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八八艦隊育成計画 第二章 皇国の行く末  〜Chapter 2 Future of Red Sun〜  作者: 扶桑かつみ
chapter4

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chapter4_1_02 戦線拡大

 1936年に入りますが戦争は、日米双方ともシーレーン破壊と防衛に専念する事になります。

 そして、お互い長大な補給線を抱える為、補給線の維持に膨大な経費を要するようになり、大規模な作戦をおいそれと出来ないようになります。

 

 圧倒的第一線戦力を保持する日本海軍も、補給の問題から向こう三カ月程度は行動出来る状態になく、一方の米軍もパナマが途絶した事による混乱が続いており、戦時生産の大きな下方修正すらされます。

 

 また、破壊されたパナマの損害は、46cm砲の艦砲射撃を受けた太平洋側の損害は甚大で、基礎工事からのやり直しが必要とすら言えるような状態なため、再建には最低1年(最大2~3年)はかかる事になります。

 

 一方、日本側の交通線は、前線への補給こそかなりの苦労を強いられますが、同盟国の英国などがせっせと商品を売ってくれる事と、米海上交通破壊部隊の活動拠点が、基本的にアメリカ西海岸と極めて遠方になること、ようやく本格的に稼働するようになった海上護衛総隊などの要素もあり、アメリカ側に比べると比較的良好で、物資の安定供給に助けられた戦時生産の好調もあり生産力を増大させつつあります。

 


 お互いのシーレーン攻防戦が行われているさなかの1936年春、こうした膠着状態に再び痺れを切らした日本側は、三度いや四度めの正直を願って、今度こそアメリカ西海岸攻撃を企図します。

 それにより、今度こそアメリカ艦隊を完全に太平洋上から消滅させ、戦争に終止符を打つのが日本側の目的です。

 

 参加する艦艇数は連合艦隊の全力で、作戦はアメリカ西海岸の主要軍事施設の全てを、艦載機の爆撃と艦砲射撃で壊滅させ、当然何としてもそれを迎撃せねばならない米残存艦隊を撃滅し、戦争の帰趨を決定づける事を最終的な目標とします。

 なお、ブシドー大好きな日本海軍ですので、陸地目標はあくまで敵軍事施設であり、市街地が標的にはなっていません。

 

 この作戦で航空機が攻撃隊に組み込まれた理由は、パナマでその功績を認められたからです。

 

 そして1936年3月末、ハワイに集結していた連合艦隊の全力が再び出撃、一路アメリカ西海岸を目指します。

 

 その戦力は、戦艦・巡洋戦艦21隻を中核とした100隻以上の艦隊です。

 アメリカ人にとっては、「火星人襲来」ならぬ「日本人襲来」となります。

 

 一方、日本艦隊の出撃とその目的を暗号情報、潜伏潜水艦からの通報などから掴んでいたアメリカ政府は、本土が攻撃されるのに劣勢を理由に海軍の撤退は許されないとして、海軍に対して死守命令が出されます。

 

 もちろん、全航空部隊にも迎撃命令が出され、パナマのような失態のないよう各部隊に厳命されます。

 


 双方の作戦構想は、艦隊戦力で完全に劣勢に立つアメリカ軍は、日本の大艦隊に対して、ようやく新型が出揃ってきたそれなりに有効と思われる航空機の傘の下で作戦を行い、陸地と空母からの攻撃隊、そして潜水艦で日本艦隊を漸減し、彼らが艦砲射撃のために西海岸近辺まで押し寄せた時点で、自らの損害を省みることなくすり減った日本艦隊に決戦を挑み、これを撃退する予定です。

 

 一方、日本側はとしても、米軍が死にものぐるいの抵抗をしてくるのは予想しているので、今回はハワイよりも慎重に事が運ばれます。

 ですから、いつも通り大艦隊をひとまとめにして行動して、攻撃力に任せて撃滅するような作戦は採られません。

 

 もっとも攻撃の基本は、先だっての「パナマ方式」となります。

 

 パナマ奇襲で成功した、夜間に敵拠点に接近し艦砲射撃し、夜明けまでに敵制空権外に退避し(この頃の航空機の航続距離はひどく短い)、爾後空母より航空隊を放ち追い打ちをかけるものです。

 

 同じパターンの行動が好きな日本人ですので、一度作戦が成功しているのですから、今回はさらに作戦を練って西海岸攻撃に挑みます。

 


 日本艦隊は、一旦北上して米軍の目を誤魔化し、まずはシアトル、ピージュットサウンド工廠の破壊を行います。

 

 また、平行して付近の航空機工場や航空基地への攻撃も空母より行い、同方面に大きな被害を与えます。

  

 この攻撃は、アメリカ軍が北西部よりもカリフォルニアの防衛に重点を置いていた事から成功し、日本艦隊は特に大きな反撃を受けることなく沖合へと再び姿を消します。

 

 なお、そろそろB-17が新顔として、米陸軍航空隊に配備され始めますが、これはまだ初期型で性能も低くそれ程防御力が高くないので、日本艦隊に対しても有効な打撃を与える事はほとんどできません。

 それ以前に低空攻撃を考慮していない重爆の攻撃では、日本艦隊の牽制はできても撃退はできないのが現実です。

 

 日本軍の意図は、シアトル攻撃で慌てた米太平洋艦隊が、サンジエゴから出てくるのを期待し、これと次の攻撃地サンフランシスコ辺りで決戦に及び、これを撃滅する事にあります。

 

 それにより、アメリカは今度こそ本当に全ての海軍力を喪失し、常識的には講和のテーブルに着かなくてはならない筈だからです。

 

 そしてアメリカ側としても、これ以上日本軍の好き勝手させる訳にはいかないので、米太平洋艦隊は日本軍の襲来前にサンジエゴから全力出撃を行い、味方制空権下を北上します。

 

 一方の日本側も、潜水艦などからの情報で米艦隊出撃の報告を受けるので、受けて立つために米艦隊が存在するであろう海域目指して進路をとります。

 

 数日後、日米はお互い決戦海域に到達し、双方の出方を窺います。

 

 米艦隊は、付近にある全ての航空戦力と潜水艦戦力を、まず日本軍に叩き付けます。

 

 この米潜水艦隊の攻撃は、高速で動き回る艦隊に対しての集団攻撃など望むべくもなく、各個に捕捉、襲撃を行います。

 ですが、日本軍もこれまでの戦いで対潜戦術を向上し、しかも英国から最新の技術まで導入しているので、それ程うまくいきません。

 せいぜい、数隻の艦艇に雷撃が成功するだけで、制圧ないしは振り切られてしまいます。

 (群狼戦術は、幸運にみまわれるか余程入念に布陣しない限り、高速の艦隊の前には成果が低いものです。

 )

 つまり、ここでの損害は、戦艦と補助艦数隻が雷撃で損傷、後退ないしは駆逐艦程度の軽艦艇なら撃沈です。

 

 次に、遠距離攻撃ができるほぼ唯一の機体である、陸軍のB-17が大挙出撃し水平爆撃をかけますが、重爆撃機の水平爆撃は一般的にはわずかに0.5%程度で、1機あたり500ポンド爆弾を16発搭載していても、12.5機が投弾してようやく1発命中です。

 しかも、500ポンドでは戦艦には効果がないので、落とされる爆弾は1000ポンド爆弾になり、命中弾を得るには倍の25機が必要になります。

 

 そして、航空機がそれ程威力のある兵器だと認識されていない時代ですので、いかなアメリカと言えど、この高価な機体をそれ程大量に保有している訳ではありません。

 

 せいぜい1地域に100~200機程度。

 しかもいきなり全力で殴りかかれる訳ありませんので、1度に攻撃できるのはせいぜい半分、しかも攻撃しても日本艦隊も艦載機と膨大な数の艦艇から打ち上げられる高射砲で反撃してきます。

 そうなると、投弾できる機数がさらに減って、命中率も下がります。

 

 そして、100機で殴りかかっても命中弾はせいぜい2~3発。

 しかも、1隻に集中して命中するなど重爆の水平爆撃では夢物語ですので、戦艦と補助艦艇数隻にそれぞれ1発の命中弾が発生するだけです。

 

 そして、遠距離からの洋上攻撃ですので、一日これを波状的に繰り返しても、一地域から放てる同じ規模の攻撃はどれだけ頑張っても3~4回が限界です。

 つまり、のべ数百機を繰り出してもせいぜい10発程度の命中弾が発生するだけという寂しい結果になります。

 それに、初期型で防御力の低いB-17ですので、損害も結構バカにならないでしょう。

 

 結果、米陸軍航空隊の攻撃は、10発の1000ポンド爆弾で、5隻の戦艦が小破、5隻の補助艦が大中破で後退というのが最終的なオーダーとなります。

 

 そして、潜水艦の戦果も合わせれば、日本艦隊は1割程度は消耗している事になります。

 まあここでは、戦艦の中でも比較的鈍足な「長門」級、「加賀」級から1隻ずつ舞台から降りていただく事にしましょう。

 

 次にアメリカ側の三番手は、空母艦載機です。

 この時点での米空母は正規空母が2隻、艦載機数は160~180機程度。

 このうち攻撃機は半数以上としても100機です。

 

 ただし、日本側も空母は全力で出しているので(正規空母1、軽空母5、艦載機約200)、この相手だと同程度の迎撃と反撃が可能です。

 

 つまり、奇襲でもしないと、アメリカ側の攻撃隊は磨り潰されてしまうのがオチです。

 しかも、この時代ロクな雷撃機のない米艦載機ですので、攻撃が成功しても命中するのは1000ポンドとは言え爆弾ばかり。

 これでは、余程徹底した集中攻撃を行わねば、有効な打撃を与えることなど不可能です。

 

 しかも相手は、戦艦・巡洋戦艦を20隻も抱え、空母艦載機で上空を固めた大艦隊です。

 これに有効な打撃を与えろと言う方が酷と言うものでしょう。

 

 かくして、日米の空母による航空戦は、大勢から見れば小競り合い程度になり、日本側にさらに数隻の脱落艦が出ますが、一方の米艦載機も消耗し、日本側のカウンター攻撃を受けて、這々の体で撤退する事になります。

 

 なお、互いに攻撃力が低いので、大型艦の撃沈はありません。

 


 アメリカ側の漸減作戦は終わりました。

 ですが、1割程度の損害では日本艦隊がその進撃を止める程のダメージではありません。

 また、日本側としては、損害も受けたのだから是非とも米残存艦隊に出てきてもらうために、サンフランシスコ進撃を継続します。

 

 この時点での双方の戦力差は、戦艦数が日:米=20:10、補助艦が10:7の比率で、総合10:6と日本側が圧倒的に優勢です。

 

 米側としては、防衛に必要な7割の戦力にも届いていない事になります。

 つまり、純軍事的には戦闘を行うのは自殺行為と言うことです。

 ランチェスター・モデルに従えば、日本側は多くても4割の損害を受けたら米艦隊は太平洋上からきれいサッパリいなくなっている事になります。

 

 しかし、日本艦隊のサンフランシスコ攻撃を防ぐ手段は、夕日を迎えた時点でもはや太平洋艦隊をおいて他にはありません。

 

 航空隊が翌日に再攻撃できますが、それでは日本軍の攻撃が終わった後になり、戦力はすり減らせる事ができるので、それはそれで大きなポイントですが、この時点では意味がありません。

 翌日では、サンフランシスコは20隻の戦艦から戦術反応弾並の弾薬量をぶち込まれて、廃墟になった後です。

 

 かくして、米艦隊は全滅を賭して日本艦隊の迎撃が行われます。

 大統領、米太平洋艦隊司令部は揃って「死守」命令を出すのです。

 


 では、ここで双方のバトル・キャスティングを今まで通りの戦艦を中心に見てみましょう。

 

 日本側は、46cm×64、41cm×78、35.6cm×48で、アメリカ側が、41cm×40、35.6cm×32、30.5cm×34です。

 

 弾薬投射量が日:米=197:86で、排水量が日:米=79:29です。

 そして、日本側の戦力が1割減ですので、弾薬投射量が日:米=177:86で比率10:5は、排水量が日:米=71:29で10:4です。

 そして、補助艦比率は10:7でこれも日本側が有利なので、これを加味して総合的に見ると結局戦力比率は、10:6程度と日本側の圧倒的優位は動きません。

 

 つまり、トータルで見ると日本海軍は3割程度の犠牲で米艦隊を完全に海の藻屑に帰す事ができるわけです。

 

 しかも、日本側の八八艦隊計画艦を撃沈できる能力を純粋に持っているのはサウスダコタ級の2隻のみで、12インチ砲戦艦に至っては沈められに出撃して来るようなもので、総合的な数字が重視されるシュミレーションゲームでもないかぎり、第一線戦力として投入されるべき戦力ではありません。

 

 その上、アメリカ戦艦はそれぞれ日本側の2隻の戦艦から袋叩きにされるので、単純に見ると日本側に10隻の大きな損傷艦を与えた時点で、全艦撃破されている事になります。

 運が良くても、1~2隻を道連れに出来るだけです。

 

 ですが、せっかくですので、双方の水上部隊のキャスティングと戦術を細かく見てみましょう。

 


◆日本側(1936年3月時点)


■第一艦隊

「紀伊」、「尾張」、「駿河」、「近江」

「加賀」、「土佐」☆、「長門」、「陸奥」☆

「伊勢」、「日向」

重巡:3隻、軽巡:1隻、駆逐艦:1個水雷戦隊


■第二艦隊

「富士」、「阿蘇」、「雲仙」、「浅間」

「葛城」、「赤城」、「愛宕」、「高雄」

重巡:2隻、軽巡:3隻、駆逐艦:1個水雷戦隊


■第三艦隊

「金剛」、「比叡」、「榛名」

重巡:8隻、軽巡:4隻、駆逐艦:2個水雷戦隊




◆アメリカ側(1936年3月時点)


■第一任務部隊

「インディアナ」、「モンタナ」、

「サラトガ」、

「コロラド」、

「カリフォルニア」、

「テキサス」、「ニューヨーク」

「アーカンソー」、「ワイオミング」、

「ユタ」

軽巡:1隻、駆逐艦:2個水雷戦隊


■第二任務部隊

重巡:9隻、軽巡:1隻、駆逐艦:2個水雷戦隊


☆:空襲と雷撃により脱落後退した艦




 まず、キャスティングは以下のようになります。

 

 空母とその護衛艦は、双方とも後方に下がっています。

 

 日本側は、機動力の優位を使い相手を選び、当然第一、第二艦隊が有利な位置から、米主力艦隊を攻撃、第三艦隊は敵巡洋艦隊を牽制・撃破後ダメージを受けている主力艦艇に肉薄雷撃を行います。

 つまり、3つの艦隊の機動力の優位を使って局地的優位を作りつつ戦局を有利に持っていくのです。

 

 一方のアメリカ艦隊は、第二任務部隊の機動力を持って、相手主力艦隊の頭を押さえ、主力艦隊同士の戦いを味方の有利な位置に持っていき、まず一方の艦隊に集中砲火をあびせる各個撃破を狙います。

 なお、この場合、第二任務部隊が壊滅するのは、折り込み済みです。

 アメリカの生産力なら、当面戦艦さえ生き残っていれば、後はもうすぐ就役してきます。

 (人材面は戦時体制の強化で乗り切るという前提です。

 )

 そして、以上のような戦術に従い、双方の龍は相手のしっぽに食らいつくべく、夜間に接敵を行います。

 

 今まであえて触れませんでしたが、今回は大混乱が予想される「夜戦」です。

 

 レーダーなどない時代ですので、純粋な戦術能力がこの勝敗の帰趨を握っています。

 

 そして、日本海軍は日露戦争より、なぜかこの混乱しやすいと言われ戦果確認が極めて困難な「夜戦」が大好きという困った戦闘集団です。

 第三艦隊などこのために編成されたような、ある種特化した艦隊です。

 このための艦艇が沈むほどの激しい訓練も日夜行っています。

 

 対するアメリカ海軍側は、今回はやむなく夜間戦闘を選択しましたが、本来は大戦力を用いた正統派戦術を好む、ごくまっとうな戦闘集団です。

 夜間の戦闘訓練など必要以上には行っていません。

 


 さて、この顛末はいったいどうなるでしょうか。

 史実の戦例から少し見てみましょう。

 「夜戦」といって皆様がまず思い浮かばれるのが、ソロモンでの戦いでしょう。

 特にレーダーなどお構いなしで戦われた第一次ソロモン、ルンガ沖がこの場合の例となります。

 またレーダーを用いた、サボ島沖、第三次ソロモンは日本側はともかく、アメリカ側の例としては相応しくないので、少しその辺りを差し引いて考えましょう。

 あとは、史実初戦のインドネシアのバリ島沖、スラバヤ沖も例としてあげてもいいかもしれません。

 

 これらを総合的に見ると、やはり日本海軍の方が夜間戦闘能力が高い事が言えると思います。

 バリ島沖や、有名な「綾波」1隻で米駆逐艦3隻を撃破した事などの特殊な例を除いても、これは言えると思います。

 しかしこれは、装備をそのように特化して訓練に励んでいたごく当然の結果と言えますが、同時にその反面攻撃側の戦果確認などが、やはりどうしても不正確となっているとも言えます。

 

 そして、レーダーを用いない戦いでは、アメリカ側はロクに敵艦隊を確認できてなく、余程接近していないと敵に対して有効な攻撃を行えていません。

 

 また、忘れてならないのが、この戦いが膨大な数の戦艦を投入して行われる大海戦だと言う事です。

 そして、通常の主砲砲撃距離での戦いでなく、戦艦にとって近距離と言える1万以下の距離での殴り合いとなる可能性が極めて高いと言う事です。

 

 つまり、通常の編成と陣形のまま戦闘に突入した際の予想されうる結果は、砲火と敵艦からの炎、戦場の混乱から、大して戦果を挙げていないのに戦闘を終了してしまうか、大混乱の中すさまじい殴り合いとなり、双方予期しない程の大損害を受ける事です。

 

 自軍の損害をすでに割り切っている米海軍はまだいいですが、このような事態は日本艦隊にとってはあまり好ましい状況と言えません。

 

 そこで、少しでも混乱を回避すべく、日本側は敵が現れるであろう方向に、主力からやや離して第三艦隊を配置し、進撃を行います。

 これにより、少なくとも主力艦隊は戦場からの混乱を必要最小限に留め、敵艦隊を撃滅するわけです。

 つまり、日本海軍は、最初のマーシャル沖で大規模夜戦を経験しているので、その習性に従いその焼き直しを狙うのです。

 


 深夜より始まった戦闘の結果は、大艦隊を用いた大混戦となるのが通常ですので、双方指揮官が統制の取れない殴り合いになり、本来なら大ダメージを受けた時点で、撤退の指示が出されず、それこそ自らが戦闘可能な限り、相手がいる限り、弾のある限りの戦闘となります。

 そして、なまじ双方の艦艇数が多い事から一度離脱できても、またどこかで敵を出合う可能性も高くこれが生還率を低くします。

 

 つまり、不利な側が2割の戦力を失った時点での撤退でなく、個艦レベル、戦隊レベルで戦闘不能(5割程度の損害)を受けた時点で撤退していくような酷い戦闘となります。

 

 最早これは戦闘でなく、消耗戦と言う名の単なる殴り合いに過ぎません。

 

 そしてボロボロになって撤退していくのは、絶対数においてはるかに劣勢な米艦隊です。

 

 この場合の損害は、最終的に5割の戦力喪失のような生やさしいものではなく、無傷な艦艇など皆無な7割の喪失を出す、実質的な米太平洋艦隊の「全滅」として幕を閉じます。

 

 対する日本艦隊も、サンフランシスコ攻撃など及びもつかない損害を受け、また艦隊の編成そのものが大混乱しているので、敵攻撃圏からの一刻も早い離脱が計られます。

 

 なお、日本側の損害は、先ほどランチェスター・モデルから出した損害に近い2割の戦力喪失となります。

 

 ただし、米軍と違い艦艇の絶対数が違うので、撃沈艦艇でなく撃破艦艇が多数に上ります。

 この場合、米軍の撃沈、撃破艦と同数の日本艦艇が撃破されています。

 

 この双方の撃破率を実際の撃沈率で考えると、米軍は戦艦の6割、つまり6隻が撃沈、補助艦の4割が撃沈します。

 そして、日本側から目の敵にされるであろうダニエル・プラン戦艦は、撃沈比率が高くなり4隻中、サウスダコタ級の1隻を除いて全滅します。

 

 対する日本側は、2割の損害なので戦艦、補助艦とも最大1割程度の撃沈で済みます。

 そして、ここで問題となるのが、八八艦隊計画戦艦から欠番が出るかどうかと言う事です(笑)。

 

 日本側が夜戦に投入した戦艦は19隻(約70万頓)、うち八八艦隊計画戦艦は14隻です。

 数字の上から日本側で撃沈する戦艦は1~2隻(約7万頓)。

 そして、八八艦隊計計画戦艦を撃破できる能力をもった米戦艦は4隻。

 単純に見ると14インチ砲から1隻が新たに鬼籍に入るのが確実ですが、残り1隻は八八艦隊から出る事になります。

 

 米戦艦に撃沈される可能性の高い戦艦・巡洋戦艦は、18インチ砲を装備していない戦艦です。

 つまり、「長門」級、「加賀」級、「赤城」級の6隻です。

 中でも、直接防御力が低いのは「長門」級、「赤城」級です。

 後は、八八艦隊以外からなら「金剛」級が妥当でしょうか。

 

 しかし、ここではお約束として、八八艦隊から「赤城」と「加賀」に撃沈してもらいましょう(笑)。

 

 そして、作戦の失敗と彼女たちの犠牲により日本艦隊は大きな戦訓を得ることになります。

 まあ、彼女たちも夜戦とは言え、ダニエル・プラン戦艦との砲撃戦での撃沈ですので、本望と言えるでしょう。

 



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