味と感触、文化の違い
簡易食品を口に入れた英治は飲み込めずに……。
眼前にある肉野菜炒めをみた英治は匂いも伴い口の中に生唾が溜まっていた。
「味見していいのか?」
「これエイジの……全部食べて」
「ティラベルの言う通りだ。オレのは、これからレンジで……!?」
ルゼリウスは自分の簡易食品を電子レンジに入れようとしたがティラベルに先をこされる。
「ボクのが先! エイジと一緒に食べるの!!」
「ハァーわーたよ。ラブラブカップルさん、好きにしろ!」
「ルゼリウス……だから俺は」
棘があるルゼリウスの言葉に英治は、ピクピクと顔をひきつらせていた。
そうしているうちにティラベルは時間を設定したあとスタートを押して待機する。
「早くできないかなぁ」
「そういえば、なんで十分なんだ?」
「元の食材に戻すためだろ」
そうカゼリアに言われるも英治は納得いかなかった。
「俺の居た世界じゃ、もっと早かったぞ」
「加工の仕方が異なるのかもな」
「それは考えられる。でも、それだけじゃないような気も」
そう思うも英治は、それがなんなのか分からない。
そうこう考えているうちにティラベルの簡易食品ができあがる。
「それってハンバーガーか?」
「これはウリ鳥のパンサンド」
「なるほどな……名称が違う物もあるのか」
そう言ったあと英治は肉野菜炒めを食べ始めた。そしてプラスチック性のホークを使い、パクッと口の中に入れる。
「★※△☆✳︎▲!?」
英治は噛んだ瞬間、嫌な感触と味がして飲み込めない。かといって吐くこともできず泣きそうだ。
「エイジ……涙目になってる」
「どうしたんだ?」
「美味すぎて喉も通らないとかか?」
そうティラベルとルゼリウスとカゼリアに言われて英治は余計にツラくなり涙を流している。
(飲み込めないし……吐く訳にいかない。……どうしたらいいんだよ~)
英治の様子が変だと思ったティラベルは変顔をした。
それをみた英治は余りにもティラベルの顔が面白くて笑ってしまう。
そのため口の中の食べ物をルゼリウスの顔に目掛けて、ブハァーっと思いっきり吐き出してしまった。
ルゼリウスの顔には食べカスが大量にくっつき酷い状態である。
「汚ねえ~!!」
「ハハハハッ! 凄い顔、汚いし」
「ごめん、ルゼリウス。あー……どうしよう」
どうしようと思い英治は、アタフタしてしまった。
「仕方ねえな。コッチにこい! あーそうそう……エイジとティラ。吐き出したの綺麗に片付けとけよ」
そう言ったあとカゼリアは、ルゼリウスとシャワー室へと向かう。
二人が部屋から出たのを確認した英治とティラベルは、ホッと胸を撫で下ろした。
「無理して食べなくていい」
「ごめん、そうだな。だけど、この世界に居る限り……この簡易食品を食べないと空腹のままだ」
「うん、エイジに合う食品……あればいい。でも多分……みんな同じ」
悲しい表情でティラベルは俯いている。
「調理できる機械と食材、調味料なんかあれば……自力で作るんだけどな」
「それ言い考え、エイジが具現化する」
「だからナマモノとか食品関係、生ある物は具現化できないんだ」
それを聞きティラベルは「違う」と首を横に振った。
「調理する機械を具現化」
「あーそれなら……だけど手で持てるサイズの物しか……いや簡単な物ならできるかもしれない」
「おお! 良かった。楽しみ……どんなのだろう」
目を輝かせティラベルは、ワクワクと胸躍らせる。
「たいした物じゃないが……道具さえ揃っていれば調理できる。だけど、その前に……片付けないと」
「うん! 早く片付ける」
そう言うとティラベルは立ち上がり壁際まできた。そこに立てかけられている太いホースを引っ張りテーブルの側までくる。
「もしかして、それ掃除機なのか?」
「ホイホイダスト機のホース」
「なるほど……そんな名前なのか。だけど、なんで壁とホースが一体化してるんだ?」
なぜ壁にホースが密着しているのかと英治は疑問に思った。
「このホース伝ってゴミ収集場所に集められる」
「ゴミを吸って一纏めにする。効率の良い考えだが……これだと分別はされないんじゃ」
「分別?? 気づかなかった! でもAIが処理してるから大丈夫」
それを聞き英治は嫌な予感が脳裏をよぎる。
「それもAIが管理してるのか?」
「当然……何か気になるのか?」
「いや、あり得ないことが脳裏に浮かんだ。でも……まさかな」
そんなことあるはずないと英治は、ハハハと苦笑いをした。
「何、頭の中に浮かんだ? 気になる」
「本当にあり得ないことだ。ゴミを再利用しているなんてな」
「……どうだろう。ないとはいえない。けど……食べ物は違う。多分……」
その言葉を聞き英治は「そうだな」と返答する。
「これは俺の妄想だ。だから気にするな」
「そう……だけど……ううん、うん! 気にしない!!」
ティラベルは気にしないようにと心の中で言い聞かせた。
そう考えながらティラベルは、ホイホイダスト機のホースに取り付けられているスイッチをオンにして掃除を始める。
そんなティラベルをみて英治は言わなきゃよかったと後悔していた。
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