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第十八話 神からの加護

この世界の一部の人間には神からの加護を受けれると聞いたことがある。

加護とは、神から守ってもらうみたいなイメージ。

あらゆるダメージのカットや魔法の無効化などが行えるとされている、加護というもの。


俺が今いる150年前まではあったという話だ。

特定の森に立ち入り、そこで特定の人物に遭遇すると、神からの加護を受けれるらしい。


これは、宗教的な話も入っているが、実際デイユーなんかは神の加護を自分でつけていたりしている。


しかし、神は加護を授けれる人数が決まっている。

それは、1人だけだ。


この世に存在すると言われている神の数は9人。

そして、加護を授けていない神は3人。


まだチャンスはあるはず。

俺の今いる街のユナイテッドシティから隣町のビーフマーガンを通り、北に抜けた森に『ラームイ』という、強力な加護を授けてくれる神がいると聞いた。


「こんな森に本当に神なんているのか?」


森の奥深く、樹海といってもおかしくない場所だ。

薄気味悪い森の奥にどんどん進んでいく。


今は春先だというのに、なんだか肌寒い。

日本では春なんて、少し熱いぐらいが普通だったような気もするが、俺の気温情報は基本的にニュースだし、一年中快適な部屋の中で過ごしてきた俺には実際のことはわからない。


「そなた、私の森で何をしておる」


振り向くと、オレンジ髪の女性。

歳は20歳ぐらいに見えた。


「いやぁ、ちょっと加護が欲しくて」


「私のか?全然良いぞ」


すんなりOKしてもらった。


「自己紹介を忘れておった。私の名はラームイ、生前は風魔法使いとして、この世に名を馳せておった。」


「よろしくお願いします」


俺が深々を頭を下げると、突然俺の体に光のドームらしきものが出てきた。

これが加護というものなのか。

右下にドーム型のバリアのようなアイコンが表示され、それと同時に移動速度UP、攻撃力UPのバフなどが付与された。


「期限は、1年。切れたらまた更新しにくれば良い。」


「なんですか、その某有名レンタル店のカードみたいなシステムは」


「ちなみに、年に一回」


「500ロル取るんですよね」


「その通り」


加護にはどうやら、年会費がかかるみたい。

神様でも、収益がないと、どうしようもないものなのか。


俺も、学生の時は親に小遣い前借りしにいってたよなぁ。










★☆★☆★☆★☆★☆★☆★










加護を受けた俺は、中級モンスターは余裕で狩れるようになってきた。

この世界に来たての頃なんて、スライムですら倒せなかった俺が、今では中級モンスター。

しみじみと成長を感じた。


『田中って、いいやつだったけど、別に警戒する必要なんてないんじゃないですか?』


俺は、頭痛耐性を獲得し、気軽にディオス様と話せるようになった。


『いや、あと2日後には必ず暴走し始める。お前は知らぬようだが、今でも暴走は止まっていないのだぞ』


『いや、だってこの前カード見せてもらったんですけど、無害そうですたよ?』


『いや、あのカード偽物のカードだぞ』


『え?じゃあ、俺、騙されたってことですか?』


『そうだが』


『なんで、その時言ってくれないんですか!』


『お前が頭痛がなどと、ほざくから!!』


せっかくの、田中との接触チャンスをものにできなかった、、、。

振り出しに戻された感が半端ないのと、騙されたという怒り、性格の悪さに怒りを覚えた。


『計画的犯行?』


『その通りだ』


さらに、怒りが心の中で膨らんだ気がして止まない。

そこまでして、この世界を手に入れたいと思う奴の気持ちが分からない俺には、ただただ無意味に人が傷つけられているという現状を変えたいと思った。


しかし、俺には力がない。

デイユーに匹敵する程の力の持ち主に、俺は勝てるのだろうか。

まともに殴り合ったことがない、温室育ちのもやしみたいな体で、はたして勝てるのだろうか。


不安しかなかった。


『今の田中の位置を教えてください』


『オブゲートという、ここから2つ山を超えた先にある街だ。この街は、特殊なポーションが買えたりすることで有名だ。』


下準備、、、そんな感じか、、、。


着々と準備を進めている田中。

俺は、迷わずMPを消費して、移動速度上昇×5を使用した。


ここからだと、約1時間走れば着く距離だ。

俺は神加護の力で、体力は底知れないものとなった。

しかし、常時MPを消費している。


右足に力を入れて、スタートダッシュを決めた。

スタートが成功すると、俺の足は自動的に動く。

この世界に来てから、そんな能力が勝手についていっていた。いわゆる、特殊スキルってやつ。


俺は怒りを胸に、オブゲートへと足を走らせた。

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