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19 主神

別視点です。


 ◇◆◇


 真っ白な空間。そこに椅子が一つ、そしてその椅子に座る一人の少女がいた。

 純白の長髪、漆黒の瞳。見た者全てが目を見張るような美貌を持っている。

 その少女は目の前に浮かぶモニターを眺めながらにやにやと笑っていた。


「失礼いたします、主神様」


 すると、突如真っ白な空間に扉が現れ、そこから一人の女性が姿を現す。

 透き通る水のような青色の長髪を靡かせる、清楚な雰囲気を纏う美人。

 その女性の登場に、主神様と呼ばれた方の少女は振り返る。


「やあウンディーネ。どうしたんだい、ボクに何か用事かな?」

「はい。実はまたノームが逃げ出したようで……“こんな激務やってられるか!”と叫んでいました。しかも今回は下界まで逃げていったようです」

「ああそうか、仕方ないなぁノームは。まあ構わないよ、お腹が減ったら戻ってくるだろう。罰はその時に与えればいい。今回はどんなコスプレをさせようか」

「あの、もしかして少し楽しんでませんか」

「そんな訳ないじゃないか。少しじゃなくてとてもだよ」

「ダメじゃないですか……」


 いつも通り、適当な主神の様子にウンディーネは溜め息をつく。

 どれだけ注意しても無駄だというのは分かっているので、ウンディーネは話題を変えることにした。


「それで、主神様はいま何を見ているんですか?」

「ん、これかい? 前に話した異世界からやってきた勇者たちさ」


 よく見るとモニターの映像は二つに分けられており、片方は一人の優男と三人の黒髪茶髪の少女たち。そしてもう片方には、一人の男性が一人の少女の頭を優しく撫でる姿があった。


「ああ、フレアロード王国の王女のミューテーションスキルによるものですね」

「うんそうだ。国王は彼らに人間界に攻め込む魔族と戦うために呼び出したと説明していたよ。勇者のうち四人はそれを信じ、日々迷宮に足を踏み入れレベルを上げている。残りの一人に関しては追い出されながらも楽しそうに旅をしている。彼はそもそも国王の言葉を疑っているようだがね」


 そこで言葉を止めると、主神はくっくと意地の悪い笑みを浮かべる。


「どうしたんですか?」

「いやいや、想像したら面白くてね」


 一度言葉を止めて、より言葉を強めていった。


「もし彼が――トモヤくんが、国王フレッドの説明したことの大体が本当だって知ったらどんな顔をするのかなって思ってね。まあ幾つか現実との相違点は存在するけど、さした問題じゃない」


 本当に趣味の悪い神様だと、ウンディーネは内心で思った。


「そうですね。近頃、下界は少し荒れていますからね。中央大陸(フランリッデ)に住む魔族は他大陸に攻め込み、西大陸(ドラグナ)に巣食う龍族や竜種は別の住処を探し飛び立つ。シルフの話によると、この数日だけでレッドドラゴンが二体も東大陸(ミアレルド)にやって来たらしいですよ」

「もちろん知っているよ。その両方を倒したのがトモヤくんだ。いや正確には一体か」

「……与えたステータスとスキル、少し強すぎたんじゃないですか?」


 ステータスが全て上限なしの∞。

 ノーマルスキルを全てLv∞の状態で使えるというスキル・オール∞。

 過去に類を見ない最強の力だ。

 彼に与えられた神格は既に、神界で主神の次に神格が高いと言われる四大精霊よりも高い。


 だがその主張を、主神はふふっと笑い受け流す。


「何を言っているんだい。あの力はただのきっかけに過ぎないよ。問題は、その力を持った彼が何をするかだ……ほら、見てごらん」


 そう言って、主神はウンディーネにモニターを見るよう促す。

 そこには一人の男性が、赤髪の少女と白髪の少女と楽しそうに三人で談笑している姿があった。

 ウンディーネはその二人に心当たりがあった。


「たしか彼女達は……」

「リーネとルナリアさ。驚きだろう、まさかこちらの世界に来てたった数日であの二人を篭絡するとは。リーネは数日かかったけど、ルナリアに限ってはほんの数秒だったんだよ。ボクもびっくりさ。彼にはロリコンハンターの称号を与えよう、いやむしろ職業をそう書き換えて……」

「あの、主神様、それだと少女を好きな男性を捕らえるのが上手という意味になってしまいますが」

「……知っていたよ。本当だよ。ちなみにウンディーネ、今日から君の仕事量は3倍だ」

「えぇっ!?」


 間違いを正しただけでこのセリフ。冗談だと分かっていてもタチが悪い。


「はぁ、まあいいです。それで主神様はどうして彼らを見ていたのですか? しばらくは干渉しないつもりだと仰っていたはずでは」

「干渉はしていないさ。彼らがボクの敷いたレールの上を歩いて行ってくれているかを確かめただけだよ。結果としてはユウくんの方はおおよそ予定通り、トモヤくんの方が超特急のようなスピードだよ。あ、これまたちなみに超特急っていうのは異世界にある乗り物で……」

「それについてはわりかしどうでもいいです。仕事してください仕事。ノームの分が全て主神様に回ってきているんですからね」

「本当かい? それを早く言ってほしかったな。今すぐノームを連れ帰ってきてくれ」

「とっくに手配はしています……では、伝えたいことも言い終えましたし、私はこの辺りで失礼させていただきます」


 最後に一礼を残すと、ウンディーネは扉の向こうに歩いていく。彼女の身体が全て向こう側にいくと、扉もその姿を消した。

 再び真っ白な空間に一人になった主神は、そっと視線をモニターに戻す。

 注目するのはトモヤの方の画面だ。


「……トモヤくん、君にはいずれこの世界を救ってもらう」


 優しく、どこか慈しむような声を彼には届かないと分かっていながら投げかける。

 モニターの向こうにいるトモヤの笑っている姿を見ながら、主神は続けて言った。


「だからどうか――その時までに、この世界を少しでも好きになってくれ」


 彼女が抱く、心からの願いを。



 世界(アルフィス)を統べる主神――エルトラと、夢前智也の道が直接交わるのは、もう少し先の話だ。

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◇『ステータス・オール∞』3巻の表紙です。
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― 新着の感想 ―
[一言] え?ロリコンって男限定だったの!?
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