71.孤独は作家最大の敵
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小説を書くというのは孤独な作業です。
特に、商業作家になると出版社との契約により「守秘義務」が発生するため、公の場でうかつなことは言えなくなります。
自分の創作や出版社との関係、そこから発生する問題について、自分の中で内々に処理しなければならなくなります。
そうすると、ひとりで解決できないもやもやを抱え続けることになりかねません。
誰にも悩みを相談できず、出版社特有の謎商習慣に打ちのめされ、「こんなに辛いのならもう出版しなくていい」などと、才能があっても筆を折る人は多いようです。
さて、そのような袋小路に追い詰められないために、作家は一体どうするべきでしょうか?
答えは簡単で、一番難しい。
実は「孤独にならない」こと。これに尽きるのです。
孤独は簡単に人の心を蝕みます。
作家さんというか日本人あるあるですが、「周りに迷惑をかけてはいけない」「我慢が美徳」「孤独こそ創作活動を輝かせる」と信じてやまない人がかなりいらっしゃいます。
小説を書き始めたきっかけが「孤独」だったという方、結構多いのでは?
しかし結論から言うと、筆を折ってしまうのも「孤独」のせいだったりするのです。
書き続けるためには、ある程度「孤独」を薄めなくてはなりません。
さて、そのために今から出来ることは何でしょうか?
まず、書籍化作家さんなら編集者と信頼関係を築きましょう。
実は、編集者とは「作家を孤独にしないため」にいます。
これを聞いて「え?」「は?」と思った商業作家さん……色々あったのですね、お察しします。
多くの編集者が、一番初めに言うことは大体
「何か困ったことがあったら言ってください」
「いつでも相談に乗ります」
です。
これを聞いても「ファッ!?」「そんなこと言われたことないw」となる作家さん、残念ながら非常に多いと思います。
本来、創作の悩みに付き合ってくれるのは編集者であるべきなのですが、残念ながら現代ではそういった面倒見のいい編集者に当たることは稀なようです。
出版社が手あたり次第作家に声をかけるのを止めはしませんが、声をかけるならある程度「打診した」責任を持ってほしいものですね。私たち作家は、心を持った人間です。AIやBotではありませんから、粗雑に扱われると簡単に心が折れてしまうのです。
書籍化作家・未書籍化作家みんながWebで繋がる時代です。彼らの間で集められた情報が今、そこかしこで共有されつつあります。非常識な出版社や編集者とは、そのうちみなさん仕事をしなくなると思います。
そういうわけで、相談に乗ってくれそうな編集者が担当になった場合、これ幸いに色々相談してみましょう。思いがけない解決策を提案してくれるかもしれません。また、解決はしなくても「話を聞いてもらった」という事実だけで心の負担はある程度減って行くことでしょう。
もうひとつの解決策が、「創作仲間」を作ることです。
実は私は、デビュー時に編集者から「作家仲間を作った方がいいですよ」と進言されていました。
最初は「必要なの?本当に?」と疑問を隠しきれませんでした。その時の私は、特に作家仲間など必要ないと思っていたのです。
結論から言うと、私は「受賞デビュー」であり、書籍化確約とWeb上で発表されているからか、比較的スピーディに出版できたので悩みが発生しなかったというだけでした。
実際にWeb小説から拾い上げデビューされる方の中には、書籍化打診後出版社に放置されたり、打診自体を反故にされたというケースが後を絶たないようです。
出版社から放置されていると認めたくない。でも書籍化のことは黙っていなければならない。それでも長いワナビ生活の中でようやく天から垂れてきた〝蜘蛛の糸〟を放すまいと、新人作家は誰にも言えず精神を壊して行ってしまうのです。
そんな時に「創作仲間」が心の支えになります。
幸いにも現代はWeb小説サイト全盛期。小説家仲間を作りやすい環境にあります。Webのみならず、コミケや文学フリマなどで交友を広げても良いでしょう。できることならデビュー前からじっくり時間をかけ、信用出来る作家仲間を作っておくといいですね。
実は仲間を探すにおいてこの「時間をかける」というのはとても大事で、中にはデビューしたら未書籍化仲間との関係を急に切るような損得野郎だったり、実は仲間内で何でも言いふらすスピーカー野郎だった、などのトラブルもあるらしいです。
焦らずゆっくり、様子を見ながら信頼関係を築いて行きましょうね。
そしてもしあなたが誰にも言えない出版社とのトラブルを抱えてしまったら、その長年培ったネットワークの中から信頼出来る作家をピックアップし、相談してみましょう。
もちろん契約内容など、全てを話すと守秘義務違反になりますので、具体的な数字や肝心の部分はぼやかして話すとよいでしょう。
作家はみな、似たような悩みを抱えているものです。
編集者の返信が遅い、音信不通になった、契約が遅い、改稿ポイントが謎、軽く扱われているようで不安、などなど……本当によくあることなのです。
話すだけで心が軽くなることがあります。
重ね重ね言いますが作家は孤独なので
「こんな扱いをされているのは自分だけではないか?」
「こんなことで悩んでいるのは自分だけなのではないか?」
などとぐるぐるひとりで悩んでしまいがちです。
こういったことは創作をしたことのない人間に聞いても、何の解決にもなりません。
創作する仲間を見つけておくと、長い作家人生を歩くための「杖」となるかもしれませんよ。
最後に。
人の心を書くのが小説です。
それを書くための「あなたの心」だけは、壊さないようにしましょうね。
その才能、唯一無二なんですから。本当ですよ。




