呆気にとられた光太郎がふと足下を見ると、ハンカチが落ちていた。

「これってわざと?」

「だろうな」

「とりあえず拾うか……あっ!」

 綺麗な刺繍ししゅうがされてあるハンカチは、風に飛ばされてしまった。

 ルカは何処からともなく姿を現して叫ぶ。

「待って――! あたしのハンカチ――――!」

「姫様――! あっちです!」

 ルカとお付きの二人は、慌てて追いかけていった。

 必死になって追いかける理由は、ハンカチを拾った者と結婚する風習が、パシフィス王国にあるからだ。

 正式な婚姻の約束であり、他の誰かに拾われては大変なことになる。

 幸いルカは、ハンカチを何とか取り戻した。


 ここまでのルカの行動で、光太郎はポンと手を打つ。

「ああそうか、ようやく分かった。そうすると、次はベタな展開になりそうだ。絶対アレ(、、)をやるだろうなー……」

「光太郎、ルカ女王の意図が読めたのか?」

「うん、何のことはなくて、昔からある漫画のネタを、ルカ女王はやってるだけなんだ。現実には起こらないけど、女の子にとっては憧れなんだ」

「……なるほど」

「でもね、力のある女王に……されたら、僕が危険だ。だから……しようと思う」

「むう、それは確かにひとたまりもないな、バイクでは防げん。この身がメタル・ディヴァインでも、耐えられるかどうか……」

「だよねー」

 光太郎はエクリプスと相談して作戦を練る。

 まずは地図を確認して、屋台通りへと向かう。お腹も空き始めていた。

 レストラン街に屋台が並んでおり、美味しそうな食べ物に目移りする。

 フルーツの甘い匂いが鼻孔をくすぐり、肉の焼ける音は食欲をそそる。

 空腹でなくてもヨダレが出そうだった。

 光太郎もすぐに食べたいのを我慢して、気配を探りながら歩く。


「やっぱりいた……」

 前方路地のかどに隠れてるルカを発見した。

 あっさり見つけられた理由は、影法師が見えたのと、何より声が聞こえてきたからだ。

「ふ――! ふ――!」

 興奮した闘牛が鼻息を荒くしてるようである。

(こわ――――!)

 光太郎は聞こえるように、わざと足音を鳴らして進む。

 角に差し掛かる直前で、忍び足で横歩きして道から外れた。

 そしてエクリプスが録音していた足音を鳴らすと――

「遅刻! 遅刻! ――えっ!」

 食パンを咥えたルカが、角から飛び出してくる。

 目の前には誰もおらず、勢いをつけすぎたルカは止まれなかった。

 足がもつれて転び、顔を地面にこすりながら進み、お尻を上げた状態で止まった。


 食パンは吹っ飛び、動物達の前に落ちる。

「ギョーギョー!」

「ワンワン!」

「シャ――――!」

 落ちた食パンを巡って、カモメと犬と猫が仁義なき戦いを始めていた。

 ネズミが争いの隙をついて先にかじりつく。

 ルカはぶつぶつ言いながら、そのまま動かなくなった。


 我関われかんせず、光太郎は屋台で注文する。

「フルーツ・ハンバーガーを一つ下さい」

「あいよ、どうぞ」

「あれ、二つ?」

「お前さん光太郎だろ? ヒーローから金はもらえん。取っときな」

「そんな、悪いですよ」

 すると、店主は倒れたままのルカを指さす。「何とかしてやれ」と目で語っていた。

 仮にも自国の女王が、無様な状態にあるのは目に余るのだ。

「分かりました。ではお言葉に甘えていただきます」

 礼を言ってから、転んだままのルカに近寄って差し出した。

「食べる?」

「食べるわよ!」

 むくりと起き上がり、光太郎からハンバーガーをひったくって、貪るように食べた。

 ルカは派手に転んだ割には、怪我一つしていない。女王は頑丈である。

 やけ食いしながら、文句をつける。

「何で、避けるのよ? 劇的な出会いが台無しじゃない!」

(いやーまともに体当たりされたら、僕が大怪我しますよー。女王は一般人より遥かに強いんだから、察してくれー!)

 光太郎はそうは言えず、苦笑した。


 ルカからすれば「素敵で偶然な出会い」をしたいだけなのだが、やり方がアバウト過ぎた。

 憧れた少女漫画をそのまま実行するには、いろいろと無理がある。

 もっともルカは騙され、操られていたのだが。

「男女は運命的な出会いをすると結ばれる」と言った黒幕は輝夜。

 ルカはそれを信じ込んで行動し、まだ終わっていない。


 ハンバーガーを食べ終えると、光太郎を睨みながら威嚇し始め、レンガ造りの壁に追い込む。

「あ、あのー……」

 光太郎はビビり、ルカの手が顔に近づくと、思わず目をつぶってしまう。

 ルカは後ろの壁を、思い切り叩く。壁ドンのつもりだが、威力がありすぎた。

 右手と左手で交互に叩くと、レンガは壊れ大音を立てて壁は崩れる。

(壁ドンじゃない! 壁ドゴン、ドゴンだ! 胸キュンなんてありえねー。はい、股間が縮み上がりました)

「…………」

「?」

 ルカはうつむいて両手を下ろし、しばらく黙っていた。

 やがてブルブルと手を震わせながら、封筒をおずおずと出す。

 招待状を直接手渡そうとしていたが、ラブレターの引渡しにも見える。

(そっか、このは強がってはいるけど、ホントは臆病なんだな)

 実際ルカは「受け取ってくれなかったら、どうしよう?」と恐れていた。

「もらいます」

 光太郎が両手で恭しく受け取ると、ルカはほっとして笑う。

「た、確かに渡したからね! ちゃんと読みなさいよ! 絶対読みなさいよ!」

 くどいくらいに念押ししてからルカは離れ、顔を見られないように去っていった。

 にやけた嬉し顔を、見せたくはなかった。

 光太郎は封筒を開けて手紙を取り出す。

「慌ただしいなー、どれどれ……」


[放課後、伝説の木の下で待つ。ルカ]


「……果たし状かよ、もう突っ込む気も失せる。大体どこへ行けばいいんだ?」

「最後に座標とバーコードが印刷されてある。何のことはないパシフィス王城だ」

「それにしても漫画や恋愛ゲームネタを、そのまま使うのは止めて欲しいな」

「もはや日本の文化はアヴァロン全土に浸透している。いくさしか知らなかった者にとって、文化は刺激が強く興奮してしまうものだ。もはや大衆文化(ポップカルチャー)だ」

「文吾さんも、富士吉博士もはまってたしなー。でもかなり曲解されてる」

「その国によって、独自の文化に変化するのは仕方がない。日本の寿司が外国で変わったようにな。まあルカ女王が知ってるオタクネタも、これで尽きたことだろう。これ以上はあるまい」

「うん、取りあえず夕方になったら、訪ねよう」

 光太郎はパシフィス観光を、楽しむことにした。

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