113 問答
「では、話をするとしようか」
全身に鎧を纏い、赤黒いマントを羽織る精悍な顔つきの男、魔王ヘリオス。
彼は玉座に腰掛けながら、おもむろにそう切り出した。
主導権を握られるような形になるが、大した問題はない。
トモヤはこくりと首肯する。
「未だお互いの名と表面上の力しか知らぬ。もう少し情報の突合せが必要であると思わぬか」
「……そうだな」
トモヤは自身も創造のスキルを使用し、椅子を生み出しそこに座る。
「では、まずは我から問おう。貴様は彼奴らと同様、世界の外側からこの地にやってきた者だな?」
「……ああ」
「ふむ。ならば貴様の目的は当然、我を殺すこと……と、断言したいところだがそうではあるまい。先ほどの戦闘時の振る舞いや潔く魔力を収めたことから考えても、そこに固執している様には見えぬからな」
考えをまとめているのか、そこでヘリオスは一度言葉を止める。
ならば次はトモヤが問う番だ。
この世界における魔王という存在についての本人の見解はどのようなものか。
魔王が地球に帰還するための方法を知っているというのは本当なのか。
……彼女との関係について。
訊きたいことは幾つもあるが、まず初めに確認しておかなければならないことがある。
「ヘリオス、お前はさっき俺ではお前を超えられないと言ったな。どういう意味だ? 力が匹敵しているだなんて言葉はあったが、俺にはまるでお前の実力の方が上回っているかのように聞こえたけどな」
「貴様も内心では察しているのではないか? 貴様は様々なスキルを保有しているようだが、そのどれも発動を未然に防がれたであろう?」
確かにスキル発動はヘリオスの魔力干渉によって解除された。
しかし理解できない。トモヤのミューテーションスキル、オール∞の発動を未然に察知し解除してくるなど、まるでヘリオスの持つ力がオール∞を超えているかのようではないか。
一体どれほど強力なスキルを持っていればそんなことが可能なのか。
「それを可能にするミューテーションスキルをお前は持っているのか?」
「く、くはは、くははははは!」
トモヤの問いに対し、ヘリオスは可笑しさのあまり耐えきれないといったふうに高笑いする。
「なるほど、その理解に繋がるのか。しかし残念だがその推測は間違いだ」
「だが、ノーマルスキルでそれが可能だとは到底思えな――」
「まだ分からぬか? ミューテーションスキルかノーマルスキルかどうかなどという話はしていない。そもそも、我はスキル自体を使用しておらぬ」
「――なんだと?」
ヘリオスの言葉の意味が理解できず、トモヤは眉をひそめる。
「貴様に教えてやろう。この世の理を」
ヘリオスは手を地面に翳す。
すると七色に光る複雑な紋様の魔法陣が空中に浮かび上がる。
「なんだ、それは?」
「創造の魔法陣だ」
瞬間、魔法陣がひときわ眩い光を放つ。
次の瞬間、ヘリオスの手には豪華な装飾が施された杖が握られていた。
ヘリオスはその杖でコツンと地面を叩く。
「空間魔法、召喚魔法、錬成――魔の真髄をその眼に焼き付けよ」
ヘリオスの周囲に、複数の魔法陣が現れる。
魔法陣の一つ一つが圧倒的な魔力を内包している。
どういった原理で成り立っている想像もつかないそれらは、ヘリオスを中心に集うと一つの巨大な魔法陣に変化する。
ヘリオスが手をトモヤに向けると、そこに目掛けて魔法陣から魔力が供給されていく。
「疑真魔技――飛獣炎」
そして放たれたのは、爆炎の獣。
禍々しい魔力と絶大な熱量を持つ、今まで見たこともないような強力な一撃がトモヤに迫る。
だが――
「ふむ、やはり貫けぬか」
それでもなお、トモヤのステータスを上回るには至らない。
精々、余波によって背後の壁が溶け落ちたくらいだ。
一体何を目的とした一連の流れだったのか理解に苦しむ。
だが、ヘリオス自身は動揺する素振りも見せず、ただ当たり前のようにその結果を眺めていた。
「何がしたかったんだ?」
「ふむ、我が伝えたいことが分からぬか?」
「結局俺たちがいくら攻め手を探したところで無駄だってことくらいしか分からなかったな」
「ほう、では聞き方を変えさせてもらおう」
そこで一度言葉を止めた後、ヘリオスは言った。
「貴様は今の疑真魔技、飛獣炎を再現することは可能か?」
明日も一話更新します。
早くルナ達とわちゃわちゃするシーンまで辿り着きたい。




