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八八艦隊育成計画 第二章 皇国の行く末  〜Chapter 2 Future of Red Sun〜  作者: 扶桑かつみ
chapter3

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chapter3_1_02 日英同盟堅持

 近代日本にとって最も正しい外交的選択は、「寄らば大樹の実り有り」の言葉に従い、1902年に当時の世界帝国たる大英帝国と結ばれた同盟を堅持する事です。

 

 これは言うまでもなく、世界帝国たる大英帝国と同盟を結んでいることにより、その相互負担を求められる代わりに、その代償を補って余りある利益メリットがあるからです。

 

 この事は、大英帝国という世界の4分の1を支配する大帝国が、崩壊ないしはそれに近い状態にでもならない限り変化ありません。

 そして、世界の金融と情報、最先端の技術とそして広大な植民地を有する英国が崩壊するなど、この時代の世界常識からは考える事すら愚かしい事です。

 

 そして日本は英国の傘の下、英国の機嫌を損ねない程度に東アジアの利権をむさぼり食って繁栄していけばいいのです。

 

 この際、英国追従のためなら日本人以外どうなろうとも、見向きしてはいけません。

 有色人種解放も大東亜共栄圏という幻想も見ることは当面許されません。

 ひたすら英国の半歩後ろを歩くことにより日本の繁栄は約束されているのですから。

 

 そう大日本帝国は、大英帝国の番犬なのです。

 番犬が物事を考えてはいけません。

 飼い主が噛みついて良いと命令した時だけ、後先考えず敵に襲いかかればよいのです。

 そうすれば、飼い主からいくらでも美味しい肉をご褒美に貰えるのですから。

 

 それは、日露戦争(正確には日清戦争からとも言える)以後全ての歴史が証明していることです。

 

 多少ご主人様(英国)が無茶を言ってきても、得意の「ジャパニーズ・スマイル」で乗り切っていこうではありませんか。

 まさに、何も考えなく敵に噛みついてその後飴だけしゃぶっていればいいと言う楽な状況です。

 


 さて、対英追従に対する子供じみた思考での悪態はさておき、少し真面目に話を進めましょう。

 

 1930年代後半の大英帝国は、その落日のまさに黄昏にありますが、いまだその光は世界中を照らしており、ロンドンが世界の中心である事は、海底ケーブルがどこを中心につながっているかを見れば一目瞭然です。

 

 さらに、先述した通り、世界の4分の1にも及ぶ植民地を有しており、世界の金融と情報、最先端の技術を持つ事に間違いありません。

 物理的には、誰だろうと文句をつけることのできない大帝国です。

 

 確かに、工業力ではすでに世界第4位になり、もはや「世界の工場」と呼ぶには問題もありますが、造船力と船舶量に関してはアメリカがこけてしまった以上、世界第一位は英国のものです。

 それは第二次大戦開戦前の船舶量約3800万頓と言う、Uボートの艦長たちが聞けば思わず立ちくらみをしてしまいそうになる外洋船舶の量が示しています。

 この分野で日本も躍進しましたが、1940年頃でようやくこの半数の数値を満たすに止まっています。

 

 また、戦時における船舶建造量は、英国において500万頓程度は見込めます。

 さらに、この数字に関しては1940年以降になれば日本の方が若干凌駕する数字を示す事になります。

 

 もちろん、粗鋼生産能力についても英国のそれは、工業生産力に等しく、世界第4位にあります(正確には1940年ぐらいまでは第3位)。

 

 しかし、基礎的な工業力の高さや先端技術分野での先進性などを考えれば、この時点においても間違いなく世界第一級の工業大国と言えます。

 特に電波技術分野では、他の追随を許していません。

 

 そして、金融と情報分野においてなら、世界のどの国とも比較しても比較にならないほど巨大な力を有しています。

 

 大英帝国は、伊達に一世紀以上世界帝国を維持していたのではないのです。

 


 ですが、このような大帝国に、はたして亜細亜の新興帝国と長期に渡り同盟を維持する必要があるのでしょうか。

 

 確かに、日英同盟締結当時にそれは必要でした。

 今更ここでそれを論ずるつもりはありません。

 同時にこの世界では、第一次世界大戦においてもそれは明確に機能し、英国の一助をなす事に成功しています。

 

 そして第一次世界大戦後、日米の大軍拡によりアメリカ合衆国が大艦隊を建設した事により、この同盟は堅持される事になります。

 それは、英国の海洋戦略の基本の一つに「二国標準主義」と言う、仮想敵国に対して二倍の海軍力を保持するというのがあるのは有名ですが、それをアメリカ合衆国に対して維持するためには、日本との同盟なくして維持が不可能となるので、この同盟は英国の戦略に従い維持されたのです。

 

 しかも、日本の位置は合衆国を挟んで英国の反対側にあり、二倍の戦力を保持しているのなら各個撃破の心配も少なく、英国の海洋戦略に合致する位置にありこれも好都合です。

 

 なお、同盟者に合衆国が選ばれなかったのは、合衆国建国以来英米は何らかの対立状態にあり、現在においては第一次世界大戦に参加しなかった事が尾を引いているからです。

 

 そして、英独の建艦競争の末が第一次世界大戦だったように、1934年から35年にかけて太平洋戦争が発生します。

 この日米の海軍力の総力をぶつけ合った限定総力戦争では、日本が圧倒的勝利をもぎ取る事に成功し、英国はただ睨み付けるだけで日本を支援し、ここでも英国の利益は明確に守られる事になりました。

 

 しかし、英国の戦略に従えばここで少し問題が発生します。

 

 それは同盟者たる日本が、英国の次に強大な海軍力を保持しており、その海軍力は英国を除けば懸絶した戦力を保持しているからです。

 対する仮想敵国だった合衆国の海軍力は、最盛時の三分の一にまで激減し、経済的苦境もあり当面回復することすらままならない状態です。

 他国の海軍も戦力面では、現在の米国と似たり寄ったりの戦力です。

 

 となると、このまま日本との同盟を維持しておかないと、英国の海洋戦略に重大な支障をきたす事になりかねません。

 

 番犬の首輪と鎖は、しっかり握っておかねばならないのです。

 

 また、第一次世界大戦後より、アジアに安定した近代国家を同盟者として保持していると言う事そのものが、英国にとって得難いものになります。

 

 それは、英国の大戦後の経済の建て直しのために、何があろうと支那利権を拡大する必要があるのですが、そちらにそのための軍事力を展開させれば、その経費のために場合によっては本末転倒した事態になりかねません。

 そこで、支那近在の日本に軍事面での英国の肩代わりをさせるのです。

 もちろん、日本にもある程度利権の分け前を渡す必要がありますが、無駄な出費をするよりはよほど安上がりです。

 

 さらに、太平洋戦争により日本帝国の版図が広がり、その勢力範囲が実質的に東アジア全域と太平洋の北半球を覆い尽くすまで広がった事は、この国をどうしても英国の同盟者として抱え込んでおかねばならない理由となります。

 

 でなければ、英国のアジア・太平洋での海洋戦略が根底から揺らいでしまうからです。

 

 さらに、日本が新たな植民地や市場を獲得し、外需・内需ともに大きな経済発展をしている事は、脅威であると同時に同盟者としてなら市場としても期待できる事になります。

 もちろん、植民地商売ができるわけでなく欧州のそれと同じ普通の商売になりますが、日本ブロック人口が1億(約一億四千万人)を優に超える人口を抱えているのですから、友好国としてこれに食い込まない手はありません。

 

 このように、時代時代により同盟保持の理由は変更しますが、外交的に特に同盟を解消せねばならない理由もないと言う理由もあり、日英同盟は改訂を繰り返しつつ継続されることになります。

 


 次に日本が日英同盟を堅持しつつ、目指すことになる日本の行く末の青写真を少し見てみましょう。

 

 日本が日英同盟によって得られる利益は、先ほどから言っているように世界帝国たる大英帝国の力を間接的に利用できる事です。

 具体的に列挙するなら国際影響力、通商航路、交易地、先端技術、全般に渡る情報、場合によっては軍事力などでしょうか。

 

 どれも地域大国である日本にとって、足りないものばかりです。

 しかも、日本から見れば英国に追従するだけで、それだけで全て事足りており、日本が積極的に独自の外交を展開する必要などありません。

 

 唯一の例外は、日本が勢力圏としている衛星国の経営ですが、これも英国とリンクさせておけば、ずいぶんと経営も楽になります。

 ついでに、経営ノウハウももらっておきましょう。

 

 もちろん、英国も時折無茶な要求を突きつけてくる事もありますが、東アジアで強大な軍事力と有力な経済力を保持するようになった同盟者に、必要以上に強い事を言ってくることもなく、一時の合衆国が無茶苦茶な理由で文句を言い立ててきた事に比べれば何て事はありません。

 

 よって、日本帝国としては、勢力圏の経営と経済の発展以外これと言った大戦略は存在せず、英国の顔色だけを時折窺いつつ、お金儲けだけに全力を注ぎ戦後を過ごす事になります。

 

 このため独自の勢力圏拡大を本来の目的とした、「東亜新秩序」も「大東亜共栄圏」も必要ありません。

 そんな事をして英国の機嫌を損ねる事のほうが一大事です。

 

 また、遠く中欧のヒトラー率いるドイツ第三帝国が、植民地帝国主義にしがみつく旧欧州列強の時代は終わったと新秩序をしきりに宣伝する一方で、共産主義との対決姿勢を強くしつつあり、そのため是非とも連帯しようと日本にラブコールを送ってきますが、反共以外で日本のメリットはなく、それなら英国と同盟を維持するだけで十分であり、外交常識にのっとったつき合い以上する必要はありません。

 

 遠く大陸欧州のドイツは、ソ連戦略のために敵でなければ当面はそれで十分です。

 


 ではここで、日英同盟についての件はひとまず置いておいて、日英を中心にして見た国際環境について考えてみましょう。

 

 まずは、先だって日本が戦ったアメリカ合衆国ですが、先年の戦争で殆どの外地を失い、当面の軍備は敗戦でガタガタ、それを再建すべき経済もガタガタという目も当てられない惨状で、対外的に身動きがとれない状態です。

 さらに、戦後は共和党政権が政権を奪取し、モンロー主義に回帰して不景気でどうしようもない国内政策に汲々として、対外政策の意欲を全く失っています。

 

 それに、支那の利権を新たに獲得しようとしても、英国と日本の利益に反するかぎり明に暗に邪魔をして、それもままなりません。

 

 また、世界中のどの国も、太平洋戦争で外交的にも大きく失墜した合衆国を貿易以外では相手にしてくれませんので、さらに孤立主義を強めて行くことになります。

 

 そして、本来自由主義陣営と呼びうる日英とその勢力圏と仲が悪い以上、外交的突破口もなく無理に対外政策を推し進めてもロクな事がないのが実状です。

 

(仏はこの頃右と左で揺れ動いて、独伊は全体主義、ソ連は共産主義と全ての列強と主義が食い違っている。)


 次にドイツ第三帝国です。

 

 リッペンドロップによる外交努力を総統閣下が理解を示し、ソ連の反対側にある日本と同盟する事で、西欧との対決のためにソ連の目を極東に向けさせ東方の安全保障を確保しようとしていたのが、その思い叶わず、日本は引き続き大英帝国と仲良く自由主義の守護と反共を謳い、勝手にソ連との対立姿勢を強くしています。

 日本人の目には、ドイツとの同盟など眼中に入ってないようです。

 

 ですが、取りあえず極東でソ連と激しく対立してくれているので、「まあ、いいか」程度で、リッペンドロップ以外は振られた怒りややっかみも収まります。

 

 この当時ドイツ、ないしは総統閣下は、英国との直接対決は視野に入れていなかったので、この程度で収まるでしょう。

 第一何をするにしても極東は遠すぎます。

 


 そして、世界の敵ソビエト連邦ですが、この国と日本の関係はほぼ国交断絶状態です。

 

 それは、満州を日本が事実上支配し、そこに強大な軍備をおいて対立姿勢を貫いているからです。

 日本のこの状態は満州の開発が盛んになればなるほど強くなっており、特に軍事力においてソ連にとって無視できないレベルに達します。

 

 そこでソ連としても、極東に有力な軍事力を維持せざるをえず、この国に少なからぬ負担を強いることになり、またこの増強がさらに日本の満州防備強化を促進する事になり、それに応じてソ連がと言う悪循環を繰り返しています。

 

 ソ満国境はとても強い緊張状態にあり、ここでいつ紛争が発生してもおかしくない状態となります。

 


 で、その他の欧州列強であるフランスやイタリアですが、フランスは一応英国との関係を維持しているので、インドシナ問題で多少摩擦があっただけで日本との関係は比較的良好です。

 と言うよりも、対立する要素がないのが現実と言えるでしょう。

 

 また、イタリアは日本を全く眼中に入れていないし、日本も同様なのでイタリアが国連から脱退した後のつきあいは無きに等しくなります。

 


 最後に支那大陸ですが、この地域に最も大きな勢力を持つ国府軍は、日英の援助のもと共産党との戦いを継続しており、日本に満州を牛耳られ、英国に支那を市場としていいようにされていますが、現実面でこれを受け入れており、「反共」を目的としたパートナーとして比較的良好な関係を維持しています。

 

 そして、日英の援助と軍事顧問団の精力的な活動により、共産党勢力の撃滅は効果を挙げており、1938年までには共産党勢力をソビエト亡命に追い込むまでの成果を上げることになります。




■第二次世界大戦開戦前夜とノモンハン事変 ▼


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