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ステータス・オール∞  作者: 八又ナガト
第三章 北大陸編
66/137

66 ドワーフの国

『第三章 北大陸編』(前半17話、東大陸)

ようやくたどり着いた!


 ◇◆◇


「「ついたー!」」

「元気だな」


 船から降り、北大陸アルスナの地に足を踏み入れたトモヤとルナリアが楽しそうに、両腕をあげながらそう叫ぶ。

 それに対し感想を入れながら、リーネは後ろで小さく微笑んでいた。


「いやー、アンタらがいてくれて本当に助かったよ。リヴァイアサンが出てきた時はもうダメかと思ったからねぇ。ほれ、私達が貰った報酬の半分だ。持ってきな」

「ヴェールさん……それでは、遠慮なく」


 《水辺の灼熱者》のリーダーであるヴェールが代表して、金貨の入った袋をトモヤに渡す。

 これまでの経験から、トモヤはこういった状況では変に断らず、素直に受け取った方が両者にとっていい結果になると学んでいた。

 ぐっと手に重みがかかる。


 それからトモヤ達とヴェール達は最後に挨拶を交わし別れた。

 この港、ドイクポートに滞在する予定のヴェール達と、このままドワーフの国に向かうトモヤ達とでは向かう場所が異なるのだ。

 また会うことが出来たらいいなと、素直にそう思える人たちだった。


「さて、俺達はドワーフの国に向かうか」

「ああ、そうしよう」


 トモヤの提案に頷くリーネ。

 ドワーフの国はこの港からほんの数時間歩いた先にある。

 正確に言えば、この港もドワーフの国の国土の一部だ。

 ただ、一般的には今から向かう国土の中で一番の大都市のことをドワーフの国と呼ばれているため、決して間違えている訳ではない。


 日はまだ空高く昇っている。今日のうちに辿り着くことが出来るだろう。

 乗合馬車に頼るまでもない。舗装された街道もあるらしいため、ゆっくりと歩いて行こう。

 船の上に四日間もいたため、運動不足解消だ。


「そんじゃ、しゅっぱーつ!」

「おー!」

「……ふふっ」


 片手を上げて叫ぶトモヤを真似するように、ルナリアが満面の笑みで飛び跳ねながら応える。

 それを先程と同じように、後ろから楽しそうに眺めるリーネ。


「トモヤはこっち! リーネはこっち!」

「おおっ」

「ふむ」


 ルナリアは自分の右側にトモヤを、左側にリーネをつれてくる。

 そして二人と手を繋ぐと、えへへぇと笑う。

 その笑顔に癒されながら、トモヤとリーネはぐっと手を握り返した。


 傍から見れば、ただの夫婦と娘でしかなかった。




 街道には、トモヤ達以外の人々も多くいた。

 ドワーフ族と思わしき者達も多い。まあ、ここがドワーフの国である以上当然なのだが。

 トモヤのイメージ通り、男性は少し身長が小さめで筋肉質かつ、顔には髭などが多い。

 ただし女性に関しては、身長のみ人族より少し小さいな、程度の感想しか抱くことができなかった。

 ドワーフ族と人族を並べても、特に注視しなければ気付かない可能性もある。


 歩いている途中、魔物は一体も出てこなかった。

 この辺りは魔物の駆除が行き届いているらしい。

 港付近にはいくらか草花が生えていたが、先に進むごとにその数は減っていき、固く乾燥した大地が広がっていく。

 数々の鉱山に囲まれるドワーフの国に近づいている証拠だった。


「ここらでいったん休憩するか?」


 歩くこと二時間。既に半分の道程は過ぎ去っている。

 ただ、茶色の景色が増えてくるごとに空気の質も少し濁り、呼吸がしづらくなってくる。

 トモヤやリーネはこの程度では問題ないが、心配なのはルナリアだ。

 そう思い尋ねたのだが、彼女はふるふると首を横に振る。


「だいじょうぶだよ? まだ全然つかれてないからっ」

「本当か?」

「うんっ」


 顔色を窺うに、嘘ではなさそうだった。

 幼い体に似合わず、大した体力である。

 まあ、それもそのはずだ。終焉樹暴走事件の後にも、トモヤは終焉樹の中に入り多くの魔物を倒し、しまいには先日のリヴァイアサン討伐の件もある。

 今のルナリアのステータスは、おそらく以前よりも格段に上昇しているはずだ。

 体力がステータス上のどの項目に含まれているのかまでは分からないが、ステータスが高いほど疲れにくくなるということは、かつてインドア派だったトモヤがこれだけ元気なことからも証明できる。


 けれど、まあ。

 ルナリアが疲れていないからといって彼女をこれ以上歩かせてもいいかと言われれば、それはまた別の話であり。


「ほら、ルナ、乗れ」

「……? あっ! うんっ!」

「む」


 その場でしゃがむトモヤを見て少し不思議そうな表情を浮かべた後、ルナリアはその意図に気付いたように顔を輝かせる。

 ルナリアは両足を広げ、トモヤの首にまたがるようにして座った。

 体重がかかるのを感じたトモヤはぐっと、ルナリアの重み――いや、軽みに耐えながら立ち上がった。

 つまりは肩車だ。


「わぁっ! 高いねっ」


 特に大した景色があるわけでもないだろうに、普段より高い視線から見下ろすことそのものが新鮮だったのか、ルナリアはトモヤの上でわいわいと騒ぐ。

 ルナリアが飽きるまではこのままで進むとしよう。

 ……残る問題は、ルナリアではなくトモヤの隣にいる少女についてだ。


「……リーネさんも、あとで乗る?」

「っ!? の、乗らない!」


 羨ましそうに二人を眺めるリーネに恐る恐るそう問いかけると、彼女は顔を真っ赤にしてそう答えた。

 船上での膝枕や添い寝のあれこれによる恥ずかしさも、どうやらまだ完全には消えていないらしい。

 まあそれは仕方ないことだろうとトモヤも思う。

 何故なら今のトモヤの顔も赤く染まっているから。


 気を取り直して、

 トモヤ達は再び歩を進め、ドワーフの国を目指していった。




 それからさらに一時間後。

 ドワーフの国、最大の都市ファベルトニクに到着した。


「まあ、だいたいは想像通りってところか」


 城壁の中に入り、周りを見渡しながらトモヤはそう呟いた。

 ちなみに既にルナリアは肩から降り、トモヤと手を繋いだ先にいる。


 最大の都市といっても、それほどの大きさを誇るわけではない。

 トモヤとリーネが出会った冒険者の町ルガールに比べても同じ程度だ。

 観光客用に幾つかの宿屋や飲食店があるものの、それらがこの町の売りというわけではない。


 この町にくる多くの者の目的。

 それは、ドワーフ族の類稀なる高水準の鍛冶技術によって生み出される武具や調度品であった。

 その証拠に、それらを取り扱う店が圧倒的に多い。武具などを売る店は石造りの外観そのものが凝った造りになっており、それを眺めるだけで面白い。

 店主にとって、何よりまず初めに自分の技術を主張できる場所、それこそが店の在り方なのだという。


「……懐かしいな」


 その光景を眺めながら、リーネがそっと零す。


「そういえばリーネは前にもここに来たことあるんだっけか」

「ああ。家を出てすぐの頃、自分探しの一環でな」

「自分探しだったのか……」


 まさかの真実である。


「それで、以前言ってたリーネの知り合いの店はどこにあるんだ?」


 トモヤは続けて質問を重ねる。

 そもそも、この北大陸に来た理由はリーネの知り合いに会って剣を打ってもらうためだ。

 長きに渡る旅の末、ようやく目的が叶うことになる。


「ああ、工房はこっちだ。付いて来てくれ」

「分かった」


 リーネの言葉に頷き、トモヤ達は目的地に向かい始めた。

 大通りから外れた路地裏を、リーネは久しぶりに来たというのに迷うことなく突き進んでいく。

 普段はこの辺りに観光客は来ないのだろう。どんどんと建物や道の風貌はさびれていく。この先にリーネの知り合いが本当にいるのか疑問に思えてくる。


「着いたぞ」

「……ここが、か」


 リーネに連れられて辿り着いた先は、大きさだけは立派な、けれどもボロボロな外観の工房だった。店ですらない。トモヤが訝しげな表情を浮かべていると、リーネが説明を加えてくれる。


「ああ、ここの主は基本的に仲のいい相手からしか生産依頼を受け付けていないんだ。そのせいか、建物の外側にこだわったところで仕方ないという考え方の持ち主でな。その分、腕は確かなのだが」

「なるほどな」


 完全な職人気質というわけか。

 どんな人物なのだろうかと考えるトモヤの横で、リーネが軽く戸をノックする。


「フラーゼ、いるか? 私だ、リーネだ。以前約束していた剣を創ってもらいに来たぞ」


 しかし、何も言葉が返ってくることはなかった。


「? だれも、いないのかな?」


 ルナリアはきょとんと首を傾げながらそう呟く。トモヤも同様の感想だった。

 しかしリーネだけはトモヤ達とは違い――


「入るぞ」


 ――迷うことなく戸を開け中に入った。


「ちょっ、リーネ、勝手に入って大丈夫なのか?」

「ん? ああ、別に構わないだろう……というよりも、彼女が呼び掛け程度で外に出てきた記憶がこれまでにない」

「……それならまあ、いいか」


 ここの主と最も親しみ深いリーネがこう言っているのだ。特に疑うこともないだろう。

 ルナリアと顔を合わせてお互いにこくんと頷いた後、リーネの後に続く。


 建物の中に入るとまず小さな部屋が広がり、そこからは雑多な印象を受けた。武具の素材に使用するであろう鉱物から、錬成に用いる道具まで、なんともまあ無造作に散らかっている。

 本当にここの主の腕は確かなのかという疑問を抱きながらも、リーネに続いて前に歩いて行く。

 そして、その先にある二つ目の戸を開いた。


「っう、おぉ」

「わぁ……」


 その中の光景を見た瞬間、トモヤとルナリアは思わず感嘆の息を吐いた。

 そこに広がる空間は、一つ目の部屋の何倍も大きい。

 尤も、トモヤ達が目を引かれたのは部屋の大きさにではなかった。


 石造りの壁には、様々な武器が立てかけられていた。

 剣、槍、弓、盾などに至るまでその種類は様々だ。その刀身の輝きから、大して武器に詳しくないトモヤでも優れたものだと一見して分かる。


「……ふぇ? ああ、誰かと思えばリーネさんじゃないっすか! お久しぶりっすね!」

「ああ、そうだな、フラーゼ」


 聞き慣れない声がトモヤを現実に引き戻す。

 部屋の中心に視線を向けると、そこには一人の少女がいた。


「っと、ところで、そちらの方々は知り合いっすか?」

「ああ。私の旅の仲間だ」

「ほえ~、あのリーネさんと一緒に旅をするほどの方々っすか。なるほど」


 そのような会話の後、フラーゼと呼ばれた少女は手に持つ歪な形をした、恐らく鍛えている最中の剣をことんと地面に置く。

 そしてゆっくりと立ち上がると、トモヤとルナリアに向き直る。


 140センチほどの小さめな背丈。身に纏う服は、レザー製の、体の要所要所のみを隠す露出の多いものだ。美しい肌が大胆に空気にさらされている。

 容姿に関しては、琥珀色の髪を首元まで伸ばし、髪色を少し濃くしたようなぱっちりと開かれた瞳が特徴的だった。綺麗というよりは可愛いといった風貌。


 そんな子供みたいな容姿を持ったフラーゼは、にっと笑って言った。


「どうも初めまして、あたしはフラーゼっす。リーネさんと旅できるなんて、貴方たち凄い人っすね!」


 開口一番、リーネに対してちょっと失礼だった。

 心の中で、トモヤもちょっとだけ賛同した。

今回シアが出てくると思った方、申し訳ありません。あと2、3話お待ちください。

フラーゼさんはお馴染みのサブヒロイン枠です。

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◇『ステータス・オール∞』3巻の表紙です。
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