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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
エリスと光太郎

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部活動体験

 立派な道場看板を見ながら、ドアを開けると竹刀の音と、かけ声が同時に聞こえてくる。

 地稽古の最中で、男女の声が入り交じり気合いが入っていた。

 今日平は部長のところへ行き話しかけると、竹刀と防具を持ってきてくれた。

 エリスに防具をつけさせながら、不安そうに聞く。

「ほんとに大丈夫? いきなり試合だなんて……」

「かまわない。ルールは覚えてきた」

 エリスは淡々と応えた。不安や怯えはなく、平然としている。

 無人機との死闘を経験したエリスにしてみれば、これはお遊びに近い。

「……怪我はしないでね」

 不安そうに女子部の部長は離れる。今日平も険しい顔つきをしていた。

「剣道部もそうだが、うちの学園はスポーツはかなり強いぞ、全国大会の常連だ。危なくないか?」

「僕としては、相手の方が心配なんだけどね」

 今日平の不安をよそに、試合が開始される。

 エリスは試合場の中に入り、礼をして白線まで進み構える。一本勝負。


「始め!」

 審判の宣告が終わるや否や、エリスが相手の面を一瞬で打った。

 竹刀の音が、道場内に響く。

「いっ、一本!」

 道場内は静まりかえった後、騒がしくなる。

「今の動き見えたか?」

「いや、全然見えなかった」

「次いけ、次!」

 女子部員達は次々と倒され、男子部員までもがエリスの相手をした。

 意地になった男達が本気でかかるも、何もさせてもらえず、竹刀で打たれるだけ。

 エリスにしてみれば、動きが止まって見えており、勝って当たり前。


「異星じ――ゴホン! って本当だったんだな!」

「信じられんのも無理はない」

(……やっぱり歯が立たないか、エリスの動体視力と身体能力は地球人より遥かに上だ。格闘技でへこますのは無理か……)

「面倒だ。残り三人まとめてかかってこい」

 エリスは傲慢な台詞を吐く、口調は投げやりで試合に飽きたのが分かる。

 これに激高した残りの部員が、合図も待たずに躍りかかった。

「この野郎!」

「面! 胴! 小手! だったな、言うのを忘れてた」

 三人が崩れ落ちるのを尻目に、エリスは試合場から出る。

「これでは鍛錬にもならん」

 エリスは防具をぞんざいに外しながら、不満を言う。

 光太郎としては怪我人が出なくてほっとしている。

(“突き”は禁止して正解だった。やっぱりエリスの力は想像以上だ)


 剣道部の体験……いや、部活荒しは終わった。

 去り際に男子部長がすがるように言う。

「看板だけは持って行かないでくれー!」

「……いや、道場破りじゃないから」

「ネタにだけしておきます」

 四人は次の部へと向かった。


「突きが主体の競技か、悪くない」

 フェンシング部に来たエリスは、早速防具に着替えて、エペ剣を振り回していた。

 それを見ている部員達の顔は暗い。明らかにびびっている。

「どうしたんだ?」

「それがな、とっくにエリス姫の剣道部破りの話が、伝わってるらしい」

「あーほんとだ。学内サーバーに撮影動画が上がっている。早いな」

 光太郎はスマホで確認した。

「てなわけで、やる前から戦意喪失」

「そっか、無理もないな」

 今日平と話してるのも束の間、すでに試合が始まっていた。

 エリスが三段突きを繰り出すと、相手はもんどり打って倒れる。

 目にも止まらぬ早技で、避けようがなかった。

 慌てて他の部員が駆け寄るが、大事には至らず安心する。

「次の相手は誰?」

 エリスが部員達を見回すが、誰もが顔を背けた。

 一番強い部長があっさり倒されては、名乗りを上げる者はいない。

「ちっ!」

 舌打ちして、ふてくされたエリスはその場を去ろうとする。

 それを呼び止めた者がいた。

「エリス、私としましょう」

 有香が防具をつけ、剣を携えていた。

「いいのか? よし! やろう」

 二人はすぐに試合用コートに入り、一礼する。

 今日平が不安顔で光太郎に聞いた。

「お嬢様はフェンシングの経験はあるのか? 素人じゃないのか?」

「うん、全くないと聞いた。でも入門書は読んだそうだから、大丈夫だろ」

「何だそりゃ! どう見てもエリス姫は、桁違いに強い。止めた方がいい!」

「まあまあ、今日平。見てなって」


「アレ!」

 審判の号令で、エペの試合が開始される。

 両者ともに間合いを一気に詰めて、接近戦で戦いだした。

 エリスの目にも止まらぬ突きを、有香は全て払いのける。

 攻撃の間をついてすかさず反撃する。有香の突きも鋭い。

 それを紙一重でエリスは躱し、更に激しく打ち合った。

「すげ――!」

 二人とも後ろに下がらず、その場から一歩も動いていない。

 間合いもとらずに、凄まじい応酬を繰り返していた。

「あははは! これは楽しい、とても楽しいぞ有香!」

「私も楽しい、全力を出せるのがとても嬉しい!」

 好敵手――ライバルがいてこそ、人は切磋琢磨できる。二人はようやく巡り会えたのだ。

 周りの者はみな唖然呆然あぜんぼうぜん。誰も二人の間に入り込む余地はなく、固唾を飲んで見ているしかなかった。

 ただ一人、冷静に戦いを見つめていた光太郎は気づく。

「むっ! まずいな」

 剣戟の音が変わったのだ。危険をいち早く察知する

「みんな、下がれ!」

 光太郎の警告に、慌てて見学者達は一斉に後ろに下がる。

 バキン、と二人の剣が同時に折れた。

 打ち合いの激しさに、剣がもたなかったのだ。

 折れた剣は回転しながら宙を舞い、天井近くまでのぼって急速落下。

 剣は床に突き刺さり、光太郎の目の前でXの字を描く。光太郎は尻餅をついた。

 有香は慌てて、光太郎に駆け寄る。

「光太郎さん、大丈夫ですか!?」

「はい何とか、これでここもお開きですね」

 部員や教員らも近づき、心配して声をかけてくる。

「訓練用とはいえ、もろい剣だな」

 我関せず。エリスは折れた剣を放り投げ、一人で更衣室へと向かった。


「見たか? 聞いたか?」

「ああ、格闘部を総なめにして支配下においたそうだ」

「すげえな、あのお姫様!」

 野球部のグラウンドの周りに、観客が大勢おしよせていた。

 エリス目当てなのは言うまでもない。最後の勝負はフリーバッティング。

 投手が一人に十球を投げるか、三振すれば終わり。


 投手は一年生、名前は真中直球。スポーツ特待生である。

 一五〇キロの球を投げる期待の新人で、プロのスカウトも注目していた。

 ただ、まわりが持ち上げるので、真中は天狗になっており言動も悪かった。

「おいおいソフトボール部と間違えてないか? びびって泣いてもしらねえぞ」

「言葉の意味がわからん。とにかく投げろ」

「そうかい、いくぜお姫様!」

 真中は振りかぶって、ボールを投げた。

 剛速球が〇.四秒ほどでホームベースを通過……しなかった。

 金属バットが球をとらえ、真中の頭上を飛び、フェンスを越えてホームラン。

「あ、あれ、おもわず手加減しちゃったかな? 俺」

 真中は動揺した。失投以外では誰にも、打たれた事などなかったからだ。

 気を取りなして本気で投げ込むも、再びエリスに柵越えされる。

 真中は真っ青になった。自慢の速球が立て続けに打たれては、プライドはズタズタになる。しかも女子に。


「やっぱりすげー! お姫様」

「だな、信じらんねー!」

 観客はどよめき、エリスを絶賛する。

「これじゃー体験させる意味が無い。だったら……」

 光太郎は落ち込んだ真中を見て、伝令役の部員にあることを頼み、マウンドに向かってもらった。

 そして、次のバッターの有香にはあることを耳打ちする。

「わかりました。やってみます」

 真中はびびっていた。震えながらも三球目を投げる。

 しかし球が遅い。これではまたホームランかと思いきや、エリスのバットは空を切った。

「なっ!」

 驚いたのはエリス、とらえたはずのボールにバットが当たらなかったからだ。

 真中が投げたのはフォークボール、打者の手元で落ちる変化球。

 その後もスライダー、カーブと変化球でエリスを空振りにした。

「卑怯な!」 

「三振だエリス、ベンチに戻れ!」

 むかつきながら戻ったエリスに、光太郎は言った。

「変化球も野球での戦い方だ。卑怯でも何でもない」

「あんなの打てるわけがない!」

「確かに球筋が手元で変われば、バットに当てにくい。それでも打つ方法はある。有香さんを見てろ」


 へこんでいた真中は、自信を取り戻す。

「なーんだ、いけるじゃん俺、ふふん」

「お願いします」

 ヘルメットを取り有香は挨拶をする。

「今度は藤原のお嬢様かー、俺が勝ったらデートしようぜ」

「よろしいですわ」

「よっしゃー!」

 しかし、意気込んで投げた全ての変化球が打たれた。

 渾身こんしんの力で投げた直球も柵を越え、真中はマウンドにうずくまる。


 打ちひしがれた真中の元へ、監督が歩み寄った。

「真中よ、悔しいか? お前がなぜ負けたか分かるか?」

「今日は調子が悪かっただけっす!」

 涙ながらに負け惜しみを言う。

「たとえ調子が悪くても、エースは勝たねばならん。試合は待ってはくれんぞ」

「くっ!」

「お前はまだ若い、一歩、一歩、つまずきながら進んでいけ、そしてあの星を目指すのだ!」

「オスッ!」

 二人には惜しみない拍手がギャラリーから送られた。感動してもらい泣きしてる女子もいる。

(まだ星は出てないけど、突っ込むべきじゃないな。投手は悔しさをバネに成長しそうで、良かった……エリスは話にならん)


 光太郎としては、打てなかった理由を少しは考えてほしかった。

 だが、エリスは反省もなく答えだけを求める。

「有香、どうやって打ったんだ?」

「それは……」

「エリス、家に帰ったら教えてやる。それと僕と勝負だ」

「本気か? 怪我をするぞ」

「それはない」

 光太郎は断言した。

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