異なる環境、近い世界
仮眠をとるため英治はルゼリウスと部屋に向かいながら……。
「なあ……テーブルの上、片付けないか?」
ウザイと思いカゼリアはテーブルの上に置きっぱなしの調理器具などをみた。
「そういえば、エイジ片づけてない……疲れてたのか?」
「多分な。これだけの物を具現化したんだから仕方ない」
「うん、ボク達で片付けよう」
そう言いティラベルは片づけ始める。
「それはいいが……監視は、どうするんだ?」
「沢山の物がある。だから交替でやろう」
それを聞きカゼリアは頷いた。
その後、二人は交替で監視と片づけを交互にやる。
✽✦✽✦✽
廊下を歩きながら英治とルゼリウスは話をしていた。
「なんか色々と悪いな」
「エイジ、なんで謝る? お前のおかげで今日だけでも沢山、助かってるんだぞ」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど……そんな感謝されるようなことなんてしていない」
それを聞きルゼリウスは首を横に振る。
「そんなことないぞ。エイジ……オレは、お前のことを神の使いなんじゃないのかと思ってるんだ」
「俺が? それはない。だが……キグルミを着た少女の力で俺は、この世界にきた」
「ほう……それが本当なら、その少女は神なのかもしれないな」
そう言いルゼリウスは笑みを浮かべた。
「そうかは分からない。だけど、そう思うことにする。ルゼリウス達にも合わせてくれたしな」
「エイジ……お前、自分が居た世界のこと嫌いだったのか?」
「別に嫌いじゃない。でも無駄に生きてきたからな。だから別の世界で、やり直したいと願ったんだ」
そういう事かとルゼリウスは頷き納得する。
「願ったら、その少女が叶えてくれたって訳か。それで何か対価を払ったのか?」
「どうだろう? 何も要求されなかった。タダ夢を叶えますって書いてある名刺を渡されて」
「名刺がなんなのか分からないが……聞いてる限りだと、ホロカードのようなものか?」
そう問われ英治は頷き鞄の中を探した。しかし入れたはずの名刺がなくなっている。
「ない!? この世界に来た時にはあったんだ」
「それが本当なら……知られたくないんじゃ。みないと名刺ってヤツに書いてあったこと分からないのか?」
「んー……それが、どう云う訳か思い出せないんだ」
必死に考えるも英治は思い出せなかった。
「でも、キグルミと少女ってのは覚えてたんだよな?」
「??? 俺……そんなこと言ったのか?」
「エイジ……お前、大丈夫か? それとも、その少女の記憶を消されてる」
心配に思いルゼリウスは英治をみる。
「そうだとして……なんで俺の言ったことを、ルゼリウスは覚えてるんだ?」
「オレはエイジから全て聞いた訳じゃないし、みてもいない」
「そうか……そういう事なら話さない方がいいかもしれないな」
話さない方がいいのかもしれないと思い英治は、このことを脳裏の片隅に仕舞っておくことにした。
色々話をしているとルゼリウスが緑色の扉の前で立ちどまる。
「エイジ、ここだ」
そう言いルゼリウスは、スイッチを押すと扉を開け部屋の中に入った。
(ここだけみると、ホントSFみたいなんだよな)
そう思いながら英治は、ルゼリウスのあとから部屋の中へと入る。
✽✦✽✦✽
中に入るなり英治は目を輝かせた。
そう思い描いていたような近未来的な部屋だったからである。
「凄い! ベッドが金属で布団がない」
「なるほど……エイジの世界とは異なるってことか」
「ああ……架空の物だって思ってた。いや……恐らく似たようなことをしようとしていたかもしれない」
元の世界にあのまま居たとしたら同じような環境になっていたのかと英治は思考を巡らせた。
「そうなると発展途上の段階だったってことか」
「そうなる。俺の居た世界も色々な災害や他国での戦争なんかも起きていた。もしかしたら、この世界のようになるかもしれない」
「それは悪く考えるとだろ? まあ……それを阻止する指導者や科学者、機械に依存し過ぎない環境も必要になるだろうけどな」
それを聞き英治は頷き周囲を見回す。
「この世界は、そうだったのか?」
「機械マニアのオレが言うのもなんだけど……発展し過ぎて人間はだらけきった――――」
そう発展も間違った方に向かえば人間にとってマイナスになり便利な機械に頼り過ぎ何も考えなくなって脳は衰える。
これは、この世界で起きたことだ。とある国の大臣が政権を握っていた。
その大臣は国のためだと言い税金を上げ国民に払わせる。
そのせいで国は栄えているようにみえた。だが国民の生活は貧しくなる一方である。
そのためか他国に逃げる者や病気や生活苦で死ぬ者も出て働ける者が減っていった。
その国は段々衰退し他国との戦争に負けて占領される。そして国がなくなってしまった。
まあ、これは……この世界で起きたことなのだが。
「そうか……間違った方に発展すれば国だけじゃなく世界までも」
「世界は、そういった要因だけじゃないけどな。元々オレは今あるAI技術をいいと思ってなかった」
「悪い技術じゃないと思うんだが?」
そう英治が言うとルゼリウスは、ツラい表情へと一変させた。
読んで頂きありがとうございます(o^^o)
では次話もよろしくお願いします(*^^*)




