調理する道具
調理する道具を大量に具現化した英治は疲れ果て……。
何もなかったように英治とティラベルは掃除をしていった。
その後、ティラベルは仕上げをするため床拭きロボットのスイッチをオンにする。
「凄い……こんな物まであるんだな」
「うん、でも今は貴重。だから、ルゼリウスが何度も直してる」
「もう製造するのは無理ってことか」
資源が乏しい現状で新たに物を作りだすことなどできないのだ。それだけじゃなくて製造工場などは建物が壊れ機械なども破損して動かないのである。
「そう……無理。だからエイジの能力、貴重なのだ」
「でも……今の俺の能力レベルじゃ具現化できる物も限られる」
「それでも使える物を創れるの凄い」
満面の笑顔で褒めてくれるティラベルに対して英治は否定できず「ありがとう」と言葉を返した。
「そうだな……片付いたし、さっき話してた調理に使うヤツを具現化してみるか」
それを聞いたティラベルは胸躍らせる。
「どんなの……どんな物ができる?」
そう問われた英治は「待ってろ」と言い瞼を閉じ妄想を膨らませた。
そして妄想が頂点……これ以上は想像できないと云うところまで達する。それと同時に目の前に手を翳した。
《創作スキル【妄想】!!》
翳した手の前に魔法陣が展開される。その魔法陣は眩い光を放つと、チカチカ点滅しながら形を現した。
その物は 電磁誘導加熱コンロだ。勿論、手で持てるサイズである。
「電気コンロか?」
「この世界にもあるのか?」
「うん、ある。エイジの世界にも同じ物あった」
嬉しいらしくティラベルは満面の笑顔になっていた。
「今もあるのか?」
「今は料理をしない。ここが、こうなる前から全てAIの作った物。だから電気コンロなくなった」
「そうか……残念だ。そうなると手作りの料理をするための色々な道具も具現化した方がよさそうだな」
その後、英治は必要な調理器具を色々と具現化させる。
鍋、フライパン、まな板、ボウル、おろし金、お玉、フライ返し――……そのほか色々とできる範囲で具現化させた。
それらをテーブルにのせるも置ききれない。そのため床に大きな布を広げてテーブルにのせられなかった物を置いていった。
大量に具現化させたせいか英治は疲れて、ダラ~っと生気を抜かれたように項垂れる。
「疲れたのか?」
「ああ……大量に具現化させたからな。それと、さっきから創ってばっかだったし」
能力を使うのには制限がない。しかし英治の体力が悲鳴をあげたようだ。
「そうか……じゃあ、すぐには料理つくれない」
「悪い……体調が戻ったら試してみる。でも、その前に……材料って手に入るのか?」
「それなら問題ないぞ。って……電気コンロに、みたことのない物も具現化したのか」
そう言いながらルゼリウスは部屋に入ってきた。
そのあとをカゼリアがついてくる。
「もういいのか?」
「ああ、シャワー浴びて着替えたからな」
「それならよかった。それはそうと……本当に材料が手に入るのか?」
そう問われルゼリウスは頷いたあと椅子に座った。次いでカゼリアも椅子に座る。
「すぐには無理だがな」
「っていう事は……何処からか調達してくるのか?」
「そうなる。タダ……今は、それどころじゃないが」
そう言いカゼリアは眼前にあるフライパンを手に取りみていた。
「これ武器になりそうだ」
「カゼリア! フライパンは料理をする道具だ。武器になんて使わないでくれ」
「フライパン……これのことか?」
そう問いカゼリアは、フライパンを指さす。
「そうだが……コッチの世界にはないのか?」
「ない……それ何に使う?」
「このフライパンを使って焼いたり炒めたりするんだ」
そう言われるも三人の頭の上には大きな疑問符が左右に揺れている。
「焼くと炒めるは分かる。だが本当に、そのフライパンで調理できるのか?」
「コッチの世界って……どんなのを使って調理してる?」
「陶器皿を使う」
そうティラベルから聞き英治は困惑した。
そう、どう考えても陶器皿で焼いたり炒めたりできる訳がないと思ったからだ。
「想像つかない。陶器皿で本当に調理できるのか?」
「当たり前だ。そうやって昔は料理を作ってたんだからな」
「ルゼリウス、なるほど……陶器皿を、どう使うのか今度みてみたい」
そう言い英治は笑みを浮かべた。
「青派と赤派……奥の部屋から出てきた」
「コッチも動いたぞ」
「そうみたいだな。この話は、またあとでだ」
それを聞きティラベルとルゼリウスとカゼリアは頷き液晶ディスプレイへ視線を向ける。
英治もまた同じように液晶ディスプレイをみた。
「青派と赤派は、ここにくると思うか?」
「カゼリア……くるにしても一旦アジトに戻ってからだろうな」
「あと二つステルス浮游球体を具現化させるか?」
その問いにルゼリウスは頷き口角をあげる。
「二つと言わず沢山つくっておいた方がいい」
「ルゼリウス……今は無理だ。疲れているせいか沢山は創れない」
「じゃあ二つでいい……頼めるか?」
そう問われ英治は頷き具現化する準備を始めた。
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