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27.「読まれる」題材と「書きたい」題材

 さて、次に何を書こうかな~と模索中の結子です。


 拙著「没落令嬢の幸せ農場」がついに10000ptを超えました。


 現在の心境としては、まさかここまでとは……という驚きと、よく出来た作品だったもんね!という自負と、その間で揺れ動いているような状態です。




 さて、書き始める時、何を題材に選ぶのか?題材選びの注意点とは?というお話です。


 なろうは、エロと残虐表現さえ避ければ、割と何でも書いていいという投稿サイトです。


 それをどこかではき違え、こう思ってしまう作者様がいらっしゃいます。


「好きなものを書いて、評価されるチャンス!」


 この勇み足が、我々素人作家を認知の歪みに引きずり込むのです……




 あなたの好きなものを、万人が好きであるとは限らないのです。


 私もそうでしたが、なぜか我々素人作家はそこをはき違えてしまいます。


 そしていざ好きなものを書いて、投稿すると──


「評価がつかないよ!何でだ!」


 このような事態になってしまうのです。




 今一度、評価されるには?ということについて考えてみたいと思います。


 例えば、あなたが今料理をするとして。


 牛肉に塩コショウをして、焼く。


 これが一番無難で美味しいでしょう。


 誰かに「食べる?」と聞けば、「食べる!」と即答してくれることと思います。


 しかし。


 牛肉に好きなものを全部かけます。マヨネーズにケチャップに焼き肉のタレにわさび!


 これは……好き嫌い分かれそうですね。


「食べる?」

「う、うーん。まあ分かるけど……今回はパス」


 こうなること請け合いです。




 ここは、ぐっと我慢しましょう。


 もし書きたいことのコアが決まっているなら、それにどんな味付けをすべきか考えてみるといいかもしれません。


 コアが牛肉なら、ごてごてさせるのは避け、味付けはあっさりでいいでしょう。


 逆に好き嫌い別れるパクチーとかなら、ここはナンプラーや明太マヨあたりで「イケる」方向にどんどん味付けして行きましょう。




 身も蓋もない話をしてしまうと、コアの素材如何で読まれるかどうかはほぼ確定しているのです。


 コアが「婚約破棄」「ざまぁ」「聖女」「追放」(=牛肉)なら味付けはそんなに必要ないかもしれません。


 しかし「SF」「純文学」「私小説」「戦争」「群像劇」(=パクチー)をコアとするなら、相当なマイルドコーティングが必要となります。


 コアが前者なら、辛子をたっぷり塗っても食べてくれる人はいるかもしれません。


 後者なら、辛子なんか論外ですし、何をかけてもダメな人はダメでしょう。


 ありとあらゆる手を使い、食べてくれる人が現れるのを待つしかありません。




 ここで、評価を得たいと言う欲望に立ち戻ります。


 まずやるべきことは「なぜそれが書きたいのか」という作者のスタンスの確認です。


「自分が楽しみたいから」


 ということであれば、それでいいのです。


 評価を度外視して書けばいいだけなのですから。


 けれど「誰かに読んで欲しいから」だった場合、どうするのか。


 パクチーを誰かに食べてもらうには?


 これは、かなり知恵を絞らなくてはなりません。


 もう、パクチー自体を乾燥させたり、切り刻んで別物に混ぜ込んだりしなくてはならないかもしれません。


 かなりの遠回りを強いられます。


 このなろうにおいては「独自性を出す」ことで評価を得るのは至難の業です。


 題材が人気と外れている場合は、それなりの覚悟を持って書かなくてはなりません。




「好きなものも書きたいし評価もして欲しいんだいっ!」


 そんな困ったちゃんのあなたには、こんな方法があります。


 牛肉を塩コショウで焼いて勧めた後、


「こんなものもありますが……」


と、こっそりパクチーを勧めてみるという方法です。


 基本的に「ふざけんなよ?」と言われるかもしれませんが、


「食卓に座ってしまったし、まあ試しに食べてみてもいいかな」


という人が現れるかもしれません。


 つまり「読まれるであろう話」と「書きたい話」を別個で書いてしまえばよくない?ということです。


 なろうの面白いところは、何だかんだ「パクチー好き」がいたりするところなのです。


 なのでそういう話はそういう話として書きつつ、「読んでもらえる話」を模索した方がいいと思われます。


 読んでもらえるものが書けるようになり、書きたい話が書けるようになると、なろうライフは歯車がかちりと合って回転を始めます。


 個性と無個性、甘じょっぱさ、口当たりと風味。そのちょうど良い塩梅が徐々に分かって来ると思います。


 牛肉とパクチーを合わせた創作料理が出来た時、事態は思わぬ方向へ転がり始めます。


「あれ?これ、結構イケルね!」


 こうなれば、だーっと評価が増えることもあるかもしれません。




 今回高ポイント作品となった「没落令嬢の幸せ農場」も、基本的には作者の、農業や料理、手芸などの「手作り」が書きたいという個人的な思いから端を発しています。


 けれどそれを淡々とこなすだけの話を、誰が読みたいと思うでしょうか。


 私はここに「身分差恋愛」という、古代から大人気の材料「豆腐」的コアを据えました。


 そこに、せっせと「手作り」「農業」という名の「パクチー」と「ドレッシング」をかけてみました。


 異世界恋愛と言うホールケーキを毎日たいらげていたみなさんは、どこか素朴な味を求めていたようです。


「あー、たまにはあっさり味もいいわね♪異能や婚約破棄にも疲れたわ!」

「これにパクチーかけるなんて、勇気あるなぁ。でもドレッシングが美味しいからイケそう」


 そんな感じで、何だか安心できる豆腐パクチーサラダに手が伸びたのです。




 そう、なろうには時流もあるので注意が必要です。


 タピオカミルクティ(=幼馴染み)みたいなものが一気に流行り、味わい尽くされると、読者は急に別のものにも目が移るようになります。


 その時が、創作料理を出してみるチャンスです。


「これ、いかがっすか?」


 それで即オッケーとならないのがなろうの難しいところですが、やってみる価値は大いにありそうですよ。

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2025.11.25〜発売 !
― 新着の感想 ―
[良い点] 私はこのサイトにおいて、目標とか志もくそもないタイプの人間ですが、なんとなく読んでみたこちらの作品が、読み物として純粋に面白く、一気読みしてしまいました!(申し訳ないことに、どこを経由して…
[一言] >「好きなものも書きたいし評価もして欲しいんだいっ!」 結局ほとんどの作家の方はこれなんでしょうねw そして現実を思い知って筆を折ってしまう……w もったいないですよね。 せっかくなろうは無…
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