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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
女帝戦 Ⅰ

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女王会談

 光太郎はレムリアの王城に呼ばれ、歩きながらエリスと話をしていた。

「女帝戦?」

「そうだ」

「マゲイア戦争の真っ最中なのに?」

 光太郎は国同士で戦うのかと思い、エリスに質問する。


「女帝戦というのは、五王国内でのトップリーダーを決める戦いだ。中身は陸奥学園でやった、スポーツ試合のようなものだ。戦争で国同士が共闘するにしても、いちいち軍議してたら間に合わん。それで、女帝に選ばれた者に絶対命令権が与えられる」

「なるほど合理的だ」

「まあ、アトランティス女王が女帝になるだろう」

「もう決まってるの?」

「女帝はアヴァロン星全土で、戦闘指示を出す総司令官だ。戦略眼がなければ務まるものではない。叔母上ならやれると思うが、私には無理だ。レムリアを守りながら、指示に従うことになるだろう」


「アトランティス女王って優秀なんだ。だったら女帝戦の意味がないような……」

「女王同士が力比べして、お互いの力量を計るのが真の目的だ。並行して五王国による合同軍事演習も行われる。あと、国の精鋭をぶつけ合う武闘大会もある」

「なるほどね、手合わせすれば実力が分かるわけか。国内だけでの訓練よりは身になるね」

「星騎士達は腕試ししたくて、ウズウズしてる。武闘大会で名を上げるのは栄誉だ。成績によって序列ランキングも決められるから、皆本気だ」

「盛り上がりそうだね。女帝戦については分かったけどー……」

「どうした?」


「何で僕が女王会談サミットに呼ばれるんだー? どう考えても部外者だろ?」

 エリスは手を合わせて頼み込む。

「すまん光太郎。四王家からのたっての要望で『アヴァロンの英雄えいゆう』を紹介しろと言われた。レムリア王国としては断れなかった」

「うう、見世物かよー……」

「今日の初会談は顔見せで、挨拶と雑談で終わるだろう。次の会談からは呼ばれないと思うから、よろしく頼む」

「しゃーないか、今回は我慢する」

「本当にすまん。ではバーチャル会議室に入ろう」


 扉を開けて、二人は会議室の中に入る。

 エリスはフリル付きの、純白ドレスを着ていた。

 嫌みにならない程度に、宝石を身につけ簡素な化粧をしている。

 素が良いので十分綺麗に見える。

 流石にラフな格好で、女王会談に臨むわけにはいかない。

 光太郎は学園のブレザーを着て、代わり映えしなかった。


 会議室の中は殺風景、豪奢ごうしゃな円卓テーブルと椅子があるだけだった。

 背景は投影されるので、不要な物はいらない。 

「光太郎は後ろの椅子に座ってくれ、後で紹介する」

「分かった」

「じゃーつなぐとするか、アーサー、チャットルームにログイン」

命令受諾アクセプト女王クイーン

 <アーサー>はアヴァロン星のアシスト人工知能(AI)。国中をサポート管理している。

 バーチャル・チャットシステムが起動し、会議室の中に風景が現れ始める。

 青い空と透き通った海、その上に浮かぶ空中庭園に場所は変わる。

 円卓テーブルの周りは花に彩られた。

 肉眼で見える、仮想現実世界バーチャルリアリティだ。


 エリスの前には、アトランティス女王の輝夜が、足を組んで座っていた。

 髪はまとめて結い、花かんざしで飾っている。

 着物は花魁風のストラップレスドレス。

 赤とピンクを基調に、花と蜂の刺繍がほどこされていた。

 肩を出してるので非常になまめかしい。流し目で光太郎を見ていた。

 他に人は見当たらず、三人ほど足りない。


「あれ一人だけか? もう開始時間のはずだが……はっ!」

 エリスが後ろを振り向くと、二人の女性が光太郎の前に並んでいた。


 一人は小さい女の子、身長は百五十センチ。

 着ているのは黒のゴスロリ・ワンピース。

 髪は銀髪のツインテール。

 つぶらな瞳にあどけない顔で、光太郎に笑顔を向けていた。


 もう一人は、やや褐色がかった肌をした少女。

 茶髪でセミロング・ウェーブの髪型。

 透け透けのアラビアン衣装をまとい、腰に手を当て肘を張っている。

 口角を上げ、勝ち気な目で光太郎を見下ろしていた。


「……えーと、あのー近い」

 いきなり目の前に二人が現れたので、光太郎は面食らう。

 しかも、じーっと見られては、気恥ずかしくなってしまった。


「こらこら二人とも、殿方が困ってるでしょう。席に戻りなさい」

 助け船を出したのは輝夜、二人は渋々席に着く。

「さて、開始時間になりましたので、会談を始めさせていただきます。もう一方ひとかたは後からいらっしゃる予定です。進行役は私が努めさせていただきますが、よろしいですね?」

 全員がうなずいた。


「まずはお集まりいただき、感謝いたします。そして『女帝戦』実施にも賛同してくださり、皆様にお礼を申し上げます。国同士は遠く離れていますが、今後もこうして交友を深めたく思います」

 輝夜はカンペもなしに、前口上を流暢りゅうちょうに話した。

 格好はエロいが、才知に長けているのは間違いない。へりくだった言い方は、人を不快にはさせず、まともな人物に見えた。

 ……この時までは。

「それでは、自己紹介をしましょう。まずは私から」

 輝夜は足を組み替え、太ももを見せつける。


「アトランティス女王の輝夜姫と申します。輝夜とお呼びください。身長は百六十五センチ、体重五十キロ……バスト九〇、ウエスト六〇、ヒップ九十二です。肌は手に吸い付くようなモチモチ肌で、感触は抜群。乳首の色は……見てみます?」

「ぶっ!」

 光太郎は思わず吹き出した。

(体重とかスリーサイズって普通隠すもんじゃないのか? それとも開けっぴろげな人なのか? アトランティス女王恐るべし!)

「やめんか、この変態! 女なら恥じらいを持て!」

 突っ込みを入れたのは、褐色肌の少女。


「あたしはルキーナ・Q・パシフィス。パシフィス王国の女王よ、ルカって呼びなさい。特技は泳ぎね、誰もあたしには勝てないわ。そうね、あんたには泳ぎを特別に教えてあげるわ」

 ルカはでかい態度である。指された光太郎は、取りあえず返事をした。

「はあーどうも、よろしくお願いします」

「ちなみにチッパイのルカです」

「やかましい! 牛乳うしちち女」

(ああ、この二人は親友なんだな) 


 二人の間柄を察していると、踊りながら銀髪少女が近づいて来る。

 スカートを翻しながらクルクルと回り、光太郎の前にくると両手でスカートの裾をつまみ、深々と頭を下げて挨拶した。

「ヒナノ・Q・メガラニカなの。ヒナって呼んでほしいの、お兄ちゃん」

「…………」

(お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん……ああ、一度は言われてみたかった。なんて甘美なささやきだ。喜久子姉さんはいたけど一人っ子だったしなー、ああ、可愛いなあー)

 光太郎は完全に陶酔トリップしており、ヒナの笑顔にうなずくだけだった。


 ヒナは光太郎が喜色満面なのを見て席に戻る。

 途中、見下したような目で輝夜とルカを見た。

 邪悪な笑みを浮かべ、ヒナは勝ち誇る。ドヤ顔は光太郎側からは見えない。

 二人は奥歯を噛みしめ、悔しがった。

(まだ、勝負はこれからよ!)


 エリスは黙って聞いてはいたが、頭は沸騰しはらわたは煮えくり返っていた。

(こ・い・つ・ら――――! 全員光太郎狙いか! 姉上達だけでも厄介なのに、更におじゃま虫が増える。まあ遠くにいるから直接手は出せないと思うけど……光太郎も鈍感すぎるわ!)


 狙われているとは露程も知らず、光太郎はのんきに女王達を見ていた。

(うーむ、女王会談と言うよりはコスプレパーティだな。みんな綺麗だから、目の保養にはなるけどね)

「レムリア王国の女王どうぞ」

 エリスは怒り顔で立ち上がる。


「新女王になったエリス・Q・レムリアだ。よろしく頼む。そして彼が、わ! た! し! の! ディヴァイナー、神山光太郎だ!」

 大声で自分のものだと宣言したつもりでも、他の三人はどこ吹く風だった。

「それではこう様、どうぞこちらの席へ」

「いーや、あたしの隣に来なさい!」

「お兄ちゃん、こっちに来て」

「ゴラァー!」

 光太郎争奪戦は<アーサー>の声で中断された。


《ムー王国女王が入室されました》

 すかさず輝夜が補足説明する。

「このたび、長らく行方知れずになっておりましたムー王国の王女様が、無事アヴァロンに御帰還なされ、新女王に即位されました」

 花壇のアーチをくぐり、歩いてくる女性がいた。

「皆様、拍手でお出迎えください」

「まさか!」

「え――――!」

 エリスと光太郎は、その姿を見て驚く。

 

 彼女はストレートタイプの、ウェディングドレスを着ていた。

 両手には白のグローブをはめ、胸元には真珠のネックレスがある。

 ロングストレートの黒髪は、光沢があり美しい。

 この場で一番、女王らしい姿だった。

 彼女は優雅に挨拶をする。


「有香・Q・ラ・ムーです。皆様どうぞよろしくお願いいたします。そしてエリス、光太郎さん、お久しぶりです」

 有香は二人に笑顔を向ける。

「有香!」

 エリスは名を叫んだ。

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