chapter2_10 ■第二次世界大戦 遙かなるロンドン(1942冬~)
第二次世界大戦もいよいよ大詰め、最後の欧州での決着へと舞台は移っていきます。
連合国側にあり、そして世界帝国の矜持を以て孤軍奮闘を続ける大英帝国ですが、その戦争運営は芳しいものではありません。
1942年内に、それまで抱えていた大半の戦線の帰趨を決定づけたドイツ軍が主力を欧州に戻すと、まずその年の内に欧州上空の制空権を完全に取り戻されます。
ついで、アフリカ、中東失陥により、地中海の制空権、制海権を今度こそ完全に奪われます。
いかに強大な王立海軍と言えど拠点がなければ活動もままなりません。
そして、次の年から、再編成されたルフト・ヴァッフェ主導により、再びバトル・オブ・ブリテンが開始されます。
この時点での戦争遂行能力の差は、インドと中東を失った(他地域からも封鎖されロクに物資は入らない)イギリスでは、中東とコーカサスの油田を手にしたドイツに2倍以上の格差を付けられる事になります。
特に英国にとって、自勢力圏の石油の主要供給地を絶たれた事は、致命的とすら言える事態です。
しかも、アジア・インドでは日本軍が大暴れしており、枢軸国全体と比較した場合の戦力格差はさらに開いています。
単純に戦争遂行能力の差を、英国と枢軸国で比較すると3対1程度となります。
つまり、実質的に自ら一人で全ての敵を倒した枢軸国側と対峙している現在の状況だと、43年夏から秋には、全ての戦力を結集した枢軸国軍により、英本土上陸すら行われる可能性は高く、それを止めることが出来るかどうかは攻者三倍の原則に当てはめると微妙と言える状況です。
ここで英国の取るべき道は、大きく三つです。
カナダやオーストラリアに亡命してでも枢軸国側に対する抗戦を継続するか、最後の望みを託して英本土上陸を挫折させるべく全力で戦うか、ここで講和をするかです。
もっとも、抗戦を継続しても、連邦地域だけでは力不足な上に英国を支援してくれそうな大国はどこにもありません。
唯一、自由主義陣営であり支援してくれそうな位置にいるアメリカ合衆国は、欧州不介入を政治看板にして、素知らぬ顔で戦争景気に便乗する事で双方に商品を売りさばき、不景気脱出をしようとしているだけです。
一方、圧倒的優位に立ったドイツですが、その内実を見ると3年以上にもわたる総力戦で、国内経済はガタガタですので、一日も早く戦争を終わらせたいのがホンネです。
ただ、海軍は水上戦力の面で海軍はいまだに英国が圧倒的に優勢で、バトル・オブ・ブリテンも英国に完全に守りに回られたら、なまじ生産力が上がった状態での殴り合いなので、どうしても攻撃側が不利になります。
それに、海軍力では歴然とした差がつけられているので、これも大きなネックで、それらを含めて考えれば、英本土侵攻は難しいと言うのが実状です。
しかし、戦争がここまで進展した以上、相手に降伏を迫るのが筋ですが、英国はいまだ抗戦の意欲を見せており、どこまでも枢軸国、ドイツと対立する姿勢を崩していません。
オマケの欧州各国の亡命政権もこれを後押ししています。
どうにも、なまなかには欧州的な戦争の決着はつけられそうにありません。
総統閣下にとっては、非常に困った事態です。
表面上ドイツは戦争の勝利者ですが、国も軍も国民もソ連との激しい戦いで激しく消耗してしまっており、もはや一刻も早く戦争を終結させたいのに、頑固者のジョンブルは己が敗北が最早確定的なのに降伏してくれません。
このままでは、勝っているはずなのに、講和のテーブルに自ら着かねばならない状態です。
いっぽう我らが日本帝国は、インドで自ら撒いた種が大きくなり収拾するのが難しい状況で、こちらも早く英国と停戦して、なんとか収拾に持ち込みたいと考えています。
ですから、ドイツ同様英国が降伏しない事に頭を抱えてしまいます。
そして、枢軸国側としては、このままの膠着状態では埒があかないので、ついに英本土侵攻が計画されます。
いや、別にホントに侵攻しなくてもかまいません、英国の海空戦力を撃滅できれば、いかな頑固者たちでも講和のテーブルに着いてくる筈だからです。
しかし、この英国(軍)攻撃で主な役割を果たすのは近所のドイツですが、ロシアとの戦争にかまけていた事もあり、1939年の開戦以降状況はそれ程改善されておらず、自らだけではどうしようもない状態です。
そこで、枢軸側の大国の一つである大日本帝国が、ドイツのネックになっている長航続距離を持つ空軍戦力と強大な海軍力と数年の戦いの中育成された強襲揚陸部隊の、遠く欧州への派兵を決定します。
日本としても、このままダラダラと出血を重ねるよりも、一時の大出血を覚悟する方がはるかに安上がりだからです。
また、戦争の最後の仕上げに参加する事で、国際的に高い発言権を得るためと言う理由もあります。
この点での外交的な問題は、ドイツと日本が人種政策の問題の対立などもありほとんど棚上げにされ、単に英国を打倒するための一時的共闘とされ、軍事同盟などが締結される事はありませんでした。
もっとも、体裁を整える必要性があるので、3年期限の軍事同盟が暫定的に結ばれることになります。
なお、交渉にかかった実質の歳月はたったの三ヶ月でした。
日本側から抽出されるのは当然海軍が主力となりますが、大出血を覚悟するからこそ、そして王立海軍を一撃で粉砕するためにも、かつてない大遠征艦隊が編成されます。
概要は第一艦隊、第一航空艦隊、海上護衛艦隊の一部そして膨大な数の支援艦艇と一部揚陸船舶となります。
もちろん、その分野で可能な限りドイツにも兵器の援助が、最新技術とのバーター取引で行われます。
鍵十字を描いた、ジークやケイトが欧州の空を飛ぶ事になるでしょう。
そして、ドイツも英国も「Dディ」(この場合は英本土上陸作戦)を目標にして、戦力の再編成を開始します。
遠くイタリア海軍もここで点数を稼いで置かないと一大事と大挙海軍の派遣を決定し、まずは日本艦隊と共にジブラルタルの攻略を開始されます。
ではここで日独英伊の戦力を、いつもながらの海軍力から見てみましょう。
なお、計上されるのは、日本艦隊を除き洋上作戦任務に耐えられる部隊のみとします。
ちなみに、フランス軍に関しては、史実通りの展開の上に米国での改装などもないので、計上できる戦力はほとんどないので除外します。
■日本帝国 遣欧艦隊(1943年1月編成)
第一艦隊:
BB:紀伊・尾張・駿河・近江
BB:富士・阿蘇・雲仙・浅間
CG:妙高・那智・羽黒・足柄
CL:阿賀野 DD:16隻
第一航空艦隊:
第一機動艦隊(艦載機総数:403(+63))
CV:蒼龍・飛龍・雲龍 (F:96 B:48 A:48 R:9)
CV:千鶴・神鶴 (F:64 B:44 A:32 R:6)
CVL:千歳・千代田 (F:32 B:0 A:24)
BB:高千穂・穂高
CL:利根・筑馬
CG:5500t型:1隻 DDG:4隻 DD:12隻
第二機動艦隊(艦載機総数:330(+36))
CV:伊勢・日向 (F:64 B:26 A:32 R:6)
CV:翔鶴・瑞鶴 (F:64 B:44 A:32 R:6)
CVL:祥鳳・瑞鳳 (F:32 B:0 A:24)
BB:金剛・榛名・比叡
CL:大淀・仁淀
CG:5500t型:1隻 DD:16隻
特別支援艦隊(艦載機総数:56(+6))
CVL:日進・瑞穂 (F:32 B:0 A:24)
CL:5500t型:1隻 DD:8隻
CL:3000t型:1隻 FG:12隻
高速給油船:14隻
給糧艦:2隻 給兵艦:1隻
大型工作船:2隻
高速輸送船:多数 他(揚陸艦なども多数含む)
■ドイツ海軍
高海艦隊
BB:ビスマルク、テルピッツ
BC:シャルンホルスト、グナイゼナウ
AC:ドイッチュラント、アドミラル・シェーア
CV:グラーフ・シュペー(F:16 A:24)
CG:アドミラル・ヒッパー、プリンツ・オイゲン
CL:4隻
DD:14隻
■イタリア海軍 大西洋派遣艦隊
BB:リットリオ、ローマ
BB:アンドレア・ドリア、カイオ・デュイリオ
CV:アクィラ(F:24 A:27)
CG:2隻
CL:4隻
DD:12隻
■大英帝国 王立海軍
■本国艦隊
BB:キング・ジョージ5、プリンス・オブ・ウェールズ、
デューク・オブ・ヨーク
BC:インヴィンシブル、インディファティガブル
BC:フッド、ロドネー、ハウ
BC:レパルス、レナウン
CV:イラストリアス、ビクトリアス(各種72機)
CG:6
CL:12
DD:24隻
■ジブラルタル艦隊(H部隊)
BB:St. グレゴリー、St. パトリック
BB:クイーン・エリザベス(QE)級3隻
CV:インドミダヴル、フェーリアス(各種108機)
CG:3
CL:6
DD:12隻
■船団護衛任務
BB:R級3隻
CL:多数
DD:多数
■艦隊編成補足
日本帝国・遣欧艦隊は、戦艦13隻、大型空母9隻、軽空母6隻を中核とした、いくつかの艦隊より構成される圧倒的な大機動部隊で、史実の1944年時の米機動部隊にすら匹敵する大艦隊です。
だからこそ日本海軍は、ドイツにこれだけの大艦隊の面倒が見切れるとは到底考えていないので、巨大なサービス艦隊も自前で用意しています。
もちろん、これ以外のさらに後方支援用の船舶が多数インド洋などに派遣され全般支援に当たり、まるで大名行列や、お姫様の輿入れのような船団が延々と連なる事になります。
なお、日本海軍の正面戦力の7割の艦艇が、この作戦に参加している事になります。
内地に残っているのは八八艦隊の半分とその支援艦隊だけです。
これらは、予備兵力と言うよりも単にこれ以上派遣する余裕が物心両面でなかっただけです。
これは、史実の三倍の日本の国力をもって、単独で派遣できる最大限の数字です。
そして派遣できる期間は、予算問題から2年が限界です。
(ドイツがドイツ本土に至るまでの各種拠点を円滑に維持しており、ある程度補給を面倒見てくれるのなら話は全く変わってきますが、自国海軍の総力よりも遙に大きな戦力の面倒みれる能力をドイツ海軍は持ちません。)
なお艦隊編成については、戦艦は戦艦だけ、空母は空母だけによる極端な編成を取っています。
これは依然として、マレー沖やインド洋での事件があって、多少の意識変革は起こっていますが、勝利を続けているせいで編成など具体的な点にまで改革が及んでいないからです。
むしろ、空母については開戦時よりも攻撃力重視に変更されているぐらいです(史実の1943~44年頃の編成と同じとしています)。
また、あまりにも強大な戦艦を多数保有する事が、艦隊編成に抜本的な改革のメスを入れることを遅らせています。
しかし日本海軍も、これまでの戦いによりいくつか戦訓を得ています。
それは、自軍の攻撃による英海軍の惨状と、それまでのいくつかの侵攻作戦から導き出されたもので、制空権を取る事が極めて重要であり、これなくして敵の撃滅は容易でないと言うことと、敵地では制空権を取らなければ、艦隊は十分な活動が出来ないと言うことです。
このため、今度は英本国が相手なので、自前で出来る限りの航空戦力を用意するべく、日本中の空母をほぼ総ざらえして持ってきています。
そして、戦艦ですら膨大な数の航空機の前には抵抗するのが難しいと言う事も分かっていますし、インド洋での作戦から、遠隔地で一度戦艦が大きく損傷してしまえば、その後の活動が難しいのに、空母は母艦さえ損傷しなければ、その気になれば航空隊だけ補充し続ければ長期に活動が可能と言うことです。
かくして、日本側が用意した艦載機数は、前線部隊だけでスペアも含めれば900機近くにも達し、常用でも800機近くを数えます。
また、技術的視点から見てみると、ようやく対水上、対空電探の装備がほぼ全艦に行き渡ります。
史実よりも基礎工業力の点で大きく進歩していますしドイツとの交流も円滑ですので、精度に関しても一定のレベルに達しています。
ただし、まだ本格的な電探射撃などに関しては多少疑問が残るでしょう。
次に航空機は、こちらも史実よりも基礎工業力の点で大きく進歩しているので、大型空母に関しては新型機への転換が進んでいます。
特に制空任務を担う戦闘機分野は、開発速度も必然的に上昇しているので、この時点で「烈風」が量産化されています。
当然、攻撃機も「彗星」、「天山」への改編が進んでいます。
もちろん、全艦隊に供給されているわけではなく、主に正規空母に配備されています。
そして、2年間の戦いを切り抜けてきた、熟練搭乗員によるこの破壊力がいかなるものかは、説明するまでもないでしょう。
では、日本海軍以外はどうでしょうか。
まずはドイツ海軍。
この国の海軍は、開戦以来通商破壊部隊と潜水艦隊以外は、圧倒的な戦力(戦艦数)を誇る英国海軍を前にして、積極的な活動に出ていない(でれなかった)ので、現状における艦艇の損失は必要最小限に抑えれれています。
それでも打撃力としては、日本の一個艦隊程度しかありませんが、まとめて運用すれば十二分な打撃力を持っていると言えるでしょう。
次に、イタリア海軍。
英国海軍との地中海での殴り合いで、補助艦艇こそ大きく消耗していますが、幸運な事に戦艦に関しては損失はなく、いまだ大きな勢力を保持しており、燃料事情も大きく改善してることも手伝って、日本海軍がスエズ運河を通過してくると、共にジブラルタルに向けての侵攻部隊を編成、派遣します。
打撃力としては、ドイツ海軍水上艦艇の全力に匹敵し、イタリア海軍としてもおおよそ半数の機動戦力をこの艦隊に充当しており、欧州一般レベルから考えれば十二分に大艦隊であり、カタログデータや編成上の上からなら、十分に活躍も期待できるでしょう。
そして最後は、枢軸国の3つの海軍に袋叩きにされる大英帝国王立海軍です。
戦艦、巡洋戦艦こそいまだ18隻を数え、一見強大な戦力を保持しているように見えますが、日本が常識をどこかに置き忘れて来たような数を送り込んできた空母に関しては、日独との度重なる戦いですっかり消耗してしまい補充も追いつかず、艦隊と行動を共に出来る空母はわずか4隻に過ぎず、全てまとめて運用したとしても、日本海軍の四分の一の戦力程度にしかなりません。
しかも、補助艦の面でも有利のはずが、通商航路の保護にその多くの戦力を割かれており、また、ドイツ海軍の行動を牽制するために、多くの艦艇が常時待機状態にある事から、全力で出撃できるかと言うと、それも難しいものがあります。
ですが、英本土近辺が決戦海域になるので、空軍の傘の下で戦えば制空権の心配が必要最小限で済み、この点は大きなプラス要素と言えるでしょう。
なお、すでに北アフリカも中東もインドも失陥している事から、王立海軍は船団護衛任務に就いている以外は、ジブラルタル艦隊のみが外地にありイタリアを牽制しているだけで、その機動戦力の大半が本土近海に配備されています。
しかし、43年に入ると、日本海軍の大艦隊がスエズを抜けて地中海に派遣されるので、これにどう対処するのかが大きな問題となります。
なお、艦隊戦に大きな影響を及ぼす制空権に関しては、ドイツのルフト・ヴァッフェは第一~第五の航空艦隊を有していますが、このうちケッセルリンク元帥貴下の第三航空艦隊が地中海にありジブラルタル攻略支援を予定しています。
他は全て(第二、第四、第五。第一は本土防空)ノルウェーからフランスにかけて展開しており、RAFと熾烈な航空撃滅戦を繰り広げています。
おおよその戦況は、ジブラルタルについてはイギリス側がかろうじて維持している程度、ドーバー、北海については、4:6でドイツが優勢、英本土では6:4でイギリス優勢、日本艦隊の泊地が予定されているブレストは、ドイツが日本軍を受け入れるために重点的に防衛しているので、ほぼ制空権は確保されています。
そしてドイツ本土では、2:8でドイツ側がほぼ制空権を確保しています。
英国は、戦時生産こそ軌道に乗っていますが、42年よりインド航路の途絶から本国に運ぶべき物資が完全に欠乏し、42年中には中東も完全失陥、しかも、豪州などからの物資も大西洋周りでしか運べないので効率が落ちています。
そして、物資の欠乏は、前線の兵力配備に強く影響し、前線の兵力は不利な戦いで減少、さらなる輸送船の損害を増やし・・・という悪循環に入りつつあります。
当然、英国の誇る科学力をもって作られる数々の新兵器も、試作や先行量産ぐらいまではできても、それを広く前線に配備するには生産力的に難しく、戦局には大きく寄与できなくなってきます。
反対にドイツは、本土が爆撃をあまり受けなくなったこと、資源問題、燃料問題が大きく改善したこと、英国一本に相手が絞れた事から来る兵器生産の効率化などの要因から、英国に対する圧力を日増しに強めていく事になります。
■アトランティック・ラプソディー ▼





