49.出版にお金はかかりません!【注意喚起】
みなさま、夏の暑い盛りに執筆お疲れ様です。短編書いてるあんたは偉い。長編書きはもっと偉い。
さて、最近はTwitterに入り浸っている結子なのでございますが、出版界隈では作者を騙くらかす色々な魑魅魍魎が跋扈しているらしいので、ちょっとばかり自分の経験から「一般的な出版」についてお話をさせていただきます。
実は──出版社から出版するのに、お金は一切かかりません。
かからないのが「普通」です。
何が言いたいかというと、「出版したいならお金を出してね」と金銭を作家に要求して来る奴がいたら、それがたとえ何らかの肩書がある人間だったとしても、危ないので深入りは避けるべきだということです。
なろう上でも注意喚起がありましたが、感想やレビューを書くから金を出せとか、ポイントで応援してやるから金を出せとかいうのも「出版までに金がかかる」の一例です。お金を出さなくても良作は人気になれますし、人気にならずとも書き続けていれば、いつかは感想を書いてくれる読者に出会えます。その過程をすっ飛ばしてほいほいお金を払うと、その後なろうで書けなくなったり、出版社からその作品の出版がNGとなるので注意が必要です。
それから、世の中には「自費出版」というものがありますね。
自ら自費出版を請け負う会社にお金を出して、自分が思うような本を作る。私はこれを否定するつもりはありません。本人が納得の上で金銭を支払うことで夢のひとつが叶えられるならば、いい手段であるとすら思うからです。
しかし、受動的なきっかけで出版の話がもたらされた時、お金を払うのは慎重になるべきです。
例えば、地方の小さな文学賞を獲ったとしましょう。
それは冊子になって出版されることはありません。そんな折、突然業者から電話がかかって来るのです。
「あなたの作品に感動しました。ぜひうちで出版しませんか?」
作家志望にとって、才能を認められることほど嬉しいことはこの世にありません。
しかしよくよく話を聞いてみると、「書店の棚を確保するには〇万円必要」だとか、「前金を入金しないと本を刷らない」だとか言われるのです。
普通の出版で、作者が前金を払うことはありません。
書店の棚の確保は、作者ではなく出版社がやってくれます。
かなり特殊な例として島田洋七の「がばいばあちゃん」があります。自費出版から商業化し、大ヒットした例です。これは作ってから、著者が講演などで手売りしたことで評判になったそうな。しかし彼は有名人ですし、ある程度の伝手や知名度があるので売れるきっかけを手にすることが出来ました。一般人の我々が同じことをしても、ヒットさせるのは難しいかもしれません。
現在は自費出版するならamazonで電子書籍を売るとか、kindleで無料公開するなどの手段があります。無論、なろうで公開するのもひとつの道です。令和はお金をかけずにみんなに作品を見てもらえる時代。本当に素晴らしいですね。
自費出版はかなり高額になるので、やりたくても出来ない人が大半だと思います。だから若い人ほど被害に遭いにくい側面はあると思います。
しかし、その金額がむしろ少額だと厄介です。
特に「商材」や「添削」、「情報」などを売る(自称)作者や(自称)編集者がネット上にはいるようです。自分の作品を少しでも良くしたいと願うのは、作者なら当たり前。その道のプロに読んでもらって、忌憚ない意見を貰いたいと言うのは誰しもが持つ願望でしょう。それが10万円以下ならば「出せるぞ」と思ってしまいがちです。
しかし、そこに手を出したくなったら一呼吸おいて下さい。
世の中には「公募」というものがあります。
公募の種類にもよりますが、評価シートや感想サービスをしている公募はいくつもあります。オレンジ文庫のノベル大賞や、電撃文庫の電撃大賞、ネット小説大賞などは、選考の過程にもよりますがレスポンスを下さる可能性の高い賞です。
まずはこういった賞に出し、下読みさんや編集者の意見をゲットしておくといいです。選考が進めば進むほど評価の辛辣さにかなり心をえぐられますが、それも大切なあなたの経験。お金では買えない「他者の視線」は、是非お金を払うことなく手にしていただきたいものです。
あと、もしそこのあなたが文系の大学生なら、普通にその辺の教授を捕まえて「小説を読んで感想を下さい」と言ってみた方がいいです。実際私はそれをしていましたし、それによって面白い意見や感想をいただけることが多々ありました。目の前で厳しいことを言われると心折れそうになりますが、それも学費を払ったことによる役得と考えましょう。実は、あとから「あの教授芥川賞候補だったのかよ」「あの教授文芸誌で連載持ってるじゃん」「あの教授〇〇賞の選考委員なのかよ」「あの教授漫画の原作者じゃん」ということが判明したりしますので、積極的に絡んでおくとよいでしょう。
そういうわけで、作家を貧乏にしようとする(自称)出版関係者は、ほぼ〝敵〟です。
みなさん、ぜひ上記の心得を胸に、安心安全な夏休みを過ごして下さいね。




