116 安否
「戻ったか、トモヤ!」
「待ってた」
「リーネ、シア」
テラリアとの会話後、宿に戻ると外でリーネとシアの二人が立っていた。
トモヤの姿を見て安堵の表情を浮かべた後、すぐに真剣な眼差しに変わる。
「無用な心配かもしれないが、大丈夫か?」
ヘリオスと真正面から向き合ったリーネは、魔王の実力がトモヤと同等だと理解しているのだろう。
万が一のことを考えるのは当然だ。
「ああ、大丈夫だ。怪我とかもしてない。加勢に来てくれたのに追い返す形になって悪かったな。それにシアもな。せっかく城の外から攻撃の機会を窺ってくれていたのに」
「うん、平気」
シアもまた城から少し離れた場所にいたことをトモヤは気付いていた。
千里眼でヘリオスの実力を見極め、待機に徹してくれていたのだ。
安否の確認が終わり、次の質問に進む。
「それでルナはどこに?」
「今はまだスーシャ達といる。君が飛び出す前に使用した防壁の効果はまだ続いているから無事だろう。それに、ルナがいない間にしておかなければならない話があるんじゃないか?」
「……まったく、リーネには敵わないな」
彼女の言う通りだった。
これからトモヤが話そうとしている内容はルナリアのいないうちに済ませたいものだった。
とはいえこのような場所で話すことでもないため、部屋に場所を移す。
そして二人が去ってからのことを話した。
ヘリオスがトモヤと同等のステータスを持っており、スキルに関しては上回っている可能性があること。
トモヤとヘリオスが全力で戦えば世界が壊れる恐れすらあるため、戦闘はできないこと。
そして、ルナリアの父親であること。
それらの情報を聞き、リーネとシアはそれぞれ思うところがあったようだ。
じっと口を閉じたまま何かを考える素振りを見せる。
暫しのあと、口を開いたのはリーネだった。
「これで万事解決という訳ではないが、ひとまずトモヤの対応が最善だったと私は思う。お互いに戦闘を避けたいという意思表示ができているのであれば、そうそう大きな動きはできないだろう」
「ああ、少なくともすぐに攻撃を仕掛けてくることはないと思う」
「対策は考える必要があるが、とにかく今は無事を喜ぼう……ただ一つ問題は残っているが」
リーネは窓の外に視線を向ける。
今この場にはいないルナリアのことを考えているのだろう。
トモヤも同じことを考えていた。
ルナリアにはどれだけの情報を伝えるべきか、それとも伝えずにいるべきか。
トモヤ達がヘリオスのもとに向かった場にいた以上、後者はさすがに難しいと感じるが。
「……ルナ関係で私が気になったのは、魔王よりむしろテラリア」
おもむろにシアがそう告げる。
「話を聞いた限り、明らかにルナと関わりがある。魔王はルナのことをどう思っているか分からない。けど、その人がルナを嫌っているようには思えない」
「……ああ、俺もそう思う」
テラリアの言葉は、間違いなくルナリアの身を案じるそれだった。
彼女についてだけならば、ルナリアに伝えてもいいかもしれない。
「っと、そろそろ迎えに行かないとな」
話しているうちに少々時間が過ぎていた。
どこまで事情を説明するかはともかく、早く合流しなければならない。
トモヤ達は三人でルナリアやスーシャ達のもとへ向かった。




