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第11章 固い絆


 アスティリアはイーリス王妃とはペンフレンドだった。

 恐れ多くもどうして王妃殿下とそんな関係になれたのかというと、王妃殿下とアスティリアの母親のエリスティアが学園時代の親友だったからだ。

 アスティリアが王宮で王妃を実際に初めて見た時、母親とは正反対のお淑やかで優しげな美人だと思った。

 しかしそれは見かけだけで、その性格は自分の母親と同じくらい芯が強い女性だということを手紙のやり取りで感じていた。

 

 なにせ二人は学園にいた三年間、首位の座を争って年中火花を散らしていたらしいから。

 国王の成績が一番だったというのは、あくまで男性の中でのこと。つまり、総合ではずっと三位だったのだ。

 

 侯爵令嬢だったエリスティアは、学園時代に婚約者であった王太子から酷い扱いを受けていた。

 そしてその時に、彼女を慰めてくれていたのが、隣国からの留学生だったイーリス王女だった。

 エリスティアは王太子の婚約者であったために、入学早々ご令嬢達の妬みや嫉妬心で様々な苛めや嫌がらせをされていた。

 最初のうちはそれを上手に躱していのだが、まだ十五の令嬢だ。いくらしっかりしているとはいえ、だんだんと疲弊していった。

 なにせ婚約者も家族も彼女に無関心を決め込んで助けてはくれなかったからだ。

 そんな彼女に唯一救いの手を差し出したのが、ライバルのイーリス王女だったのだ。


「くだらない者達のせいで、せっかくのライバルが腑抜けになって競えなくなったら、せっかくの学園生活がつまらないものになってしまうでしょ」


 そう言って。

 慎ましやかでおとなしそうな見かけと違って、彼女は芯の通った勝ち気な性格だったのだ。

 しかも正義感というか義侠心の強い女性だった。その上小国とは言え一国の王女であったので、彼女が間に入ると大概のことは収まっていたのだ。

 ところがあの学園の卒業の日、イーリス王女は高熱を出して式やパーティーに参加できなかった。

 もしその場にいたら彼女を助けられたかも知れないのにと、体調が回復してその一連の出来事を知ったイーリス王女は酷く悔やんだ。なにせ挨拶もできずに彼女とは別れ別れになってしまったのだから。

 

 その後王女は帰国せずに親友を探し回った。そしてようやく親友の居所を見つけたのは卒業から二月後だった。

 エリスティアは辺境伯の婚約者になっていて、とても幸せそうだったのでイーリス王女はホッとした。

 ところが、その直後に彼女に大きな不幸が襲った。

 そう。イーリス王女は、悪女の男爵令嬢に騙されて親友を不幸にした憎き男と、なんと政略結婚させられてしまったのだ。

 

 それを知って、今度はエリスティアの方が酷く後悔した。自分を探すためにこの国に残ったせいで、イーリス王女は王家に目を付けられてしまったのだと。

 自分が幸せになった代わりに親友を不幸にしてしまった。申し訳なくて居ても立っても居られなくなった。

 そして謝りたくても王宮に居る彼女とは連絡の取りようもない。

  

 やがてホーズボルト辺境伯は、毎日泣き続ける最愛の婚約者のために何とかしなければと、学園時代に親しくしていた後輩に連絡を取った。

 その後輩とはベンテイガ伯爵の嫡男で、ライオネル王太子の側近をしているノーマンだった。

 ノーマンは学園時代、毎回首位の成績を取るほど頭脳明晰でありながら、武芸にも優れた文句の付け所がない男だった。

 その上真面目で裏表がなく、しかも忖度など一切せずにはっきり物を言う人間だった。

 それ故に正しき人々からは信頼はされていたが、一部の人間からは疎まれてもいた。そのために陰で上級生達から集団リンチを受けることも度々あった。

 

 しかしある日その集団リンチをしていた連中は、突然全員学園を退学させられ、家から廃嫡され、ノーマンの目の前から姿を消した。

 そして暫くして、彼らが国境近くの砦で働かされていると知った。しかも傭兵ではなく、その傭兵の下働きとして。

 

 それ以後誰もノーマンに手出しする者がいなくなった。

 ノーマンはホーズボルト辺境伯の嫡男であるガースンのお気に入り。だから彼にちょっかいを出すと、国境近くの砦へ飛ばされるぞと。

 

 そう。大勢の上級生に取り囲まれて乱暴され、ボコボコにされながらも、ノーマンがたった一人で立ち向かっていた所に、たまたまガースンが通り掛かったことがあったのだ。

 その時ガースンは一緒にいた友人に教師を呼びに行ってもらい、彼自身は(すけ)っ人として間に入って、そいつらを叩きのめしたのだった。

 

 ノーマンはガースンの男気とその魔獣の如き強さにスッカリ惚れ込んでしまい、毎日彼のもとに通って武芸の鍛錬に励むようになった。

 その結果、彼は近衛騎士よりも強い最強の文官と呼ばれることになった。

 そんな優秀な側近を持ちながら、彼の忠言を受け入れずに遠ざけたのだから、ライオネル王太子は本当に愚か者だったのだ。

 

 ノーマンは王太子の婚約者であったエリスティアとも顔なじみで、彼女のことには心を痛めていた。それ故に彼は、先輩であり恩師であるガースンの依頼を二つ返事で引き受けた。

 こうして彼の仲介により、エリスティア=ホーズボルト辺境伯夫人はイーリス王太子妃と手紙のやり取りができるようになったのだった。

 そして文通するようになって、エリスティアは親友イーリス王太子妃の思いがけない秘密を知ることになったのだった。


エリスティアの知った親友の秘密とは、その親友が息子に語った秘密とは少し?いやかなり違います!


読んで下さってありがとうございました!

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