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ステータス・オール∞  作者: 八又ナガト
第一章 導入編
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05 冒険者の町

 冒険者の町ルガールは町全体が城壁によって円状に囲まれている。東西南北には巨大な門があるも、町の北区が貴族達の暮らす区画になっていることも関係し、北門はより優れた衛兵が配備され通れるのは貴族だけである。

 今の門番はシンシア達と顔見知りらしく二人の無事の帰還を心から喜んでいたが、出発時の護衛がトモヤに代わっていることに対しては疑問を抱いていた。


「ルースさん、彼はいったい?」

「ああ、トモヤ殿のことですか。実は雇っていた護衛達には逃げられてしまい、臨時的に雇わせていただいたんです」

「なっ、逃げられた!? それは一大事ではありませんか!」

「はい、ですのでこれから主様に連絡して様々な手配をしていただくつもりです。もうこの町からは逃げられているでしょうが念のため」

「分かりました、私の方からも対応させていただきます」


 その程度で話は終わったのか、ルースは御者台に乗り、そのまま馬車を門の中に走らせていった。



 石畳の道を馬車が走り、トモヤ達は巨大な館の前に辿り着いた。

 周りにある館と比べても一層立派なその建物を見て、トモヤは思わず感嘆の息を吐いた。


「凄いな、こんな立派な館にシンシア達は住んでるのか。伯爵家なだけはあるな」

「もう、茶化すのは止めてくださいトモヤさん」


 少しだけ気恥ずかしそうな反応を見せるシンシア。とは言っても本気で気にしているわけではなく、トモヤが小さく悪いと謝ると笑って許してくれた。

 館の門を抜け、馬車から降りた後に扉から中に入る。何人もの使用人に迎えられたあと、トモヤはシンシア達と離れ客間に連れて行かれた。館の主を呼んでくるから待っていて欲しいらしい。

 ふかふかなソファに輝かしい装飾品が置かれた大きな部屋だった。


「お待たせしました、トモヤさん!」


 待つこと数十分、純白のドレスに着替えたシンシアが姿を現す。隣にはルースと、もう一人焦げ茶色の髪を持つ、四十に至るかどうかといった風貌の男性が立っていた。とはいえ立ち振る舞いからは見た目以上の力強さを感じる。


「君が娘を助けてくれたトモヤくんか。私はリッセル・フォン・エルニアーチ。当家の主にして、エルニアーチ領の領主だ。この度の活躍に、心からの感謝を述べさせていただきたい。本当にありがとう」


 トモヤはソファから立ち上がると、差し出された手を握る。

 実をいうと、この数日間のうちにシンシアの父が領主であるということも聞いていたためその点に驚くことはなかったが、これほど快く感謝を告げ手を交わそうとしてくることには驚いていた。トモヤの中の貴族像はあまり良いものではなかったからだ。

 それを言うと、そもそもシンシアはどうなるのかという話だが。


「トモヤ・ユメサキです。いえ、助けることができたのは偶然ですし、その後は此方も馬車でこの町にまで共に連れてきてもらいました。お互い様です」

「おお、そうか。何とも謙虚で良き目をした青年か。さて、では報酬の件に移りたいのだが……そうだな、聖金貨100枚ほどでどうだろうか?」

「100枚!?」


 その枚数に驚きのあまりトモヤは復唱した。

 この数日の間、トモヤはシンシア達から話を聞きこの世界の物価についても学んでいたのだ。遠い町から来たため、まだこちらの文化に馴染めていないと言い訳して。

 その話によると、この世界の貨幣の価値は日本円に換算するとこんな感じだ。


 聖金貨 100000円

 金貨  10000円

 銀貨  1000円

 銅貨  100円

 鉄貨  10円


 聖金貨100枚とは、一千万円の価値があることになる。

 トモヤが考える自分の労力からは余りにもかけ離れた値段だった。


「む、100枚では少ないか。それもそうだな、我が娘を救ってくれた恩はそれ以上だ。よし、では200枚でどうか?」

「い、いえ逆です! 多すぎ! そんなに貰えません!」

「何を言う、君の行為に感謝を告げるにはこれでもまだ足りんくらいだ。謙虚もよいが対価は十分に与えられねばならんぞ」

「いえいえいえ」

「いやいやいや」


 何だか譲り合いの漫才をしているかのような状況になってくる中、トモヤとリッセルに言葉を投げかけたのはシンシアだった。


「あの、それならば、何か金銭面以外で援助は出来ないでしょうか? お父様、実はトモヤさんはここから遠い町から来たらしく、まだこの辺りには馴染めていないらしいのです。何か力になれることがあると思うのですが」


 トモヤがこの世界について色々な話を聞くときにした言い訳を、シンシアは素直に信じていたらしい。尤も遠い町を日本とすればあながち間違えでもないのだが。


「む、そうか。では望むことを何でも言ってくれたまえ。私に出来ることなら何でもしてみせよう」

「そうですか? うーんと、では……」


 このままでは埒が明かないのと判断したトモヤは、頭を捻り一つの案を思いついた。


「俺……僕は旅の途中ですが、しばらくはこの町に留まるつもりです。そのための少しの資金と、何か困ったことがあった際に頼らせてもらえないでしょうか?」

「なるほど、それは合理的だ。ではそうさせてもらおう。では最後にもう一度だけ、シンシアを助けてくれたことに対する感謝を、ありがとう」

「あの、ありがとうございました!」

「助かりました」


 リッセルに引き続き、シンシアとルースも頭を下げる。

 トモヤはあははと小さく笑うしか反応できなかった。



 それからまた十数分後、聖金貨ではなく金貨100枚が入った袋を渡すとリッセルとルースは、シンシア達を置いて逃げて行った護衛の冒険者たちを指名手配するべく去っていった。残されたのはトモヤとシンシアだけだ。


「トモヤさんはこれからの予定はありますか? もしないのなら、よろしければまだここでゆっくり休んでいかれませんか?」


 少し期待を込めた目でシンシアはトモヤを見つめる。

 トモヤはうーんと顎に手を当て考えた後、そうだと口を開いた。


「シンシア、この町にはたしか冒険者ギルドがあるんだよな? 俺はそこに行ってみようと思う」


 なぜか、シンシアはしゅんとしていた。が、それも一瞬。


「なら、私も付いていきます!」

「……へ?」


 そうして、トモヤとシンシアは共に冒険者ギルドに行くこととなった。リッセルも、トモヤと一緒ならとシンシアの同行を快く受け入れてくれたのだった。

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