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ステータス・オール∞  作者: 八又ナガト
第三章 北大陸編
51/137

51 相似

 バケットサンド、そして溶け切ったパフェを頑張って食べ切った後。

 そろそろ宿に戻ろうかという話になり、アンリ達は歩を進めていた。

 その声が盛大に鳴り響いたのは、その瞬間だった。


「見つけたぞ! 君がトモヤ・ユメサキだな!」


 露店街を歩いていると、突如としてトモヤの名を呼ぶ声がした。

 振り向くとそこには一人の男性がいた。

 銀色の鎧を身に纏い、腰元には一振りの剣が。

 赤色の髪は少し長めに伸ばされ、鋭い眼が特徴的だった。

 非常に整った容貌だ。


「そうだけど……俺に何か用か?」

「ああ、そうだ」


 トモヤの問いに頷くと、その男性はゆっくりと歩み寄ってくる。


「トモヤ・ユメサキ。君がフィーネス大迷宮を攻略したという話を聞いた。それは本当か?」

「まあ、一応そうなるのかな」

「そうか……くっ」


 男性は悔しそうな反応を見せる。


「と、トモヤさん。お知り合いの方ですか?」

「いや全く知らない」


 アンリ達が言葉を交わしていると、気を取り直した男性がトモヤを真っ直ぐ見つめる。


「すまない、申し遅れたな。私はモルド、現在はしがない冒険者だ。名をあげるために終焉樹を攻略しようと昨日この国に辿り着いたのだが、なんと既に攻略された後だという話を聞いてな。その攻略者の名と特徴を聞き探していたんだ。黒髪黒目の青年、一目で君だと分かったよ」

「はあ……」


 覇気のない声でトモヤは受け答えていた。

 その側でアンリは少し違和感を抱いていた。

 モルドと名乗った男性の赤色の髪、そしてこの口調、どこかで聞いたことがある気が――


「それで早速だが、君に決闘を申し込みたい」

「いやなんでそうなる」


 ――その違和感は、二人のやりとりを聞いてどこかに飛んでいった。


「簡単なことさ。終焉樹を攻略した君に勝てば、私の実力を証明することができるからだ」

「それ、こっち側にメリットないと思うんだけど……」

「細かいことは気にするな」

「なんかやだこの人……」


 そう言って、何故かトモヤは救いを求める視線をアンリに送る。

 アンリは、そんなトモヤに向かって言った。


「わ、私、トモヤさんが戦うところ見てみたいです!」

「ええっ」


 トモヤの期待を裏切ることになるが、仕方ないことだった。

 だってアンリはまだ一度もトモヤの戦う姿を見たことがないのだから。

 トモヤがズーヘンを助けた際の戦いぶりについては後から話で聞いていた。それはもう凄まじかったらしく、アンリは一度見てみたいと思っていたのだ。


「う~ん、アンリがそういうなら、まあ……」


 それから少しだけ悩む素振りを見せたトモヤも、最後には頷くのだった。


「ありがとう、感謝する」


 モルドも大きく感謝を告げていた。




 場所は第二区画に移る。

 第三区画とは違い冒険者ばかりがいる中で少しだけ拓けた場所を探し出し、トモヤとモルドは真正面から向かい合っていた。

 周りには野次馬が群がっていた。こうした決闘沙汰はたまにあるらしく、迷宮外の楽しみの一つになっているらしい。


「どっちが勝つか賭けるか?」

「んじゃ俺はあの鎧を着た赤髪の兄ちゃんの方かな。見るからに強そうだ」

「あ~俺もそっちかな。たしか、数日前に終焉樹暴走を食い止めた奴は若いって話だったからな。立ち振る舞い的にアイツかもしれないぜ」

「若いっていうなら、あの対戦相手の黒い髪の人はどうなの?」

「いやーアレはないだろ。だってほら、顔から覇気を全く感じねぇ」

「成程」


(皆、勘違いしてるなぁ。あの日、終焉樹の近くにいなかった人達なのかな? そ、それはともかく、私はもちろんトモヤさんが勝つって信じてるもん! 頑張って、トモヤさん!)


 アンリは両手をぐっと握りしめ、猛烈に面倒くさそうな顔をしているトモヤに心の中でエールを送る。確かにあの表情的に強者には見えないが、それでもアンリはトモヤの実力を疑うことはない。


 そんな外野の声を聞いているのかは分からないが、モルドが静かに剣を正眼に構える。


「ではそろそろ始めよう。殺害はなし、それ以外の傷なら可。勝敗は気を失うか、降参を口にするかで決まる……どうだろうか?」

「いいよ、どうでも」

「どうでも!?」


 何だか愉快なやり取りをする二人だが、その様子を見てアンリは一つ疑問に思った。


「と、トモヤさん! 武器はどうするんですか!?」


 そう、モルドと違って今のトモヤは武器を持っていない。

 明らかに不利な条件だ。トモヤのことを信じているとはいえ、これではそもそも勝負にならない。


「ああ、そうだな。素手でも別にいいけど……一応創るか」

「へ? つく――わぁ!」


 虚空に伸ばされたトモヤの手に、突如として一振りの鞘に入った剣が現れる。

 それを見てアンリは驚いた。

 あの出現の感じ、異空庫から取り出したのとは違う。

 異空庫よりもっと持ち主の少ない、確かあのスキルは――


「驚いたな。創造か……素晴らしい。相手にとって不足なし」


 ――そう、創造だ。

 100万人に1人以下しか持っていないと言われているスキル。

 そのスキルを持っているだけで将来の成功が約束されるのだ。

 やっぱりトモヤは凄い人なのだと、なぜかアンリが嬉しくなる。


「それでは始めようか」

「ああ」


 モルドはそのまま正眼。

 トモヤは腰を落とし居合の構え。

 緊迫した空気が流れ、そんな中でモルドは叫んだ。


「では、改めて――私の名はモルド・エレガンテ。いざ、参る!」

「……ん? エレガンテって、たしか――――」


 モルドは叫んだ後、力強く猛烈な勢いでトモヤに迫る。

 だがその敵を前にして、何故かトモヤは視線を斜め上にし、何かを考え込むような素振りを見せる。

 その隙をつくようにモルドの剣が、真っ直ぐトモヤに迫る。


「ッ、トモヤさん!」


 危険を恐れたアンリの声が届いたからだろうか。

 トモヤは視線を目の前にいるモルドに戻す。

 しかし既に手遅れ。剣の切っ先が、今この瞬間にもトモヤの額に迫ろうとして――――




 ふわりと、風がアンリの頬を撫でた。




「…………え?」


 何が起きたのか分からなかった。

 モルドが剣を振り切った場所には既にトモヤの姿はない。

 探し、ようやく気付く。

 モルドの背後、つまり二人が元々いた位置を入れ替えるようにして、トモヤが居合を終えた構えで立ち尽くしていた。


 遅れて、パリンと、モルドの持つ剣の刀身が粉々に砕け散った。

 対するトモヤは、武器を含めダメージを与えられた様子はない。


(ええっと、つまり、こういうことかな?)


 この状況から分かることはこうだ。

 トモヤはモルドの剣を躱したうえ――というよりも、自分の剣でモルドの剣を斬って壊したのだ。

 その過程に関しては全く見えなかったが、それは周りにいる冒険者の方々もアンリと同様らしい。


「見事。私の負けだ」


 そんな中で相対していたモルドだけが、すぐに自分の負けを認めた。

 たった一瞬の攻防で、お互いの実力差を痛感したかのようだった。

 遅れて、勝敗を理解した冒険者達が盛大に歓声をあげる。


(わあっ、すごい、トモヤさんすごい!)


 実際に何をしたのか見えなかったとはいえ、その圧倒的な勝利にアンリは興奮していた。


 そんな周りの反応を気にすることもなく、トモヤとモルドはゆっくりと歩み距離を詰めていく。


「トモヤ・ユメサキ……いや、トモヤくん。素晴らしい実力だ、私では敵わない。終焉樹を攻略したという話も嘘じゃないようだ」

「そりゃどうも」


 モルドによる賛辞をトモヤは簡単に受け止める。


「それで、だ。モルドだったか。一つ訊きたいことがあるんだけどいいか?」

「ああ、もちろんだ。何だろうか?」


 疑問を浮かべるモルドに対して、トモヤは言った。


「さっきエレガンテって名乗ってたけど、もしかしてリーネっていう名前の奴に心当たりがあったりするか?」

「――――ッ、リーネだって!? 君はリーネを知っているのか!?」

「おっとこれは想像以上の反応。知り合いっていうか、今は一緒のパーティみたいな感じだけど」

「っ、本当か!?」


 その名前を聞いたモルドは、血相を変えトモヤの胸元を掴みあげる。

 同時にアンリも得心がいった。


(赤い髪、口調。そうだ! リーネさんに似てるんだ!)


 そんなアンリの前で、モルドは言った。


「リーネは私の妹だ。どうか、彼女のもとにまで連れて行ってくれないか!?」

備考

モント(リーネの父):親バカ

モルドを含めた兄3人:重度のシスコン

次回、46話の裏側の話が明らかになるかもしれないし、ならないかもしれない。

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