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ステータス・オール∞  作者: 八又ナガト
第四章 中央大陸編
124/137

124 光


 ◇◆◇


 ルナリアは駆けていた。

 行かなくちゃいけない場所があった。


 ヘリオスから念話で告げられた。

 テラリアを捕え、身動きのできない状態にした。そしてもし、ルナリアがやってこなければ彼女を殺すと。

 だから、行かなくちゃいけない。


 ルナリアはもう強かった。

 一人きりでは中央大陸ここで生き抜けなかったあの頃とはもう違う。

 圧倒的なステータスによって目の前に立ちはだかる魔物たちをものともせず、あっという間に魔王城に辿り着く。


 止まることなく魔王城の最深部にまで到達すると、その大きな扉を開ける。

 そこにはずっと会いたくて仕方がなかった彼女がいた。


「……ルナリア」


 彼女――テラリアはルナリアの姿を見て目を見開いた後、苦痛に耐えるかのような表情になる。


「っ、おねえちゃん!」


 そんなテラリアのもとに、ルナリアは全力で駆け寄る。かつて否定された言葉を叫びながら。


 本当はこのまま抱きつきたかった。

 けれど透明の壁が、二人の間を遮る。


「えっ、どうして?」

「防壁によって私が捕えられているからです。そんなことよりもルナリア、どうして貴女がここにいるのですか? どうして……」

「……ったから」

「え?」

「おねえちゃんを、たすけたかったから!」

「――――――」


 ルナリアの想いを聞き、テラリアは言葉を失う。

 少しの間が空き、絞り出すように彼女は問う。


「なぜ、私を助けようと思ったのですか? 私は貴女に何もしてあげられなかった。愛情を注いであげられませんでした。守ってあげられませんでした。最後の悪あがきとして貴女を逃がした結果がこの様です。それなのに、なぜ……」

「……もらったもん」

「…………」

「ルナリアって名前、もらったから! ルナって呼んでくれたから! おねえちゃんがいなかったら、トモヤたちとも会えなかったから! ぜんぶ、ぜんぶ、おねえちゃんからもらったもん!」

「――――ルナリア」

「……ちがうもん」

「え?」

「呼ぶときはルナ、だよ?」

「ッ。ええ、そうですね、ルナ」

「――――うん!」


 ルナリアとテラリアは満面の笑みを浮かべ合う。

 何年もお互いに想いを伝えることができずにすれ違ってきた。

 それがいまこの場で、ようやく二人の道が重なったのだ。


「きたか」


 けれど、そんな時間がいつまでも続くことはなかった。

 骨の髄まで響く、恐怖を具現化したかのような声が聞こえたから。

 ルナリアとテラリアの父親、そしてこの世に君臨する魔の王――ヘリオスだ。


 思わず身構えるルナリアに向けてヘリオスは告げる。


「テラリアは防壁の魔法によって捕えている。身動きはできん。貴様を生かしたまま逃がした罰として、この後処分する――」

「…………」

「――予定だったが、その必要はなくなった。全ての諸悪の根源たる貴様がこの場に来たのだからな」


 ヘリオスは右手に漆黒の魔力を集め、それをルナリアに向ける。

 その光景を前に、ルナリアは身動き一つとれない。


「矮小なる身でありがながら、ミューテーションスキルなどという忌々しき力を携える愚者よ。貴様は今ここで死ね」

「ッ――ルナ!」


 放たれた魔力が、ルナリアに迫り反射的に目を瞑る。

 刹那、様々な記憶が脳裏によぎる。

 テラリアと過ごした日々。一人で生きなければならないと思った日。

 そして――トモヤと出会ったあの瞬間。

 奇跡だって思った。自分には二度と訪れないであろう奇跡。


 だけどそんな奇跡を、もう一度現実となる。


「……貴様は」


 いつまで経っても痛みはない。

 ヘリオスは何かに苛立ったような声を漏らす。


 目を開いた。

 そしてそこにいる彼の後ろ姿を見て、涙が出そうになった。


「……トモ、ヤ」

「おう」


 そしてトモヤはルナリアを見て、そう笑った。



 ◇◆◇



 何とか間に合った。

 ルナリアに迫るヘリオスの攻撃を防いだトモヤは、安堵感とともにルナリアに微笑みかける。

 ルナリアはまるで信じられないといった顔をしていた。

 いつもならそんな表情も可愛いと感想を漏らすところだが、今回ばかりはそういうわけにもいかない。


 トモヤはルナリアの前にしゃがむと、彼女の顔に手を伸ばし、


「ふえっ? いひゃいよ、ほおや」


 ルナリアの頬を少しだけ力を入れてつまんだ。


 ルナリアは不思議そうに首を傾げる。

 少しだけ雰囲気がいつも通りになっていると感じたので手を放す。

 すると、ルナリアは疑問に満ちた顔をする。


「どうして、きたの?」

「決まってるだろ、ルナが嘘をついたからだ」

「……うそ?」

「ああ、俺とテラリアに生きてほしいって言っただろ?」

「うそじゃ、ないもん……! トモヤにも、おねえちゃんにも、いきていてほしいから!」

「でもそれが、一番の願いじゃないだろう」


 トモヤは複雑な紋様が描かれた左手をルナリアに見せる。

 彼女と出会った日に結んだ契約を証明する契約紋だ、


「今の言葉でも、この契約紋は反応していない。改めて聞かせてくれ、ルナ。お前が俺と一緒にいてどう思うのか、どうしたいのか。本当のお前の願いを」


 きっかけなんて、何でもよかった。

 トモヤはとっくにルナリアを助ける覚悟はできている。

 けれどルナリア自身もそれを望んでいることを聞けたのなら、それ以上に心強いものはない。


 気が付くと、ルナリアは涙を流していた。

 想いを抑えきれなかったのだろう。ルナリアはこれまでに聞いたことのないような程の声で、自らの願いを叫ぶ。


「おねえちゃんと、トモヤと、みんなと、いっしょにいたいよぉ!」


 契約紋から、眩い光が放たれる。

 その光はトモヤの体を包み込み、力を与える。


「任せろ」


 もう、一切の迷いはない。

 覚悟はできた。


 ルナリアの小さな体をぎゅっと抱きしめた後、立ち上がりヘリオスに視線を向ける。

 彼もこの後の展開が想像できているのだろう。不満と愉悦が入り混じったかのような表情をしていた。


「貴様は言った、その無能の願いを叶えると。だが我はそれを許さない。となると取れる行動は一つのみ」

「ああ、もう避けようがないんだろうな。けれど問題はない。俺は言ったはずだ。もしお前が俺の大切な存在に手を出したのなら、世界を壊してでも――」


 今回はもう、中断はない。

 必ず決着がつく。

 だからこそ、覚悟を込めて宣言する。


「――お前を殺すと」


 そして、最強同士の戦いの火ぶたが切られた。

次回は7月21日(日)更新予定です。

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◇『ステータス・オール∞』3巻の表紙です。
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