87 誕生日
ルナリアとの川遊びからさらに数日後。
トモヤ、ルナリア、リーネの三人は、既に習慣になりかけている森の散歩をしていた。
他の人々は、それぞれの事情があってついてきていない。
シアとメルリィは今後の世界樹の守り人について、他のエルフ族の方も交えて話し合いを行っている。
ずっと昼間を一人で請け負っていたシアが旅立つというのだから、再編成なども含めて色々と面倒なことがあるのだろう。
「……旅立つ、か」
「どうしたんだトモヤ? 急に空を仰いで」
「いや、何でもない。大丈夫だ」
「? ならいいが……」
“あの日”のことを思い出して物思いにふけるトモヤを不思議に思ったのか、そう尋ねてくるリーネに対して簡潔に答える。
ひとまずは、それについては忘れておこうと判断した。
そしてフラーゼに関してだが、彼女は何か面白い物でも思い付いたのか、町にある工房を借りてそれの製作に励んでいる。
トモヤに対して嬉しそうな表情で『完成を楽しみにしておいてください!』と言っていた。
「……さて、この辺りでいいか」
森の中でも少しだけひらけた場所につくと、トモヤ達は歩みを止めた。
今日は散歩以外にも用事があるのだ。
そんな訳で、トモヤは異空庫から“それ”を取り出した。
「ほれ、ルナ。これで呼び出すんだろ?」
「うんっ!」
ルナリアに手渡したのは魔法紙――つまりは召喚魔法に利用する魔法陣が描かれた紙だ。
今日はこれである存在を召喚する予定なのだ。
実を言うと、というよりは当然のことだが、フィーネス国を出てから旅をする中で、ルナリアが召喚魔法を使用する機会自体はあった。
懐かしのシュアやボーバーなどはもちろんのこと、それ以外にも様々な新しい魔物と出会ったりもした。
そんななか、一体だけ呼び出せなかった存在がいる。
その存在の立場なども考えればそれは当然なことなのだが、ルナリアはそれが悲しいと感じたらしく、何度も召喚を試みている。
今回もその試みのなかの一回だ。
「それじゃ、準備するね!」
言って、いそいそと準備を始めるルナリアを眺めながら、トモヤはふと思った。
そろそろ、ずっと目を逸らし続けた事実に向き合うべきだと。
そんな訳で、ルナリアとリーネから許可を取った後――いつぶりかになるか分からないステータス鑑定を使用した。
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夢前智也 18歳 男 レベル:∞
ギルドランク:B
職業:∞使い
攻撃:∞
防御:∞
敏捷:∞
魔力:∞
魔攻:∞
魔防:∞
スキル:オール∞
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リーネ・エレガンテ 18歳 女 レベル:48
ギルドランク:B
職業:赤騎士
攻撃:42360
防御:40020
敏捷:38400
魔力:41400
魔攻:43200
魔防:41700
スキル:火魔法Lv5・剣術Lv6・空間魔法Lv5・隠蔽Lv6・空間斬火
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ルナリア 12歳 女 レベル:248
職業:白神子
攻撃:19800
防御:18800
敏捷:18200
魔力:62000
魔攻:58700
魔防:59400
スキル:治癒魔法Lv6・召喚魔法Lv6・神聖魔法Lv6・隠蔽Lv4・神格召喚
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「んふっ」
その結果を見て、トモヤは思わず変な笑い声を漏らした。
色々とツッコミたいところがあるが、まずはやはりルナリアのステータスについてだろう。
確か、最後に彼女のステータスを鑑定したのは終焉樹を救った時だ。
それから約二ヶ月……様々な魔物を倒した恩恵が彼女に流れることによって、ちょっとばかりおかしい結果になっていた。
魔力、魔攻、魔防に関しては優にリーネを超えている。
というかレベル、レベルが少しおかしい。
まあ、何はともあれルナリアのステータスが上がったのは望ましいことだ。
今の彼女なら、きっと一人でもその辺りの魔物を圧倒することができるだろう。
次に気になった点と言えば、自分のステータス表示のうちの年齢が、17から18に変わっている部分だろう。
思えば、この世界に呼び出されたのは高校三年時の7月上旬。
トモヤの誕生日は9月であるため、この世界で過ごした時間が四か月弱であることを考慮すれば正しい数字だ。
この世界での暦の数え方が日本とは少し異なるため(一年が365日であることは何故か一緒だが)、自分の誕生日についてなど忘れてしまっていた。
それに加えて、もしここが日本なら、色々な制限がなくなるため気にしていたかもしれないが、あいにくこの世界では15歳から成人なため、大した興味を持っていなかったからかもしれない。
そんなことを一人で静かに考えていると、隣にいるリーネが疑問に思ったのか尋ねてくる。
「何だか考え込んでいるようだが、鑑定結果に気になる点でもあったのか?」
「ああ、少しな……そうだ、リーネやルナの誕生日っていつなんだ?」
「む、私はだな」
「んー、たしかねっ!」
思い返してみると、その辺りの話をリーネ達から聞いたことがなかった。
リーネはもちろん、ルナリアもまた準備の手を止めて答えてくれる。
「……ふむ」
その答えを、大体であるものの日本の暦に合わせてみると、リーネは4月、ルナリアは12月が誕生日のようだった。
そこで重大すぎる問題に気付いた。
「――ってことは、ルナの誕生日まではあと60日程度なのか」
ルナリアの誕生日、それはこの世界が生まれた日に匹敵、いや圧倒するくらいに大切な日だ。
盛大にお祝いをしなくてはいけない。
なのに、準備期間が60日など少なすぎる。
最低でも1000日は必要だ!
「トモヤ、君はまた変なことを考えているだろう」
「考えてない」
嘘じゃない。
だってこれは変なことじゃなく重要なことなのだから。
トモヤは心の中でそっと零しておく。
「まあいいか。その辺りの話はまたおいおい。準備の邪魔して悪かったなルナ、そろそろ始めようか」
「うんっ!」
元気よく頷くと、ルナは改めて魔法紙に向き直る。
両手をその上に置き、魔力を注ぎながら言った。
「――おねがい、きてっ!」
その願いに応えるように、魔法紙は眩い光を放ち――
『――ふむ、久しいな、我が主よ』
「っ、フェイ!」
――白い毛を携えた巨大な狼。
つまりは、フェンリルが現れた。
それぞれの誕生日を地球の暦に合わせると。
リーネ:4月11日
トモヤ:9月9日
ルナリア:12月24日
シア:2月22日
です。それ以外は現時点では未定だったり何月かだけは決まってたり。




