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ステータス・オール∞  作者: 八又ナガト
第四章 中央大陸編
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96 懇願

 完全決着だ。

 屋形から顔を出すリーネやシアと視線を合わせると、こくりと頷いた。

 リーネは永久残火を解除し、シアは弓を手にしたまま外に出てくる。

 念のため、ルナリアだけはまだ中に隠れている。


「倒せたのか?」


 リーネがトモヤに尋ねる。


「ああ、リーネやシアのおかげで、向こうも戦意をなくしたみたいだ」

「がんばった。ぶい」


 嬉しそうな表情を浮かべ、ピースサインを作るシア。

 実際、彼女達のミューテーションスキルのおかげで、てっとり早く敵の戦意ごとへし折れたといっても構わないだろう。


 魔族達の姿を確認した時点でリーネは周囲の空間を何十回も切り裂き、その箇所に永久残火を使用し、敵の攻撃を食い止めた。

 そしてシアに関しては、屋形の中からにもかかわらず、一寸の狂いなく八人の敵に矢を放ってみせた。もはや出会った頃の、自分の持つ力に恐れていた面影はない。


 結局、トモヤは矢面に一人で立っていたに過ぎない。

 今回の襲撃を食い止められたのは二人のおかげだ。


「さて、となると問題はここからなんだが」


 ざっと周りを見渡す。

 あくまで人族の容姿をベースとして角が生えている者や、完全に鷹や牛の顔をしている者など、その姿は多種多様であった。

 これまでの旅の途中に数人の魔族と出会ったため既に知っていることではあったが、魔族は他の種族と違い、その容姿や体形はより多彩なものなのだ。

 ルナリアのような、人族から見れば可憐な容姿を持つ者は珍しい。

 その理由としては、魔族はもともと魔物であったものが多いかららしいが、詳しいことまではトモヤにも分からない。

 いまトモヤにとって重要なことは、目の前にいる者達に対する処遇を考えることだ。


「面倒なことになったな……」


 さておき、とりあえず彼らを一ヵ所に集めることにした。


 創造で生み出した縄で、八人をひとまとめにする。

 トモヤ達との間に隔たる実力差を理解したためか、抵抗することはなかった。


 さて、問題はここからだ。

 改めて、トモヤは心の中で呟く。

 しかるべき場所に処遇を任せるために、次の都市まで彼らを連れて行くのは面倒だが、ただ解放してやる訳にもいかない。

 だからといってこの場で処分するという訳にも当然いかない。


 では、どうするのが一番いいのか。

 後ろの二人に視線を送ると、そのうちのリーネが頷き言った。


「ひとまず、事情を聞くのが先だろう。なぜ私達を襲ってきたのかを尋ねよう」

「それもそうか……じゃあそうだな、お前でいい、今の質問に答えろ」


 トモヤは捕らえた魔族の中から一人選び出しそう告げる。

 一ヵ所に集める際の他のメンバーなどの反応から、この集団のリーダーかと思われる男性だ。

 すると、浅黒い肌に、額から鬼のような大きな角を一本生やしたその男性は、苦渋に満ちた表情を浮かべる。


「私が、その問いに答えなければならぬ理由があるのか?」

「そりゃまあ……たぶん?」


 もともと、トモヤは彼らの命を奪おうなどと考えていない。

 そうなると問題はどうやって今回の襲撃の罪を償ってもらうかだが、彼らの述べる理由次第ではある程度の情状酌量の余地はあるかもしれない。

 トモヤはリーネ達もその考えに賛同してくれることを信じ、そのまま彼らに述べる。


 すると、魔族達は目を大きく開き驚きを露わにしていた。


「何を言って……私達はお前らを殺そうと、いや、それ以上に残酷な目に合せようとしたのだぞ!? 私達が敗北した今、殺されて当然――」

「殺すつもりはないって言っただろ。それは単純にそういう行為が嫌なのももちろんだけど、何より……」


 彼女の気配を感じ振り向く。

 すると、先ほどまでリーネやシアのいた場所の横にちょこんと立つルナリアの姿があった。トモヤ達の話の内容が気になり、出てきてしまったのだろう。


 何はともあれ、そういうことだ。

 改めて魔族に向き直り、告げる。


「そういったことを、ルナ……あの子の前でしたくない。話したくもない。だから落としどころを見つけるためにも、お前達の事情を聞かせてくれ」


 これ以上の説明は必要ないだろうと、口を閉ざす。

 後ろからリーネやシアが小さく笑ったような音が聞こえる。

 そんな中、目の前の魔族達はまだ唖然としていた。


 だが、あるタイミングで複数人の体がピクリと動き、彼らが魔力を纏いだした。

 まさか今になって抵抗をするつもりか。一瞬だけ気を引き締めたトモヤだが、すぐにその魔力が攻撃用ではなく、念話用のそれと分かる。

 トモヤ達に聞こえぬように、何かを話し合っているのだろう。

 申し訳ないが、状況が状況だ。

 トモヤは彼らにバレないように注意しながら自身の魔力を混合させ、念話を読み取ってみせた。


(正気かアグロス!? この者達に懇願するなど!)

(だが、この状況で私達が頼れるのはもはや彼らだけだ! もしもの時には、責任は私が取る! この命も投げ出そう!)

(ふざけるな!)

(ッ、だ、だがヴィ―カ、そうする以外の方法など思いつかんのだ!)

(そうじゃねぇ! もしもの時に償うのはお前だけじゃねえ、俺達もだ。勝手に一人で責任を背負おうとしてんじゃねぇぞ!)

(ヴィ―カ……それに、皆も。本当に、いいのだな)

(ああ、当然だ)

(それが必要なことならば)

(僕達は一心同体ですよ!)

(皆……ありがとう、ありがとう!)


 ……なんだこの会話。


 場違いなことで申し訳ないが、トモヤは真っ先にそんな感想を抱いた。

 そんな風に思うトモヤの前で、彼らの相談は終わったのだろうか。


 縄に縛られたまま、八人は同時に深く頭を下げる。

 そして、必死さの籠った声で叫んだ。


「恥を忍んでお願い申し上げたい! どうか、どうか……私達の家族を助けてはもらえぬだろうか!」


 心からの懇願。

 トモヤはリーネ達と視線を合わせこくりと頷き……彼らに向けて言った。


「あの、だからまずは事情を先に……」

「あ、はい」


 それが分からないことには、判断のしようがなかった。

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