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八八艦隊育成計画 第二章 皇国の行く末  〜Chapter 2 Future of Red Sun〜  作者: 扶桑かつみ
chapter1

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15/126

chapter01_09 ■第二次世界大戦終局(1941冬~)

 さて、明けて1942年。

 この年の戦局の推移はどのようなものになるでしょうか。

 

 純粋な戦争遂行能力ならドイツ、ソ連はほぼ互角、日英の勝負は、英国がドイツとの熾烈な攻防に国力を吸われているため、日本側がインドで圧倒的優勢に勝負を進めています。

 ただし、純粋な戦争遂行力から見ればほぼ互角です。

 

 しかし、欧州大陸全土(含む欧露)はすでにドイツの占領下で、英国の生命線の一つであるインド洋は日本の手によって途絶しています。

 よって6:4ぐらいでドイツ、日本側が有利と言ったところでしょう。

 もちろん、純軍事的に見るならドイツ、日本側が圧倒的に優勢です。

 

 各戦線ごとに見ると、西欧ではドイツとイギリスが激しく航空戦を展開して、一進一退の空の攻防を続けています。

 こちらは容易に勝負がつきそうにありません。

 大西洋でもドイツのUボートなどの通商破壊とそれを守る英海軍との熾烈な戦いが展開されており、こちらも予断を許さない状況です。

 

 また、ソ連戦線では、ドイツがソ連の反攻を防ぎきり、ドイツ軍が翌年の再度のモスクワ侵攻のための体制を立て直しているところです。

 

 もちろんソ連では、この攻勢を何とか防ぐべく、懸命の防戦準備が行われています。

 ですが、物資の欠乏が厳しく、主要工業地帯であるモスクワ地域か、油田地帯であるコーカサス地帯を抑えられた時点で、その命運がつきることは間違いないとすら言える状態です。

 まだウラルの工場は稼働し始めたばかりで、工場移転と戦争の混乱、物資の欠乏で生産も思うに任せません。

 頼みの他国から援助も、インド=イランルートが途絶し、大西洋からの船団も望めない以上、全くと言ってよいほど期待できません。

 

 一方、圧倒的な戦力を持つ日本海軍により制圧されてしまったインド洋戦線は、日本軍の勝手し放題です。

 とりあえず、日本は自ら掲げたお題目を実現すべく、最後の一手としてインド全土解放のための準備をしたいところです。

 

 そこで日本陸軍は、その為の陸上戦力を、新規編成の師団とさらに弱体化したソ連極東軍の圧力が弱まった満州から呼び込んで、2個軍(団)~3個軍(団)程度編成します。

 これに、既に進出している2個軍(団)の戦力が加わります。

 こうなると立派な方面軍、強引に「印度総軍」と呼んでもよいかもしれません。

 

 日本の戦略目的は、インド東部全域の解放(制圧)とセイロンを橋頭堡としたインド南部の解放(制圧)です。

 これを、海軍が水上艦隊、航空艦隊によって全面支援します。

 

 第一の戦術目標は、カルカッタとマドラス。

 これを圧倒的戦力でもって近在に強襲上陸をしかけ、短期攻略を目指します。

 そして、双方の方面軍は1年後にデリーで握手し、最終的には印度全土を解放するのです。

 

 また、陸上侵攻の準備が整うまでは、通商破壊と英国の拠点つぶしが作戦の主なものとなります。

 このため日本艦隊の腕は、インド亜大陸だけでなくアフリカ東岸から遠く英領ケープにまで及びます。

 この日本軍のインド洋全土の完全制圧のために、英国側は増援はおろか補給すら満足に送れず、北アフリカ戦線はドイツ軍の攻勢もあり崩壊寸前となります。

 恐らく長くは持ちこたえる事は不可能でしょう。

 


 では次に、それぞれの国のこの時点と目指すべきでの戦争目的を見て見ましょう。

 

 まず、目指すべき戦争目的は、英国は間違いなく世界の海洋覇権の維持です。

 「ルール・ブリタニカ」これしかありません。

 これが維持出来ないとき、栄光の大英帝国はその終焉を迎え、たとえこの戦争で生き残れたとしても、その後には欧州の地方国家の地位が待っているだけです。

 

 次にドイツは生存権の拡大です。

 一応は中・東部ヨーロッパとヨーロッパ・ロシアでの覇権の確立が目的となります。

 これが本来の戦争目的の筈だからです。

 

 ソヴィエト連邦は、それまで東欧で色々していますが、一方的にドイツに戦争を吹っかけられた形になっているので、祖国防衛と言う形になります。

 しかし本来の外交理念は徹頭徹尾、伝統的領土拡大主義と共産主義イデオロギーの拡大です。

 ですから祖国防衛から反撃に転じて、全欧州を真っ赤に染め上げるのが最終的な目的となります。

 

 そして、我らが日本の目的は、大東亜共栄圏と東亜植民地の解放、有色人種の差別の撤廃、それによる新秩序の構築となります。

 まさに錦の御旗、正義の解放者としての戦いです。

 

 もちろん、真の目的は自らのアジアでの覇権を確立し、より強大な国家を作り上げる事です。

 もちろん、昭和日本に高度な大戦略などありません。

 帝国主義的な風潮の残る近代において、大国でないと、強くないと国を守ることすら出来ないから、ただそれが理由です。

 


 次にこの時点での目的ですが、英国は祖国と各シーレーンの防衛です。

 これなくして戦争の継続すら不可能です。

 ドイツは、総統閣下の言葉を信じる限り、ソビエトの打破と英国との妥協の成立となります。

 ソ連は、祖国防衛。

 圧倒的な劣勢にある以上、これ以外もはや何もありません。

 そして日本は、東亜の解放はほぼ達成したので、後はいかに戦争を終わらせるかです。

 これ以上続けたら収支決算が赤字になりかねないからです。

 

 以上のように日独がそれぞれ終戦目指して攻勢を続け、連合国側が滅亡から免れる為に防戦すると言う図式になっています。

 

 そして、一番ゴールに近いのは、比較的目的達成が楽な日本帝国です。

 日本側の今後の予定としては、42年秋までにインド全土を解放して大東亜共栄圏を完成させ、42年秋から43年の夏までにシーレーンを締め上げる事で英国を屈服させて、ある程度利権を返す事で講和と言う形に持ち込み、めでたく終戦と言う形になります。

 

 華麗なる戦争もへったくれもなく、単なる力押しに過ぎませんが、世の中そんなもんです。

 数ある火葬戦記のような劇的な変化など早々発生する訳ありません。

 それぞれの戦場で敵よりも多い正面戦力を正当な戦術で運用する側が、近代戦争では勝利するものです。

 


 劇的な変化と言う言葉が出てきたので、少しこの辺りも考えてみましょう。

 

 このような状況の場合、火葬戦記で必ず発生するのがモスクワ占領やそれに類する状況が発生したときに起こる、スターリン暗殺と共産主義体制の崩壊です。

 ドイツ有利ですが何度も未遂事件が発生したヒトラー暗殺などもこれに含まれるでしょうか。

 

 果たしてスターリン暗殺と共産主義体制の崩壊可能でしょうか? 確かにスターリンの暗殺は発生する可能性は低いとは言えませんが、共産主義体制の崩壊に関してはかなり疑問が伴われます。

 それは、スターリンによる粛正のせいで、赤軍の方がより勢力が非常に減退しており、多少の事では共産党に対して逆転できるとは思えません。

 まあ、だからこそ軍事クーデターと言う安易な発想に達するのでしょうが、スターリンのおかげで、軍隊の活動に異常に制約と監視の目を向けていた政治状態で、クーデターなど本当に可能なのでしょうか? しかも、ソ連赤軍はドイツとの戦いでさらに疲弊して、人的資源も払底しています。

 私個人としては、クーデターはほぼ不可能としか思えません。

 それは、歴史がある程度証明しているとも思います。

 ゆえに、この世界では最後まで徹底的に抗戦を続けることになります。

 

 同様にヒトラー暗殺ですが、拡大戦争を続けるドイツですが、今の時点では戦局を有利に展開しており、クーデター側が大きな支持を受ける可能性も低いので、その点では発生する可能性そのものが低くなります。

 

 それに、実際異常な強運により何度も危地を潜り抜けた彼の御仁ですので、あまり成功しそうに思えません。

 あの強運には、何やら人知を越えたものすら感じてしまいます。

 

 次に、英国の早期崩壊です。

 

 この世界では、史実通り1940年夏から秋に英国本土は守られました。

 つまり、バトル・オブ・ブリテンは英国の勝利で終わっている訳です。

 史実でも見る限り、多少の偶然はありましたが、英国の勝利の第一は、戦前から準備されていた防空システムなどの勝利だと思うので、ちょっとした偶然ではひっくり返らないでしょう。

 もちろん、ゲーリングが腹上死したりと言ったお約束も発生しないものと仮定しました。

 

(もっとも、ミスの少ない側が勝利すると言う典型なのが1939~1941年の欧州戦線と言えます。

 史実ドイツの勝利が、常に綱渡りの上に成り立っている点が多々見られる事から、一度どこかで変更すると予測が難しいと言うのが、そのままの歴史である大きな理由です。)

 最後に、連合艦隊の大規模な海上戦力の欧州派遣によるミニタリーバランスの変化ですが、八八艦隊があるのだから、一個戦隊ぐらい派遣して、それをドイツ海軍と共に大暴れさせれば王立海軍ぐらい撃滅できようと言う意見もあるかも知れませんが、ハッキリ言って欧州はメチャメチャ遠いです。

 そこに継続的な補給を維持しつつ多数の艦隊(戦艦)を派遣する時の経費の大きさは、容易に天文学的な単位となります。

 物理的に考えれば、史実の国力ではまず不可能、史実の2~3倍の国力があってどうにか可能と言う程度でしょう。

 もちろん、米国が何も文句を言ってこないと言うのが前提条件です。

 

 また、連合艦隊はもともと遠征なんて考えられた海軍ではないのですから、3倍の国力があってもインド洋への遠征すら非常に重荷です。

 史実と同質の海軍の場合、膨大な数の補給艦(給油艦)と近在に巨大な艦隊の拠点がないと、艦艇の設計上遠征はできないのです。

 そして、その支援が可能な英国を敵としている以上、欧州くんだりまで出かけることは、物理的に極めて難事業、国家の国運を賭けたものとなります。

 

 ですから、この想定でも八八艦隊は、念のための欧州遠征の準備期間も兼ねて、1942年以降はインド洋で水浴びのような暢気な戦争する事になります。

 

 それに、八八艦隊の戦艦達を戦力として有機的に運用するには、それに付随する多数の補助艦艇があって初めて可能となります。

 つまり、戦艦一個戦隊プラスα程度でなく、丸々一個艦隊以上(現地でのローテーションを考えれば2個艦隊が必要)を送り込まないとロクな働きなどできません。

 軍艦というのは、個艦でなく、国家の防衛方針に則って建設された艦隊という、システムの上での1個の部品に過ぎないのですから。

 

 様々な形態を持った史実の各国の海軍が、その良い例でしょう。

 

 少し脱線しますが、日本海軍は艦隊決戦のみを考えて作られたシステムなので、史実のように海上護衛に失敗して敗北したのは必定だったと言えます。

 

 勿論、八八艦隊が主役の座を務めているこの世界の連合艦隊も、大筋においてあまり変わりありません。

 一応海上護衛総隊を持っていますが、その能力は英国の同様の組織と比べれば低く、せいぜい東南アジア地域、インド洋までのシーレーン防衛で手一杯です。

 そして、日本の国力で八八艦隊の彼女たちは、彼女たちが存在する故に欧州に旅に出たくても、なかなか出れないのです。

 

 第一、ドイツとは同盟関係にもないので、補給拠点を確保できないのですから、この想定でのこの仮定は全く無意味と言えるでしょう。

 


 なお、念のため言っておくと、この想定は、八八艦隊と日本帝国、そして最初に八八艦隊と喧嘩した合衆国以外の物理的な情勢以外は全く変化していないとしています。

 大半の歴史上の人物達は、謎の死を遂げたり失敗した暗殺事件で殺されたりせず、史実と同様にあがいています。

 恐らく多少暢気なのは、史実より巨大な軍事力と国力を持った日本人たちと、戦争に不干渉を決め込み金儲けだけに専念する米国人だけと言えるでしょう。

 


 さて、以上の事を踏まえてもう一度歴史のレールに戻りたいと思います。

 なお、ここからは、また八八艦隊中心に話を進めたいと思いますので、残りの第二次世界大戦の推移はかいつまんで進めていきます。

 

 ドイツの戦略目標は、42年6月末からの対ソ第二次夏季攻勢です。

 再度の大攻勢で、ソ連にとどめを刺す事にあります。

 これにより、ドイツにとっての戦争の決着をつけるのです。

 

 なお、史実でもコーカサスの油田地帯と連合国側の援助物資ルート途絶を狙った攻撃を行い、ソ連の継戦能力を奪おうとしていました。

 

 日本のインド洋戦線での目標は、英シーレーンのさらなる破壊とインドの混乱の助長、できうるなら英国の息の根を止めるための中東への遠征です。

 

 そして、それぞれの攻勢が始まるまではその準備に追われて、どちらの戦線も激しく動くことはありません。

 

 その間、唯一激戦が展開されるのが、北アフリカ・地中海戦線です。

 英国の補給途絶と海軍力の減退により勢力を著しく減少させている、英第八軍をDAKが激しく攻撃します。

 

 とりあえず、ドイツとの同盟関係にない以上、この戦場に八八艦隊の鋼鉄の戦乙女達に、お呼びがかかることはあまりなさそうです。

 また、英海軍は地中海と大西洋で忙しそうで、もうインド洋には来そうにないので、せいぜい英軍の拠点への艦砲射撃か空母の護衛として出かけるぐらいです。

 

 どうにも、英国海軍を叩きすぎたからかもしれません。

 何事もホドホドが肝要です。

 


 さらに時間を進めますが、夏には潤沢な補給を受けられるようになったDAKがスエズに達します。

 補給も増援も途絶えた英軍にこれを止めるすべはありません。

 ついでに言えば、東洋で王立海軍がこてんぱんにのされているので、英海軍の全ての戦線で海上戦力が減退し、制海権の維持も難しくなっています。

 (戦艦だけ沢山あっても仕方ないからです。)

 英軍は、戦線をシリアに後退させ、さらに後は、危険な地中海を通って海上から本国に逃亡するしかありません。

 42年後半からはDAK改め、ドイツ中東軍団による中東地域の制圧と、コーカサスに向けての南からの侵攻が始まります。

 


 と、ここでドイツの進撃に「待った」の声をかけてくる勢力があります。

 それは、アメリカ合衆国です。

 

 ペルシャ湾岸に大量に埋蔵されている可能性の高い石油を、今後の世界戦略のために是非とも「自由主義陣営」が確保しておく必要があると、彼の国のオイルメジャーが政府に言い立てるからです。

 

 合衆国政府としても、大戦にかこつけた発注をこなすことで復活しつつある経済を、さらに回転させる極めて重要な要因でもあるので無視する事が出来ず、誰もが知らない間に「仲良し」となった日本政府に中東に兵力を派遣するよう、強く要請してきます。

 

 しかし、日本としては印度以東が「東亜」であり、それ以上の侵攻は全く想定にはなく、故に最初はけんもほろろにこの要請を断ります。

 それに「聖戦」を完遂しつつある日本にしてみれば、金儲けにしか興味のない奴等が何を賢しく言うかと言ったところでしょう。

 

 ですが、今回はアメリカは引き下がりません。

 事が今後半世紀を左右するかも知れないお金儲けに関する事だからです。

 アメリカ政府は、彼らにしては実に珍しくねばり強く日本政府を説得し、自らも大規模な「義勇軍」を中東に派遣してもよいとすら打診してきます。

 合衆国のマスメディアも「帝国主義の解放者である日本は、印度だけでなく全体主義傀儡政権により再支配される恐れのある中東のイスラムを解放せよ。

 東亜の解放者にして自由主義の国である日本が全アジアを解放するべきだ。

 そして、同じく自由主義最大の国家たる合衆国、合衆国国民もこれを強く助けるべきだ。

 」と、アメリカ国内世論だけでなく日本の世論すら煽り立てます。

 と言うよりも、勝手に決めつけてきます。

 

 そして、いかに元敵国とは言え、戦争商売を通じて今やお得意さまとして欠かせない関係になっている大国からそこまで言われては、無定見な日本政府としては何も行かないわけにもいかず、何とか兵力をやりくりして侵攻の準備を整えます。

 

 もっとも、準備する理由のひとつに、日本にとってお金儲けの話は悪い事ばかりではないからです。

 

 そして、アメリカは約束通り「義勇軍」を地球の反対側である中東に派遣してきます。

 

 その規模は、太平洋戦争の後になけなしの海軍予算の中から再建された、ピカピカの新鋭艦を中核とした1個水陸両用艦隊に加えて海兵一個師団にも及びます。

 

 もちろん今回の派兵は、アメリカ政府が中東利権で強い影響力を及ぼす為の派遣ですが、日本としては事前に綿密な計画を練り上げた東亜の事以外あまり国際戦略もないので、呆れながらもこれを迎え入れ、自分たちも(体面のため)同じぐらいの戦力をなんとか整えて、半年を準備に使い42年秋ぐらいから中東作戦に入ります。

 

 なお、ドイツには特に親しくしているワケでもないので、英国影響下の国々の解放を独自に行うとだけ大使館を経由して説明して、総統閣下が文句を言ってきても適当にあしらいます。

 どうせ、距離の問題からドイツの国力では逆立ちしても日本と戦争などできないのですから。

 (反対もしかりですが。)

 そして、この時点で日本の中央部の関心はインドもしくはアジア全土の解放にあり、いくら油があるからと言っても、砂の大地である遠方の中東など半分どうでもよい事というのも影響しています。

 


 そして、1942年6月にいよいよ枢軸軍全軍(と言っても欧州勢力だけです)による対ソ第二期夏季攻勢が始まります。

 

 作戦目的は9月までにコーカサス一帯を制圧し、彼らの生命線を裁ち切りモスクワを孤立させ、爾後部隊を迂回させモスクワを包囲し、この戦争を決定づける事にあります。

 

 この攻勢を止めるすべは、史実と違い各国の援助の途絶えたソ連赤軍には、微妙と言うか難しいものがあります。

 

 恐らく、コーカサスはドイツの手に落ちる事になるでしょう。

 なぜなら、ソ連赤軍には圧倒的動員力により軍隊はあっても、それを維持する兵站物資がないからです。

 ついでに空軍もウラルの工場が稼働したばかりで自慢の新鋭国産機もロクに揃わず実に情けない状態です。

 

 コーカサスを制圧されれば、ソ連は石油供給がほぼ絶たれた事になり、援助もロクにないので後はズルズルと降伏の道を歩むしかありません。

 

 かくして、1943年秋に実質的に独ソ戦はドイツの勝利で終了し、度重なる敗北で指導力を問われたスターリンは失脚、その後権力闘争の結果スターリンよりもはるかに小物が権力を掌握するでしょうが、事実上の独裁国家での政変は、政治的に致命的な失点であり、勝利に乗じるドイツに抗することはできないでしょう。

 

 その後、独ソの間では一応の停戦が行われますが、ウラル山脈の東側に後退して以後ドイツとにらみ合いに入ります。

 そして、ドイツはウラル山脈より西の全てを支配する事になり、自らの戦争目的を達成する事になります。

 


 次に、我らが日本軍が解放を進めるインド戦線です。

 この方面の英軍は、主力が北アフリカ送りにされ、しかも本国からの補給も補充も増援も途絶えているので、日本軍に攻撃され消耗を続けるだけです。

 しかも、民衆の支持は解放者側の日本にあります。

 ハッキリ言って、デリーを占領されるまでもなく、その途中で現地英軍には降伏するしか道はないでしょう。

 

 で、その近くの中東戦線ですが、こちらも補給の途絶えた英軍を相手にドイツ軍と日米軍が切り取り放題です。

 

 なお、英国はこの方面にはロクに戦力も残っていないので、想定については考えません。

 

 中東はドイツと日米の二つの勢力に二分されます。

 

 恐らく、イラク=ペルシャからアラビア半島の付け根辺りが、お互いの勢力境界になるでしょう。

 

 そして、ドイツ第三帝国に、大海軍国二国を敵に回しての新たな戦争を始めるつもりなど毛頭ありません。

 


 そして、最後は欧州での決着です。

 

 孤軍奮闘を続ける大英帝国ですが、43年に全ての戦線を片づけたドイツ軍が軍の主力を欧州に戻すと、まずその年の内に欧州上空の制空権を完全に取り戻されます。

 ついで、地中海の制空権を今度こそ完全に奪われます。

 

 そして次の年から、再びバトル・オブ・ブリテンが開始されます。

 もちろんドイツ主導に戻るでしょう。

 この時点での戦争遂行能力の差は、インドと中東を失ったイギリスではドイツに2倍以上の格差を付けられる事になります。

 特に自国勢力圏の石油の主要供給地を絶たれた事は致命的とすら言えます。

 

 ですが、ドイツも何年にも渡る総力戦で、国内経済はガタガタ、国家財政は火の車ですので、一日も早く戦争を終わらせたいのがホンネです。

 ただ、海軍は日本海軍に叩かれていようともいまだに英国が圧倒的に優勢で、バトル・オブ・ブリテンも英国に完全に守りに回られたら、なまじ生産力が上がった状態での殴り合いなので、どうしても攻撃側が不利になります。

 しかも英国はドイツが絶対に手を出せないカナダや場合によっては豪州で航空機などを作っています。

 だから英本土侵攻は、制空権の問題から難しいと言うのが実状です。

 

 もう一つの要であるシーレーンの破壊も、せいぜい五分の勝負で、完全に屈服させるにはなお数年が必要と考えられています。

 

 それに、ドイツと言うか総統閣下にとっては、もともと英国との戦争は不本意なのですから、ドイツが圧倒的に有利になった時点で再度講和を持ちかけるのが正しい外交選択と言えます。

 欧州的な外交からすれば、実にらしい決着の付け方が望めそうですらあります。

 


 一方、いまだに抗戦を続けている英国ですが、実質的に自ら一人で全ての敵を倒した枢軸国、ドイツ第三帝国と対峙している状況です。

 しかも、翌年には全ての戦力を結集したドイツ軍により、英本土上陸も行われるかも知れず、それを止めることが出来るか微妙と言えます。

 

 また、アジアは完全に日本人の軍門に下っています。

 

 ここで、英国の取るべき道は二つです。

 英本土で戦えるだけ戦いカナダやオーストラリアに亡命してでも、いつか勝利するその日まで抗戦を継続するか、ここで講和をして現在の利権を保持するかです。

 しかし、抗戦を継続しても、連邦地域だけでは力不足な上に英国を支援してくれそうな大国はどこにもありません。

 

 まあ、アメリカに助けを求めてみると言う選択もありますが、アメリカがしてくれそうなのは、せいぜい講和の仲介ぐらいです。

 


 そうした情勢を踏まえて、ドイツは実質的な勝利宣言である停戦を英国政府に提案してきます。

 それは、先ほども触れましたがドイツが戦争目的を達成したのと、ソ連との戦いで表面的には取り繕っていても、すでに経済がガタガタの状態だからです。

 

 当然、これに戦争目的を十二分に達成した日本も首を突っ込んできます。

 戦争目的を十分達成しているのですから、当然の事です。

 

 それに、英国に対してドイツ同様戦局は圧倒的優勢にあり、しかも、日本は英国と並んで今や数少ない国連常任理事国なのですから、この時点で世界平和を望む者として顔を突っ込むのはむしろ当然でしょう。

 そして、この会議上で今度こそ自らの政治理念を押し通し、有色人種による理想を実現するのです。

 


 1943年夏ぐらいより水面下の交渉が続けられた後、英国は日本と枢軸国との停戦をようやく決意します。

 

 1944年には完全に停戦が実現し、それをもってそれぞれの国の代表が集まって講和会議が始められます。

 

 戦争の仲介は、この戦争でほとんどな~んにもしなかったアメリカ合衆国です。

 これは、仲の良い日本が依頼したものとなります。

 そして、一応全ての国に対して中立の国の中で最大の国力を持つ国という立場が、これを現出させたのです。

 

 講和会議の場所は、ニューヨーク。

 

 ここに戦争当事者の英、独、日、伊そしてホスト国の米の首脳が集まり、戦後の世界について語り合います。

 

 この会議にドイツと単独講和しているソヴィエトは正式には呼ばれません。

 来てもせいぜいオブザーバーぐらいです。

 ああ、フランスも双方の代表が来ているかもしれませんね。

 あと、中華民国や日本の手により独立したばかりの印度なども代表を送り込んでいるでしょう。

 

 会議では、当然とばかりに勝者である事を主張するドイツ、日本が強気の姿勢を貫きます。

 また、ドイツの勝利に便乗した形のイタリアも元気いっぱいです。

 


 ドイツが講和に際して主に主張するのは、占領下にある欧露を自国の既得権として国際的に認めさせるものです。

 もちろん、中東もこれと同様です。

 

 ドイツの勝利に便乗したイタリアは、チュニジアとエジプトの半分、アルバニアの利権を要求します。

 ギリシアも欲しい所ですが、これは英、ソ、独の全てと対抗する気がない以上諦める事になります。

 それでも、これによりイタリアの戦争目的とされる新たなローマ帝国が復活する訳です。

 

 そして、我らが大日本帝国は、日本が解放した全ての植民地を旧宗主国が放棄する事と、それらの地域の独立承認を要求します。

 ついでに、日本が解放していない植民地地域の独立やその準備をすべきだとの主張すらするでしょう。

 有色人種の解放と人種差別撤廃を訴える日本としては、ポーズとしてもしておかねばならない主張です。

 ですが、自らの正義に則って聖戦を完遂すべく邁進してきたお人好しの日本人たちは、唯一と言っていいぐらい大マジメにこれらの事を主張しています。

 しかも、今まで欧米列強に抑圧されてきた国々が、声高に声援を送ってくれるのですから、日本の代表は元気いっぱいです。

 

 これに対して、敗者側として唯一本土を維持している英国は、この大半を受け入れざるを得ない状態です。

 

 これを断れば、今度はそれまでバラバラに戦っていた日独が、今度は徒党を組んで英本土に来かねないからです。

 実際水面下での外交交渉でそう言う話が進んでいる事も判明します。

 むしろ今までバラバラに戦っていた方が不自然なのですから、これに英国は大きな脅威を感じる事になります。

 

 強大なドイツ軍に加えて、日本の八八艦隊にまで来られては、今の大英帝国ではどうしようもありません。

 

 それに、講和会議において、かろうじて大英帝国として存続出来るぐらいの勢力圏とシーレーンも引き続き確保できそうなのですから、現状が戦術的な敗北である事を考えれば十分な成果と言えるでしょう。

 

 また、ホスト国としての役割に徹したアメリカは、アジアでは人種問題から食い入ることができず、欧州はドイツの国家社会主義により入り込む隙がなく、中東問題に要らぬ介入をして日独双方と対立が深まるだけで政治的に得るところは少なく、取りあえず国際復帰した事で満足せねばなりませんでした。

 


 かくして、潜在的には世界最大の国力を持つ大国を除いて行われた二度目の世界大戦は幕を閉じ、世界は新たなる時代へと突入します。

 

 講和会議の後、再編成された新たに国連常任理事国となったのは、英国、日本、フランス、イタリア以外にドイツそして今度はアメリカ、中華民国がこれに加わり、より混沌とした時代の舵取りをしていく事となります。

 

 特に大きな問題とされたのは、それまで世界のかじ取りをしていたとされる、世界帝国たる大英帝国のような国家が存在しない事で、列強の全てが有力とされる国でさえ、事実上の地域大国に過ぎず、これが混とんの度合いを強くしていくことになります。

 


 そして講和会議が始まる直前の1943年11月、日本帝国は独自路線の完成のための「儀式」を執り行います。

 

 東京で全亜細亜の代表を集めた「大東亜会議」の開催です。

 

 参加国は、大日本帝国、中華民国、印度共和国、韓国、タイ、フィリピン、ハワイ、内蒙古、蒙古、満州、ベトナム、ラオス、カンボジア、マレーシア、インドネシア、ビルマ、パキスタン、イラン、サウジアラビアと全アジアに及んでいました。

 

 会議において各国の自主独立、各国の提携による経済発展、各民族の伝統文化の尊重、そして人種差別撤廃を謳った『大東亜共同宣言』が満場一致で可決され、日本の戦争目的の完遂を世界中に宣言します。

 

 歴史的に、非常に高い評価を受ける行いであり、新たな時代の幕開けを告げるものでしたが、この時日本がこのことに気づく事はありませんでした。

 

 もっとも、国家社会主義陣営に支援されるようになった、中華人民共和国が勢力を増大させつつあるなど、火種が全くないわけではなく、また日本と中華民国との対立などもあり、世界を主導するには物足りない政治的パワーしかありませんでした。

 

 そして、この日本の動きが、結果的に世界情勢そのものを加速させる事になり、欧州はドイツを中心として欧州大同盟の締結による一体化の動きを示し、新大陸においても英国の影響力が低下した事をよいことに、アメリカ合衆国を中心とした再編成が急がれる事になります。

 

 当然この世界各地での性急な政治地図の再編成は、新たな内的軋轢を生み各大勢力同士の直接の対立を発生させ、数年を経ずしてさらなる軍拡と戦争の危険を大きくさせる事になります。

 


 なお、八八艦隊の鋼鉄の戦乙女たちは、この大戦においても欠員を出す事なく乗り切ることになります。

 

 そして、新たな対立の予感がある事から、その過半がそのまま保持、さらなる近代改装を施され、姿を新たに混沌とした時代に乗り出す事になります。

 

 もちろん、新鋭艦艇の建造もおさおさ怠りはなく、八八艦隊の姉妹達も新たに満載10万トンを誇る巨大戦艦「大和」級の就役など、新時代に対応した新たな姉妹を迎えます。

 

 また、英国との戦いで航空機が重要な役割を果たした事から、戦艦重視ドクトリンはやや薄くなり、「大和」級以後の大規模な戦艦の建造はなくなり、航空機とそれを運用する大型空母重視の海軍兵備へとシフトしていく事になります。

 

 そしてそれらを総括した新艦隊計画が政府の後押しを受け予算通過し、「十四十十艦隊計画」として実現していくことになります。

 


では、最後に「十四十十艦隊計画」の概要を記して、この章の最後としたいと思います。



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■十四十十艦隊計画(1950年次完成予定)

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→  第三部「Bud Dream」へ進んでください。

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