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八八艦隊育成計画 第二章 皇国の行く末  〜Chapter 2 Future of Red Sun〜  作者: 扶桑かつみ
chapter4

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81/126

chapter4_2_09 リターン・マッチ

 ユーラシア大陸全土が戦乱の渦中にある頃、依然世界最大の経済力を誇るアメリカ合衆国は何をしていたのでしょうか。

 

 この頃の合衆国の基本外交政策は、自らの経済的発展のための再度の日英を排除してのアジア利権の確立です。

 

 この目標を目指して、太平洋戦争で壊滅した海軍を莫大な国費、しかも膨大な国債を投じて再建し、海軍を中心とした軍備の増強につとめ、そして支那大陸への援助を行い、その足場の確保に努めています。

 

 特に1939年に欧州での戦乱が始まって以後、アジアでの英国など欧州列強の覇権が衰えたのを機会として進出を強化してきます。

 

 ですが、依然として日本帝国がアジアで、そして太平洋で合衆国の前に立ちはだかり、何かとうまくいきません。

 これは、先の戦争でアジアの橋頭堡をことごとく失っている事も影響しています。

 この点は、日本の目論見通りです。

 

 その上、大日本帝国は、「東亜新秩序」などと言う表面的なきれい事を掲げて、東南アジア、インド洋、ソ連極東と41年に入るとそれこそ4カ月ごとにその勢力を軍事力によって拡大していき、自由と平和を愛するアメリカ市民から見れば、その脅威はナチス・ドイツに匹敵するか、それ以上のものに映ります。

 

 これは、太平洋戦争とそれ以後の政府が、国民の目をアジアにばかり向けさせている事で、なお一層補強されます。

 

 合衆国国内では、日本が新たな侵略を開始するごとに、日本脅威論を唱える声が高くなり、日増しに侵略的傾向を持つ帝国主義国家を誅せよと言う論調すら作られていく事でしょう。

 


 また、欧州に対しては、全体主義国家ナチス・ドイツと共産主義国家ソヴィエト連邦、そして帝国主義国家の権化たる大英帝国が互いに好んで血を流しあい、勝手に彼らのルールでゲームを行うのなら放っておこうと言う風潮が強く、史実のように英国などの自由主義国家を援助しようと言う風潮は、ほとんどありません。

 

 まあ、ドイツがユダヤ人迫害をしているので、この点での非難がわき起こる可能性がありますが、それも程度問題で国家戦略上の議題に上ることはありません。

 

 ただ一つ欧州情勢で注意されるのは、宿敵たる日本帝国がドイツ、イタリアなど枢軸国との軍事同盟を結んでいる事です。

 

 これは、日本がドイツが対ソ開戦を行うや、ただちに同盟の履行を行い、ソ連に対する段階的な宣戦布告を行った事からも、合衆国が対日開戦をすれば、いずれ枢軸国の全てが合衆国への宣戦布告を行ってくる可能性が高く、特に強大な軍事力を誇るドイツが欧州戦線を片づけて、大西洋へと繰り出してくる可能性が高いからです。

 


 しかし、欧州の情勢を気にしていては、日増しに勢力を大きくする日本帝国に対して不利になるばかりで、ここで座視して眺めていては、今度こそアジア利権から完全に追い出されるばかりか、世界中からすら孤立する事になります。

 

 そして、日本がインド洋とシベリアにかまけ、ドイツがソ連と英国の二国相手に攻めあぐねている今こそ絶好の機会とも言えます。

 

 夢よ再び。

 日本が両手をしばられ太平洋に十分な戦力を回す事の出来ないこの時を利用して、再び短期決戦を目指して太平洋を進撃し、今度こそ東京湾での観艦式を行うのです。

 

 戦争を1年以内で日本を降伏させてしまえば、他の枢軸国が本格的に対米戦備を整える前に、戦争を収拾する事ができ、世界中の列強が今行っているような、互いの尻尾に食らいつくような、複雑な二正面戦争をする事無く合衆国の戦争目的を達成でき、これ以上国庫を圧迫することなく戦争を終わらせる事ができます。

 

 開戦時期は、合衆国海軍の戦艦の整備が完了し、新型空母が出そろう1941年冬。

 

 しかもこの時期なら、日本の陸軍力はシベリアから全く動かすことが出来ず、厳冬期の満州シベリアで待機している空軍戦力も容易に転戦できません。

 さらに、主敵となる強大な日本海軍もインド洋作戦での消耗から、常識的に見れば半数程度しか出撃する事ができないはずです。

 


 一方、インド洋、東シベリアと破竹の進撃を続けている日本ですが、1941年夏ぐらいからこのアメリカの動きに流石に気が付きます。

 

 当然、太平洋方面での警戒態勢を高め、インド洋での作戦艦艇の大半を引き上げて、矢面にたつ連合艦隊の整備と再編成に務めます。

 もちろん、太平洋の防衛体制を強めるための兵力のシフトも、重要度の高い地域から優先して行われます。

 

 当然、アメリカ軍が最初に侵攻してくるのは、先の戦争で形だけの独立をして、日本の勢力圏となっているハワイです。

 

 当地には戦争の勃発と共に、「第一次」太平洋戦争後の講和条約とは違い、何かと理由をつけて一応の防衛艦隊と航空隊、さらには若干の地上守備隊すら置いていますが、現状ではとうていアメリカ軍の本格的侵攻に耐えられるものではありません。

 

 かと言って、ハワイは日本本土から遠隔地にありすぎて(7400km)、海軍主力を常駐させる事もなかなかできません。

 特に、すでに莫大な戦費を使い英ソと戦争をしている現在の状況では、不可能に近い事です。

 

 ですから海軍としては、ハワイの防衛は実質的に不可能と考えており、この地を遅滞防御の拠点程度としか考えておらず、本格的な戦闘は先年と変わらずマーシャル諸島とされます。

 このため、在ハワイ艦隊もそれに即した艦隊しか配備されておらず、彼らが米艦隊の侵攻を遅らせている間に、主力の集結を図る方向で調整が進められます。

 

 また、アメリカが戦争を吹っかけてくるとは言え、すぐにインドの解放を中止する事もできないので、こちらにもある程度の戦力を割かねばならず、日本軍としてはやはり苦しいところです。

 


 では、アメリカが太平洋で戦争を吹っかける前に、もう一度日米を中心としたアジア・太平洋の兵力配置を海上戦力の面から見てみましょう。

 


◇日本海軍編成表(1941年冬当時)


 第一艦隊:

「紀伊」、「尾張」、「駿河」、「近江」

「富士」、「阿蘇」、「雲仙」、「浅間」

重巡:4隻、軽巡:1隻、艦隊型駆逐艦:16隻


 第二艦隊:(再編成中)

「葛城」、「赤城」、「愛宕」、「高雄」

「加賀」、「土佐」、「長門」、「陸奥」

重巡:3隻、軽巡:5隻、艦隊型駆逐艦:16隻


 第一機動艦隊:(再編成中)

「蒼龍」、「飛龍」、「雲龍」(1F)

「龍驤」、「龍鳳」(3F)

「金剛」、「榛名」

重巡:2隻、軽巡:1隻、艦隊型駆逐艦:16隻


 第二機動艦隊(再編成中)

「翔鶴」、「瑞鶴」、「千鶴」(2F)

「祥鳳」、「瑞鳳」(4F)

「比叡」

重巡:4隻、軽巡:1隻、艦隊型駆逐艦:16隻


第四艦隊(南遣艦隊):(南・東シナ海艦隊)

軽巡:3隻、艦隊型駆逐艦:8隻


第五艦隊:(北太平洋艦隊)

軽巡:3隻、艦隊型駆逐艦:2隻、特設巡洋艦3隻


第七艦隊(遣布艦隊):

「伊勢」、「日向」

「千歳」、「千代田」、「千早」、「千景」(11F)

軽巡:4隻、艦隊型駆逐艦:8隻


第八艦隊(遣印艦隊):

「高千穂」、「穂高」

「日進」、「瑞穂」(12F)

重巡:4隻、軽巡:1隻、艦隊型駆逐艦:12隻


第六艦隊(潜水艦隊)(6個潜水戦隊):

「鹿島」、潜水母船:8隻

潜水艦(大型):54隻、潜水艦(中型):16隻


海上護衛総隊

「鳳祥」、「大鷹」、「沖鷹」、「雲鷹」(21F、22F)

軽巡:4隻、旧式駆逐艦:40~50隻

旧式護衛駆逐艦:40~50隻、海防艦:50~60隻 他多数


海軍航空隊

第一航空艦隊(在太平洋)

 第21航空戦隊、第22航空戦隊、第23航空戦隊

第二航空艦隊(在印度)

 第24航空戦隊、第25航空戦隊、第26航空戦隊


各定数(補用含まず):

 戦闘機:144 中攻:108 

 陸偵:24 輸送機:24 (飛行艇:18(偶数番号隊のみ))


母艦航空隊( )はスペア

 第一航空戦隊(1F):戦:80(12)爆:54(12)雷:54(12)

 第二航空戦隊(2F):戦:108(18)爆:54(9)雷:54(9)

 第三航空戦隊(3F):戦:36(4)雷(偵):24(2)

 第四航空戦隊(4F):戦:36(4)雷(偵):24(2)

 第十一航空戦隊(11F):戦:72(12)

 第十二航空戦隊(12F):戦:36(6)

 第二一航空戦隊(21F):戦:18(1)爆:18(2)

 第二二航空戦隊(22F):戦:18(2)爆:24(4)


他艦載水上機隊多数




◇アメリカ海軍編成表(1940年冬~41年夏当時)


 第一任務部隊(太平洋艦隊所属)

「インディアナ」、「モンタナ」、「サラトガ」(旧式艦)

「ノースカロライナ」、「ワシントン」、「サウスダコタ」

「アラバマ」、「マサチューセッツ」、「ロードアイランド」

重巡:4隻、軽巡:3隻、艦隊型駆逐艦:16隻


 第二任務部隊(太平洋艦隊所属)

「アイオワ」、「ニュージャージ」、「ミズーリ」

「ウィスコンシン」、「イリノイ」、「ケンタッキー」

重巡:4隻、軽巡:3隻、艦隊型駆逐艦:16隻


 第十七任務部隊(太平洋艦隊所属)

「エンタープライズ」、「ホーネット」(艦載機:160)

「ヨークタウン2」、「ワスプ」(艦載機:180)

軽巡:3隻、艦隊型駆逐艦:16隻


 第三任務部隊(大西洋艦隊所属)

「コロラド」、「カリフォルニア」

「レンジャー」(艦載機:90)

重巡:3隻、軽巡:1隻、艦隊型駆逐艦:16隻


 第四任務部隊(大西洋艦隊所属)

「テキサス」、「ニューヨーク」、「アーカンソー」

「ラングレー」(艦載機:90)

軽巡:2隻、艦隊型駆逐艦:8隻


 第六任務部隊(カリブ艦隊所属)

重巡:2隻、艦隊型駆逐艦:8隻


 潜水艦隊:

潜水艦:52隻、母船:4隻



イギリス東方艦隊(在アラビア海)

戦艦:R級2隻

軽巡洋艦:3隻、駆逐艦:16~23隻、潜水艦:14~19隻



オーストラリア、ニュージーランド艦隊

重巡洋艦:「キャンベラ」、「オーストラリア」

軽巡洋艦:リアンダー級:3隻


 1941年冬の時点だと、だいたい以下のようになります。

 

 なお、日本以外の基地航空戦力が計上されていませんが、これは、英国、合衆国ともにこの当時では、外洋はるかに攻撃できる基地航空戦力がほとんどないからと判断しました。

 

 また英国は、すでに亡国の瀬戸際ですでにインド洋に大量の洋上攻撃戦力を派遣する力を失っており、合衆国は陸軍航空隊が西海岸防衛しか考えてなく、海軍航空隊はただでさえ少ない予算を戦艦に食われてしまい、かろうじて機動戦力の母艦戦力を確保するのがやっとだと言う理由もあります。

 


 特記事項としては、艦隊編成で見てみると、日本では空母を中心とした艦隊が完全に編成されます。

 これは、英国との一連の戦いにより、空母とそれに搭載される航空機の威力が認められ、戦艦と並ぶ主戦力と位置づけられたからです。

 当然、基地航空隊の規模も戦時増産の影響もあり巨大化しつつあります。

 

 しかし、依然として合衆国海軍に対する漸減戦術が、先の太平洋戦争での戦勝の記憶から根強く生きており、混乱ばかりして損害と戦果の確認の難しい夜間水雷戦術こそ、潜水艦と航空機へと置き換えられますが、西海岸・ハワイからマーシャルに至る壮大な9段階にもわたる迎撃陣が考案され、それに即した艦隊編成が行われています。

 

 空母機動部隊が、強力な護衛戦力を与えられて再編成されたのも、この戦術の影響を強く受けています。

 

 ただし漸減戦術は、極めて規模の大きな作戦構想で、それ故兵力を動員するのに大きな負担があります。

 

 また、それまでの戦争の戦訓と、ドイツとの技術交流と英国との1年間の戦いにより、潜水艦による通商破壊とその防衛も重要視され、目的に即した艦艇が多数就役しつつあります。

 

 これは、マスプロ生産による海上護衛艦艇と中型潜水艦の大量就役と言う形で、1941年の秋頃よりその効果を現しつつあり、日本の計画では英国をドイツと共に完全屈服させる予定の43年夏までに、双方とも数百隻が建造予定になっています。

 しかし、現在は艦艇が登場してきたばかりで、まだその効果は上がっていません。

 


 一方、今回も戦争を吹っかける側となったアメリカ合衆国海軍ですが、その基本戦術は旧来とあまり変化ありません。

 

 これは、先の太平洋戦争の記憶が余りにも鮮烈であり、堂々たる戦艦による艦隊決戦こそが戦争の勝敗を決すると、軍部の上層部が強く思い込んでしまっており、それに則した艦艇建造と艦隊編成に心がけ、ここ数年の軍事事情は同盟国などが無いことも重なり、ほとんど無視されています。

 

 ただし、日本側が空母の集中運用で大きな成果を上げた事が伝わってきており、さらに日本海軍では空母を中心とした艦隊が編成されているので、あくまでその対抗上空母の集中運用が始まっています。

 しかし、すでに多数の実戦経験を積んでいる日本や英国と違い、その運用はまだ緒についたばかりで、手探り状態と言えます。

 

 また、合衆国海軍が決戦海軍を指向してしまったのは、合衆国国内の不景気が、侵攻型海軍や外洋海軍の建設を、予算の面から平時においては否定してしまっているからです。

 

 なお、英国との外交関係も依然平行線で、枢軸国のドイツも警戒しなければいけないので、全艦隊を太平洋に回航するわけにもいかず、二線級が中心ですが大西洋艦隊もそれなりの勢力を維持しています。

 なお、大西洋艦隊は対潜水艦戦闘を主眼においているので、太平洋艦隊のような艦艇の一極集中配備はされていません。

 

 あと、英国海軍ですが、これはインド洋でのシーレーンの確保と日本側シーレーンの破壊のための部隊が、かろうじて活動しているに過ぎず、また、日本軍が大兵力を引き上げたのでかろうじて艦隊が維持できているに過ぎません。

 

 もし、日本海軍が再びインド洋に大艦隊を派遣すれば、大西洋か地中海に後退するより他ない戦力でしかありません。

 

 英連邦のオーストラリア、ニュージーランドについても同様です。

 日本軍がやってきたら、名誉を守る戦い以外しようがありません。

 

 そして、英本国にはインドや太平洋に大兵力を派遣する余力はもうありません。

 


 次に日米双方の戦時建造計画を見てみましょう。

 なお、双方とも1939年に計画の策定が開始されます。

 


◆日本海軍 


 ◆第三次海軍補充計画(1937年)


高千穂級戦艦:「高千穂」、「穂高」(1936年予算で成立)

翔鶴級航空母艦:「翔鶴」、「瑞鶴」、「千鶴」

日進級航空母艦:「日進」、「瑞穂」

阿賀野級二等巡洋艦:「阿賀野」、「能代」、「矢矧」、「酒匂」

香取級練習巡洋艦:「香取」、「鹿島」

陽炎級一等駆逐艦:18隻

海防艦:4隻

甲型一等潜水艦:2隻

乙型一等潜水艦:6隻

丙型一等潜水艦:5隻


敷設艦:1隻

潜水母艦:2隻

給糧艦:1隻

高速給油艦:2隻

大型工作艦:1隻



 ◆第四次、緊急海軍補充計画(1939~41年)


大和級戦艦:「大和」、「武蔵」、「信濃」、「111号艦」(「111号艦」1941年中止)

白根級超甲巡:「白根」、「鞍馬」、「剣」、「黒姫」

大鳳級航空母艦:「大鳳」、「海鳳」、「翔鳳」、「白鳳」

天龍級航空母艦:「天龍」、「神龍」、「昇龍」、「白龍」、

        「黒龍」、「紅龍」

大鷹級護衛空母:「大鷹」、「沖鷹」、「雲鷹」、「海鷹」、

         「隼鷹」、「飛鷹」、「神鷹」、「天鷹」

(蔵王級一等巡洋艦:「蔵王」、「乗鞍」、「新高」、「白山」)(1940年中止)

綾瀬級二等防空巡洋艦:

「綾瀬」、「初瀬」、「水無瀬」、「音無瀬」、「黒瀬」


「秋月」級直衛艦:16隻

「夕雲」級一等駆逐艦:64隻

「松」級一等駆逐艦:96隻

海防艦:300隻~

甲型潜水艦:1隻、乙型潜水艦:24隻

呂号潜水艦:200隻~


給兵艦:1隻

給糧艦:3隻

高速油送艦:20隻

大型工作艦:3隻




◆アメリカ海軍 


 ◆ヴィンソン案(1936年~37年承認分)


ノースカロライナ級戦艦:6隻

「ノースカロライナ」、「ワシントン」、「サウスダコタ」、「アラバマ」、「マサチューセッツ」、「ロードアイランド」

アイオワ級戦艦:6隻

「アイオワ」、「ニュージャージ」、「ミズーリ」、「ウィスコンシン」、「イリノイ」、「ケンタッキー」

ワスプ級航空母艦:4隻

「ヨークタウン2」、「ワスプ」「レンジャー、「ラングレー」

アストリア級重巡洋艦:7隻

ブルックリン級軽巡洋艦:8隻

駆逐艦:32隻

潜水艦:16隻



 ◆スターク案(1939年、40年承認分)


ヴァーモント級戦艦:4隻

「ヴァーモント」、「ヴァージニア」、「ジョージア」、「ネヴラスカ」

ルイジアナ級戦艦:6隻

「ルイジアナ」、「オハイオ」、「メイン」、「ニューハンプシャー」、「コネチカット」、「デラウェア」

アラスカ級戦闘巡洋艦:6隻

「アラスカ」、「サモア」、「プエルト・リコ」、「ライン」、「アリューシャン」、「パナマ」

エセックス級空母:4隻

「エセックス」、「イントレピット」、「フランクリン」、「タイコンデロガ」

ボルティモア級重巡洋艦:8隻

クリーブランド級軽巡洋艦:20隻

アトランタ級防空巡洋艦:4隻

駆逐艦:215隻

潜水艦:120隻

給兵艦:6隻

高速油送艦:26隻

大型工作艦:4隻




 以上、日米双方とも国力と生産力に任せて、常識をどこかに置き忘れたような、無茶苦茶な艦隊建造計画を立案、実行します。

 これを見た瞬間日米の財務官僚は、揃って卒倒している事でしょう。

 

 日本海軍が目指しているのは、41年の方針改訂で水上打撃艦と航空戦力、護衛艦隊、潜水艦隊をそれなりにバランスよく揃えた一応の外洋海軍で、一方のアメリカ海軍が目指しているのは、どちらかと言えば戦艦を中心とした水上打撃戦を念頭に置いた決戦型海軍です。

 もちろん、どちらも双方の主観から見た場合としてと言う事になりますが。

 

 では、なぜそうなったのかと言えば、日本海軍は今度の英国そしてアメリカとの戦いは、双方との国力差から枢軸国全体による長期戦であると想定している(と言うより諦めている)からに他なく、一方のアメリカ海軍は、政府の方針(財政的問題)により修正短期決戦戦術を目指しているからです。

 

 また、八八艦隊計画以降、艦艇の規格化を旨としていた日本海軍は、日本そのものが巨大な国力を持つようになった影響と、複雑な戦略方針を実現するために多様な艦艇の建造に手を染めます。

 当然これは海軍が艦艇建造で暴走していると言う事が影響しています。

 なお、空母の建造が目立つのは、空母の極端な重視に走ったのではなく、戦艦については「八八艦隊」計画艦の近代改装で当面は十二分と判断されているからです。

 実際、4~6万頓にも達する巨大戦艦を16隻も抱える日本海軍の水上打撃力は、現状でも十二分に驚異的です。

 

 そうして計画されたのが、第四次以降の超大型戦艦、超大型空母、それぞれの目的で特化した巡洋艦、駆逐艦、護衛艦、潜水艦たちです。

 

 特に小艦艇は、日本の鉄鋼生産力と造船力の大躍進を反映した、ブロック工法などに代表されるマスプロ生産により、日本としては異常なほど膨大な数が計画されます。

 それは、松級一等駆逐艦96隻、海防艦300隻という膨大な数の完全に規格化された簡易構造の安価な護衛艦艇建造と、ドイツの「U-VII C type」をライセンス生産した呂号潜水艦が如実に表していると言えます。

 そして当然、建造スピードそのものも上昇しており、満載10万頓の「大和級」戦艦で4年、「大鳳級」航空母艦で3年半、「白根級」超甲巡で2年半、「天龍級」航空母艦で1年半の建造期間で完成予定で、商船改造の「大鷹級」護衛空母に至っては、41年秋には就役を開始しています。

 もちろん、一部の大型艦艇以外は、量産効果を重視した簡易構造の艦ばかりとなり、それまでの優美な日本艦とは少し違ったものになります。

 

 ただし、第四次から1941年夏ぐらいまでに計画された艦艇の合計予算は、艦隊随伴用の高速タンカーなどを含めると、少なく見積もっても何と50億円にも達しています。

 史実の1937年度の第三次海軍補充計画が約8億円だった事を考えると、如何に常識をどこかに置き去った数字か理解いただけると思います。

 戦艦を量産しているアメリカ海軍に至っては、さらにその二倍となります。

 

 なお、ここでの「大和級」戦艦は、第一章でも紹介した基準排水量9万頓、51cm砲三連装三基搭載のモンスターで、同じく「大鳳級」航空母艦も4.5万頓の装甲空母です。

 これら7隻だけで、概算12億円もの建造予算が必要となります。

 


 そして、アメリカ海軍は、1936年から財政的にかなり無理をして大型艦艇を建造をしてきています。

 また、不景気対策の一環として海軍増強が行われたと言っても、どん底の不景気の間に政府から受注を受けられず、日本(+英独)との価格競争に敗れた民間造船所の多くが倒産しており、このため、もともと異常な潜在的生産力を持つ鉄鋼生産や基礎産業こそそれ程問題ありませんが、軍需造船の生産はこの二つの艦隊計画でほぼ限界に達しています。

 特に戦艦を都合十年間で28隻(うち6隻は巡洋戦艦)も建造する事は、造船力全体に対しても非常に大きな負担となっています。

 

 また、航空機と空母の建造があまり重視されていない要因の一つとして、不景気の間に航空産業が大きな打撃を受けて、大きくない会社のいくつかが倒産ないしは勢力縮小してしまっており、この分野で利潤目的で売り込んだり、航空機を後押しする軍人を支援する企業そのものがないという現実的(政治的)理由もあります。

 そして、軍事産業の育成そのものを戦時体制のこの時期から始めなければならないハンディキャップは、戦艦の大量建造と相まって、本来日本の3倍以上の国力をもつ合衆国の国力を非効率に食いつぶし、日本との生産力差を大きく縮めてしまう結果になります。

 

 ちなみに、「ルイジアナ」級戦艦は、第一章でも紹介した基準排水量6万頓、48口径18インチ砲連装四基搭載の超モンタナ級になります。

 

 新たに計画された「ヴァーモント」級戦艦は、「ルイジアナ」級戦艦よりも強力な、基準排水量8万頓、50口径18インチ砲三連装三基搭載のオーソドックスな重戦艦になります。

 ただし、その戦闘力は史実の大和の五割り増し、この世界の大和とほぼ互角と言えます。

 


 ではここで、少しこの頃の戦時経済についても少し見てみましょう。

 

 アメリカ合衆国と長期の戦争をする上で欠かせない事ですので、つまらないかも知れませんが我慢してください。

 

 近代戦争とお金は、切っても切れない関係なのです。

 

 さて、太平洋を舞台としての戦争で最も大きな直接のファクターのひとつである造船力ですが、この当時の日本の造船力は、戦時の最大建造力は1年当たり約600万頓程度と見積もられ、対する合衆国は最大約900万頓程度となります。

 

 合衆国の数値が史実より若干低いのは(史実だとマキシマム1000万頓を超えています。

 )、1930年代後半の拡張が存在しないことと、景気の低迷が続き造船所そのものが減少しているからです。

 ハワイがアメリカの手にないことは、ほとんど関係ありません。

 分かりやすく言えば、開戦前のアメリカの生産力は史実の三分の二しかなく、戦時生産能力全体も史実の80%程度に低下しています。

 また、不景気の間に軍需に造船が割り振られた事から、民間造船の多くが失われており、さらにその間にこの分野での日本の躍進で市場を奪われた事なども重なり、合衆国全体の造船業そのものが衰えているからです。

 

 一方の日本が異常に大きく感じられますが、史実の1944年頃でも造船用鉄鋼さえ供給が行えていれば、年間300万頓の建造が達成可能(史実の二倍近い数値)だったと言う信頼性の高い資料もあるので、史実よりもこの分野での躍進が大きいのなら、この数字は十分可能です。

 しかも、八八艦隊建設前後に史実の戦中と同じぐらいの造船所を建造しているので、そこからさらに発展していれば、この数値は比較的容易に達成できます。

 

 また、造船力かそれ以上に重要な粗鋼生産能力ですが、日本が満州などの勢力圏を含めて約2000万頓、合衆国が約5000万頓程度になります。

 さすがにこればかりは合衆国が圧倒的に優勢です。

 ただし、開戦前の時点では、英国との戦争ですでにフル稼働に向けての軌道に乗っている日本と違い、アメリカはこれからですので、1941年の時点での生産力格差はそれほど大きく開いていません。

 それに、約2000万頓と言う数字は英独ソなどとならほぼ同等の遜色ない数字であり、低い数値ではありません。

 

 なお、ドイツの粗鋼生産力は日本より若干大きく、英国はこれよりもやや小さな数字となります。

 ただし、英国の場合は資源供給が絶たれつつあるので、これは潜在的な数値で現状では四分の三程度まで下がっています。

 なお、ソヴィエトの生産力は、枢軸国との戦いですでにウクライナ、モスクワが陥落し、そのためその地域の工業施設の大半が壊滅しており、さらに史実のような援助もほとんどないので工業プラントの戦争疎開をおこなってなお、その潜在力は戦前の半分程度、今の日本の半分にも達しません。

 

 次に、戦争の血液たる石油ですが、この世界の日本は近在に有望な油田をいくつか保有します。

 それは、樺太のオハ油田と満州の大慶油田です。

 まあ、大慶油田の名称は日本風(やはり昭和油田か?)に変更しているでしょうが、この二つの油田のおかげで、日本の石油生産力とその生産、加工による技術向上は史実とは全く違い、日本が戦争を行う上で十二分な数値をすでに確保しています。

 数値にすると、輸入に頼らずともだいたい1000万キロリットル程度の数値の確保は十分可能です。

 大慶油田の開発状況によっては、もっと大きな数値も実現できるでしょう。

 

 しかも、最大800万キロリットル程度の供給が可能なインドネシアの油田も手中にしているので、石油問題はさらに緩和しており、むしろアジア全体では余るほど存在している事になります。

 

 当然この数字は史実のそれを大きく上回っており、三倍の国力を達成した日本においても余る程あると言うことです。

 

 なお、史実日本では軍需関連以外の工業生産は、日華事変前後をピークとして一気に減少傾向に入り、以後敗戦まで上昇する事はありませんでした。

 特に軽工業分野は壊滅的になります。

 分かりやすく言えば、往年のソヴィエト連邦の工業生産のような状態だったのです。

 


 次は戦時財政です。

 日本の国家財政は、史実では日華事変の本格化した1938年の予算が35億円程度です。

 この時点での徴税率は対国民所得比較で約12%にも達しており、通常7%程度の税率と健全な国債発行として考えれば、この数字は本来20億円程度となります。

 決して短期間に日本経済が大躍進したわけではないのです。

 特に国債発行額は、異常です。

 

 そして、大東亜戦争最盛時の1944年の国家予算は、何と300億円を超えます。

 ただしこれは、国民所得の40%(!)が税金として徴収された事と全く裏付けのない膨大な国債などにより実現された数字で、まともに7%程度の税率とある程度裏付けのある国債発行なら、どれだけ大きく見ても50億円台前半に過ぎません。

 なお、日華事変以後税率は20%を超えていました。

 

 また、史実では日華事変以後の軍事費の対政府支出比は常に30%以上で、大東亜戦争末期には50%にもなりました。

 これは関連予算や臨時予算を排除した純粋な陸海軍の軍事予算だけですので、その他諸々をふくめれば、とんでもない比率に跳ね上がります(最終的な軍事費は、国家予算の8割に達する)。

 

 なお、史実日本と現代日本の貨幣価値の差は、おおよそ2000倍になります。

 これを実際想像する際の目安としてください。

 つまり、50億円だと10兆円程度です。

 現代日本がいかに巨大な経済国家であるか分かるでしょう。

 

 そして、この世界での日本はすでに1938年の時点で史実の2.5倍程度、1941年だと周辺地域を含めると3倍以上もの総合国力に達するので、この時点で増税抜きで60~70億円規模の予算が編成できる事になります。

 また、その気になれば衛星国の韓国と満州も動員でき、双方合わせれば5~8億円程度の国家予算を編成する存在として、それなりに利用できます。

 特に生産分野や後方支援としての人的資源の価値はかなり有望でしょう。

 

 そして1939年に緊張が高まり、1940年末から英国との戦争が始まりますので、1940年度から増税が実施され一気に12%程度の徴税額となり国債も大量に発行され、国家予算規模も120億円程度にまで膨れ上がります。

 さらに、総力戦を開始する翌年には税率は18%にまで跳ね上がり、国家予算そのものもその他諸々の増税や新たな税収、国債の発行により200億円規模に膨れ上がります。

 さらにこの間にも戦時特有の特異な形での好景気により経済も3年間は拡大を続けるので、さらに税収の増大が見込めます。

 ただし、国そのものがこの重圧に耐えられるのは、5~8年が限界です。

 もし史実のような無茶苦茶な国家財政を編成すれば、ピーク時で600億円以上の年間予算を編成できるはずですが、この場合3年で国家財政と国内経済は破錠を迎え、自動的に日本帝国は自壊します。

 

 なお、史実の大東亜戦争中に組まれた表面的な予算の合計額は約1000億円(実際は約1500億円、国富そのものを食いつぶした戦争末期の状況を加味すると7500億円にも上る)程度、うち直接の軍事費が約700億円、日華事変当時も含めると、軍事費はもう100億円ぐらい上乗せされます。

 

 そして、三倍の国力を持つと言う事は、その後を考え最大20%程度の増税と裏付けのある国債を発行するなら、5年間で1500億円程度の国家予算の編成が特に問題もなく可能で、総力戦と言う事で多少無理をすれば2500億円にまで増大できます。

 つまり、最大1250億円ぐらいの直接の戦費が5年間の間に調達できると言う丼勘定が出てきます。

 つまり関連予算を含めれば、戦争に使えるお金は5年間で約2000億円ぐらいとなるわけです。

 

(史実アメリカの3~5割程度か?)

 まあ、第一次世界大戦で世界中が使った戦費の合計額が4000~5000億円にも達しますから、どうと言う事ない数字なのかも知れませんが、この数字が日本という国を考えればいかに巨大かが伺えます。

 さぞ、豪勢な軍隊による戦争ができる事でしょう。

 (第二次世界大戦については、諸説あるので比較は避けます。

 )


 では、監督、演出、総制作費、キャスティングなどがだいたい出そろった所で、いよいよ次からは本幕へと移りたいと思います。

 


■オーバー・ザ・レインボー・プラン ▼



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