役割と確認
二個のステルス浮游球体を具現化させた英治は……。
あれから英治は二個のステルス浮遊球体を具現化させた。これで手元には三個ある。
「これを、どう使うんだ?」
「ルゼリウス……用心のためにステルス浮游球体を両派閥に一個ずつ向かわせる。もう一個は、ここの監視用にだ」
「なるほど……確かに、その方がいい」
そう言いカゼリアは英治の賢さに感心した。なぜか頬が赤いようにもみえる。
「エイジ……誰かよりも、リーダーっぽい」
そうティラベルに言われ英治は、ブンブンと思いっきり何度も首を横に振る。
そして気になり、チラッとルゼリウスの方をみた。
「ほう……それはいい考えだ。オレは別に、リーダーじゃなくてもいいしな」
「イヤイヤイヤ……そんな大役なんか俺には無理だ」
「そうか? まあ……オレ達だけじゃ決められないけどな」
それを聞き英治は、ホッと胸を撫で下ろす。
余程、英治はリーダーになりたくないようだ。まあ元居た世界で部下を庇って職を失っているから余計なんだろう。
「まあいい……それよりも、コッチが優先だ」
「ルゼリウスの言う通り……急いでステルス浮游球体を配置しないとな」
そう言いながら英治はステルス浮遊球体を取ろうとした。
その瞬間ティラベルとルゼリウスとカゼリアが、サッとステルス浮游球体をとる。
余程、気に行ったのだろう。
「っと……まあいいか。俺は三人が設定をしている間、三ヶ所の監視を続けてる」
「分かった。それと頼みがあるんだが」
そうルゼリウスに言われ英治は、また余計な物かと思い嫌な顔をする。
しかし、その考えと違っていて頼みごととは体調が戻ってからでいいから液晶ディスプレイを七個つくってくれという事だった。
これは他の仲間にも監視をさせるためだ。
「それなら、すぐに具現化させた方がいいんじゃ」
「エイジ、そうだとしても今は無理をするな。一応……お前も大事な仲間なんだ」
ルゼリウスにそう言われ英治は嬉しさのあまり目尻に涙が浮かんでいる。
そう今まで自分のことを必要だって言われたことがないからだ。
「泣いてる。エイジ……今の言葉で感動したのか?」
ティラベルに言われ英治は慌てて涙を拭い首を横に振った。
「いや……目に、ゴミが入ったみたいだ。ハハハ……」
そう言い英治は笑って誤魔化す。
「目にゴミ……掃除してるから、ホコリないはず」
「ティラベル、それ以上は言わない方がいいと思うぞ」
「そうそう……エイジが、どう反応したらいいのか困っているみたいだからな」
カゼリアに言われ英治は苦笑する。
それを聞いたティラベルは意味が分からず首を傾げた。
「そうだな……さっき掃除したから綺麗になっている。ゴミじゃなくて虫かもしれない」
「いや、それも無理があるぞ」
「うんうん……ルゼリウスの言う通り、この建物には虫よけの仕掛けがされてるんだ」
カゼリアに言われ英治は納得する。
「まあ、こんな話をしてたって意味はない。それよりも早く済ませるぞ」
そう言いルゼリウスは、ステルス浮游球体の設定をし始めた。
カゼリアはルゼリウスに教わりながらステルス浮游球体の設定をする。
片やティラベルは鼻歌混じりでステルス浮游球体の設定をしていた。
三人をみたあと英治は液晶ディスプレイへ視線を向ける。
(キートモンの方は建物の中から出てきた)
そうそう、キートモンの町を監視しているステルス浮游球体は二個なのだ。そのため中と外の両方を監視しているのである。
(何処に行くんだ? ルゼリウス達にも伝えた方がいいな)
そう思い英治は三人にキートモンの町の状況を伝えた。
それを聞いた三人は設定と、ステルス浮游球体を飛ばし配置場所へ向かわせたあと英治へ視線を向ける。
「そっちの動きも気になる。そうなると交代でした方がいいだろうな」
「交代でか……まあ、その方がいいだろう」
「じゃあ悪いけど俺が先に休んでもいいか?」
そう英治が問うと三人は問題ないと頷く。
「その方がいいだろうな。じゃあ部屋を案内する、ついてこい」
そう言うとルゼリウスは扉へと向かった。
頷き英治は、ルゼリウスのあとを追いかける。
残されたティラベルとカゼリアは液晶ディスプレイをみていた。
「カゼリア……エイジのこと、どう思ってる?」
「どうって……凄いヤツだと思ってる。それが、どうした?」
「そういう事じゃない。男として……えっと、あー」
言ってるうちに恥ずかしくなりティラベルの顔は赤く染まっている。
「好きかってことを聞きたいのか?」
「う、うん……そう」
「んーどうなんだろうな。まあ、まだ逢ったばかりだ。それに今は男として好きというよりも仲間としてか」
それを聞いたティラベルは、ホッと胸を撫で下ろした。
「よかった……エイジの取り合いにならなくて。これからも、とるなよ」
「約束なんて、できない。どうなるかは分からないからな」
「分かった……その時は正々堂々と勝負」
そう言いティラベルは真剣な表情でカゼリアをみつめる。
「ああ、いいだろう。選ぶのは、エイジだがな」
ティラベルを睨みカゼリアはそう言い放った。
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