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ステータス・オール∞  作者: 八又ナガト
第二章 東大陸編
44/137

44 だいたい全部ノームのせい

 咳払いした後、トレントは説明を続ける。


「話を進めると、僕が肩代わりできなかった分の魔力は全て終焉樹が吸収したんす。その結果、暴走した終焉樹は徐々に自我を持ち始め一体の魔物――フィーネスになったんす。

 さらにフィーネスは使い古された魔力だけでなく新鮮な魔力を得ようと、つまり生きている人間から直接魔力を奪おうとしたんす。両方の魔力を養分にする方が成長効率がいいんすよね。あちらで休んでいる皆さんがここまで連れて来られたのは、そういった理由からです」


 とうとう、話が終わりに近づいていることをトモヤは悟っていた。


「てことは、もう少し俺達の到着が遅れていたら、あの人たちはフィーネスに魔力を奪われ……殺されていたってことか?」

「そうなります。でもってそんなことになればフィーネスはさらにその身を拡大させ……今頃は地上にまで到達して、辺り一帯を破壊し尽しているはずだったんす。それを防げたのは奇跡としか言いようがないんすよね。お伺いしますが、貴方が本当にフィーネスを一人で倒したんすか?」

「まあ、うん。こう、ぶん殴って」


 腕を振るうジェスチャーと共にトモヤが説明すると、トレントは呆れたように溜め息を零した。

 そんな二人に向け、これまで無言を保っていたリーネが告げる。


「一つ問いたい。今の貴方の説明でひとまずの危機は逃れたと思うが……核の許容量が限界なことには変わらないんじゃないのか? 私には、いずれまた終焉樹が暴走する可能性があるように思えるのだが」

「……その通りなんす。実はまだ、根本的な部分は解決していないんすよね」


 リーネの発言を聞いてトモヤははっとした。彼女の言う通り、まだ解決はしていない。

 トモヤはどうすればいいのか、解決策を考える。

 それと同時に一つの記憶を思い出していた。


 トモヤ達が終焉樹にやってきたのは、とある精霊の提案によるものだった。

 彼女はそう提案する理由として、トモヤが扱える剣の素材が入手できると主張していたが、その割にはやけに迷宮自体を攻略してほしいという意思が強いように感じた。


 故に、トモヤは小さく呟く。


「ノームは今回の一件について、どこまで知ってたんだ……?」

「――! ノーム先輩が来てるッスか!? どこッスか!?」

「……ん?」


 その呟きに反応したのは、予想外なことにリーネではなくトレントだった。

 先輩と敬称をつけているが、精霊界にも上下関係があるのだろうか。


「これは僕のせいじゃないッス! 虐めないでほしいッス! どこに! どこにいるんスか!?」

「おい待て落ち着け。ノームはここにはいない」


 トモヤ達の方が驚いてしまうほど焦っている様子を見せるトレントに落ち着くよう告げると、彼はしばらくの後ようやく冷静さを取り戻した。


「そうッスか、ノーム先輩はいないッスか。安心したッス……」

「そ、そうか。それは良かった」

「というか、そもそもこんな状況になってるのは全部ノーム先輩のせいなんすよ!?」

「おいそれ詳しく」


 聞き捨てならないセリフに、トモヤはぐっと耳を傾ける。


「いや、だから言ったじゃないッスかさっき、終焉樹の核が許容量の限界に至ったって。もともと、そうなること自体は昔から想定されていたんす。でもって、そうなった場合にはノーム先輩が別の核と交換するようにと主神様から指示が出てたんす。けど、結局ノーム先輩がやってくることはなかったッス!」

「なるほど、つまり一言でいうと?」

「あのヤロウ仕事サボりやがったッス!」


 いやアイツ女だぞ、というツッコミをすることもなく、トモヤはようやく要領を得ていた。


 初めてルナリアがノームを呼び出したとき、彼女は仕事から逃げていると告げていた。察するに、たった今トレントが説明した核の交換というのが、その逃げていた仕事の内容なのだろう。

 同時に、なぜノームが終焉樹攻略をトモヤ達に提案したのかについても推測は出来た。強力な魔物達を討伐するトモヤ達を見て、自分達ならその緊急事態をどうにかしてくれると考えたのだろう……自分がすべきことであるという事実から目を背けて。つまり押し付けられたのだ、彼女の仕事を。


 まとめるならこう。

 今回の一連の騒動、だいたい全部ノームのせいだった。


「……はぁ」


 溜め息を一つ。

 ノームに対してちょっとした怒りがわかないこともないが、ひとまず人的被害が出なかったことから、この場ではこれ以上彼女の責任については考えないことにする。

 トモヤにとっての問題は他に合った。


「結局、ノームが言っていた俺が扱えるような剣の素材が手に入るって話は何だったんだろうな」


 無事(こう表現するのが正しいかは分からないが)最下層に辿り着き、トモヤ達は迷宮を攻略したと言ってもいいだろう。しかし、ここに来るまでに剣の素材になるような鉱物が見つかることはなかった。

 そもそも終焉樹自体が言ってしまえば“木”でしかないのだ。こうなってくると、ノームの言っていたことが初めから嘘であるという可能性が現れ――


「剣の素材ッスか? それって、この核のことじゃないッスかね?」

「は?」


 トレントの言葉はトモヤにとって予想外なことだった。


「いや、これが剣の素材になる訳ないだろ。ただの角材だぞ」

「いやー、バカにしちゃいけないッスよ。世界中の数百万年分の魔力を溜め込んでも壊れないくらいッスよ? 硬度だけなら、世界中のどんな物にだって負けないッス……と言ってもまあ、代わりになる中身が空の核と交換するまで貴方に渡すわけにはいかないんすけどね」

「……代わりの核さえ用意すれば、くれるのか?」

「え? あ、はい、もちろんッス。こんな禍々しいもん僕はいらないッス。ぜひ持っていってほしいッスけど……」

「なるほどな」

「トモヤ、何かいい案を思いついたのか?」


 リーネの言葉にトモヤはこくんと頷き言った。


「ああ、試したいことがある」




 終焉樹の核――そう呼ばれている巨大な漆黒の角材をトモヤは地面から引っ張り出す。結構な重さだ。5トンくらいだろうか。

 それを地面に置き、トモヤは左手をゆっくりとその上に置いた。


「鑑定Lv∞――発動」


 そして鑑定を発動する。

 これまでは人や魔物相手にしか使用してこなかったスキルだが、もちろん物に対しても使うことが出来る。

 瞬間、様々な情報が頭の中に飛び込んでくる。

 終焉樹の核を構成する様々な物質の名前や性質などだ。


「――――ッ」


 核そのものだけでなく内に秘められた魔力にまで鑑定の効果が及んだとき、その症状は出た。

 人々の思念や記憶が直接トモヤの心を揺さぶるかのような感覚。

 これは、ダメだ。

 反射的に、トモヤは魔力に対し鑑定を使用するのを止めた。


「……ふぅ」


 一度息を吐いて呼吸を整える。

 今回は核そのものの構成要素を知るだけでいい。

 そう思い直し、トモヤは右手を空中に掲げた。


「創造Lv∞――発動」


 創造、イメージ力に応じて物質を生み出すスキル。

 レベルが上がるごとに生み出せる物質の種類は増えていき、Lv∞になると生み出せないものはない。

 問題としては生み出す物質の情報を知らなければならないという制限はあるが、それは鑑定の力によって補える。鑑定スキルを持つトモヤにとってその制限が作用するのは、一度も直接見たことのない物を生み出す時だけだ。


 さらに、今はこうして目の前に本物がある。

 そこで、トモヤは“悪意の込められた魔力を除いて”新たな核を生み出した。

 ――終焉樹の核と大きさが同じ、しかし色は漆黒ではなく、綺麗な透明の核が創造された。


「こ、これは……」

「す、すごいッス! これ、魔力を吸収するより前の核の状態ッスよ! もしかしてこれなら! 少し借りるッスね!」


 トモヤが頷くのを見た後、トレントは透明な核をもともとの場所に埋める。

 すると、すぐにその核は黒みを帯びていく。

 漆黒というほどの黒さではないが。


「成功ッス! ちゃんと魔力を吸収出来てるッス! これならもう終焉樹が暴走する心配はないッスよ!」


 その光景を見たトレントが嬉しそうに飛び跳ねる。

 男なので可愛くはなかった。


 暫く喜んだ様子を見せた後、トレントはトモヤ達に向け深く礼をする。

 そして漆黒の方の核をトモヤに差し出す。


「これは差し上げるッス! 煮るなり焼くなり、剣の素材にするなりそのまま武器として使用するなり、好きにしてほしいッス!」

「じゃあ遠慮なく」


 その核こそがトモヤにとって今回の一番の目的だったため、素直に受け取ることにした。

 ずっしりとした重み……これがどんな剣に姿を変えるかは分からないが、ワクワク感がトモヤの胸の中に生じていた。

 ひとまず異空庫の中に放り込んでおく。


「さて、これで剣の素材についても、終焉樹の暴走についても万事解決だな」

「うむ、冒険者の方々も十分に休憩はできただろう。そろそろ地上に戻ってもいい頃合いだ」


 トモヤとリーネは顔を合わせ、うんと頷く。



 ――――瞬間、“それを感じた”。



「――――ッ、これは!」

「上か!?」


 索敵を使用していないトモヤやリーネでも感じるような重々しい魔力の気配。

 それは遥か頭上……数階層上程度ではない。“地上”から届いていた。


 二人と同様、その異変に気付いたらしきトレントが再び焦った様子を見せる。


「や、ヤバいッス! フィーネスを倒してから新たな核を用意するまでの時間に吸収できなかった分の魔力が、一階層付近で終焉樹に取り込まれて暴走してるッス! フィーネス程じゃないにしろSランク魔物に匹敵する程度には強力ッス! このままだと、終焉樹の周りにいる人たちに危険が!」

「そういう説明は先にしてほしかった!」


 トレントから事情を聞き反論しつつも、トモヤの視線はただただ上に向けられていた。

 何故ならあそこには、トモヤにとって何よりも大切な存在がいるからだ。

 彼女が傷付くことだけは許すことが出来ない。


「リーネ!」

「分かっているトモヤ、上に向かおう!」

「僕も協力するッス! 一時的にですが、ここから地上まで一直線にいける道を作ります!」


 トレントの声に応えるように、天井に大きな穴が空く。

 その穴は最下層から出られるだけでなく、地上にまで至るようだ。

 これなら少し力を入れて跳ぶだけで地上に出られる。


「無事でいてくれ、ルナ!」


 そう叫び、トモヤは力強く地面を蹴った。



 ――――そう。

 この時トモヤは、今回の迷宮攻略において剣の素材を手に入れる以外の、もう一つの目的を忘れているのだった。

トモヤの討伐記録:Sランク魔物10数体、ランク測定不能魔物1体、その他多数。

そのうちの経験値の10分の1が――――あっ。

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◇『ステータス・オール∞』3巻の表紙です。
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― 新着の感想 ―
[気になる点] 悪意ある魔力だけを吸収した核を武器の素材にしたら、 とんでもないバッド効果のある魔剣が出来上がるのでは? そもそも想像力がものをいう創造無限があるのだら、絶対に壊れない武器を創造すれば…
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