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イン・ディヴァインマスター 銀河の救世主  作者: 夢野楽人
南海漂流

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大号泣

 静寂がその場を支配する。

 オルワンガル基地内に吹く、風の音だけが聞こえていた。

 女王達は小玉が何を言ったのか、理解できなかった。

 人は都合の悪いこと、嫌なことは脳が完全否定する。

 次に、自分が信じてる事が絶対正しいので、発言した者を疑う。

 たとえそれが、事実であったとしても……。

「前線から離れてるオルワンガルは、安全」

「マゲイアは降伏か逃亡して、もう敵はいない」

「星騎士達が守ってる基地に、攻め込んでくる馬鹿はいない」

 普通に考えれば、誰もがそう思う。だからこそ、小玉が嘘をついてるものと決めつける。

 

「嘘…………」

「信じない! ありえない!」

「光太郎いるんでしょ? どこー!?」

 返事はかえらない。

「…………」

 小玉は何も言わず、うなだれたままだった。

 拳を固く握ったまま、悔しさをにじませている。手から血がこぼれ落ちていた。


 技術者である小玉は女王達と一通り面識があり、それなりに性格は知られている。

「ぶっきらぼうだが、真面目で優秀」

 無駄を嫌いおべっかは使わず、冗談を言ったりはしない。

 女王達と対等に渡り合い、いつでも正直にこたえる。

 ふだん、小玉は背筋を伸ばして前を向くが、今は肩を落として震えているのだ。

 その様子を見れば、「嘘つき」などとは言えない。

 第一、光太郎が自分達の前に姿を見せないのは、どう考えてもおかしい。

 どこを見回しても、やって来る気配はなかった。

 もはや認めるしかなかった。

 認めたくはなかった……光太郎がさらわれたという事実を……。


 女王達は顔面蒼白となる。

「有香……」

「エリス……」

「「うわ――――――ん!」」

 二人は抱き合って泣き出す。

「びえ――――――――ん!」

 それにヒナも加わり、輪をつくってガン泣き。号泣は基地全体に響く。

「も、もう、私、生きてられない! ア゛――――――!」

「お、お、に、じゃあ――――ん!」

「あぐっ! えぐっ! おぐっ!」

 もう言葉にならない。

 もらい泣きにより、悲しみが相乗効果で増大する。

 さっきまで、喧嘩していたのが嘘のようだ。

 これが光太郎でなければ、好きな男でなければ、取り乱しはしなかっただろう。

「つっ!」

 輝夜は自分の体をつねって痛みを与え、正気を保つ。泣き崩れるのは簡単だ。

 その前にすべきことがあり、何とか感情を押し殺す。やはり、リーダーである。

 

 ルカは悲しみの前に、怒りが少し勝った。

 目に涙を浮かべながら、ツカツカと歩いて小玉の前に来る。

 震える手で、うつむいている小玉の胸ぐらを、つかみ上げる。

 小玉はされるがままで、声も上げず抵抗もしない。

 罰を甘んじてうけようとしてる、罪人のようだった。何より、小玉自身が自分を許せない。

 ルカは怒鳴り、小玉を問い詰める。


「あんた強いでしょ! なにしてたのよ? 光太郎がさらわれるの黙って見てたの!? ふざけんな――――!」

「……すまない……全部、私のせいだ……」

「この――――!」

「およしなさい!」

 殴りかかろうとするルカの手を、輝夜がつかんで止めた。

 ルカは脱力し、泣き出す。それ以上、暴れようとはしなかった。

「うっ……ううううう――!」

 そのまま崩れ落ち、膝を抱え顔をうずめる。三人と一緒に、大泣きを始めた。

 輝夜は昔を思いだす。

(……あの時以来ね。ルカがここまで落ち込んだのは……)


 それだけ全員、光太郎を本気で好いていた。だからこそ争い、喧嘩して泣きもする。

 女だから泣くのではない。女だからこそ愛しい者を思って泣けるのだ!

 男の涙は許されず、歯を食いしばってこらえるしかない。

 女性は代わって泣いてくれる。

 もし、誰も泣いてくれる存在がいなかったら、これほど哀しいことはないだろう。

 

 ただ、輝夜は泣くのを我慢し、小玉に近寄って優しく抱きしめる。

「大変でしたね、辛かったですよね? 小玉さん」

「……う、うわ――――ん」

 輝夜の胸を借り、小玉も大泣きする。いたわりの言葉をかけられ、涙腺が決壊した。

 取り返しのつかないことになって、小玉は自分を責めていた。

 突然の出来事に思考は完全に硬直し、頭は真っ白のまま。

 女王達に凶事を告げるのは辛かった。ライバルとは言え、泣かせたくはなかった。

 

 光太郎誘拐事件は、様々な要因がからんで起きている。小玉一人のせいではない。

 その中で、小玉は必死で頑張り連れ去られるのを、懸命に防ごうとした。

 しかし運悪く、あと一歩およばなかったのだ。悔やんでも悔やみきれない。

 

 しばらくすると、小玉は泣き疲れて落ち着く。

「ゆっくりでいいので、何があったか教えて下さい」

 ず、事件の真相を輝夜は知りたかった。対処はそれからである。

 小玉はうなずき、語り始める。

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