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ステータス・オール∞  作者: 八又ナガト
第三章 北大陸編
56/137

56 海水浴

 アリアンテ海水浴場。ノースポートの陸地とアトラレル海の接する海辺はそう呼ばれており、例年大きな賑わいを見せている。

 この海水浴場で遊べる期間もまた、アトラレル海が荒れていない時だけだ。荒れが収まる時期になると、町の駐在騎士や冒険者などが協力し海の浅瀬にいる魔物を全て討伐する。その後、特殊な結界を張り、一定の範囲に魔物が入れなくする。

 こうすることによって人々の安全を保障しているのだ。


 さらにここが人気な点として、種族関係なく開放感を味わえることにある。

 身体の骨格やら何やらが全く違うこともある人族や亜人族だが、ここではそういったことに差別的な視線を送ったり文句を言ってくる者はいない。固く禁止されている。それ故に気兼ねなく誰でも楽しむことが出来るという訳だ。


 などなどという説明を、トモヤはリーネから聞いていたわけだが……


「まさか異世界に来て海パンをはくことになろうとは」


 海辺で一人座り、人々が楽しく泳いだりする様子を眺めながらおもむろにそう呟く。

 いわゆるトランクス形式の水着をトモヤは身に纏っていた。更衣室付近の店で売っていた物を購入したのである。特別な模様などが描かれている訳ではなく、機能重視の紺色一色の物を選んだ。

 リーネ達がどんなものを選んだのかは知らない。楽しみ半分、緊張半分でこうして待っているのだった。


「す、すまない。待たせたな、トモヤ」

「いや、大丈夫だ。俺もいま来たとこ――」


 振り返り、トモヤは言葉を失った。

 言ってしまえば、そこにいる女性の姿に見とれてしまったのだ。


 普段は腰まで伸びる赤色の長髪は、黒色の布でポニーテールとして一つに束ねられている。一切の穢れの無い首元が露出され、うなじがちらりと覗ける。

 さらに視線を落としていくと、上下のわかれた、つまりはビキニ型の黒色の水着を身に纏っていた。適度な大きさかつ美しい双丘が水着によって覆られるも、隠しきれない谷間がたしかにそこにはあった。加え、大胆に空気に晒される、引き締まった、けれども滑らかな腕や脚も形容し難い魅力を醸し出す。


 そしてある意味、何よりもトモヤの心を揺さぶる原因となったのが、リーネがそんな自分の姿を恥じらうかのような素振りを見せることだ。両腕で胸元やお腹を隠そうとしたり、微かに頬を朱に染める姿がなんとも扇情的で、同時にとても可愛らしく見える。

 数十日前、恥ずかしげもなく裸を晒していた少女と同一人物だとは思えない。


「と、トモヤ……じっと見るだけではなく、な、何か言ってほしいのだが……」

「あ、ああ! 悪い……」


 リーネ本人から指摘され、ようやく自分の思考の中から戻ってくる。

 未だ少しぼうっとしている状態のまま、トモヤは思うまま感想を述べる。


「に、似合ってる。可愛い、と思う」

「か、かかか、かわっ!?」


 その感想を聞き、リーネはぷしゅーと顔色を朱を超えさらに真っ赤に染め上げる。言われ慣れていない言葉によって恥ずかしくなったようだった。

 けど、それは決してお世辞やトモヤのみの感想ではない。道行く者達は男性女性関係なく、リーネに見とれている様子だった。


 そんなことを考えていると、突如として誰かが背後からドンっとトモヤにぶつかってきた。


「ねぇねぇトモヤ! 私は!?」

「ああ、誰かと思ったらル……」


 振り返り、トモヤは再び言葉を失った。

 少し呆然としたあと、おもむろに口を開く。


「なんだ、ただの天使か……」

「? まぞくだよ?」


 そこには天使がいた。陽光によってきらきらと輝く白銀の髪。二本の黒い角は、今に限っては赤色のリボンを二つ巻くことによって隠している。それがまた大変可愛らしい。恐らくはリーネの指示でありファインプレイだ。これからフードのついていない服を着るときはこうしてしまえばいいのかとも思った。

 彼女が身に纏う水着は、いわゆるワンピース型の物だ。淡い水色をしたその水着はルナリアの活発さ、純白さ、清純さを証明するかのようだった。彼女が元気に飛び跳ねるごとに裾などがひらりと揺れる。


 リーネとは違って、ルナリアは水着姿を恥ずかしいとは感じていないようだった。まあ、リーネに比べて露出部分の少なさから考えても自然なことだが。

 トモヤの言葉が理解できなかったのか、少しだけきょとんと首を傾げた後、すぐに気を取り直したかのように笑顔に変わる。

 笑顔のままトモヤを見ながら、その場でとんとんと不思議なステップを踏む。何かを期待しているような視線だ。すぐにトモヤは、ルナリアが何を待っているのかに気付いた。


「ルナも似合ってる。ちょう似合ってる。可愛い、天使だ」

「ありがと! うれしいなっ、えへへ~」


 素直な感想を告げると、笑顔はさらなる満面の笑みに進化を遂げる。

 それを見てトモヤは不安に思った。これほど可愛い存在が周りから興味を持たれないわけがない。誘拐なども起きる可能性がある! とりあえず防壁を使用し、さらには常に千里眼でルナリアの居場所を察知、もしもの時に駆け寄れるように、事前に敏捷ステータスを1兆ぐらいにしておいて――


 何かを考え込むトモヤ。両手を顔に当て照れるリーネ。嬉しそうな笑顔を浮かべるルナリア。

 その三人の様子を見た周りの者達は、例外なく変なものを見るような目をしているのだった。




「そーれっ、だよっ、トモヤ!」

「うおっ、やったなルナ。仕返しだ――と思わせて、リーネ!」

「っく! まさかここでこちらに水をかけてくるとは、やるなトモヤ。手加減はしない――きゃっ」

「えへへ〜。こっちも忘れちゃダメだよ、リーネ!」

「る、ルナまで敵に回るだと……?」

「今リーネさん、きゃっ、って言った?」

「いいい言ってない!」


 誰が誰に何を言っているのか。

 三人は浅瀬で水をかけ合いながら楽しんでいた。

 海でこのような遊びなど幼いころ以来のトモヤも、案外楽しめるもんだなと思っていた。もしくは、一緒にいる人がリーネやルナリアだからなのかもしれないが。


「……さて、水の掛け合いもいいが、そろそろ別のことをしようか」


 海水で濡れた髪を手で大きく払いながら、リーネがそう言った。

 たしかにこれだけでも十分楽しいとは言え、長く続けたらさすがに飽きも訪れるというものだ。


「なら、俺にいい考えがある」

「いい考え? と、トモヤ、それは何だ?」


 突然トモヤの手元に現れたビニール製の球体――つまりは遊び用のビーチボールが現れたことに、リーネが目を丸くする。

 たった今、創造のスキルで生み出したのだ。


「これはビーチボールって言ってだな。お互いに手で弾き合って、落とした方が負けになるんだよ」

「たのしそう!」

「ふむ、聞いたことがない競技だが……なるほどな。海の中という動きにくい中で素早くその場に適した行動をとるという画期的なトレーニングなんだな」

「リーネさんはすぐそうやって物事をトレーニングに結びつける」

「えっ、なぜ急にそんな他人行儀な呼び方なんだ?」


 そんな会話を交わした後、実際に試してみることにする。

 始まりはルナリアから。彼女は両手を使い、トスの要領でポンっと弾く。


「いったよ、リーネ!」

「ああ、任せろ!」


 目の前に飛んできたビーチボール。

 リーネはそれを、トモヤに向けて飛ばすため全力で腕を振るい――



 パァンと、ビーチボールは破裂した。



 三人の間に静寂が訪れる。


「…………」

「…………」

「あれ? ボールどっかいっちゃった?」


 破裂する瞬間に目を逸らしていたルナリアだけは、何が起きたか理解できていないようだった。

 そんな中、リーネが申し訳なさそうに告げる。


「す、すまない。つい張り切って攻撃ステータスを全開まで高めて叩いてしまった。次は0にして気を付けようと思う」

「あ、ああ、そういうことか。それなら仕方ないな、うん。そんな攻撃を俺に向けて放とうとしてたのかとか色々と思うところはあるけど、とりあえず次にいこう」


 言いながら、トモヤは新たなビーチボールを生み出す。


「いくぞ、リーネ」

「ああ!」


 そしてトモヤはアンダーサーブでリーネに向けてビーチボールを放つ。

 それをリーネは今度こそ、ステータスを利用しない本人のみの力で叩き――



 パァァァアアアン! と、何故か先程の数倍の音と共に破裂した。



「なんで!?」


 普段は落ち着いた雰囲気を装っているトモヤが盛大にツッコむ程の事件だった。

 いや、本当に。なぜリーネの素の力で叩いた時の方が激しく破裂するのか訳が分からない。


「こら、リーネ! 物をそんなふうにこわしちゃだめだよ!」

「ご、ごめんなさい……」


 当の本人であるリーネは、ルナリアに叱られて肩を落としていた。

 それはともかくとして、いま分かったことは一つ。


(リーネさん、ステータスとか関係なかったら間違いなく俺より力強い)


 ということだった。

おかしい。知能指数だけならリーネさん作中上位クラスなのに、まるで脳筋みたいだ。

いったい誰の陰謀なんだ……


追記:次回より隔日更新になります。

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