廃墟の町デルタグア
町に辿り着いた英治は探索を始め……。
ここはデルタグアという名の町だ。昔は娯楽施設や商業などが盛んだった。だが今は瓦礫に埋もれ見る影もない。
この町がこんなになったのも天災のせいだ。それだけじゃない天災後、人々は混乱し争いや窃盗などの犯罪を起こしたためである。
そして現在この町の外を歩く者は誰も居ない、そう人が住んでいない訳じゃないのだ。まあ、そのことは追々と語ろうか。
この町の入口付近に英治は立っている。
(やっぱり廃墟化してる。そうなると人が居るのか微妙だな)
そう思いながら歩きだした。
(みた感じ……結構、文明が発展していたようだ。ファンタジー世界と云うよりもSFに近い)
建物の一部だったろう破片を手にする。
(鉄? この町の建物は鉄でできているようだ。どれだけ近代的だったのか。こんなになる前に、この町……いや、この世界に来たかった)
壊れているが原型をとどめている建物の中に入ってみた。
✽✦✽✦✽
建物の中は至る所に物が散乱している。その中には、スロットマシンの残骸があり綺麗に並んでいた。
「ここって、カジノだったのか?」
壊れているスロットマシンに触れながら思考を巡らせる。
(AIシステム搭載!? ここは俺の居た世界よりも発達してたようだ。それよりも全ての管理を機械に任せてたなんてことはないよな)
あまりにも異世界のイメージから掛け離れていたため困惑していた。
「ねえ……」
「……!?」
背後で声がして英治は驚き振り返る。
「可愛い!!」
そこには紫の髪でツインテールの少女が立っていた。
その少女は白猫の耳の付いたフードの服を着ている。
「えっ……可愛い! ボクが? ハワァ~……どうしよう。そう言われたの初めて……キャッ!!」
恥ずかしくなり少女は頬を赤くして両手で顔を隠してしまった。
「…………。そ、それはそうと……俺になんの用だ?」
「あっ、そうそう……そうだった。頼みがあるの」
「なんで俺に?」
なんで自分に頼みごとをするのか英治は不思議に思い問いかける。
「町の外でみかけたの。それで、みてたら色々な物をつくってた。凄い能力、持ってる。だから強いと思ったんだ」
「みてたって……気配や姿って何も気づかなかったぞ」
「うん! 気配と姿を消す魔道具を使ったから」
それを聞き英治は、その魔道具に興味を示したようだ。
「みせてくれないか」
それを聞き少女は頷き気配と姿を消す魔道具の二つを英治に渡した。
その魔道具は二つ共に小さな宝石箱のようなものだ。
その二つの魔道具を英治は食い入るようにみている。
「こんな小さな物に魔術が施されているのか」
「そうだよ。この魔道具のこと……なんで知らないの? 世界共通だったはず」
そう言われ英治は答えに困った。
本当のことを言っても信用されないだろうと思ったから余計にだ。
「そうなのか? そうだとしても中には知らないヤツだって居るんじゃないのか」
「そうなのかなぁ……まあいいか。でも、何処から来たの?」
「何処からって……どこだろうな。アハハハハ……」
何処だとも言えず英治は笑って誤魔化した。
「言えない所? 誰かに追われてるとか?」
「いや……誰にも追われていない。だが言えないのは確かだけどな」
「そうなのかぁ……じゃあ聞かない。その代わり、お願い聞いてくれる?」
そう言われ英治は元々それが目的かと察する。
「可愛い子の頼みじゃあ聞かないと、という訳がない。そもそも見ず知らずの相手に、いきなり頼みごとって……どういう事だ?」
「そうだった。ボクはティラベル・ガフェルド、十七歳だよ」
「自己紹介……まあいいか。エイジ……」
姓を名乗ろうとしたが、ふと別のにした方がいいかと脳裏をよぎった。それなら鬼崎の鬼から連想されるオーガ……オウガにすることにする。
「……エイジ・オウガ、年齢は……」
実際の年齢を言いそうになるも鏡で見た自分の姿を思い出した。
「……十八歳だ。っていうか、そういう問題じゃない。なんで逢ったばかりなのに頼みごとを聞かなきゃいけないんだ!?」
「だって……強そうで頼りになりそうだったんだもん」
「そうみえるのか?」
そう英治が問いかけるとティラベルは、コクッと頷き満面の笑みを浮かべる。
「そう言ってくれるのは嬉しいが……そんなに強くないし頼りになるかも分からないぞ」
「そんなことないよ。だって、あんなに高く跳んだし……どんな能力を使ったか分からないけど、フカフカの大きなクッション出した」
「……全てみてたのか?」
英治は焦っていた。転移して来たあとからのことを全てみていたんじゃないかと思ったからだ。
「全てかどうかって分からない。だけど首に付けてる魔道具を出した辺りからだよ」
「あーそうか……ならいい」
「そうなの? それよりも……頼み聞いてくれる?」
そう聞かれ英治は、どうしようかと悩んだ。
「そうだな……聞けるかは内容次第だ。何をしてほしい?」
「あのね……」
何を頼みたいのかをティラベルは英治に伝える。
それを聞き英治は真剣な表情になり考え始めたのだった。
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